VWがアメリカで行った排気ガス規制偽装の詳細
国沢光宏 | 自動車評論家
VWがアメリカで排気ガス規制の不正を行っていたというニュース、詳細な内容は報道されていないためアウトラインを紹介しておきたい。ディーゼルの排気ガス中に存在する成分で「対策が難しい」とされるのは『PM』(例えば黒煙)と呼ばれる微粒子と『NOx』なる窒素酸化物である。PMがスモッグの原因で、NOxは光化学スモッグをもたらす。
ディーゼルエンジンはこの2つの排出を減らすことが技術的に難しい。簡単に説明すると、PMはフィルターで集塵し、ある程度溜まったら燃焼して燃やす。NOxは尿素水を吹いて還元するか、NOx触媒という極めて技術的に難しい特殊な触媒を使って還元するかの二択となる。技術に自信の無いメーカーは尿素水を使う。
日本で走っている大型トラックは尿素水を使うし、ベンツやトヨタなどもSUV用のNOx対策に尿素水を使用する。そんな中、VWは技術的に難しい触媒を使ったタイプを開発し、アメリカ市場で販売した。これが上手く機能していなかったようだ。政府の試験を受ける時だけNOxを出さないようなプログラムに切り替えるという。
アメリカでの報道によればNOxを最大基準値の40倍出すらしい。カルフォルニア州のNOx規制値は極めて厳しく、40倍と言っても日本の一世代前の排気ガス規制と同じくらい。NOxは臭いもせず、PMとも関係無いため、大気汚染に与える影響という意味だと大きくないと考える。実害はないけれど「偽装」という行為がアウトだ。
ちなみにVWジャパンはこの件、ほとんど情報を持っていない。VWジャパンは日本でVWを販売するディーラーであり、しかも日本でディーゼルを販売しておらず。間もなく日本でもディーゼルを導入する予定ながら、アメリカ仕様でなくヨーロッパ仕様がベースになるため、物理的な影響はほとんど無いと考えてよかろう。
ただVWが失った信頼は少なくない。さらに詳細分かったらレポートします。