漫画家支援を仕事とする私は、漫画家漫画が大好物です。そんな好物の横に、今度はとんでもない小説家漫画が始まりました。それが、本日紹介させていただく『響~小説家になる方法~』です。強烈な才能をもっていて、その才能が彼女のまわりにどんな波紋を起こしていくかを描いた漫画です。
2012年11月にハードルで活躍した為末大さんの「【人は変われるという残酷さ】について」という一連のツイートを憶えていますか?一部引用します。
陸上等の身体能力がかなり影響するスポーツは、正直なところ生まれた時に99%決まっている。クラスで一番速かったような子が陸上部に入りその中で競争し、市、県、国、そして最後は世界という順に上がっていく。そこまで行くのは誰でもというわけにはいかなくて、選ばれた人しかいけない。
— 為末 大 (@daijapan) 2012, 11月 27
このツイートには、続きがあります。全て見るのは、こちらのサイトを。
為末大:【人は変われるという残酷さ】について - NAVER まとめ
私たちも普段から、才能が人から夢を奪う「残酷さ」や、職業どころか、人生までも奪ってしまう「破壊力」を眼にしているはずなのに、「努力すれば・・・・」とキレイ事を言ってしまいがちです。でもこの作品では、本当の才能に対峙したときの人間を描こうという、作家の強い意志が、すでにそこかしこに横溢していて、すこし震えがきます。そんな漫画です。
鮎食響(あくい・ひびき)は、幼馴染の涼太郎とともに、進学したばかりの高校1年生です。ちょっと、いやかなり女子高生離れした彼女ですが、文芸部に入り、慣れない人付き合いを始めます。実は時を同じくして、彼女は文芸誌「木蓮」の新人賞に応募していたのでした。名前以外、自分の連絡先を書き忘れてはいましたが。。。
まだ見出されてない天才を見ると、人はどう反応するか。
「ここに3葉の写真があります。」というのは、私の記憶する太宰治『人間失格』の冒頭ですが、響の新人賞作品から、天才を見たときの3ポジション3様の「反応」、いえ「破壊」がそこにはありました。当然、作中の主人公らの「小説」は作中作品ですので、我々は読むことが出来ませんが、この作品から読み取るには、むしろこの人たちの表情からなのでしょう。
- 響の新人賞を受け取った、「木蓮」の編集者はこうなった。
3年目若手編集者、花井の場合
[引用:ビッグコミックス 響~小説家になる方法~ ]
ベテラン編集者、大坪の場合
[引用:ビッグコミックス 響~小説家になる方法~ ]
取りあえず、目の色が変わって、固まりますね。私は多分、ここに一番近い属性なのですが、なんとかこの作家と作品を自分の担当にしようとするでしょうね。驚愕からの焦燥とでも申しましょうか。
先日、ある西日本の専門学校で、ちょっと目の色が変わる一人の天才漫画家の卵を見つけたんですよね。あの時の気持ち、 こんな感じなんだろうなと思うのでした。あれは凄かったなぁ。
- 若い、まだ己の才能の限界を見極められてない、新人作家達は、こうなります。
ライター兼小説家、中原愛佳の場合
[引用:ビッグコミックス 響~小説家になる方法~ ]
中原愛佳 断筆
小説家兼ファーストフード店員、山岡歩々の場合
[引用:ビッグコミックス 響~小説家になる方法~ ]
山岡歩々 テンパリMAX
小説家兼OL 西ヶ谷コウの場合
[引用:ビッグコミックス 響~小説家になる方法~ ]
西ヶ谷コウ 自我崩壊
人の才能を見て折れると言うことは、ありそうでそうはありません。彼我の差を見極める力と言うのは、中途半端な新人では到達し得ないものです。己を知り、目前の壁の厚さを思い知り、もがいている存在にとって、自分の上空を無人の野を飛び抜けるように通過していく天才は、恐ろしい存在です。いや、これはもう悪夢ですよ。
一人目の中原さんはこれをきっかけに小説家を諦めて幸せな一生を送る(というキャプションが入りますw)わけですが、あとの二人には、これはもう、道でばったりぶつかった悪夢としか良いようがありません。あの中原さんの後日談、作家さんの実体験か思い入れがありそうですね。
- そして、すでに実績を残している、職業作家はこうなります。
芥川賞作家、新人賞審査員、鬼島仁の場合
[引用:小学館ビッグコミックスペリオール 響~小説家になる方法~ ]
芥川賞作家鬼島仁 諦観
「おれはもうこいつみたいに書けない。」というのが染みますね。つまり、元々は書けたのが、もう書けないということなんですよ。人生がナイトメアに包まれそうです。まぁともかく、響は次々とライバルや同業者を破壊していきます。もうこうなると、業界の救世主なのか破壊神なのかわかったものではないですが、天才なのですから仕方ありません。
作中、現在雑誌での進行では、次のターゲットはこの方のようです。
芥川賞作家、新人賞審査員、吉野桔梗の場合
次々と濃い目のキャラが出てきますが、さながらバトルマンガのように粉砕していく様は、いっそ痛快です。
天才には、とんでもない力の反面、毒もあります。
作品の力だけ見れば、良くも悪くもとんでもない大天才のような存在ですが、その彼女も現実世界とは折り合いがついてません。高校でも出版社でも、あたると触るとトラブルを起こし、涼太郎を困らせる響ですが、私の気に入った彼女の必殺技のひとつが、本棚倒しです。
小説家なんですから、本は大事にして欲しいものですが、もうひとつが、誰に習ったか、しっかり引き手を利かせているミドルキックです。
とにかく蹴って、倒します。
危ないったらありゃしませんが、彼女は別に念やチャクラが使えるわけでもなく、むしろ非力なインドア女子高生のはずなのに、このイカレタ感じをまとっています。天才の触れると切れそうになる感覚とでも言うのでしょうか。この世界にいると、確かに存在するものだと感じる何かです。
作者の柳本光晴さんは、天才の破壊的な部分を際立って描く方だと思います。興味深いのは、主人公の響に、ある発達障害に顕著に見られる傾向を多く持たせ、作中随所に描かれてることです。天才と表裏一体と言われる、あれですが、出し方がなかなか味わい深いというか、良く判ってらっしゃると思いました。
お笑い芸人が芥川賞を受賞し、明るい話題にはなりつつも、どこか真の意味で天才作家が待望される文芸界に、この華奢な破壊神がどんな爪あとを残すのか、続きが楽しみです。人を、特にクリエイターや起業家など、際立った天才とお付き合いする可能性がある方にも、あるあるとして読める面白さがあるかなと思いました。
最近のスペリオールと女子高生もの
最近のスペリオール、面白いです。
最新号には、もう一つ女子高生のもの『鈴木さんの煩悶』が読切掲載されています。こちらは、扉絵の通り悶々とするやつですが、真正面じゃないちょっと捻ったエッチがみっちりと描き込まれ、読ませました。
現在はちょうど、一部ためし読みも公開中のようです。(教えてくださった、なかせよしみさん、ありがとうございます。)
読切なのですが、オチがしっかりオチつつも第2話に繋がる形で描かれているので、是非このまま連載していただきたいと思うのでした。
-過去、私が書いた漫画家漫画のレビューです。
ヒット漫画家で漫画学校講師の漫画家が描く漫画学校もの漫画家漫画
『ラフダイヤモンドまんが学校にようこそ』
手塚治虫を殴り、原稿を投げ捨てた伝説の編集者がいた。
『ブラックジャック創作秘話』 #漫画の日
才能を探し当てる仕事、わたくしもしております。
今週末の9/20(日)には、西日本最大規模59編集部が参加するマンガ出張編集部を、京都国際マンガ・アニメフェア内で行います。まさに才能の入り口であり、経験値を積む場です。この日に京都に来れる漫画家志望者は、片っ端から参加するべきです。
【9/20(日)】マンガ出張編集部@京まふ2015開催情報 http://t.co/lw1kyICT0g 週刊6誌を筆頭に少年少女青年女性誌、話題のコミックアプリまで58編集部出展!今年も関西最大で開催です! pic.twitter.com/YMt0dZSqPa
— トキワ荘プロジェクト公式 (@tokiwasopjt) 2015, 7月 13
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