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平均高度4千メートルという中国西部の高原地帯チベットが、自治区成立50…
平均高度4千メートルという中国西部の高原地帯チベットが、自治区成立50年の節目を迎えた。
現地では祝賀ムードが演出されたが、習近平(シーチンピン)政権の政策は相変わらず経済成長と管理強化の組み合わせに終始している。自治の名にふさわしく、独自の民族文化を尊重する方向を明確にするべきだ。
区都ラサで今月あった記念式典で、民族政策を担う兪正声(ユイチョンション)・全国政治協商会議主席は、50年でチベットが「天地がひっくり返るような」変化を遂げたと述べた。これまでチベットの財政の95%を中央が負担し、住民の収入は毎年10%以上伸びたという。今後も成長政策に力点を置くとしている。
しかし、チベットの文化が大事にされてきたとは言いがたい。自治区内で漢族人口の比率が高まり、学校では標準中国語教育を浸透させている。
何よりも、人々にとって大事な心のよりどころであるチベット仏教の寺院や僧侶への監視を強めている点が懸念される。
宗教問題は自治区成立前からの複雑な経緯がある。1959年に起きた動乱で、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が北インドに逃れ亡命政権を樹立。以来、チベット民族の自治拡大を求めている。これに対し中央政権は、国家を分裂させるものとして非難している。
チベットではダライ・ラマの写真や動画を所持することは取り締まりの対象だ。信仰に関する事柄も政治的に解釈される。そうした弾圧への抗議で焼身自殺する僧侶が後を絶たない。
基本的な権利が保障されていない事実を見過ごすことはできない。兪主席は「信仰の自由は十分尊重されている」と語ったが、チベットの多くの人々はうなずけないだろう。
チベットやウイグルの問題からうかがえるのは「中華民族」という言葉のもとで国内を一色に塗りつぶそうとする習政権の姿勢だ。
かつて清朝はチベットを支配下に置くというよりは、その独自性を重んじる立場をとっていたと言われる。宗教や文化の多様性を尊重する包容力があってこその大国ではないか。
中国当局と亡命政権の間では一時期、対話があったが、ここ数年途絶えている。ダライ・ラマの後継者問題も先行きが不透明だ。外国メディアが自治区に入ることは制限され、チベットの声は外に伝わりにくい。
人々が心安らかに過ごせるよう各国が関心を寄せ、中国に対話の再開や現状の改善を働きかけ続けることが必要だ。
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