俺は後悔している。あんな笑顔を公開してしまったことを。
一応、これダジャレだからね。後悔と公開をかけているからね!念のため。
笑えない?そうなんだよ。俺も笑えないんだよ。あまりに消したい過去だったんで書くのを忘れていたんだけど、以前俺が「会社の顔に選ばれた」で書いた会社PR用ビデオの続きなんだ。
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あのビデオ、会社PR用のビデオではなく、ロゴマークが新しく変わったということで作成したビデオだったのだ。そしてこの前、ロゴマークのお披露目ということで、取引先を呼んで大々的なお披露目パーティーが開かれたんだ。
パーティー開始時間になると、いきなり会場が暗くなって、スクリーンに会社の歴史が次々流れる。そして、脈絡なく俺の笑顔が出て、その後で4人の女性の笑顔が流れてロゴマークの登場!司会によるロゴマークの発表と解説が始まった。
自分がビデオに出ていると分かってはいたが、貸し切った一流ホテルの会場スクリーンに大画面で映し出された自分の笑顔には驚かされた。それも、その笑顔がさわやかじゃない。いやらしい笑顔なんだよ。自分で見て思うんだから間違いない。あの笑顔は相当スケベだね。実際、俺はスケベだけどね。それにしても、あの笑顔はあり得ない。ニコニコじゃなくゲヘヘって感じ。キモい。自分で言うのもなんだが、あの笑顔はキモい。
俺は恥ずかしくて同僚に声をかけられないように会場をウロウロしていた。すると、部長に見つかってしまった。
部長「明恵くん。ビックリしたよ。ビデオに出ていたんだね?」
俺「恥ずかしいです。まさかあんな笑顔で写っていたとは…。さわやかじゃない。なんかエロい顔でした。」
部長「そうかい?私はいい笑顔だと思ったよ!すごく幸せそうで。あんな笑顔はなかなか見れないんじゃないかな?」
幸せそうに見えたらしい。
そりゃそうだ。あの時、俺は超幸せだったよ!
社内でもかわいくて有名な女性4人に囲まれて、男性で唯一選ばれたんだ。これほど名誉なことはない。それに、なにより、撮影中、向かいの4人は笑顔で俺を応援してくれたんだよ。「明恵さん、笑って!硬いよ(笑)!」ってね。
俺には女性に一度は言われたい言葉があって、その一つに「硬い」がある。どういうシチュエーションで言われたい言葉なのかは察してくれ。思い描いていたシチュエーションこそ違ったが、かわいい女の子に言われればとてもうれしい。だから、俺の頭の中はピンク色に染まってしまい、ニヤケ顔になってしまった。
俺「僕の顔、思っていたより太っていました。こんなことなら、もっと痩せておくべきでした。」
部長「そう?よかったと思うよ。」
俺「あのビデオを使うことは、しばらくないですよね?」
部長「そうだね。しばらくは使わないだろうね。でも、一生、会社に残るよ。忘年会とか新年会とか何かあるたびに使われるよ!ほしいなら、DVDに焼いてもらえるんじゃない?」
俺「いや、いいです。あれ、残るんですよね…。」
終わったと思ったよ。絶対、次の日、同じ部署だけでなく会社中で話題になる。恥ずかしすぎる。まさに公開処刑だ!
ところが、次の日、誰も俺に触れなかった。それだけでなく、他の女性4人についても話題にならなかった。他部署の人が触れなくても、同じ部署の人は騒ぐだろうと思っていたが、まったくの無反応。その理由は昼過ぎに分かった。
モナちゃん「ねえ、そういえば、ロゴマークのビデオってどんなのだったの?」
姉御「分からない。私も見ていないから。受付の裏で手伝っていたし。」
大野さん「ああ、私も気になっていたんだよね。」
サキさん「部長、受付係はビデオを見れなかったのですが公開されないのですか?」
部長「そうだね。後でDVDに焼いてもらって回覧しようか?」
まじで、みんな見ていなかったの?確かに俺の部署、女性が多いということで、みんな受付係やっていたわ。俺もギリギリまで取引先の案内していたし。だから、俺の部署は話題にしなかったんだね。よかったわ。あんな恥ずかしい笑顔みられたくないから。
ただ、それなら、会場でビデオを見ていた他の部署の人は何で俺を茶化さないの?他の女性4人についても触れないの?
今、考えれば嫉妬だと思う。
あのビデオについて触れることをみんな避けているのだと思う。女性4人がかわいいということはみんな知っている。ただ、他の女性たちはそれをはっきり認めたくないのだと思う。選ばればれなかった人はおもしろくないよね。
同じく、俺についても同じなんだと思う。他の男性社員を差し置いて俺が会社の顔に選ばれたということは、おもしろくないのだろう。俺が次期社長だという噂をモナちゃんが会社中で流していた中で、全社員と長年の取引先の前で俺の顔をお披露目。あの噂は本当だったんだなということになる。実際、今まで、俺のお願いを聞いてくれなかった他部署の部長、課長も先週ぐらいから俺の意見を聞くようになった。
おかげで社内改革もやりやすくなった。社長、副社長は俺を認めてくれないが、役員である俺の師匠は大喜びだ。たぶん、あの日、会場で、師匠は取引先の元社長・現顧問として呼ばれていた俺の父の向かいに座っていたので、さぞかし自慢しただろう。俺の父に「あなたの息子さんは俺が一人前に育てましたよ!」と。俺の師匠は俺と同じ性格なので自慢が大好きだから。普通は父が師匠に「俺の息子はすごいだろ?」と言うのが普通だが、俺の父は俺を認めていないので、相当気分が悪かっただろう。俺と師匠の大勝利だ!
それにしても、あの顔だけはなんとかしたかった。あの顔を見て好きになる女性はモナちゃんぐらいだ。普通はドン引きだな。あの顔。
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