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【神奈川】

「安保法通ったから終わりではない」 声上げ続け憲法を守る

憲法を学ぶイベントで「一大事!」のポーズをとる武井由起子さん=市内で

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 安全保障関連法が国会で成立した。憲法を市民にとって身近なものに、と憲法講座の講師を務めてきた川崎市高津区の弁護士武井由起子さん(47)は「法治国家の土台を壊した一大事。安保法が通ったから終わりではなく、私たちが声を上げ続ける努力が憲法を守ると思う」と強調する。 (山本哲正)

【おかしな法律】

 「子どもの未来がかかっている。これで諦めるわけにはいかない」。武井さんはこう言い切る。

 改憲に危機感を持つ全国の弁護士が立ち上げたグループのメンバー。昨年から、飲食を共にするような気軽な雰囲気で憲法を学ぶ「憲法カフェ」の講師を務める。

 カフェは、少人数の母親から依頼を受け、川崎市の麻生や高津、多摩区をはじめ全国で開催。憲法が権力を縛る立憲主義など、その理念を、わがままな王様が登場する紙芝居を使うなどして、初心者に分かりやすく解説してきた。

 安保法は、憲法の基礎を学べば「おかしい」との結論がおのずから出てくる。武井さんは「先日も百合丘(麻生区)で憲法カフェを開くと、『今から国会前に行こう』と言い出したママさんたちがいました」。

【必要性は論証なく】

 武井さんは「安保法は、必要性が論証されていない」と指摘する。安倍晋三首相は日本人の母子を乗せた米軍艦のパネルを掲げてその防護を主張したが、そもそも米軍艦は民間人を乗せない。集団的自衛権行使の代表例とするホルムズ海峡の機雷掃海については首相自身、現実性がないことを認めている。

 また、後方支援で米国に弾薬提供したりすれば、敵国には日本も一緒になって攻撃してくると映る。敵国が日本国内で起こすテロの危険性なども高まる。「デメリットも説明して信を問うべきだ」と武井さん。

 安倍首相は世論調査で反対が多数を占めても民意を丁寧に聞かない。「必要な改憲の手続きもせず立憲主義を無視するのは独裁国家と同じ」と断じる。

【国民の声で変わる】

 ただ一筋の光も感じている。法案への抗議に大学生や大学教員、高校生も動き、ハンストも行われた。「中国の天安門事件と順序が同じ。風向きが変わってきた」

 主権者の国民が目を光らせれば、法の活用が抑制的になる可能性も生まれる。大きな機会は来年夏の参院選。「個々の利害を乗り越えた大きな流れができれば、何かが起きる」。武井さんは言葉に力を込めた。

 <武井由起子さん> 1967年、川崎市生まれ。中央大法学部法律学科卒。伊藤忠商事で働いた後、一橋大大学院法務研究科を修了し、2010年に弁護士登録。日弁連憲法問題対策委員会幹事、明日の自由を守る若手弁護士の会会員。同会による共著「これでわかった! 超訳 特定秘密保護法」(岩波書店)を執筆。

 

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