ゆとり世代(ゆとり社員)っていったい何者なのでしょうか?
この世代すべての人が世間で言われているようなどちらかと言うと理解に苦しむような個性や特徴を持っているのでしょうか?
最近大手の人材系のセミナーを2本ほど受ける機会があって、その内容が共にいわゆる「ゆとり世代(ゆとり社員)」攻略法といった趣のもので、ちょっと聞いていて違和感を持ってしまったので記事にしてみたいと思います。
最初に少し先回りして言い訳をしておくと、この記事は「ゆとり世代(ゆとり社員)」に媚びへつらい、おもねることが目的ではありません。
タイトルにもしましたが短所だけに着目した世間の風評というかラベリングが多少行き過ぎていて、そのヒートアップした偏見を冷静に整理する必要があるのはないかと思い立った次第です。
1.ゆとり世代に対する世間の風評(ラベリングの実態)
そのセミナーはひとつは人材業界最王手R社主催の「ゆとり世代の新入社員の定着」に関するもので、もうひとつはM財閥系の研修機関が主催する「ゆとり世代の新入社員の採用」に関するものでした。
確かにもうすぐ「ゆとり教育の純粋培養世代」が企業に就職するようになります。今年20歳になる人たちがいわゆる「ゆとり教育の純粋培養世代」と言われていて、小学校1年生からゆとり教育を受けてきた世代です。そう言う意味では人材会社や企業の人事担当者がゆとり世代にナーバスになるのもわからないわけではありません。
以下そのセミナーの内容を簡単にまとめておきます。
◆ゆとり世代の新入社員定着研修においては...
この世代を、強制や競争が排除され、我慢や叱責や失敗経験が減少し、「個」の尊重や機会均等が推進された世代であり、現実に対峙する力が低いとしています。
具体的な特徴としては、
- 自分と違う考えを認めない
- うまくいかないことを周囲や会社のせいにする
- なぜやらなければならないのかわからない
- 疑問を持たずに言われたことをそのまま実践する
- やったことの意味や価値に気づかない
- フラットさを好み上下関係や配慮、遠慮がなじまない
だそうです。
そこで大人たちは(私から言わせれば腫れ物に触るように)、きめ細かいフォローをしつつこの世代を職務や職務風土にマッチングさせていくべきと提唱していました。
◆ゆとり世代の新入社員採用研修においては...
ゆとり世代の長所と短所として、
【長所】
- のんびりしている
- おおらかである
- ゆったりしている
- 素直である
- 自己評価が必要以上に低くない
【短所】
- 根拠のない自信がある
- 落ち込みやすい
- 常に待ち(受け身)の姿勢
- 積極性に欠ける
- 対人関係が希薄
- 競争意欲の欠落
- 指示したことしかできない
といったものを挙げていて、これらを理解しできるだけハードルをさげた緩い採用活動を緻密に戦略をたてて行わなければ採用はうまくいかないと断言していました。
これって(特にゆとり世代の方々から見て)なんか違和感ありませんか?
この世代をその短所だけに注目して十把一絡げにこんな風にラベリングして育成も採用もすべてうまくいくものなのでしょうか?
次の項目でこのようにバイアスをもって語られる世代の時代背景を少し見てみることにします。
2.ゆとり世代とその前後世代の時代背景
世代の特徴は、その世代が育った社会的背景によって作られると言われています。
その社会的背景を背負った親の考え方がその子に対する教育に影響を与えるのかもしれません。
◆団塊ジュニア世代(1970年代生まれ)
【今年36歳以上】
- 大学受験競争が激しく、浪人するケースが一般的
- 友達同士常にライバル
- 短大生、専門学生は四大生がライバル
- 私立大学の定員割れ4%(1990年)
◆少子高齢化の少子化世代(1980~87年度生まれ)
【今年35~29歳】
- 大学に全員入学するようになり受験競争もやや緩和
- 日本の大学は入るのが難しいと言われていたのが昔話
- 一般入試6.5割、推薦入試3割、AO入試0.5割の比率
- 私立大学の定員割れ28%(2000年)
◆ゆとり教育世代(1988~96年度生まれ)
【今年28~19歳】
- いよいよゆとり教育が導入される
- 従来に比べ授業時間2割、授業内容が3割削減
- 絶対評価導入で順位付けをしなくなる
- 私立大学の定員割れ40%(2006年)
◆脱ゆとり世代(1997年度生まれ以降)
【今年18歳まで】
- 脱ゆとり期間となってからは授業時間が10%増
- ゆとり教育以前から見ると授業時間は10%減
- 絶対評価は継続(ゆとり教育以前は相対評価)
※この項目のここまではこの小冊子を参考にしてまとめました。
↓↓↓
Amazon.co.jp: 2015年度版「ゆとり世代」を理解する本: 柘植 智幸: 本
◆ゆとり世代の時代背景のまとめ
- ゆとり世代の親は新人類世代(団塊ジュニア世代より前の世代)と言われバブル期と重なり比較的派手な世代である
- 新人類世代は生活が豊かだったため「人生は楽しむべき」と考えやすい
- 少子化も進み親子の関係はより密接になり親の影響力は大
- 1990年から始まったバブル崩壊により勝ち組と負け組が鮮明になる
- リスクばかりが重くのしかかりチャンスを見出すのが極めて難しい
- インターネット、携帯電話の急速な普及で大量の情報がたやすく手に入る
3.相対評価と絶対評価
ゆとり世代になった大きく変わったことのひとつが、評価方法が相対評価から絶対評価になったということが挙げられます。
そこで相対評価と絶対評価の特徴をまとめてみました。
◆ゆとり世代より前に行われていた相対評価
(言い換えると結果主義)
- 他人と比較して能力順で評価される
- 順位が客観的に見えるので競争意識が芽生えやすい
- 評価基準が変動しやすく不平不満が生じやすい
- 組織の外においてまでも実際に優秀かどうかは担保されない
- 被評価者の数が少ないと信憑性を欠く
- 偏差値による競争で順番をつける
5段階評価で5の数、4の数があらかじめ決まっている
◆ゆとり世代の象徴たる絶対評価
(言い換えるとプロセス主義)
- 一定の目標に達したかどうかで評価される
- 頑張れば頑張っただけ評価される
- 評価基準が指導目標に照らして明確に設定されている
- 競争意識に欠け切磋琢磨することが少ない
- 評価に評価者の主観が入るので教師間、学校間で格差が出る
- 偏差値による競争がなく順番がつかない
5段階評価で各段階の数が決まっていないので全員5でも全員1でも構わない
4.ゆとり世代の特徴とされていること(私の仮説)
ここまでのまとめとして、私が感じた世間の風評(ラベリング)となっているゆとり世代の特徴(どちらかというと短所)をいくつか挙げてみます。
- チームを組ませても誰もリーダーになりたがらない
- スキルアップすることだけを重視しスキルアップにつながらないものを軽視する
- 自分で考えて決めろと指示しても何も決めることができない
- あらゆる物事に理由を求めたがる
- 先輩社員のアドバイスが聞けない
- 丸投げで何かを全面的に任されることを嫌う
でもこんな人ってどの世代でも多かれ少なかれいませんか?
ゆとり世代だけの特徴ではないのではないでしょうか?
5.ゆとり世代の逆襲(当社調べ)
こんな短所にフォーカスしたラベリングに対して、私が勤めている会社のゆとり世代にざっくばらんに反論してもらいました。
なるほどというか、なかなか鋭いものも出てきました。
その代表的なものをいくつか挙げてみます。
「チームを組ませてもリーダーが決められない」について
・自分にリーダーシップがあるといったなんとなく奢ったような発想があまりない
・責任感はあるがその責任は他人を巻き込まず個々レベルで負いたい
・チームの協調性を重視したいし他人を蹴落とすようなことをしたくない
「スキルアップすることだけを重視しスキルアップにつながらないものを軽視する」について
・会社にできるだけ依存したくないので自分のスキルで生き残っていくしかない
・時間をムダに消費するだけのような非合理的な業務を漫然とこなす意義が見いだせない
・将来に甘い期待を抱かず常にキャリア形成を意識することは悪いことではないのではないか
「自分で考えて決めろと指示しても何も決めることができない」について
・最終的に自分に決定権のないことをあれこれ考えても何か無駄なことのような気がする
・自分の考えが決して無いわけではないが間違えたり変なことをやって迷惑をかけたくない
・明確に指示されたことは最後まできっちりと確実にやり遂げる自信も責任感もある
「あらゆる物事に理由を求めたがる」について
・とにかく従えと言われても納得できないものは受け入れられないし受け入れるべきではないと思う
・説明のできない指示やルールは非生産的で物事が何ひとつ改善されない
・無駄なことや曖昧なことや適当なことがどうしても我慢できない
「先輩社員のアドバイスが聞けない」について
・的を射たことの言えない尊敬できない先輩の真似をしても成長できるとは思えない
・自らを律し経験をしっかり積んだ先輩の言葉であればいくらでも耳を傾けて聞きたいと思う
・先輩社員達のように上司から間違った指摘をされても笑ってその場だけの感謝の意など表すことができない
「丸投げで何かを全面的に任されることを嫌う」について
・仕事を任されるのは全然嫌じゃないが単なる押し付けに対してはやる気が出ない
・仕事を任せられるに至った背景や求められている成果を先によくわからせて欲しい
・大雑把に仕事を振ってくるのは自分の責任を放棄しているかやるのが面倒臭いのかどちらかのような気がして仕方ない
こんな感じでした。
たしかにゆとり世代的なのかなあと感じる点もなくはないですが、このような考えは絶対に多かれ少なかれどの世代の誰しもが抱いているもののような気がするのもまた事実です。
そこでゆとり世代の特徴と言われているものを視点を変えて「強み」と捉えるとどうなるのか考えてみることで、もう少しこの世代に踏み込んでみることにします。
6.ゆとり世代の特徴を「強み」と捉えてみる
冒頭で取り上げたセミナーではゆとり世代の長所は、
- のんびりしている
- おおらかである
- ゆったりしている
- 素直である
- 自己評価が必要以上に低くない
とありましたが、私なりに前段のゆとり世代の逆襲(反論)を踏まえてこの世代なりの「強み」を凝縮して言い表すとしたら以下の4つになります。
- 真面目
- 優しい
- 合理的
- 情報処理能力高い
真面目
- やるべきことは徹夜してでもやり遂げようとし「適当に」とか「いい加減に」とかができない
- やることもやらないで自己主張だけをしたりすることはない
- 自分のことを認めてもらうために努力し認められればさらにモチベーションを上げていける
- 言われたことをひたむきに、忠実に、正確にやることができる
- とにかく純粋で上の世代が忘れつつあるかっこいい「青臭さ」をもっている
優しい
- チームの相互扶助的な面をとにかく重視する
- お互い手を差し伸べ支えあうことを自然に臆することなくできてしまう
- 裏表があることを嫌うのでゴマすりもできない代わりに陰口もあまり叩かない
- 比較的穏やかな環境で育ってきているため敵をあまりつくらない
- 競争することよりも融和を大切にする優しい価値観を持っている
合理的
- 根拠のない妥当性のない無駄なことはやりたがらないため仕事も早い
- やるべき事の目的や意味がわかるとどんなことがあってもゴールまで辿り着こうとする
- 今あることを疑い否定し一旦壊して再構築するといった改善する能力がある
- 物事を冷静に見ることができ芯がしっかりしていて明白なものであれば決してブレない
- 成功の可能性の少ない無謀なチャレンジを勢いだけで無鉄砲に敢行しない
情報処理能力高い
- 物事には様々な見方や意見があるのが当たり前のことであることを熟知している
- 情報を整理し、組み合せ、活用することに長けている
- 知識量が前の世代の同年齢のそれより明らかに多い
- 複雑な時代を生き抜いてきているので知的レベルがきわめて高い
- 興味のあることはどこまでも深く探求できる好奇心を持てる
こうやってまとめること自体がある意味十把一絡げにこの世代の特徴を決めつけているとも言えなくはないですが(それはそれとして棚に上げておいて)、この世代はこの世代なりにこんなに素晴らしい「強み」を持っているのです。
いかがですか?
改めて見るととても魅力的な世代ですよね。
私は正直言うとこの世代に対してある種の憧れを持っています。
なぜなら私の持っていないものをたくさん持っているからです。
だからこそリスペクトしているのです。
もう一度この世代の「強み」を見返してみると...
- 真面目
- 優しい
- 合理的
- 情報処理能力高い
今の大人の世代はこのような「強み」を持っているでしょうか。
是非この機会に自分を振り返ってみてください
どちらかと言うと、今の大人たちは、
- 傲慢で自分さえ楽できれば喜ぶ
- 人に厳しいくせに自分に優しい
- 権威に弱く古き慣習やしがらみに流されやすい
- 情報を得る方法すらよくわかっていない
多かれ少なかれこんな感じではないですか?
もういい加減自分に無いものに嫉妬するあまり、この世代の短所(欠点・弱み)だけにフォーカスしてラベリングするのやめませんか?という私の何の説得力もない仮説というか弱い主張でした。
このイマイチまとまりがついていないまとめが「ゆとり世代を理解できない」とか、「ゆとり世代は使いづらい」とか、「ゆとり世代とは付き合いにくい」とか、「ゆとり世代は何を考えているかわからない」と
常日頃から何となく根拠なく話している大人の方々
の参考に少しでもなれば幸甚です。
だってここまでこの世代を育て、また今後も育てていかなければならないのは我々大人なのですから。
またこれからの時代を間違いなく担い、我々大人を否が応でも養っていかなければならないのは紛れもなくこの世代なのですから。
★最後にゆとり世代のみなさんに一言!
世間の風潮に反論するのが面倒臭いからといってゆとり世代のネガティブなロールを演じるのだけ止めてくださいね、お願いします。
あともう一点、「こうやってまとめられることこそがムカつくんだよ」とゆとり世代のみなさんの逆鱗に触れることがないことを願ってこの記事を締めくくりたいと思います。
そして「ゆとり世代」という呼び名のイメージが変化していくことを願って...
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
★新入社員の傾向★
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