子宮頸がんワクチン:「子どもが壊れていく」母親訴え必死

毎日新聞 2015年09月24日 16時15分(最終更新 09月24日 18時58分)

子宮頸がんワクチンの接種後、記憶障害や関節痛、視覚障害などを発症した奈良県三郷町の女子高校生。サングラスは目を保護するためにかけている=2015年6月7日、小関勉撮影
子宮頸がんワクチンの接種後、記憶障害や関節痛、視覚障害などを発症した奈良県三郷町の女子高校生。サングラスは目を保護するためにかけている=2015年6月7日、小関勉撮影

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後に副作用報告があった女性のうち約1割の健康被害が回復していないことが、今月まとまった厚生労働省の調査で分かった。ところが、同省の専門家検討会は、接種時の痛みや不安による「心身の反応」とする見解を変えていない。記憶障害などの重い症状に苦しむ少女たちの母は「『心身の反応』とは考えられない。娘たちの姿をしっかりと見てほしい」と訴える。

 奈良県三郷町の高校2年の女子生徒(17)は中学1年だった2011年10月、ワクチンを接種した。2日後から起きられなくなり、学校を休んだ。母(47)は副作用を疑ったが、製薬会社は「副作用ではない」と答えた。約1カ月後に症状が回復したため通学を再開したが、足首や腰などの痛み、手のしびれなどの訴えはあった。

 症状がひどくなったのは、高校1年の昨年6月ごろ。全身のけいれんや硬直、失神、発熱、関節痛、頭痛、疲労感、立ちくらみ、吐き気、腰の痛み、手足のしびれ、視力低下、光がまぶしく感じる−−。記憶障害も進み、中学時代など数年分の思い出が失われた。昨年秋に母や家族が分からなくなり、怖がって逃げることもあった。昨年12月、こども家庭相談センターで検査を受けると「8歳の知能」と言われた。

 母は「子どもが壊れていくのを見ながら、わらにもすがる思いで10カ所以上の病院に連れて行った」と話す。

 現在は最悪の時期を脱し、高校の支援を受けて通学している。記憶障害は治らず、聞いたことをすぐに忘れてしまう。体の痛みやけいれんなども続く。

 母は「未来ある娘たちの人生が奪われた。国には、この事実をしっかりと見つめてほしい」と話している。

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 「一人娘をなんとか進級させてほしい」。子宮頸がんワクチンを接種後に高校の長期休業を迫られ、留年した高校2年生の生徒の母親(54)=近畿在住=は、高校側と懸命に話し合いを続けている。

 生徒は中学2年だった2012年2月に3回目の子宮頸がんワクチン接種を受けた。2週間後、塾から帰宅した際に「手がしびれて字が書けなかった」と不調を訴えた。バレー部で活躍し、受験勉強に打ち込んでいたが、激しい頭痛にも悩まされ、1年後には「友達の名前が思い出せない」と症状は深刻化した。高校1年の夏休み以降は、1カ月以上の単位で休まざるをえなくなった。昨年2月、新聞報道で症状が子宮頸がんワクチンの副作用と同じだと知った。

 生徒は今年3月に留年が決まった。これまでに神奈川県や仙台市など約10カ所の病院やクリニックの診断を受け、治療費だけで300万円以上を費やした。6月からの約1カ月間は、埼玉県の親戚宅から東京のクリニックに通った。

 9月、体を引きずるように学校に通い始めた。これ以上、休めば再び留年してしまうからだ。週4日1、2時間だけの通学。生徒は「普通に学校に通い、部活に打ち込み、塾に行きたい」と訴える。【根本毅、井上元宏】

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