竹林はるか遠く-日本人少女ヨーコの戦争体験記
竹林はるか遠く-日本人少女ヨーコの戦争体験記 So Far from the Bamboo Grove |
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著者 | ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ |
訳者 | 都竹恵子 |
発行日 | |
発行元 | |
ジャンル | 自伝、戦争文学、歴史小説 |
国 | |
言語 | 英語、日本語、韓国語 |
ページ数 | 183 |
次作 | My Brother, My Sister, and I |
コード | ISBN 0-688-06110-9 ISBN 0-14-032385-6 ISBN 0-688-13115-8 ISBN 0-7807-4052-1 ISBN 978-4-89295-921-9 ISBN 89-8281-949-5 |
『竹林はるか遠く-日本人少女ヨーコの戦争体験記』 (たけばやしはるかとおく-にほんじんしょうじょヨーコのせんそうたいけんき、So Far from the Bamboo Grove) は、日系米国人作家のヨーコ・カワシマ・ワトキンズによる自伝的小説。1986年 (昭和61年) にアメリカで出版された。
作者のヨーコ自身が11歳だった第二次世界大戦の終戦時に体験した朝鮮半島北部の
日本語版は2013年 (平成25年) 7月19日に『竹林はるか遠く──日本人少女ヨーコの戦争体験記』という邦題でハート出版より発売された[1]。同年6月7日の時点で Amazon.co.jp のベストセラーになった[2]。続編の、MY BROTHER, MY SISTER, AND I は2015年に続・竹林はるか遠く-兄と姉とヨーコの戦後物語という邦題でハート出版から発売された。 大韓民国では2005年 (平成17年) に『요코 이야기 (ヨーコ物語、ヨーコの話)』として訳出されたが[3]、後に発売中止となった。
目次
著者について[編集]
本書の著者ヨーコ・カワシマ・ワトキンズは、1933年 (昭和8年) 青森で生まれた。生後六ヶ月で南満州鉄道 (満鉄) に勤務する父に連れられ、家族で朝鮮北部の羅南 (現在の北朝鮮・咸鏡北道清津市) に移住。朝鮮・咸鏡北道で11歳まで過ごす。1945年 (昭和20年) 日本の敗戦が濃厚になると、母親と姉とともに避難を開始し、
あらすじ[編集]
川嶋一家5人は朝鮮半島東北部の町・
1945年 (昭和20年) 7月29日深夜、
しかし、親切な
登場人物[編集]
川嶋 擁子 - この物語の主人公にして作者。11歳の少女。ヨーコとも記される。あだ名は「小っちゃいの」。
川嶋 好 擁子 の姉。女学生。16歳。勝気なしっかり者。頼りない母をえる。川嶋 淑世 擁子 と好 の兄。18歳。予科練を希望するも筆記試験に落ち、代わりに週6日、家から離れた兵器工場で住み込みで働く。その時にソ連軍が朝鮮半島に侵攻し、家族と別れ別れになる。川嶋 良夫 - 父親。南満州鉄道社員。ソ連軍侵攻時は家に不在で、家族と別れ別れになる。その後6年間シベリア抑留される。職業柄、一家は裕福な方で、子供たちにも書道や日本舞踊など習い事をさせることができた。出身は青森。
- 母
- ソ連軍侵攻時、
擁子 と好 を連れ、京城 を目指し、満州国境から80キロの朝鮮東北部の町・羅南[5]を脱出する。出身は青森。 松村 伍長- 負傷兵。
擁子 と好 が慰問の演劇のために訪れた軍病院で知り合う。その後、一家にソ連軍侵攻をいち早く伝え、脱出の機会を与える。日本では絹織物業を営む富裕な身分。 浅田 先生擁子 の通う京都の女子学校の担任教師。内藤 さん- 学校の用務員。吃音がある。学校での
擁子 の唯一の話し相手。貧しい擁子 に何かと手を貸す。 増田 さん- 京都の下駄工場の奥さん。京都駅で、朝鮮からの避難民として姪が戻るのを待ち続けている際、母が病死し二人きりとなった
擁子 と好 に同情して、住む場所として工場の倉庫を貸し与える。
韓国人・韓国系アメリカ人による反発[編集]
この本の記述に、終戦直後朝鮮人が日本人の女性や子供を迫害し、性的暴行を行っていたという記述が含まれることから、韓国人・韓国系アメリカ人が反発した。2007年 (平成19年) 現在ではこの本の教材使用禁止運動も行われており、活発なロビー活動が行われた。韓国領事館も米教育当局へ嘆願書を提出。これらの圧力を受けて、一部の地域では教材から取り除くなどの対応が行われている[6][7][8][9]。またこの抗議活動の過程で韓国の中央日報、作中にて父親の職業が「満洲で働く高級官僚」であり、後の本で「6年間という長期のシベリア抑留を受けていた」とされていることを根拠に、731部隊の幹部であったのではないかという疑惑があると報道している[10] (作者自身は、父親は満鉄社員であったと証言している[11][12])。また、作品の内容にも矛盾がある、などとしている[13]。
ただし韓国国内にも、(作品の後半部分は日本帰国後の苦しみを記述していることもあり) 戦争の悲惨さを訴えている作品であり、あえて朝鮮人のみを悪く言っているわけではない、という声も見られる[14]。
著者は記者会見などでこの本の内容が真実であると証言しているにもかかわらず、一部の韓国紙や韓国人団体はこの本が嘘だらけだと批判している[9]。 その理由として (1) ようこが住んでいた豆満江近くは冬マイナス30度以下の寒さで竹は存在しない、(2) 米軍が韓国を攻撃したのは韓国戦争が始まった1950年が最初[12] 、(3) 人民軍は1948年に創立された[9]、などを挙げている。
書誌情報[編集]
英語版[編集]
- Yoko Kawashima Watkins (April 1986). So Far from the Bamboo Grove. William Morrow & Co.. ISBN 0-688-06110-9.
- Yoko Kawashima Watkins (September 1987). So Far from the Bamboo Grove. Puffin. ISBN 0-14-032385-6.
- Yoko Kawashima Watkins (May 1994). So Far from the Bamboo Grove (Paperback ed.). HarperCollins. ISBN 0-688-13115-8.
- Yoko Kawashima Watkins (May 1994). So Far from the Bamboo Grove. Perfection Learning. ISBN 0-7807-4052-1.
日本語版[編集]
- ヨーコ・カワシマ・ワトキンス 著&監訳 『竹林はるか遠く──日本人少女ヨーコの戦争体験記』 都竹恵子 翻訳、ハート出版、2013年7月19日。ISBN 978-4-89295-921-9。
韓国語版[編集]
- 요코 가와시마 왓킨스 (2005-04-29) (朝鮮語). 요코 이야기. translated by 윤현주. 문학동네. ISBN 89-8281-949-5.
続編[編集]
動画[編集]
- 竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記 - YouTube - ハート出版が作成した翻訳書の内容を紹介する動画。
関連文献[編集]
- Yoko Kawashima Watkins (January 1, 1996). So Far From the Bamboo Grove: Novel-Ties Study Guide. Learning Links. p. 28. ISBN 1-56982-654-4. - 原作者による読書案内。
- MCDOUGAL LITTEL (September 9, 1996). McDougal Littell Literature Connections: Student Edition So Far from the Bamboo Grove (Paperback ed.). MCDOUGAL LITTEL. p. 192. ISBN 0-395-77138-2. - MCDOUGAL LITTELによる学生版。
- Novel Units, Inc. (March 1, 2007). So Far from the Bamboo Grove - Teacher Guide. Novel Units, Inc.. p. 32. ISBN 978-1-58130-578-4. - 学校の教材として使うときの教師への手引き。
- GLENCOE (March 3, 2000). So Far Bamboo Grove Related Readings Gr7. The Glencoe literature library (Hardcover ed.). McGraw-Hill Inc.. p. 133. ISBN 0-02-818009-7.
- BookRags (April 17, 2012). So Far from the Bamboo Grove Lesson Plans (Kindle Edition ed.). Amazon Digital Services, Inc.. ASIN B007V9X0OQ. - 教師への手引きのキンドル電子書籍版。
脚注[編集]
- ^ ワトキンス 2013
- ^ “Amazon.co.jp ベストセラー: 本 の中で最も人気のある商品です”. Archive.is (2013年6月7日). 2013年8月18日閲覧。
- ^ 왓킨 스2005
- ^ So Far from the Bamboo Grove by Yoko Kawashima Watkins BookRags (英語)
- ^ 羅南 (らなん)。現在の朝鮮民主主義人民共和国の北東部にある清津市の南部地区。日本統治時代の軍都。ラナム、ナナムとも呼ばれる。
- ^ 朝鮮日報 2007-01-18a
- ^ 朝鮮日報 2007-01-18b
- ^ Lisa Kocian (2006年11月12日). “Ban book from class, panel says” (英語). ボストン・グローブ. オリジナルの2012年10月22日時点によるアーカイブ。
- ^ a b c Park Chung-a (2007年1月23日). “US: More American schools stop textbook falsifying Korea” (英語). Korea Times. UCLA アジア研究所. オリジナルの2012年3月22日時点によるアーカイブ。
- ^ “「『ヨーコの話』の最大の過ちは被害者と加害者を入れ替えた点」” (日本語). 中央日報. (2007年2月17日) 2014年9月20日閲覧。
- ^ 産経新聞 2010-12-05
- ^ a b Park Soo-mee (Staff Writer) / Sohn Min-ho (JoongAng Ilbo) (2007年2月2日). “Controversial author stands by story of her war ordeal” (英語). 中央日報. オリジナルの2011年7月18日時点によるアーカイブ。
- ^ 聯合ニュース 2007-01-18
- ^ 中央日報 2007-01-27
参考文献[編集]
- 中宮崇 「「ヨーコの話」大騒動」『情報戦「慰安婦・南京」の真実』 オークラ出版〈OAK MOOK 150号. 撃論ムック Vol.5〉、2007年7月、146-149頁。ISBN 978-4-7755-0937-1。
- 加藤久哉 「全米で起きた『ヨーコの物語』弾圧の真相」『拉致と侵略の真実 教科書が教えない日本被害史 完全保存版』 オークラ出版〈OAK MOOK 199号. 撃論ムック Vol.9〉、2008年3月、136-137頁。ISBN 978-4-7755-1143-5。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- “戦後…博多港引き揚げ者らの体験 <1> 「ソ連が来る」息潜めた”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2006年7月20日). オリジナルの2007年3月12日時点によるアーカイブ。 2013年6月16日閲覧。
- カン・ヨンス (2007年1月18日). “波紋呼ぶ米中学教材『ヨーコの話』(上)”. 朝鮮日報 (朝鮮日報). オリジナルの2007年12月19日時点によるアーカイブ。 2011年2月20日閲覧。
- カン・ヨンス (2007年1月18日). “波紋呼ぶ米中学教材『ヨーコの話』(下)”. 朝鮮日報 (朝鮮日報). オリジナルの2007年12月19日時点によるアーカイブ。 2011年2月20日閲覧。
- “『ヨーコの話』外交通商部、昨年9月州政府に是正要求”. 朝鮮日報 (朝鮮日報). (2007年1月18日). オリジナルの2007年12月19日時点によるアーカイブ。 2011年2月20日閲覧。
- 이기창 (2007年1月18日). “'요코' 아버지 731부대 최고위 간부 의혹(朝鮮語)” (朝鮮語). 聯合ニュース (Yonhap News Agency). オリジナルの2011年7月20日時点によるアーカイブ。 2011年7月20日閲覧。
- “「韓国政府は『竹の森遠く』に介入するな」脅迫の手紙”. 中央日報 (中央日報). (2007年1月19日) 2011年2月20日閲覧。
- “「間違った『ヨーコの話』学びたくない」”. 朝鮮日報 (朝鮮日報). (2007年1月21日). オリジナルの2007年12月13日時点によるアーカイブ。 2011年2月20日閲覧。
- イ・フンボム (2007年1月24日). “<イ・フンボム記者の時視各角> ヨーコが言わんとしたこと”. 中央日報 (中央日報) 2011年2月20日閲覧。
- “『ヨーコ物語』国内販売中止”. 中央日報 (中央日報). (2007年1月25日) 2011年2月20日閲覧。
- ソン・ミノ (2007年1月27日). “『竹の森遠く』最後まで読んでみたら…”. 中央日報 (中央日報) 2011年2月20日閲覧。
- “『竹の森遠く』…米国公立中学校も教材採択中断へ”. 中央日報 (中央日報). (2007年2月3日) 2011年2月20日閲覧。
- 黒田勝弘 (2007年2月3日). “【緯度経度】ソウル・黒田勝弘 気に入らない話は“歪曲””. 産経新聞 (産経新聞社). オリジナルの2010年12月5日時点によるアーカイブ。 2013年8月18日閲覧。
- ソン・ミンホ (2007年2月3日). “「韓国人を傷つけたことは謝罪するが歪曲ではない」ヨーコカワシマ・ワトキンスさん”. 中央日報 (中央日報) 2011年2月20日閲覧。
- “『竹の森遠く』…日本が韓国に与えた苦痛にはどうして目をつぶったか”. 中央日報 (中央日報). (2007年2月3日) 2011年2月20日閲覧。
- “『竹の森遠く』著者インタビューその後…”. 中央日報 (中央日報). (2007年2月5日) 2011年2月20日閲覧。
- ソン・ホグン (2007年2月13日). “<宋虎根コラム> 「ヨーコの話」と民族主義”. 中央日報 (中央日報) 2011年2月20日閲覧。
- “米国同胞たち『竹の森遠く』著者と歴史論争”. 中央日報 (中央日報). (2007年2月14日) 2011年2月20日閲覧。
- “米カリフォルニア州、『竹の森遠く』を教材から削除”. 中央日報 (中央日報). (2008年11月7日) 2011年2月20日閲覧。
- “韓日米で議論起こした「ヨーコ物語」、韓国人監督がドキュメンタリーに”. 中央日報 (中央日報). (2009年5月8日) 2011年2月20日閲覧。