もうアメコミヒーローものはいいだろう、とダメもとで全米興収初登場1位「アントマン」を見てきた。2週後の9月19日日本公開だからだ。
クモ男、コウモリ男、今度はアリ男である。もうそろそろネタも尽きて大失敗だろうとタカをくくっていた。
見終わってタメイキをついた。ハリウッドはすごい。こんな思いつきをきっちりと世界中が感動できるように良質のエンタメに仕上げ切っている。とくに脚本の詰め方に際限なくカネをつぎ込んでいるのがわかる。日本のいちばん弱い点だ。
2009年にディズニーがマーベル・コミック(NY)を買収(40億ドル)したことは、やはり想像以上に大きな出来事だった。無数のかわいいキャラを持つディズニーに、マーベルのアメコミヒーローが加わったのだ(買収以前に他社が映画化していたシリーズはそのまま。ソニーピクチャーズの「スパイダーマン」。フォックスの「X-MEN」「ファンタスティック・フォー」など)。
TPPの重点項目として知財部門があり、ネットではコミケなど二次使用に関する著作権法の非親告罪化がクローズアップされているが、米国の狙いは一部で囁かれているように、圧倒的な王道作戦は、「ミッキーマウスの著作権引き延ばし」である。
ミッキーとは何か。今や世界中の育児場面において、スマホ、タブレット、PCで幼児はディズニーのミッキーマウスシリーズ、くまのプーさん、ダンボ、などのDVD作品を視聴させられている。泣き止み、オトナが自分の時間を束の間、持てるからだ。
この地球規模、人口46億人規模の、幼児期の刷り込み効果は大きい。子供たちは皆、ディズニーのファンになり、将来ディズニーランドへ行きたくなるだろう。
そしてウォルト・ディズニーの哲学通り、オトナも鑑賞に耐え得るコンテンツの質を保ち続けている。短編実写映画「ペリ」アニメ「バンビ」以来、愛、感動、涙、勇気、自然の掟、社会の不条理、哲学、ハッピーエンド…ファミリー層を丸ごと、万人受けするマーケティングが出来ているのだ。すべての作品でヒロインがフェロモンをあまり出さない(お母さんにも好印象)のも徹底している。「アントマン」のエヴァンジェリン・リリーも滋味深い存在だ。
ディズニーが以前にも増して、ますます著作権にこだわるのはマーベル以外にもキャラクターが増えたからだ。2006年ピクサー(74億ドル)、2012年ルーカスフィルム買収(40億ドル)。なんと驚くべきことだが、トイ・ストーリーもファインディング・ニモもインサイド・ヘッドも、スターウオーズ全キャラクターも、今や全部ディズニーのラインナップだ。
お姫様キャラ一つとっても元々のディズニーのアナ雪、シンデレラ、白雪姫、オーロラ姫と独占状態。最近は中国・インド・ASEAN計30億人市場を意識して、もはやコカ・コーラ並みの多国籍企業だ。
さて、2023年説の高かったミッキーの新しい著作権切れ時期はいつになるのか。
過去様々な議論がなされ、著作者の死後70年説、法人著作制作後120年説など入り乱れたが、TPP交渉の席では、(当然のように)最長説が採用されることは目に見えている。
今年12月18日公開「スターウオーズ/フォースの覚醒」の新キャラクターの著作権切れはいつになるのだろう?
96年以来のスタジオジブリとの提携関係もこうなると邪推したくなる。(細田守を3回取り逃がし、後継者不在のままだと)近い将来、トトロがディズニー傘下に収まらないと誰が断言出来るだろう。
元原稿。編集前の赤裸々な裏話