「きょうの健康」です。
今日は「増える子宮体がん」というテーマでお送りします。
まずこちらからご覧下さい。
少しふくよかな体型のA子さん。
1年ほど前に閉経しました。
しかし最近になって少量の出血が時々あって気になっています。
先に閉経した友人に相談してみたところ「不正出血なんてよくある事みたいよ」と言われてそんなものかとあまり深刻に考えていませんでした。
一方のB子さんバリバリと仕事をこなすキャリアウーマンです。
結婚3年目ですがまだ子どもはいません。
もともと月経は不順でしたがここ数か月月経ではない時期に不正出血が見られるようになりました。
そろそろ子どもが欲しいと考えていたB子さんは子宮や卵巣に問題があるのではと心配になってきました。
それぞれ婦人科を受診した2人。
検査の結果なんと子宮体がんの疑いありと診断されたのです。
子宮体がんについてのお話は…産婦人科医で子宮体がんの治療がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
早速ですが桜井さん子宮体がんの患者さんの数20年前に比べて何倍になったと思われますか?何倍という事は多いんですよね?2倍か3倍なんでしょうかしら?なんと20年前に比べて4倍にも増えているんですね。
4倍にもなっているんですか。
はい。
こちらは1年間に子宮体がんと診断された患者さんの数を年齢別に見たグラフです。
青い線が1991年赤い線が2011年を表しています。
これを見ると91年に比べて20年後の2011年には全ての年代で増えている事が分かります。
どうしてこれだけ急激に増えたんでしょうか?子宮体がんの発症には女性ホルモンが深く関わっているといわれています。
…などがその原因とされています。
このグラフを見ますと50代60代が多いんですね。
はい。
しかし最近ではB子さんのような30代40代のケースも…典型例は50代60代に多いのですがB子さんのような若い方も増えているなというのが実際の印象です。
子宮体がんは閉経後の方に多いというイメージがあると思いますが閉経前の方にも起こりうるという事は十分注意して頂きたいと思います。
でも子宮のがんといえば子宮頸がんもありますよね?子宮のがんには子宮体がんと子宮頸がんの2つがあります。
これは全く実は別物なんですね。
こちらにその違いをまとめました。
子宮頸がんできる場所から見ていきたいと思いますが子宮頸がんは子宮頸部子宮体がんは体部なんですがここに子宮が描かれています。
横に伸びているのが卵管と卵巣です。
子宮の上2/3は赤ちゃんが妊娠する場所の子宮体部。
下の1/3の細くなっている所は子宮頸部といいます。
子宮体部にできるのが子宮体がん。
子宮頸部にできるのが子宮頸がんです。
まず場所の違い。
ほかにどういう違いがあるんでしょうか?原因としては子宮頸部の子宮頸がんの方はヒトパピローマウイルスこれは性交渉によって感染するといわれていますが…。
ウイルス。
20代から40代の方に多くまた実際のがん検診は2年に1回行われております。
それに対して子宮体がんの方は原因は女性ホルモンの乱れでありまして発症年齢好発年齢は50代から60代。
自治体のがん検診は国で定められているのですが自治体により実際は異なっております。
そうすると子宮体がんの場合には検診の対象でない場合もあるという事ですから早く子宮体がんを見つけるにはどうしたらいいんでしょうか?まず不正出血があります。
A子さんB子さんの場合もそうですけれども不正出血が…。
ほとんどの場合ある訳ですね。
医療機関を早期に受診して頂く事が早期の発見につながります。
それではどういう人が子宮体がんになりやすいかタイプを教えて頂けますか?A子さんのように閉経前後の方や肥満がある方また若くてもB子さんのように月経不順があったり妊娠・出産の経験が少ないあるいはない方。
女性ホルモンの影響を受ける期間が長いので特に注意が必要です。
そのほか更年期障害などの治療で女性ホルモン単独の薬をのんでらっしゃる方も子宮体がんのリスクがあります。
若くてもB子さんのように不正出血があった場合要注意という事になる訳ですね?はい。
不正出血という事ですが月経以外の時に出血が。
そういう事ですか?そうですね。
まず閉経したのに出血がある。
閉経というのは生理が1年間来ない場合を閉経と見なされますけれども。
あるいは閉経前月経以外の時期に出血がある。
月経が8日以上続く。
これは不正出血と月経が続いて起こって境が分からなくなっている場合ですね。
あとは月経の量が多い場合。
これは不正出血と月経が重なっている場合に量が多くなります。
そうすると不正出血があったからといって放っておかないできちんと見ておく事が必要なんですね。
そうですね。
不正出血のほとんどは心配ないんですけれども量が少なくてもがんが否定できる訳ではありません。
子宮体がん頸がん子宮筋腫などの病変が隠れている場合もありますので不正出血がある場合には早期に医療機関を受診して頂く事が大事だと思います。
それでは子宮体がんと分かった場合治療はどうなっていくんでしょうか?その方の年齢や病気の進行具合によって異なりますけれども子宮体がんと診断されたらまず手術が検討されます。
子宮体がんの根治のためには手術が基本になります。
子宮でがんを取ったあと顕微鏡の病理検査で再発リスクが懸念される場合には術後に抗がん剤や放射線治療が行われる場合があります。
まず手術が基本という事ですけれども女性にとってもちろん大切な臓器ですのでやっぱり不安も大きいと思うんですけれども。
そうですね。
ただ子宮体がんの患者さんの4人に3人は早期に見つかります。
これはやはり不正出血という症状が先に出てくるという事があります。
自覚症状があります。
また早期に見つかった場合は8割から9割の方は治療によって治ります。
また…一部の病院では腹くう鏡手術がより低侵襲な手術として患者さんに提供できるようになっており治療自体も進歩しております。
どんどん負担の少ない方向にいっているという事になりますね。
はい。
それでは手術について伺っていきたいんですけれどどんな手術になっていくんでしょうか?まず子宮体がんの部位がこのような子宮の体部の内膜だけに限局している場合そういう場合でも基本は子宮と両方の卵巣・卵管を摘出する事になります。
これがもう少し組織のタイプが悪かったり頸部に下りてきたり筋肉の中に浸潤していたりしますと子宮の取り方を少し周りの組織を取って摘出したり骨盤の内側のリンパ節を摘出します。
また子宮の外に病変が広がってきたりこういったリンパ節に転移が認められた場合はより上の方のおなかの周りの動脈の周りのリンパ節も摘出する事になります。
いずれにしても子宮や卵巣は手術で取るという事になってしまう訳なんですね。
でもそうなってくると若い患者さんも多いと思うんですけれども出産は諦めなければいけないという事になってくるんですか?そうですね最初に出てきたB子さんのケースのように今は晩婚化が進んでおります。
35歳を越えてから子どもが欲しいと思って不妊治療を受けている間に子宮体がんが見つかる場合もあります。
そうした方でやはり強い思いで妊娠・出産の可能性を残したいという方の場合にはここに示しますけれどもホルモン療法というのが適応になる事があります。
どういうホルモン療法なんですか?これは黄体ホルモンを用います。
高用量の黄体ホルモンを4か月から6か月内服して頂いてそれと同時に病変のある子宮内膜をかき取るという処置を加えます。
ただ全ての方が適応になる訳ではなくて…また多くの病院で年齢が…私どもの病院では42歳までとしていますがこのような制限がつきます。
このホルモン療法でがんは治ると考えていいんですか?全ての方がホルモンだけで治るという訳ではないんですね。
やはり病変をかき取るという操作が大事になります。
病院によっても違いますが6割から9割の方に病変が消えて治るという事になりますけれども注意して頂きたいのはその後2年で約半数の方に子宮の中に再発するといわれています。
ですので病変が消失したあとは早めに妊娠・出産に向けて不妊のための治療を受けて頂きたいと思います。
場合によっては自然の妊娠でもありうるんですけれども体外受精も含めた高度な医療を受ける事によって施設によってで違いますけれども3割か4割の方に妊娠・出産というチャンスが残ります。
ここまで手術について伺ってきたんですけれども年齢にかかわらず手術を受けたあとですが受けたあと何か注意をする必要ってあるんでしょうか。
どんな手術も開腹手術のあとは傷の内側と小腸の間が癒着してしまって食べ物が通りにくくなる腸閉塞という事が起こりえます。
腹くう鏡手術では小さな傷で済みますので腸閉塞の可能性が少なくて済みます。
またリンパ節を切除しますと脚からのリンパの流れが鬱滞しますので脚のリンパ浮腫むくんでしまう事ですねあとは炎症を起こして真っ赤に腫れ上がるという事も起きてしまう事があります。
また少数の方で子宮の周囲を広く切除する場合には残尿があったり尿意を感じにくくなったりという症状が出る事もあります。
このリンパ浮腫というのは普通のむくみとはまた違ってくるんですか?普通のむくみですと皆さん感じられるように脚がむくんでも翌日の朝寝てれば改善している事が多いんですがリンパ浮腫の場合には脚を高くして寝る以外にリンパの流れをマッサージでうまく流してあげるという事あとは弾性ストッキングや弾性包帯で圧迫する事。
あとはウォーキングや水中歩行などで軽めの運動を行うという事でそういったケアを行う事で重症化するのを防ぐ事ができます。
こういう事をしないと歩きにくかったりいろいろ症状があるんですか?そうですねだるかったりとか歩きにくくなるっていう事は少ないんですけれどもだるさを感じたりとか靴が履きにくいとかという症状が出る方も最近は少なくなっておりますがあります。
なるほど。
今日は非常に増えてきているという子宮体がんについて伺ったんですけれども年齢にかかわらず女性は注意をしなければいけないという事を実感致しました。
子宮体がんは早期発見でほとんどの方が治る病気であります。
若い方でもやはり不正出血があった場合には早期に医療機関を受診して頂いて早期に発見する事でホルモン治療という事も選べますしより小さな手術あるいは腹くう鏡手術という事で術後の後遺症が少ない治療を受けられる事もできますので不正出血があった場合は早めに医療機関を受診して頂きたいと思います。
今日はどうもお話ありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/09/19(土) 04:15〜04:30
NHK総合1・神戸
先どり きょうの健康「増える子宮体がん」[解][字]
20年前に比べ患者数が4倍に増えた「子宮体がん」。閉経後だけでなく、閉経前の女性も増加。治療の基本は手術。最新手術方法を中心に、妊娠を希望する場合の治療も紹介。
詳細情報
番組内容
女性特有のがんとして、乳がんについで多い「子宮体がん」。20年前に比べて患者数は4倍だ。以前は閉経後の女性の病気とみなされていたが、妊娠・出産年齢の上昇などを背景に、閉経前の30代後半から40代の女性にも増えている。治療の基本は手術で子宮と卵巣をすべて摘出すること。早期に見つかれば治せるがんだ。患者の若年化に伴い、妊娠・出産とがん治療を両立させる研究も進んでいる。最新の「子宮体がん」の治療を紹介。
出演者
【講師】慶応義塾大学准教授…進伸幸,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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