空前のイカブームを起こしているスプラトゥーン。みなさん、楽しく世界を塗り替えているでしょうか?今回は、ゲームを遊ぶ側ではなくゲームを作る側の立場に立って、スプラトゥーンのイカしたゲームデザインについて書いてみたいと思います。スプラトゥーンはなぜ飽きないのか?スプラトゥーンで遊んでいる人、ゲームを作っている人、イカしてるものなら何でも好きという人向けです。
与えることは最高の喜びだ。他人に喜びを運ぶ人は、自分自身の喜びと満足を得る。
– ウォルト・ディズニー(アニメーター・プロデューサー・映画監督・実業家、1901-1966)
目次
- ガチマッチはなぜ選択式にしないのか
- フェスはなぜあるのか
- ブキ、アイテム、ステージはなぜたくさんあるのか
- ブキ、アイテム、ステージはなぜ増えていくのか
- 音楽はなぜキャッチーなのか
- ウデマエはなぜあるのか
- なぜフレンドとのチーム戦にしたのか
- それでも飽きてしまったらどうするか
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『スプラトゥーンの飽きさせないゲームデザイン』を8つに分解
1. ガチマッチはなぜ選択式にしないのか
ガチマッチはガチエリア、ガチヤグラ、ガチホコバトルと3つのルールが存在します。しかし、こちらで選択することはできません。ナワバリバトルとガチマッチは選択できるのに、なぜガチマッチのルールは選択させてくれないのでしょうか?
あ、これから書く8つのことはすべて筆者の推測の域を超えませんので、あしからず。
このデザインのねらいは、一極集中を避けて「飽きさせない」ことです。ガチバトル、ガチヤグラ、ガチホコバトルのどれかにプレイヤーが一極集中した場合、その他のルールに対戦相手がいなくなる問題が発生します。対戦相手がいないネットワーク対戦ゲームで遊びたいと思うでしょうか? 筆者は思いません。この問題を回避するために、ルールを選択できないようになっているんですね。
些細なことですが、非常によく考えられています。
2. フェスはなぜあるのか
定期的に開催されるフェス。お祭りっぽくて楽しいですね。では、フェスはなぜあるのでしょうか?何のためにフェスは作られたのでしょうか?
実はこれも飽きさせないデザインの一つです。「フェスだから久しぶりにちょっとスプラトゥーンやろうかな」という気になったことがある人は少なくないのではないでしょうか。一度離れたプレイヤーが戻ってくるきっかけを作る。そうしたねらいがあるように思います。
例えるなら、結婚して家を出て行った娘が帰って来やすくするために、お正月やお盆などのイベントがあるようなものです。正月や盆がなければ、子どもが帰ってくる確率はいまよりも明らかに小さくなると思いませんか?それくらいフェスは重要なのです。
ただ、フェスには、まだデザインしきれていないところがあります。その点を解決しないと、フェスが上手く機能してくれなくなるでしょう。つまり、一度離れたプレイヤーが戻ってくるきっかけにならないということです。それは何なのか?どうすればもっと良くなるのか?その点については、長くなるので、後日、別記事にまとめます。
その足りない部分を差し引いてもやはり、ここまで「お祭り」を感じられるのは、すばらしいデザインですね。ここまで、キツネとタヌキを上手に使えたのは、赤いきつねと緑のたぬき以来ではないでしょうか?かなりイカしてます。
3. ブキ、アイテム、ステージはなぜたくさんあるのか
ブキはなぜ一つじゃないのでしょうか?アイテム、ステージはなぜたくさんあるのでしょう?一見、当たり前に感じることを改めて考えることで、優れたデザインの技を盗めます。ちょっと考えてみましょう。
ブキだけ、アイテムだけに注目すると、それぞれ1日ですべて試せないくらいの数あります。それに比べるとステージは少し少ないですが、それでも十分なほどあります。
・デカライン高架下
・ハコフグ倉庫
・シオノメ油田
・アロワナモール
・Bバスパーク
・ホッケふ頭
・モズク農園
・ネギトロ炭鉱
・タチウオパーキング
・モンガラキャンプ場
・ヒラメが丘団地
・マサバ海峡大橋
9/22現在で、12個ですね。
次に、ブキ、アイテム、ステージで得られる組み合わせの数に注目してみましょう。すると、概算ですが、数千通りは確実にあることがわかります。考えられる組み合わせの数が非常に多い、ということです。これに何の意味があるのでしょうか?
考えられる組み合わせの数が多く、操作が自由なゲームは自然と戦略性が出る傾向にあります。ここで冒頭の問いに一つ答えが出せました。「戦略性を出すため」です。
では、考えられる組み合わせの数が多い=戦略性があると何がいいのでしょうか? 攻略が動的になり、強い・弱いの境目が固定化しにくくなります。つまり、プレイヤーが勝ち続けることが難しくなります。では、プレイヤーが勝ち続けるのが難しいと何がいいのでしょう? プレイヤーは勝ちたいと思ってあの手この手を考えるようになります。(最近ではゾンビ化なんて作戦もあるようです!)
そのうちに、だんだんと「相手を倒すこと」よりも、「あれこれ考えて試すこと」の方が楽しくなってくる。すなわち、ここでも「飽きさせない」んですね。
4. ブキ、アイテム、ステージはなぜ増えていくのか
3に関連していますが、すでにかなりの数用意されているブキ、アイテム、ステージはアップデートによってどんどん増えていきます。では、なぜ増えていくのでしょう?なぜ増やす必要があるのでしょうか?
結論から言うと、これも飽きさせないためです。3で述べたように、スプラトゥーンは戦略性のゲームであるからこそ、組み合わせを増やしていくことが重要です。それが仮に1つだけだったとしても、増えることに大きな意味があります。
どういうことかと言うと、アップデートする内容はブキ1個でも、組み合わせの数は大きく増えます。組み合わせの数が大きく増えると(プレイヤーがそのように感じると)、ゲームの面白さは十分満足するほど跳ね上がるのです。世界最高の投資家のウォーレン・バフェットが複利でお金を増やしていくように、複利でゲームの面白さを増やしていく。
この堅実に価値を増やしていく姿勢は実に美しいですね。
5. 音楽はなぜキャッチーなのか
みなさんはスプラトゥーンの音楽についてどう思いますか?筆者は非常にキャッチーでクールだという印象を持っています。スプラトゥーンの音楽はとにかく耳に残ります。急遽CDが発売されるくらいなので、スプラトゥーンの音楽が好き、という人は多いのではないかと思います。
では、なぜここまでキャッチーにしているでしょうか?スプラトゥーンの音楽は、音楽がスプラトゥーンを形作っているといっても過言ではないくらい、音楽が目立っています。なぜここまで音楽を目立たせているのでしょうか?(ここまですばらしくキャッチーな音楽をどうやって作ったのかという疑問については「まったくわからない」ので、作った人のインタビューなどを読んでください)
まったくの推測ですが、スプラトゥーンをやっている人の10%くらいは、無意識のうちに音楽を聴くためにやっているのではないでしょうか? 10%のプレイヤーはスプラトゥーンの音楽で気分転換するために、スプラトゥーンを起動するのではないでしょうか? 音楽を楽しむだけのためにスプラトゥーンをやっている人も、立派なスプラトゥーンのプレイヤーです。対戦相手とのマッチングの観点上、プレイヤーがいないという状況は避けたい。プレイヤーがいるようにするために、「音楽」は問題解決に一躍買っているんですね。こうした楽しみ方を複数用意するというデザインも、飽きさせないためには重要です。
ゲームの楽しみ方は、プレイに限らない。リスンでもいいのです。
6. ウデマエはなぜあるのか
なぜランクがあるのに、ウデマエが必要なのでしょうか?ウデマエはなぜあるのでしょうか?
それは、「初心者は初心者と、上級者は上級者と遊んでもらうため」です。同じくらいのウデマエであれば、バトルも歯ごたえがあって面白く感じますが、実力差があるといつも同じ結果になるのでつまらないですね。(弱い者いじめがどうしようもなく面白いという人もいるとは思いますが、健全ではないですね)ウデマエがあることで、歯ごたえを出すことができます。
また、ウデマエはもう一つ問題を解決しています。「ゲームが得意な人がやりこむための要素がない」という問題です。ウデマエがあることで、ゲームを極めるための指標が可視化されるので、いまの自分の実力がわかるようになります。ゲームが得意な人はやりこめなければ、すぐに別のゲームに行きます。ゲームが得意な人を飽きさせないためにも、このデザインは機能しているんですね。うーん、実に惚れ惚れするゲームデザインです。
では逆に、なぜウデマエの他にランクが必要なのでしょうか? これについては、別記事で考察します。
7. なぜフレンドとのチーム戦にしたのか
スプラトゥーンは基本的に一人用のゲームです。据置機にも関わらず、一回にネットワーク対戦できるのは1人までです。(マリオカートやWii Sportsなど他の多くのゲームでは2人までできるような仕様になっているので、これはちょっと残念ですね)
ということで、チームを組むのは、フレンドということになります。では、フレンドとのチーム戦なのでしょうか?
結論から言うと、これは「フレンドを作る面白さで飽きさせないため」ではないかと見ています。一つの考え方としては、SNSで知り合いくらいのあまりよく知らない人とでも瞬間的に仲間になって戦う面白さを体験できるようにすることで、プレイヤーはもっといろんな人とフレンドになりたいと思うようになります。この場合、スプラトゥーンはコミュニケーションのためのコンテンツという立ち位置です。例えるなら、友だち同士で映画や遊園地に行くような感じでしょうか。一種のコミュニケーションツール化することで、飽きさせないんですね。
また、このデザインにはもう一つメリットがあります。それはゲームが広まりやすくなるという点です。家族や友人とその場で一緒にできない分、ソフトを介して人のネットワークが形成されていくので、ゲームが広まりやすくなります。いまは昔と違って、TwitterやLINEなどで気軽にいろんな人と連絡を取れるので、さらに都合がいい。
「17時に公園で待ち合わせ」というように、「17時にスプラトゥーンで待ち合わせ」みたいなことができるんですね。そのやりとりを見ている他人(友人)は自分も仲間に入れて欲しいと思うはずなので、やりとりが強力な宣伝になります。もしそこまで考えて作ったのであれば、すごいですね。ゲームの面白さだけでなく、ちゃんと売り上げも作ろうということなので。プロデューサーの野上さんはさすがです。さすがどうぶつの森を一大タイトルに育て上げただけあるなと思います。(何の話かわからなくなってきたので、ここらでやめます)
8. それでも飽きてしまったらどうするか
それでもプレイヤーが飽きてしまったらどうしたらいいでしょうか?指をくわえて地団駄を踏むしかないのでしょうか?
「陸上競技が100m走や走り幅跳びなどいろいろな競技に分かれているのはなぜか?」を考えたことがある人なら、陸上はたくさんの「ルール」によって生かされていることに気付くはずです。そして、スプラトゥーンもその仕組みを採用しています。勘のいい人はもう気付いたかもしれません。「1. ガチマッチはなぜ選択式にしないのか」一行目に書きました。それがスプラトゥーンで用意している「プレイヤーが飽きてしまったらどうするか」の準備です。何て書いてあったのか思い出せない人はもう一度読んできてください。
・・・(30秒待ちます)・・・
つまり、単純にルールを追加していけば、飽きられても挽回できるのです。
いままでの7つのゲームデザインとこのゲームデザインは種類が違います。いままでのゲームデザインは「飽きさせない」ためのものですが、これは「飽きられても挽回する」ゲームデザインです。飽きられないゲームデザインをいくら施しても、やっぱりいつかは飽きられます。特にネットワーク対戦は諸刃の剣で、対戦相手とのマッチングがすぐに行われなければ、プレイヤーは愛想を尽かして一気にいなくなります。それは何としても避けたいですよね。
基本のナワバリバトルの他に、ルールによって数種類のゲームを用意しておく。そのゲームも増やせるようにしておく。この仕組みを仕込んでおいたところに、スプラトゥーンのゲームデザインのすごさを感じます。
スプラトゥーンには、「問題をイカにしてとくか」ということを徹底的に考え抜いた思考の痕跡がゲームデザインとして随所に感じられます。本当によく考えられていて、デンキナマズに触れたときくらいシビれます。ほんとに、イカしてるゲームなので、まだやっタコとがない人は一度やってみてはイカがでしょうか。
ということで、イカ、よろしくーーー!
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