(中村)ハァ…内部の検視官が犯人の内通者だったなんて…。
そりゃあ尻尾をつかませないよねぇ。
(南)てへ。
(中村)「てへ」じゃねえよ。
(中村)で?その二十面相はどこに行ったんだ?この丸一日の間何してる?
(南)フッ…必要な時間なのよ。
人々の意識を羽化させるためのね。
自力で繭を破ったチョウたちは古いルールに縛られない。
弟の死も私の死も無駄ではなくなるわ。
キャハッハ!そろそろ時間ね。
(リポーター)あれは…昨日行方をくらませた少年Aでしょうか?
(リポーター)こちら現場です。
局に届けられた匿名の封書のとおり二十面相らしき人物が現れました。
(浪越)ご覧。
死ぬにはいい日だ。
(時報)
(リポーター)予告の11時です。
いったい何が始まるのでしょうか?
(リポーター)衆目の前で焼身自殺をしてみせた少年A。
怪人二十面相がまた現れたということなのでしょうか。
(キャスター)今回の演出された復活劇は自分を神格化させるためだったというわけです。
(アシスタント)では今街なかで人々が暴れているのも…。
(キャスター)社会に不満を持った人々は大勢います。
その不満を一斉に爆発させるようなことができれば。
(浪越)さあ…。
(浪越)革命の火を灯そう。
(リポーター)あっ…危険です!落ちてしまいますよ!
(浪越)一番端の彼は虐待を受け続けている少年だ。
親も教師も彼の悲鳴を聞こうとしなかった。
今頃その親も慌てているだろうがそれは世間体を案じてのことだろう。
(リポーター)いったい犯人は何を訴えようとしているのでしょう。
人質ということなのでしょうか?
(カメラマン)彼らは今日ここに自発的に集まった。
(小林)《彼らは一連の二十面相事件からここにたどりついた》《自分で考え自分の意思でいけにえになることを決めたんだ》
(黒蜥蜴)よくもこんなにシンパが集まったものね。
(羽柴)小林…。
クソッどうしてつながんないんだよ!
(黒蜥蜴)やられちゃったんでしょうね。
二十面相という現象に。
このままだと他の子と一緒に自殺ショーに参加するわよ。
(羽柴)あっ…。
(黒蜥蜴)社会に不満を持った市民をあおる演出よね。
死んだら意味がないでしょ!
(黒蜥蜴)力の弱い者の最後の抵抗。
死をもって自分の命にやっと意味を与えようっていうのかしら。
バカね。
(浪越)これから5分置きに一人ずつ飛び降りる。
私立探偵の明智君。
この事態を君に止められるかな?君だけはここへ来ることを歓迎するよ。
ただしここへ来ていいのは明智君だけだ。
もし警察や機動隊が侵入したことが分かったら時間を待たずに皆一斉に飛び降りる。
果たして何人間に合うかな?
(黒蜥蜴)これ明らかに挑発ね。
明智さん…。
(明智)止めてやるよ。
こんな狂った計画に取りつかれたお前を。
でもそうやってあなたが駆り出されてくることも計算のうちなんでしょ?観衆の前でヒーローを祭り上げた後失墜させる。
あの計算式は間違いだ。
フフ…名探偵のくせにバカでバカで最高にカワイイわあなた。
いいわ。
お姉さんが協力してあげる。
死んでも頼むか。
調子に乗るなメス豚。
あーっ!さすが明智君だわ!いいわよ思いっ切りやってきて!生きて帰れたら私を本当に奴隷にして愛欲に溺れた生活を送るのよ!約束よー!
(記者たち)おい出てきたぞ!明智だ!出たぞ!出た!おい!マスコミ対応どうなってんだ!?素通しってどういうこった!?おい!
(記者)あなたが明智さんですか?
(記者)まだ子供じゃないか!
(記者)二十面相とどういう関係なのでしょうか?
(中村)ちょっとあんたら!どけ!どいてくれ!うわ…明智さん!
(記者)早く行かないと子供たちが死んでしまいますよ!分かってるならどけ!
(記者)あなたに取材を拒否する権利はない!この生々しい世界が一時的狂気の幻であったならばどれほどよかったのだろうか。
僕は吐き気を催すほどに今一つの世界という夢想に取りつかれた。
急がないとならないんだよ!
(リポーター)飛び降りました!今少年が一人飛び降りました!・
(落ちた音)
(リポーター)キャー!二十面相は伝えようとしてんだよ。
何とかしなきゃって…。
(男性)弱者は助けてもらえない。
(女性)もっといじめられる。
(女性)悪いやつが裁かれない。
(男性)ルールや法律なんて機能しない。
(女性)こんな世の中間違ってる。
(女性)黙るな。
(男性)目を覚ませって!クソッどけ!明智さん!
(中村)おい誰だ今の!くっ…。
《クソッ浪越のシンパか…》《ここを突破するにはおそらく街中にあふれている連中の中をくぐり抜けていくことになる》《いけるのか?》
(リポーター)あっ…また一人飛び降りました!
(浪越)最初の怪人二十面相は僕だ。
だけど自分自身でも本当の顔を忘れてしまっているのかもしれない。
今や怪人二十面相が誰であろうと構わない。
群衆こそこよなき隠れみの。
魂の叫びを持つ誰もがうつし世を変える狂人になれるんだ。
分かっているのかお前ら!不安をあおられてるだけなんだぞ!おい。
そいつは残像だ。
俺はこっちだよ。
倒せるものなら倒して…。
ん?ちょっ…ちょっと待って!待ってー!
(影男)ふう〜。
まぬけなやつらでよかった。
お前のそれは変装なのか?
(影男)…と君は私が来ることすら予測しているわけだ。
さすがだね。
フッ…そうだな。
(影男)これは貸しにしておこう明智君。
ここはできるだけ私が引き付けてあげよう。
君と私のライバル勝負はまだ終わってないからね。
ふん…礼は言わない。
それでも時間稼ぎにしかならない。
分かっているだろう。
(影男)ここで手詰まりだ。
さあどうする?明智君。
・
(ブレーキ音)明智さん乗って!羽柴…。
(影男)ふぅ〜。
何とかまけたか…。
さて人間はうつし世の影。
君なら照らし出せるのかな?明智君。
このバイクどうした?借りたんです路上のやつを。
これで僕も前科持ちです。
あっ赤信号です。
いいから飛ばせ!うわわわ…。
うわ〜!
(中村)4人落ちただと!?いいから早く時計塔に救助を回せ!何でこんなに手間取ってるんだ!・無線が混信していて状況が分かりません!・
(中村)クソッ!・
(通話の切れる音)おい!このタワーの…。
明智さん。
くっ…。
どいつもこいつも。
二十面相は明智さんに来てほしいんだろ!?何で邪魔するんだ!これもあいつの筋書きどおりだ。
えっ!?お前たち…黒蜥蜴の。
姐さんの彼氏なら…。
俺らの旦那さんでさぁ。
彼氏じゃない。
あと旦那とか言うな!あなたを行かせないと…。
姐さんに切り刻まれますんで!あの人やっぱり怖い人なんですね…。
知ってる。
ああ…明智さん!ちょっと近過ぎるんじゃない?それに今は待機だって…。
(操縦士)中継を続けます。
(リポーター)ねえあなた何か知ってるの?
(操縦士)何も。
ただ自分が正しいと思ったことに従ってるんですよ。
あなたに危害は加えません。
あっ…。
レ…レポートしても?
(操縦士)むしろそうしてください。
ありのまま全てを世に知らしめてください。
あっ…明智探偵と思われる人物が建物に入りました。
ここまでにすでに5人の少年少女が飛び降りています。
彼にこの事態を収拾させる方法があるのでしょうか?上に行けば小林を…。
小林は責任を持って俺が助ける。
二十面相は?どちらかだけだ。
えっ!?どちらを見捨てても一人俺が非難される。
晴れてやつの法則は完成というわけだ。
親友を見殺しにできるんですか?意見したいのは分かるが甘いことを言っていると小林が死ぬぞ。
小林は死なせませんから!
(南)私たちは幸せじゃなかったけど復讐することはできた。
全部気が晴れたわけじゃないけど何もできないよりずっとよかった。
(浪越)その思いがこれから人を動かすんだ。
もう泣き寝入りすることも無関心を装うこともしなくていいんだって。
よかった。
それじゃあ弟の所へ行くね!そろそろ南さんが逝ったかな。
(小林)僕南さん楽しくて好きでした。
(浪越)僕たちの死をもって数式は立証される。
人々の心の中に暗黒星という傷痕が残るんだ。
みんな傷つくんですね。
ああ。
そして気が付く。
面白いですね浪越さんは。
君もね。
怖くないかい?怖いですけど…それ以上に面白いです!なるほど。
明智君の助手になりたがる器だ。
(リポーター)6人目です…。
6人目が飛び降りました!おい何で中継画像が…あっ。
(リポーター)事件に感化された人々が大勢騒いでいます!さながらヒステリックな暴動のようです!
(シンパたち)断罪断罪断罪断罪断罪…。
浪越。
(浪越)明智君。
すごいなぁ浪越さんの言った時間にたどりついた。
小林もそいつに毒されてないでこっちへ来い。
う〜ん…。
来るんだ。
考えたんですけど浪越さんの考えを完遂した方がよくなると思うんですよ。
確かに乱暴ですけどこれぐらいやらないと感情を喚起することはできない。
それに最も効果的に自分の命を使うことができる機会があるならそうするべきじゃないかなって。
目を覚ませ!その言葉どうかな?目を覚まさなきゃならないのはみんなじゃないのかな?明智君。
久しぶり…って言ってくれないんだ。
この計算式の強度は知っている。
本当に?だが立案者が死ななければならないなんてそんな数式出来損ないだろ。
死は再生のために必要なんだ。
この法則はこれで完成なんだよ。
僕を見殺しにしても小林君を見殺しにしても君はバッシングされ人々の意識変革の触媒になるんだ。
明智先輩それはすみません。
黙ってろ。
生まれてからずっとつまらないなと思ってたけど明智先輩と探偵していた間だけは僕楽しかったです!黙ってろ!えっ…。
君は来てくれた。
約束どおり子供たちは自害をやめてくれる。
でも僕たちは逝く。
よせ!小林君じゃあ逝こうか。
はい。
待て!やめろ!あっ…。
《うんこれでいいんだ》《2人は仲直りできる》《うん…》《僕にしては最後になかなかいい考えだったんじゃないかな》羽柴!うわあ〜っ!!あっ…。
フッ…。
羽柴君…。
バカ野郎。
何死のうとしてんだよ!どうして…こんなこと…。
羽柴君が死んじゃうよ。
親友が死のうとしてんだ!絶対見捨てるもんか!死なせるもんか!!あっ…。
説教してやる。
俺がどれほどお前を思ってるか朝まで説教してやる!うん。
どうだ?予測されていた解は壊れた。
数式なんてないくらでも書き換えてやる。
明智君…。
やっと救えたよ…。
うれしいな。
(時報)でもそれじゃあ僕たちの法則の証明にならない。
あっ…そんなことはもういいんだ!
(浪越)よくないよ。
もっと君に認められないと嫌われてしまう。
バッ…。
これで君と僕の暗黒星は完成だよ。
さようなら。
でも…。
ありがとう。
僕大丈夫だよ。
いいから。
囲まれるぞ。
そうだね。
じゃあ後で。
羽柴君。
あっ…おお。
・
(中村)お〜い!
(中村)こっちこっち。
(中村)あれ?・終わったんでしょうか?なあ…。
はい。
教えろ。
なぜあそこまで必死になれる?俺羽柴の家の子じゃないですか。
だから浮いてて。
小学校のときは友達いなかったんです。
でも小林ってあんなじゃないですか。
4年のときてらいなく声を掛けてきて俺と仲良くしてくれたんですよ。
嫌みを言ってくるやつも論破してくれて。
小林には助けたつもりはなかったでしょうけど。
でもうれしかったなぁ。
これが友達ができるってことなのかって。
そうか。
はい。
街は穏やかだね〜。
ミャ〜。
あれから半年。
あんな大事件が風化してしまったなんて信じられません。
根深いんだよ。
子供が考えている以上にな。
社会ってのは。
自分だって子供でしょ?そのつもりはないがな。
あっ…浪越さんの遺体まだ見つかってないんですね。
シンパがどこかに隠したのかあるいは…。
生きていたらいいですよね。
現実がそれほどロマンチックだと思うか?ロマンチックなのはいけないことですか?知らん。
もう…。
フッ…。
ハァー。
やっと眠れる…。
《別にこんな世界希望なんてないけど》《生きていかなくてもいいかなって思ってたけど》《でも今は少しだけ楽しくなってきた気がする》ニャ〜。
・あっ。
・・
(足音)新しい事件ですか!?2015/09/18(金) 02:30〜03:00
関西テレビ1
[終]乱歩奇譚Game of Laplace[字]
バレー延長の為25分繰下げてお送りします。
「第11話」
人々の心に傷を残すための『暗黒星』。憤りの中、アケチ探偵は二十面相の元へ走ります。
詳細情報
おしらせ
「ワールドカップバレーボール2015男子 日本×ベネズエラ」延長の際、放送時間繰り下げの場合あり。
番組内容
「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと—」
没後50年となる日本を代表する作家・江戸川乱歩が綴った、「人間椅子」・「影男」・「怪人二十面相」・「パノラマ島」など心躍らされる、耽美かつ奇怪、そして幻想的な世界観を、数々の話題作を送り出したアニメ界の奇才チーム、監督:岸誠二、脚本:上江洲誠、制作:Lercheが、現代に蘇らせた完全新作アニメーション!!
番組内容2
「その日、初めて退屈じゃなくなった—」
とある中学校で起こった教師のバラバラ殺人事件。
この学校に通う少年・コバヤシは、事件の捜査に訪れた天才探偵・アケチと出会う。
異常犯罪ばかりを捜査するアケチに対して興味を持ったコバヤシは、友人のハシバの心配をよそに、自ら「助手」を志願する。
次々と起こる奇怪な事件の中で、コバヤシは退屈な日常を捨て置いていくのだった。
出演者
アケチ: 櫻井孝宏
コバヤシ: 高橋李依
ハシバ: 山下大輝
カガミ: 小西克幸
ナカムラ: チョー
黒蜥蜴: 日笠陽子
影男: 子安武人
ミナミ: 藤田咲
死体君: 山口勝平
ほか
スタッフ
【原案】
江戸川乱歩
【監督】
岸誠二
【シリーズ構成・脚本】
上江洲誠
【キャラクターデザイン】
森田和明
【総作画監督】
山形孝二
【プロップデザイン】
廣瀬智仁
【CGディレクター】
内山正文
【美術監督】
宮越歩
【美術設定】
曽野由大
【色彩設定】
加口大朗
【撮影監督】
三品雄介
【編集】
坂本雅紀
【音響監督】
飯田里樹
スタッフ2
【音楽】
横山克
【アニメーションプロデューサー】
比嘉勇二
鹿嶌舜
【アニメーション制作】
Lerche
【制作】
乱歩奇譚倶楽部
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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