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民意反映のためには党議拘束を解除すべき

2015年09月24日(木)16時00分

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民意反映のためには党議拘束を解除すべき

安保関連法は19日未明に参院本会議で可決された Toru Hanai-REUTERS

 安保関連法の成立に至る一連の経緯には、強い違和感を感じざるを得ませんでした。

 まず、今回の安保関連法のベースにある集団的自衛権の合憲化というのは、昨年7月に閣議決定がされているのです。その際には大いに議論を呼んだわけですが、それでも三権のうちの行政府(内閣)が一方的に憲法解釈の変更を宣言しただけです。

 では、そのまま多数派の与党が今回、議決をして押し切ったのかというと、そうではありません。その間の2014年12月には解散総選挙があったのです。ですから、閣議決定から議会での関連法議決に至る間に民意を問う機会はあったわけです。

 与党は、その総選挙で勝利したのだから、今回の安保関連法成立に至る議決の過程は、強行採決でも何でもないと言っています。その一方で、参院特別委員会での採決が迫っていた状況下では、世論調査は明らかに法案に反対していました。反対を押し切っての採決に関しては、反発が出るのも自然ですし、そもそも世論調査で反対が過半数を越える法案がスイスイ通るというのも妙な話です。

 その一方で、法案の可決成立から少し時間が経過した時点では、内閣支持率は少しずつ回復しているそうです。そうしたトレンドを受けて、与党からは来年の参院選では、ダブル選挙を仕掛けて「野党連合」を分断すれば勝てるなどという声も出ている、そんな報道もありました。

 それでは、どうしてこのような不思議な現象が起きるのでしょうか?

 日本の有権者は、その日その日の「イメージ」や「空気」に踊らされるばかりで、昔のことは忘れ、少し先のことは考えられなくなっているのでしょうか?

 そうではないと思います。

 一つには、民主党政権の期間に景気の低迷、デフレの進行、そして東日本大震災と原発事故の問題が発生した中で、民主党の統治能力に関して悪いイメージが固定化したという問題があります。ですから、政権選択になる衆院選では、有権者はなかなか民主党に入れづらいという傾向がまだ残っています。

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冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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