投資をしておカネを増やすにあたって、「経済」を正しく理解することはとても大切なことです。「経済」について、少し身近なところから考えてみましょう。
「赤ちゃんがいるだけで経済が動いている」
「経済」というと、商品をつくったり売ったりするイメージがありますが、じつはそれだけではありません。「すべての人」が経済活動に参加しています。
専業主婦や学生のように、労働の対価としておカネをもらっていない人たちも、経済主体のひとりです。どういうことでしょうか。
「赤ちゃん」を例に考えてみましょう。
赤ちゃんは、ひとりでは何もできません。おカネを稼ぐことも、おカネを払うこともできません。お父さんやお母さんに支えられて生きています。
ですが、投資家の視点で見ると、
「赤ちゃんがいるだけで経済が動いている」
と考えることができます。
赤ちゃんは、オムツ、ベビーカー、ミルク、哺乳瓶、ベビーベッドなど、ベビー用品を消費するだけですが、もしこの世から赤ちゃんが消滅してしまったら、ベビー用品を扱う会社は存続できません。
赤ちゃんがいることによって支えられている会社はたくさんあります。赤ちゃん関連の会社に勤めている人は、赤ちゃんが存在しなければ、給料をもらうこともできないでしょう。
つまり、自分で稼ぐことができない赤ちゃんでさえ、立派に経済活動をしていることになるのです。
「経済とは何か」を突き詰めて考えていくと、こんなことがわかります。
「人は、ただ生きているだけで価値がある」
「人は、ただ生きているだけで誰かを支えている」
生産活動に参加していなくても、消費活動を行っているだけで、「誰かの役に立っている」のです。
それでは、おカネとは、いったい何なのでしょうか?
私は、「おカネ=エネルギーの缶詰」だと解釈しています。エネルギーの缶詰には「2種類」あって、ひとつは「過去の缶詰」です。その人が働いた報酬としての缶詰で、「過去の結果」が詰まっています。
ところが、おカネを「過去」のために使うことはできません。おカネを使えるのは、いつだって「未来」に対してだけです。おカネは、つねに現在と未来に橋を架けていくもの。「未来の缶詰」でもあります。だからこそ、使い方次第では力の源になるし、他の人を幸せにすることもできます。
• 過去の缶詰……過去の「自分」の結果
• 未来の缶詰……未来を切り拓くための源
おカネは、過去の自分であり、未来の自分です。おカネは、自分の人生そのものです。だから、あなたが「おカネを稼ぐのは悪だ」と思っているとしたら、それは「自分=悪」と思っているのと同じです。
「おカネは不潔だ」と言う人ほど、おカネが好き
では投資とは何かというと「エネルギーを投じて、未来からお返し(リターン)をいただくこと」です。投じるエネルギーの中には、おカネ、時間、情熱、努力、知恵などが入っています。
一方リターンの中には、おカネ、商品、サービスのほかに「感謝」「経験」「知識」といった目に見えないものも含まれています。
日本人の心には「豊かになることは汚れることだ」とする風潮があります。しかし、本当におカネは「悪」なのでしょうか。
「おカネは不潔だ」
「株式投資は、投資家が私腹を肥やすために行うものだ」
「株で稼いだおカネは汚いものだ」
そう思っている人ほど、実は、不潔な人ではありませんか。なぜなら、「おカネのことで頭がいっぱい」だからです。
よく考えてみてください。投資をして得られるお返しは、「おカネだけ」ではありません。
「感謝」や「経験」や「知識」が含まれています。株式投資であれ、自己投資であれ、どういう投資であっても、おカネだけで完結することはないはずです。
それなのに投資というと、「おカネ」のことしか頭に浮かばないのは、おカネのことが気になって、気になって、しかたがない証拠です。おカネに汚いイメージを持つことは、おカネが大好きであることの裏返し。「おカネは悪」「投資はダーティ」と言う人ほどおカネが好きでたまらない人なのです。
投資を英語で表記すると、「invest」(インベスト)です。
つまり、「ベスト(衣類)を着用する」ことであって、「身につける」という概念です。一方、日本語はどうかというと、「投資」とは「資本を投げる」。身につけるとは反対の概念ですね(この話は草食投資隊の渋澤健さんから聞きました)。
• 「invest」……身につけるイメージ
• 「投資」……手放すイメージ
なぜこんなことになったのでしょうか。
日本人は、1万円の投資をすると、「1万円が手元から消えてしまった」と喪失感に痛みを覚えます。なぜなら、日本人が「現金主義」だからです。投資に不安を覚えるのは、ポケットや財布の中から「現金」がなくなってしまうからです。
日本人はアメリカ人に比べ、寄付をしません。日本人の寄付の金額は、「年間で、1人当たり約2500円」だといわれています。一方、アメリカ人の年間平均は、13万5000円です。毎月1万円以上寄付していることになります。
公共経済学では、世界的に見ても「日本人は公共心がない」と公表されています。経済は互恵関係ですから、寄付も投資もしないということは、社会に貢献しようという意識が薄い、と評価されてもしかたありません。
仮に1万円を寄付することになったとします。
たしかに、あなたの手元から「1万円札」はなくなります。けれど、寄付先との間に共有感があって、心理的につながっていれば、1万円は寄付先に移動しただけで、「減ってはいない」ととらえることもできるはずです。
ところが日本人は、根本的には個人主義なので、「自分のおカネがなくなった」と考えてしまう。寄付よりも、投資よりも、「とにかく貯蓄が大事」と現金を抱えているのが、日本人の気質なのです。
お金持ちになるために「すべき」こと
「おカネを貯めている人」の心の中を覗いてみると、
「おカネが増えている状態が幸せ」
「手元から現金がなくなるのが怖い」
という気持ちが見て取れます。
株式投資に消極的な人の多くは、「現金」が大事なのであって、「株券」を資産だと認めていません。世界的に見ても、この傾向はめずらしい。アメリカ人も、中国人も、韓国人も、株券を資産だと考えています。
なぜなら、株は、会社の価値をそのまま体現しているものだからです。世界の「大金持ち」と呼ばれる人たちは、「現金」を持っていません。現金を持っていても、おカネは働かないからです。
おカネを寝かして大金持ちになった人は、ひとりもいません。アメリカ・フォーブス誌が発表する「The World's Billionaires(世界長者番付)」にランクインした人の中で、現金を何兆円も持っている人はいません。資産の99%は株や不動産です。ソフトバンクの孫正義社長も、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正社長も、資産の多くは株です。
本物の「お金持ち」とは、「おカネ(現金)を持っていない人」のことを言います。
「お金持ち」とは、「株持ち」のことです。
本物のお金持ちになりたかったら、現金を貯めずに、成長する会社やあるいは、不動産に投資するしかありません。お金持ちになりたいと思っているかぎり、お金持ちにはなれません。現金をつかんで離さない人は、お金持ちにはなれないのです。