読者のメールへのお返事 - 法案成立後の戦争の動きについての予想
沖縄にお住まいの若い母親の方から、以下のようなメールを9月14日に頂戴していた。お返事をここに書きたいと思う。若い方なのに、とても丁寧な文面だったので驚かされた。「(1)万が一法案が成立した場合、即座に(今年中に)軍事的な大きな動きがあるとお考えですか? (2)またその場合、沖縄県においても早い時期に影響があると予想されますか? 以上、上記二点についてお考えをお聞かせ頂けたらと思います。個人的な事で恐縮ではありますが、(略)小さな子ども達には無事でいて欲しいという思いから、たてられる対策は立てておきたいのです」。早速、ご質問の中身からお答えします。即座に、今年中に軍事的な大きな動きがあるとは思っていません。でも、来年には動きがあるのではないかと感じています。もう何度も申し上げてきたことで、新しい情報や指摘でなくて恐縮ですが、米国の方は、新ガイドラインと安保法制の運用について具体的な戦場を指定し、日本の自衛隊にこういう活動をやてくれと注文を出しています。昨年12月の報ステの報道で、米国のシンクタンクで東アジアの安全保障政策を考案しているキーマンが登場し、二つの戦場を指定しました。民主党系のシンクタンクの男は、米軍がイスラム国を掃討した後のイラクPKOを頼むと言い、共和党系のシンクタンクの男は、自衛隊の任務は南シナ海で中国軍を相手にコンバットすることだと言いました。
今年4月から5月にかけて、米軍とイラク軍はモスル奪還作戦を敢行しましたが、奏功せず、イスラム国は依然として版図と勢力を維持したまま、西の、アサド政権が弱体化したシリア方面で跳梁と蚕食を活発にさせています。どこかの時点で、米国は本格的な軍事攻撃に出るはずで、軍産複合体のハングリーなニーズに応えようとし、また中東での威信回復の機を狙っていることでしょう。日本の安保法制の動向は世界的に重大な関心事なのだと、アルジャジーラの記者が言っていましたが、私は、米国(米軍)は、日本の安保法制の整備を中東での対イスラム国戦争の発動の必要条件に据えているように思われてなりません。後方支援と呼ばれる兵站補給だけでなく、最も重要なのは、イスラム国を軍事的に一掃し制圧した後の、占領地をどう平穏に管理運営するかであり、二度と「イラク戦争の泥沼」の失敗を繰り返さないようにするかということです。米国は懲りており、すなわち、派手なドンパチの戦争は短期でやってもいいけれど、住民に紛れこんだ抵抗勢力を根絶する長期の治安維持活動は絶対に避けたい方針なのでしょう。となると、米軍に代わって治安維持活動(PKO)を引き受ける軍隊が必要で、よろこんで手を挙げてくれるのは日本だけなのです。米国だけでなくEU諸国が今回の安保法制を歓迎している理由はそこにあります。
が、もっと重大なのは、共和党系が期待する南シナ海での自衛隊の作戦で、この交戦(コンバット)の相手となる敵国は中国です。そして、この軍事の動きこそ沖縄に直接関わってくる深刻な問題です。私は、3年前の2012年の秋の尖閣国有化と反日デモのときから、ずっと日中戦争が勃発する危機のことを記事に書き、具体的なシミュレーションを考えるということをやってきました。3年前も南シナ海の問題はありましたが、今は当時より紛争勃発の可能性が高まっていて、そこに日本が介入して当事者となる可能性が確実な情勢になってきました。3年前に私が言っていたことは、日本が国連非常任理事国の席を持つ2016年からが、日本が中国に戦争を仕掛ける可能性が高い時期だとうことでした。南シナ海のクリティカルな海域で、トンキン湾事件とか柳条湖事件や盧溝橋事件のような謀略をやり、中国軍が先制攻撃してきたという「事実」を捏造し、虚偽の「被害」を言い立てて「正当防衛」を言い張り、イラク戦争のときの米国のパウエルのように、捏造工作した写真を国連安保理で振りかざして、これが証拠だと言って世界を欺く手法と進行です。2016年がフォーカスポイントとなると考えたのは、この年(来年ですが)に参院選があり、安倍晋三は衆院選とダブル選挙にして、憲法改正を問う選挙にするだろうと予想したからで、先に戦争を始めてナショナリズムを煽り、返す刀で改憲の民意を得る作戦に出るだろうと考えたからでした。
そうした予想を立ててから3年が過ぎました。予想外なことに、衆院選は2014年に一回入りましたが、私は今でも、2015年の参院選は衆院選とダブルにして改憲の是非を問うつもりではないか、その選挙の前に南シナ海で軍事衝突を起こし、中国との間で交戦状態に入るのではないかと考えています。こういうことを書くと、左翼リベラルは必ず反論を言い出し、寺島実郎などが典型的ですが、米国と中国とは大きな方向性で手を握って協調関係にあり、戦争など全く想定もしておらず、右傾化した日本だけがヒステリックに中国脅威論と中国との戦争の危機を騒いでいるのだと窘めに出てきます。しかし、最近は寺島実郎的な主張の説得力は言論界でかなり後退し、中国の軍事的脅威に対する国民の危機感がますます広く共有されてきたというのが、この3年間の変化と言えるでしょう。米国は、口ではあまりあからさまには言わないけれど、明らかに中国封じ込めを国策としています。中国を仮想敵とし、その経済的軍事的影響力が周辺に拡大しないよう、米国と肩を並べる大国に成長しないよう、追いつき追い越す事態にならないよう、あらゆる方策で中国を潰す思惑を持っていることは否定できません。先日、共産党が暴露した統幕の内部資料では、河野 克俊と対談したオディエルノ陸軍参謀長が、「中国に対しては外交、軍事等あらゆる手段を用い対応することが重要」と言い、軍事的手段を排除していないことが明らかになりました。
自衛隊には中国軍と南シナ海でコンバットしてもらうと、そうテレビ(テレ朝)のインタビューで平然と言いのけたマイケル・オースリンは、アメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長の要職にある男で、WSJのコラムにも記事を書いていて、米国の対日政策にきわめて重要な影響力を持つ立場の男です。米国は、TPPで東南アジアを自己のブロック経済に包摂して、中国を排除して孤立化させると同時に、軍事の面でアジア・パシフィックにNATO的な反中同盟を構築し、中国軍が西(太平洋)に出ず、南(インド用)に出ないよう封じ込めようとしています。例えば、ウクライナとロシアが軍事衝突を起こした結果、今日の国際社会でロシア孤立化の状況が現出していますが、同じような図式のアジア版で、南シナ海で小規模の軍事衝突を発生させて中国を包囲するシナリオを米国が考えていてもおかしくありません。これを起こすことで、人民元経済圏のASEANへ拡大を阻止し、ASEA全域を中国から切り離してTPPにブロック化することが可能となる条件を作り出せます。米国の狙いはそこまででしょう。中国と本格的な戦争をする意思は毛頭ない。経済・軍事両面の対中封じ込め戦略を成功させ、アジアをテリトリー化するだけです。しかし、日本がいったん中国と軍事衝突を起こしてしまうと、果たして米国が思い描く想定の限定的な局地の小競り合いで止まるかどうか、すぐに戦闘停止して収拾させることができるかどうか、私は甚だ疑問なところがあります。
例えば、南シナ海で中国軍と軍事衝突を起こし、自衛隊員が何人か犠牲になり、日の丸に包まれた棺桶で帰国したとなると、日本国内は一気に怒濤の反中ナショナリズムの昂奮になり、全マスコミが打倒中国を猛々しく叫び、全軍(全自衛隊)を挙げた総攻撃を主張するようになるでしょう。核武装の論議が始まり、自民党が正式に方針化して閣議決定するかもしれません。同じく、徴兵制、とは言わずに愛国教育実習とか積極的平和主義教育みたいな言い方をするかもしれませんが、自衛隊への男子の体験入隊が制度化されそうな気がします。例えば、大学入学を10月にして、高校卒業から半年間をそれに当てるとか。女子は半年間被災地への強制ボランティアとか。いずれにせよ、来年はかなり軍事の動きが露骨になり、おそらく戦争が始まり、どこかで戦死者が出て、戦争が日常の一部になるだろうと思います。マスコミ報道の中に、戦地での自衛隊の活動報告が毎日入るようになるでしょう。沖縄県への影響という点では、一番恐ろしいことは、南シナ海での戦闘が尖閣に飛び火して、尖閣が戦場になり、八重山諸島が戦場になることです。中国には中国の防衛構想のシナリオがあり、日本と有事となった場合の作戦計画があります。戦火が南シナ海から北に上がらないことを祈るばかりですが、どう展開するか。戦争は一度始めたら止めることは難しいというマキャベリの言葉を、国会で誰かが紹介していました。中国と日本との関係を考えると、予測は悲観的に傾かざるを得ません。
以上、全体として抽象論になってしまい、さらに、これまでの話の繰り返しになっていまいましたが、これからの戦争についての私の見方です。これほど悲観的な見方をしている者は多くなく、世上の議論からすれば、ある意味で極論であり、あまりご参考にならないかもしれませんが、ご質問のお答えとして申し述べさせていただきました。これまで、一度だけ、戦時に近い空気と生活を味わったことがあります。それは4年前の東日本大震災の後の一週間ほどのことでした。あの経験があり、結局、自分の身を守るのは自分しかなく、早め早めの行動がいいと、そう思うようになったような気がします。
by yoniumuhibi | 2015-09-19 23:30 |
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