嚢頭類の化石:国内初の発見 6600万年前絶滅の甲殻類
毎日新聞 2015年09月23日 12時20分
宮城県南三陸町歌津地区で、約2億5000万年前の地層から、絶滅した甲殻類の一種「嚢頭(のうとう)類」の化石が、国内で初めて発見された。見つけた東北大総合学術博物館研究チームの永広(えひろ)昌之・東北大名誉教授(地質学)は「謎の多い嚢頭類の進化の隙間(すきま)を埋める手がかりとなる」と話している。
嚢頭類は、6600万年前の白亜紀後期に絶滅した。それ以前の3億6000万〜4億4000万年間、浅い海に生息していた。エビやカニ、ミジンコなどの仲間で、体の大部分を甲皮に覆われた構造を持ち、詳しい生態などは分かっていない。化石はこれまで北米や地中海沿岸、中国南部などで見つかっているが、国内では初めて。
見つかった嚢頭類の化石は3種類で、体長18〜46ミリ。うち1種は新たな属に含まれる新種、別の1種も新種と考えられるという。発見されたのは、歌津地区館崎の地層。東日本大震災の復旧事業の残土・資材置き場の用地で、2013年から調査を進めていた。
歌津地区には浅い海の地層がきれいに残っており、世界最古の魚竜化石「ウタツギョリュウ」など重要な化石が多く発見されている。永広名誉教授は「世界的にも貴重な学術資源が南三陸にあるということを地元の方にもぜひ知ってほしい」と話している。
論文は10月1日発行の日本古生物学会の学会誌「パレオントロジカル・リサーチ」に掲載される。嚢頭類の化石は、近く同博物館と南三陸町図書館で展示される。【井田純】