この春開かれた核不拡散条約(NPT)の再検討会議は最終文書をまとめられ…
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この春開かれた核不拡散条約(NPT)の再検討会議は最終文書をまとめられずに終わった。核兵器を持たない国々の不満は強まり、NPT体制は危機に直面している。
「核兵器のない世界」へ強い意欲を示していたオバマ米大統領の任期も、残り1年半を切った。核廃絶へ向けた歯車を再び力強く動かすために、国際社会があらゆる機会を通じて知恵を出し合う必要がある。
今月からニューヨークで第70回国連総会が始まった。難民問題などが主なテーマだが、核保有国の首脳級が集まる外交の舞台を、核軍縮についても論じる場にしたい。
そのために、被爆国の日本が果たせる役割は大きい。
安倍首相は8月に広島、長崎を訪問した際、「国連総会に新たな核兵器廃絶決議案を出す」と約束した。
日本は94年以降、こうした決議を出し続けており、昨年は170カ国の賛成で採択された。
ただ、昨年の決議は、世界の核弾頭の9割超を持つ米ロ両国に「さらなる削減に向け、議論を継続するよう奨励する」との表現にとどまった。全般に総花的で、核軍縮を促す効果は薄いと、専門家やNGOから批判されてきた。
被爆70年の節目だ。潮目を変えるような意欲的な提案をしてはどうか。
例えば、米ロ両国には、現行条約で1550発までとされている戦略核弾頭数を、数字もあげて削減を迫る。中国などほかの保有国には、核戦力の近代化を自制するよう求める。
核軍縮の進め方について、各国が具体的に話し合う場を設けていく必要性も訴えたい。
NPT再検討会議の最終文書案には、核軍縮に向けた「効果的な措置」を検討する作業部会を国連に設けるとの勧告が盛り込まれていた。国連総会で改めて提案されれば、実現への道が開ける可能性はある。
核保有国は、部会の設置が、核兵器禁止条約の制定につながることを警戒している。米国の核の傘に依存する日本も、禁止条約に消極的だ。非人道的な核兵器は法的に禁じるべきだとの国際世論が強まるなか、存在感を示せていない。
そういう日本が思い切った提案に踏み切るならば、核廃絶へ向けた国際潮流を再び強めることになろう。
各国首脳は28日からの一般討論演説に向け現地に入る。核の非人道性を最も知る国として禁止条約の必要性を認め、核保有国を議論に引き寄せてほしい。
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