2007年。「干物女」という言葉が流行語大賞にノミネートされました。恋愛をめんどくさがり、家でだらしない生活をしている女性のことを指す単語でした。
しかし2015年の今「干物なんちゃら」と言ったら、ときめく人は多いはず。「干物妹!うまるちゃん」がかわいいから!
「干物妹(ひもうと)」と呼ばれているのは、ヒロインの土間うまる。普段学校では学業優秀、眉目秀麗、性格よしといいとこ尽くし、非の打ち所のない女子高生です。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。
ところが家に帰ってくると、その完璧さをすべて捨て、お気に入りのフードをかぶり、頭身も二頭身に縮みます。家事は一切せず、パソコンでネットをダラダラ眺め、ゲームをひたすらプレイし、寝転がってマンガを読む。ポテイト(ポテチ)とコーラが大好物。足をダバダバ動かしてわがままをいう、グータラさんに。
ああ、残念美人! でも困ったことに、「だらしない」姿を見せる部分こそが、愛しい。
うまるは、兄の土間タイヘイとの二人暮らし。会社員のタイヘイは、家計を支え、家事全般をしてうまるを養っています。でもうまるは、わがまま。ダラダラ、ゴロゴロ、食う寝る遊ぶ。
文字だけで見ると大変よろしくない。うまる、もう少しちゃんとしろよと。ところが「干物妹!うまるちゃん」はなぜか、見ていてイライラがたまらない。ほっこり幸せな気分になれる。理由は三点。
一つは外うまると家うまるの描き分け。外うまるの完璧さを美人で表現する一方で、家うまるはチンチクリン。小動物的に描かれることで、彼女に対しての庇護欲がかきたてられます。タイヘイの膝枕で寝ている幸せそうな顔のうまる。焼き肉を頬張りながらコーラ飲んでいる時のうまるの笑顔。こんな顔見たら、守ってあげたくもなっちゃうよ。一方でタイヘイが親のように、ダメなことはきっちり叱り、できたらしっかり甘やかす、双方のバランスを取っているのも、安心して見ていられるキモ。オープニングだけでも、家うまるがどんな様子なのかわかります。
二つ目は妹キャラが3人いること。メインヒロイン4人中3人が妹という驚異の妹率。うまるのクラスメイトの友人本場切絵には、タイヘイの同僚の、アフロでノリが軽くてトラブルメーカーな兄、通称「ぼんば」がいます。妹に「大っ嫌い!」と言われるタイプの兄です。同じくクラスメイトの橘・シルフィンフォードは、ハイテンションお嬢様。兄はタイヘイの後輩のドイツ出身のアレックス。オタク。妹側からの、兄に対しての三者三様の見方が描かれるため、比較しながら見られます。色々な兄妹の姿があるからいいのです。
三つ目は、うまるがお兄ちゃんを大好きなこと。うまるは、モデムにコーラをこぼして壊してしまい、ネットができなくなったとき、タイヘイにお金をもらって(お兄ちゃん甘い!)、まんが喫茶7時間コースに挑戦したことがあります。彼女のようなダラケ人間には、至福の時間、だったはず。ところがフードをかぶっても家うまるになれない。4時間残して、家に帰ってからやっと笑顔になれます。「ただいま! お兄ちゃん!」。
二人は、兄妹暮らしなのにワンルーム。それぞれの部屋はありません。二人で百円ショップに行って、買い物ではしゃいだりもします。タイヘイが作ったピーマンを炒めたものをいやがるうまるは、彼が手の込んだハンバーグを作ると申し訳なく感じて、「今度から普通に炒めたピーマンでいいよ」と言ったこともありました。OPの「わがまま放題は、大好きの裏返し」という歌詞に、心がほんわか。
原作五巻では、どの二人組がいいか、という組み合わせ人気投票が掲載されました。タイヘイに恋をする少女海老名菜々との人気カップリング、「海老名×タイヘイ」をおさえて、「家うまる×タイヘイ」が堂々一位。ちなみに三位は「外うまる×タイヘイ」。
家族愛あふれる兄妹の関係。描かれるのは、「安心できる家庭」への憧憬(しょうけい)です。「干物」が家族愛ゆえに生まれる信頼関係として幸福が成立するのなら、それでいいんじゃないかな。
9月27日19時からは、最終回直前一挙振り返りニコニコ生放送が行われます。1話から11話まですべて見ることができます。最終回に備えて、みんなでUMR合唱をしよう!
(たまごまご)
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