虐待を受けた可能性があるとして、児童相談所に警察が通告した今年上半期の18歳未満の子どもは1万7千人超と過去最多を更新した。警察が親や養親を逮捕・書類送検した事件数も376件と過去最多だった。

 両親が3歳の次男をウサギ飼育用のケージに入れ、暴行を加えて死亡させた▽父が生後4カ月の長女の腹部を殴って死亡させた――。いずれも今年発覚した事件だ。

 虐待の実態は外から見えにくい。近所の人が見かねて注意しても開き直ったり、しつけだと言い張ったりする親もいる。

 虐待が増える背景には様々な理由がある。核家族化や社会とのつながりが希薄になって孤立する親の存在や、貧困による生活不安などから、目の前にいる最も弱い存在の子どもにストレスのはけ口が向かいやすいといった点も指摘される。

 繰り返し虐待事件を起こす親が少なくないのも特徴だ。

 虐待対応の中核は児童相談所が担っている。だが、深刻なケースほど親は児相の介入に反発しがちで、「児相頼み」では解決は難しい。再発を防止するには、司法や学校など複数の機関の連携が不可欠だ。

 高松地検は昨年12月から、児童虐待で親が送検されたら児相や市町村の担当職員、学校の教師、医師ら事件の関係者に集まってもらう試みを始めた。起訴すべきか判断する前に、どうすれば再発を防げるのか、意見を聴いてから決めるためだ。

 9カ月で扱った事件数は10件。処分保留で釈放され、児相の支援を受けながら立ち直り始めた親もいるという。

 過去に虐待事件を担当した経験から、検察の役割を考えてきたという酒井邦彦・高松高検検事長は「重い刑罰を科しても、親の虐待傾向が収まらない限り再発の危険はなくならない。子や親を取り巻く人たちが情報を寄せ合い、児相の指導につなげる方が子どものためになるはずだ」と話す。

 立場の違う人の間に顔の見える関係ができれば、相談しやすくなる効果もあるだろう。虐待事件の多い都市部で同様のことをするのは難しいかもしれないが、参考になる取り組みだ。

 福岡市と和歌山県では、児相に常勤の弁護士を配置している。子どもの保護など、親権を制限してでも即決すべきケースは多い。家庭内に踏み込む以上、法的な助言が欠かせないのは全国の児相も同じだ。

 虐待対策に特効薬はない。行政の縦割り意識を捨て、社会総がかりで取り組むしかない。