課外授業 ようこそ先輩〜センセイの頭の中〜「漫画家 ヤマザキマリ」 2015.09.18


今回の先輩は…東京の事務所にお邪魔したのは授業2か月前。
自宅のあるイタリアと日本を行き来しながら11本の連載を抱えるヤマザキさん。
一体どんな授業をするつもりか聞いてみると…。
「自分がもし虫だったらどう過ごしますか?」っていう感じかな。
あなたの一日を描いてみて下さいっていう虫として過ごした一日をみたいな。
ヤマザキさんの代表作…900万部を超える大ヒット漫画。
古代ローマ人の主人公がある日突然タイムスリップした先は…。
日本の銭湯だった。
浴場設計技師である主人公が日本のあらゆる風呂文化を体験。
再び古代ローマに戻り革命を起こすという物語。
日本人には当たり前の日常が驚きの対象になる不思議。
「テルマエ・ロマエ」を描いた時に何が面白かったって私は古代ローマに生きた事もなければローマ人でもないんだけどもあの人たちの立場になって考えてみるとすごいワクワクする。
もううれしくてしょうがないっていうか。
もしこの人たちが日本に来たら何に驚くだろうと思った時にシャンプーハットであったりとかフルーツ牛乳であったりとか。
あれはたまたま自分が日本から長く離れてたせいである日家に帰ってきた時にシャンプーハットがあるのを見て「何これ!?」って思ったっていうね。
ヤマザキさんは絵画を学ぶためイタリアに留学。
17歳の時でした。
英語も片言1人暮らしも初めて。
未知の国イタリアへたった一人で飛び込んだのです。
以来住んだ国はエジプトシリアポルトガルアメリカ。
一つの文化や習慣に飽き足らず世界30か国以上をさすらいながら漫画を描いてきました。
そんなヤマザキさんが今も肌身離さず持ち歩く宝物があります。
6歳の時に買ってもらった昆虫図鑑です。
セロテープで貼って貼って…。
このセミが脱皮する表紙に一目ぼれして手に入れた宝物。
小さい頃から虫を追いかけてはその生態を調べる毎日でした。
今でもよく図鑑を眺めています。
トンボとかはすごい好きなんですけど本当にこう…いつまでも見ていられる感じ。
この形状を。
虫へのヤマザキさんの熱い思い。
まずは私が…何でこんなに虫が好きなのかとかまずはそこをみんなに伝えるところじゃないのかなというふうに思います。
ところが!後輩たちにきらいなものとその理由を事前のアンケートで聞いたところ…。
「足が多い」「きもちわるい」「もようもきらい」などなどの理由でみんな虫が大嫌い。
みんなちょっと…ダメだなこれ「よう虫が嫌い」とか「蚊が嫌い」「クマが嫌い」。
これもう…ヤマザキさんが育った…町の真ん中に千歳川が流れそのほとりに母校千歳小学校があります。
こんにちは。
(一同)おはようございま〜す!お邪魔します。
今回は夏休みのため休み中でも参加できる児童だけの合同授業です。
北海道って今が一番いい季節じゃないですか。
…っていうかみんな外で遊んだりするの?する?そこの千歳川とかって入っていいの?申し遅れました私漫画家のヤマザキマリといいます。
いきなりみんなに自己紹介もしなくて話しちゃいましたけど。
私の時は全然川とか…禁止はされてたけどみんな結構入って遊んでたのね。
今全然ダメ?入れない?入った事もない?みんな。
はい。
ない?虫捕まえに行ったりとかする子いる?「もうしない」。
それは小6だからしないって事?昔は子どもの時はしてたって事?虫が嫌いな人手挙げて。
フフフフフ。
「あ−」ってみんなすげえ納得してるな。
動き方が嫌?気持ちが悪い感じね。
確かに害を与える。
だから虫ってちっちゃいのに結構ポテンシャルはある訳よ。
今みんな気付いたと思うけど何でこんなちっちゃいのに威嚇したりさ害があったり動き方でみんなを気持ち悪いと思わせたりとかみんなと何にもコミュニケーションとれないししゃべりかけてもワンコみたいにじ〜っと見つめて尻尾振ってくれる訳でもないし全然何にも通じない。
宇宙人みたいですよね虫って。
虫をちょっとみんな嫌かもしれないけど昔はだって好きだった訳でしょ。
だったらもうちょっともう一回その時の昔に戻って虫を…私もう悲しいからさみんな虫仲間を増やしたい訳。
ヤマザキさんは幼い頃慣れ親しんだ場所に後輩たちを連れ出します。
小学校のすぐ裏には大きな森が広がっています。
千歳川に隣接し自然のままの広大な雑木林が残る青葉公園です。
すると…。
先生リス!すげえ!何か持ってるいっぱい。
うわ〜!いた!いたいた!かわいい!何かいそうな場所見っけ。
大きな木が倒れ地面は枯れ葉で覆われていていかにも虫が潜んでいそう。
着くなり後輩たちそっちのけで片っ端から木を裏返し始めるヤマザキさん。
一方子どもたちはおっかなびっくり。
木にも土にも触れません。
いな〜い。
いたいたいたいたいたいた…。
ほら来た。
この…この人。
寒気してきた?気持ち悪っ。
やっぱり嫌われてしまった虫たち。
でもヤマザキさんにとって虫は圧倒的な生命力を感じる大事な存在でした。
アリとかだって集団で動いてはいたとしてもそれぞれにそういう感情が芽生えて何かこう一緒に一つの餌をみんなで運んだりはしてはいてもね…いても「お前と俺はな」みたいな感じのはないじゃないですか。
本当に孤独に強くなるには完全に一個にならなきゃいけない。
個体にならなきゃいけないっていう。
ヤマザキさんは小学生の頃大きな孤独感を抱えていました。
父親を早くに亡くし母と妹の3人暮らし。
母親は札幌の交響楽団に所属するビオラ奏者。
音楽で子どもたちを養っている母が帰ってくるのはいつも夜遅くになってから。
みんなが5時過ぎてみんな帰っちゃってるけど私だけは残ってたってあの孤独感たるや。
「ごはんよ」って呼びに来るじゃないですかみんな。
「ルミとマヤ」でも描いてるけどでも私はいつまででも遊んでる。
楽しいもので遊べるはずなのにものすごい孤独感みたいな。
当時を描いた漫画には孤独な少女と虫のエピソードが登場します。
トンボが飛ぶ秋の出来事。
母親の帰りを待つ間寂しさを紛らわすため捕まえてきたトンボを部屋に放ちました。
トンボのカーテンです。
うわ〜虫だらけやね!「ありのたべもの」。
これはヤマザキさんが5歳の時に描いたアリの絵。
これ女王様ですよね。
多分。
女王アリ。
で女王アリはワインとかフルーツがあるんですよ。
描かれているのはアリの巣の中で繰り広げられるパーティーの様子。
いつの間にかアリになりきって妄想をさく裂させた少女時代。
そのスタイルは漫画家ヤマザキマリの原点なのです。
ここここ。
ここいくよ。
いっせ〜のでこれ絶対いける。
こいつこいつこいつ。
ここにいる。
ヤマザキさんが後輩たちに是非見せたいと思っていたアリの巣を発見しました。
あ〜!
(一同)お〜!あ〜…。
すげえ!きもい。
きもいようだけどみんなにしてみればこれ赤ちゃんだもの。
(一同)うわ〜。
巣に隠されていたのはアリの卵。
うえ〜寒気がする。
でもちょっと楽しい。
よく見てみって。
すげえって。
卵を別の所に。
ね!だからみんなこれ…よく見てみって。
すげえって。
しかも1人1個じゃなくて1人2〜3個運んでるやつもいるぞ。
すごい。
みんなちゃんと奧の見えない所に運んでいってるもん。
本当だ〜穴の中入ってる。
必死に家族を守るアリの姿を目の当たりにして子どもたちちょっと感動したようです。
何?これすばしっこ!さっきまで「寒気がする」って言ってたあの虫です。
腕に青虫を乗せて歩き方を研究し始める子も。
ほら!あっカタツムリ!恐る恐る触ってみます。
色も形も動きもよく見ればさまざま。
さっきまで虫を探す事もできなかった後輩たち。
いつの間にか虫に顔を近づけてじ〜っと見ています。
気が付けば観察は2時間以上にも及んでいました。
後輩たち虫の印象は変わったでしょうか?今日はあそこに行ってあんな事してみて木の株とかひっくり返したり蚊に刺されたりいろんな思いをしていろいろ感じた事があると思うんだけどそれを教えて下さい。
僕は今日青葉公園に行って…
(笑い声)なぜかと言うと木の下とか葉っぱのもっともっと下の所にいたので…そうして下さい。
ありがとうございます。
(拍手)
(拍手)何かいつの間にか私たちはこの世界にいてほかの動物たちに比べて知性があるからいろんな事を考えるしものも作れるしだからつい生き物の中で一番優れてるんじゃないかなって思いがちになるよね。
だからどうしても上から目線で虫けらって言葉が昔からあるけど意思の疎通ができないし小さいだけで私たちはそれをすごく否定的な見方で見てたところがあると思うんですよ。
ただもしかしたら虫は虫のコミュニケーションがあるかも分かんないし私たちにそれが通じてないだけかもしれない。
みんな今日さいっぱい虫スケッチしたじゃない?それじっと見つめてもらって…一匹自分の立場で選んでもらうじゃない?日記みたいにしてほしいの。
例えば今日だったら「巨人が山のようにいて」みたいな。
「それで何か掘り起こされてみんなに注目されてめっちゃ迷惑だった」じゃないけどそういう感じの1人称で書いてほしいんです。
みんなふだん妄想とかそういう創作とかしてみる事あります?中には漫画とか描くの好きな子いるよね。
誰か。
漫画描かない?大変だからね描くのね。
でもその時ってさ全然違う自分と違うキャラクターとか作って描く訳でしょ?はい。
難しかった?そうやってみたら。
はい。
難しいけど楽しいよね。
はい。
ウフフ全部肯定してもらいましたけど。
ちょっと自分じゃないものになってみるっていうのはものすごく刺激的な事です。
自分じゃないものになってみて書く。
明日はそういう課題をやってみて下さい。
はい。
はい。
翌日の朝早くの事です。
もっと虫の事を知りたいと森へやって来たのは漫画好きな千輝くん。
気合い入ってます。
一回あっち行くよ。
昨日の授業に刺激を受け朝から虫取りに来た子どもたちもいました。
いた?いた?おっ?ミミズだ!あ〜気持ちいい。
触ってみませんか?ほら。
(スタッフ)気持ちいい?え〜すごい。
ミミズの皮膚がツルツルしていて触ると気持ちいいと発見した千輝くん。
本当だ何か汁出てきた。
気持ちわりい。
気持ちわりい何か汁出てきた。
何か汁出てきた!
(千輝)何か汁出てきた〜!2日目は観察した虫になって絵日記を書くという授業。
ルールは虫になりきる事。
更に虫になって自分と出会う事にしました。
はいどうぞ。
失礼しま〜す。
ヤマザキさんに相談に来たのは漫画好きの千輝くん。
お〜。
あ〜いいな。
ミミズになったんですね。
これ余計な説明一切なしにして何だろうこの出会いのシーンもそうだけどこの千輝という少年の特徴が超表れてる。
これ本当理想的な形です。
千輝くんは漫画で日記を書きました。
内容を補うために文章で説明していきます。
ミミズは土の中で楽しく暮らしていましたがある日その天井に誰かが穴を開けてしまいました。
ミミズはびっくり仰天。
そこに現れたのは千輝くんです。
ミミズを見つけてほくそ笑んでいました。
ミミズと千輝くんの関係をこのシーンだけは文章で説明せずあえて絵だけで表しました。
ミミズは千輝くんに弄ばれ怒り心頭で体から汁を発射。
あのニヤニヤと笑っていた千輝くんはミミズの逆襲に遭うのです。
いい漫画ですね。
ありがとうございます。
何でミミズになろうと思った?触ると気持ちいい?意外に気持ちがいい?はい。
みんなはそういうふうに言ってるけど触ってみたら実は気持ちがいいもんなんだよっていう…それは誰に?先生。
先生とか。
なかなか…。
伝わらない。
それはうまく表現できないからっていう事かな?多分そう。
本当はでももっとこういうのでいっぱい表現したいなって思う?はい。
だって私は絵描くの好きで絵ばっかり描いてたけど絵ばっかり描いてるっていうのはよくない事だっていうふうにちょっと思われてたしそんな事してる暇あったら勉強しなさいみたいな感じで大人は思う訳じゃない。
でもこれだってなにも自分が表現したい事って勉強経由で出てくる訳でもないしこういうふうにして描いてみなきゃ出てこない事もあるし。
やっぱり想像とか妄想してると楽しいよね。
はい。
楽しいよね。
はい。
それずっとやってていいから。
大人になってもそれで商売になる人もいるからさ。
ヤマザキさんは後輩たちの日記を読んで1人ずつアドバイスします。
意外にもみんながなりきった虫は目立たなくて人間に疎まれがちなちょっとかっこ悪い虫たちでした。
じゃあ準備できた?
(一同)はい。
完成した?
(一同)はい。
子どもたちの絵日記の発表です。
え〜と私はアリになりました。
はい。
お母さんアリにお使いを頼まれたアリの女の子の日記。
リアルなアリの親子げんか。
綾乃さんとお母さんのふだんの様子かな?私はガになりました。
嫌われ者のガは璃麻さんに「あっちへ行け」と言われます。
でも璃麻さんはモンシロチョウには「まあきれい」とほほ笑みかけました。
「私は見た目はほとんど同じでこんなに似ているのにどうして自分だけ嫌われるのか疑問に思った」。
僕はアリという虫になりました。
「ぼくはアリです。
今日の朝突然家がゆれ出した。
とてもびっくりした。
家の上を見るとあいつがいた。
ぼくはあいつに家をこわされた」。
アリの家を壊したのは…。
仰くん自身。
ニコニコしているのはこれまでアリを殺す事を何とも思ってなかった自分を表しています。
アリの目を通して自分自身を見つめたんですね。
虫になって書いた日記は面白くて優しいまなざしに満ちていました。
本当にみんなどうもありがとうございました。
こんなむちゃくちゃなテーマだったのに応えてくれて。
実はずっと私大人になる段階でいつも思ってた事は大人だからこういう事考えるのやめようとか大人だからそういう事はもうやっちゃいけないというのは絶対ない大人になろうと思って大きくなりました。
だからみんなも自由に昨日あそこでみんなと一緒に体験した事で持った感覚とか感性とかこういうふうに表現してみる事虫に自分がなってみた絵を描く事これは全然大人になってやってもいい事なので「昔の若い時の思い出だね」なんていうふうにまとめちゃわないで下さい。
この気持ちはず〜っと持って全然大人になっていいから。
最悪でも私みたいな感じになるだけだから全然大丈夫。
だからそういう事が楽しめるっていう事でも昨日の体験は私も楽しかったしみんなも楽しんでもらってたらよかったかなというふうに思います。
じゃあ今日は楽しかったです。
ありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
虫は嫌な生物だと思ってきたけど虫には虫でそういう…家庭という生活がある事が分かりました。
ほかの人が嫌いだから自分も嫌いになるんじゃなくて何か…自分は本当に好きだったら自分らしくそういうふうに生きていきたいと思いました。
本当に何だろう自分がやっぱり楽しい事あと自分がすごく好きな事ワクワクできる事っていうのは子どもたちに自然に通じるんだと思った。
教えなきゃいけないから教えるとかじゃなくて自分が本当に我を忘れてワ〜ッと虫の中に入っていっちゃってるというのが多分彼らにとって一番印象深かったかもしれないし私もそういう気持ちにさせてもらった彼らに感謝するし。
虫はやっぱり私を助けてくれました。
2015/09/18(金) 19:25〜19:55
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩〜センセイの頭の中〜「漫画家 ヤマザキマリ」[解][字]

今回の先輩は、漫画「テルマエ・ロマエ」で話題を集めたヤマザキマリさん。自分がもし虫になっていたら?と想像してみる授業。いったい、どんな世界が見えたのか。

詳細情報
番組内容
古代ローマと現代日本を結んで描いた漫画「テルマエ・ロマエ」で話題を集めたヤマザキマリさん。奇想天外な発想力の原点は少女時代、大自然の中で昆虫を捕まえて遊びまわるうちに独特の世界観が育まれた。そんなヤマザキさんは子どもたちに、自分がもし虫だったら、一日をどう過ごすか想像してみよう、と提案。森で虫を観察し、虫になりきる子どもたち、いったい、どんな世界が見えたのか。
出演者
【出演】漫画家…ヤマザキマリ,【語り】諏訪部順一

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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