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【格闘技】

山中慎介が薄氷のV9

2015年9月23日 紙面から

10回、アンセルモ・モレノ(右)を攻める山中慎介=大田区総合体育館で(七森祐也撮影)

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◇WBC世界バンタム級タイトルマッチ

 ▽22日▽東京・大田区総合体育館▽観衆4500人

 王者山中慎介(32)=帝拳=が薄氷のV9に成功した。前WBA世界バンタム級スーパー王者アンセルモ・モレノ(30)=パナマ=の防御に、予想以上の大苦戦。勝負は判定に持ち込まれ、2−1で辛勝した。王者の口から出るのは反省ばかり。だが、この勝利で悲願の米ラスベガス進出に一歩前進。帝拳側はWBA世界バンタム級スーパー王者ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)を第1候補に交渉に入る。

 いつもの山中節はなかった。神の目を持つ男モレノの防御に苦しめられ、2−1の薄氷勝利。山中が複雑な表情でつぶやいた。

 「もう少し楽に、差を見せて勝つつもりだった。でも、力が足りなかった。悔しさと安堵(あんど)感があります」

 序盤は最強挑戦者とのレベルの高い駆け引きに、喜びすら感じる余裕があった。1回を終えて、コーナーに戻ってきたとき、セコンドに「ジャブの差し合いが楽しい」と漏らしたという。

 しかし、徐々にペースが狂ってきた。右肩を前に出し、低い姿勢で上体を柔らく動かしてパンチをよけるモレノの術中にはまっていく。よく伸びる右ジャブも頻繁に食らった。これだけパンチをもらう山中も珍しい。逆に神の左は空転していった。

 8回終了後の公開採点に、会場はどよめいた。2人がドロー、1人がモレノの2点リード。これで山中の目の色が変わる。9回、一気に攻勢に出たが、この気負いが裏目に。神の左が空を切る。そこへ、モレノの右フックがカウンターで顎にヒットする。王者がぐらついた。なんとかしのいだが、最大のピンチだった。

 10回、山中は勝負に出た。「もう、気持ちの勝負や」。なりふり構わぬ猛攻だ。左をヒットさせた後の右フックがモレノの顎をかすめ、脳を揺らした。10回、11回の猛攻がなければ負けていただろう。それができるのが、神の左を持つ男の底力だ。

 本場ラスベガス進出を熱望する山中の次なる標的は、WBA世界バンタム級スーパー王者のパヤノ。昨年、当時のスーパー王者モレノに挑戦し、負傷判定勝ちした、モレノ以上のくせ者だ。神の左が「世界のゴッド・レフト」になれるか、これからが本当の勝負だ。 

  (竹下陽二)

 

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