(晋作)ほかでもない久坂の事よ。
(美和)久坂の事?京に子がおる。
(銀姫)京へ行くと申すか?はい。
捜したき者が京におるんでございます。
無事かどうかだけでも確かめたいと。
久坂の子にございます。
久坂の子が京にいると知った美和は一人京へと旅立った。
幕長戦争で幕府を打ち破った長州は薩摩と共に京で決戦に備えていた。
早よせえ!こっちやこっち!こっちや!おい行くぞ!申し上げます!敵は淀城を出て京への進軍を始めました!
(素彦)いよいよ決戦か。
(靖)我らも出陣じゃ!
(一同)おお!
(品川)楫取様!どねぇした?それが…今し方美和さんが来て。
美和が?姫様のお許しを頂いて来たと。
元徳様にお薬を届けに。
よりによってこねぇな時に…。
今どこに?それがまたどこかへ行ってしまい…。
余計な事を教えてしもうたせいかと…。
余計な事?楫取様はご存じないと思いますが実は久坂さんには…その…お子が。
ごめんくださいませ。
どなたかいらっしゃいませんか?あの…ここに辰路さんという芸妓さんがおると聞いて来たんですが…。
おらんよ。
み〜んなどっかに身を隠してしもうた。
(敬親)戦が始まろうという京へ一人で行かせるなどとは…。
(都美姫)亡き夫の子が京にいるそうです。
久坂の子が?はい。
よそのおなごとの間にもうけた子です。
その子の安否を確かめたいと。
銀姫は止めたのですが私が行かせてやれと。
自分の実の子でもないのに捜しに行きたいとは…なんとも切のうなって。
お許しを。
このような大変な時に。
殿!殿!どうされました?いや大事ない。
大事ない。
回想
(都美姫)分からぬか。
母となれなかった女の気持ちは。
(潮)どうなされました?美和は今どんな思いであろうとな。
回想
(晋作)あの事考えてくれたか?やはり私には久坂の子を引き取る事はできません。
よその人に産ませた子です。
その子を育てるなど…。
私は自分の子を産んだ事もないんです。
その子の母となる自信はありません。
(テーマ音楽)・「愚かなる吾れのことをも」・「友とめづ人はわがとも友と」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友と」・「めでよ人々」・「燃ゆ」早う!早う逃げんかい!あの…ちょ…長州藩のご本陣にはどう行け…。
どきなどきな。
いいものがあるじゃないか。
金になりそうだな。
ああ。
何をしとるんです?何だ?人様のものを盗むとは。
威勢のいい女じゃねえか。
ああ?かわいい顔しとるのう。
どっから来た?どこじゃ?待て!おい!待て!・待たぬかこら!・待て!・おい逃げてもむだだぞ!
(辰路)こっち。
・どこだ!?
私はこの時まだ知りませんでした。
この人が久坂の子を産んだ辰路さんやとは
ありがとうございました。
気ぃ付けてや。
今の京にはあんな脱藩浪士たちがうようよいてるんやから。
脱藩浪士?知らへんのか?あ…はい。
京には初めて来たもので。
えっ?ほなあんたこの戦の時に?まあ…。
怖いもん知らずやねぇほんま。
(秀次郎)お母ちゃんおなか減った。
我慢しぃ。
今は食べ物なんか手に入らんのえ。
あっじゃあ…。
これを。
少しですけど。
はいどうぞ。
おおきに。
悪いなぁ。
ほらほら。
そんなに慌てて食べたら喉つかえるがな。
・
(砲撃音)せわぁない。
大丈夫。
せわぁないって…あんた長州の人か?ええ萩です。
そうか。
萩の。
…けど何で京へ?亡くなった夫の子がおるんです。
亡くなった夫…。
名は?久坂といいます。
その子に会うてどないする気?引き取れというお方もおって。
これをまっすぐ行ったらご本陣。
赤い橋が目印や。
いろいろとありがとうございました。
ほんならね。
おおきにおばちゃん。
今この京がどねに危ない所か知らん訳じゃないじゃろう。
その身に何かあったらどねぇするつもりじゃ。
申し訳ございません。
どれだけ心配したか分かっとるんか?分かっとります。
やけど…。
何じゃ?兄上も知っとったんじゃないんですか?久坂の子の事。
それは…。
その子がこの京におる事を。
俺も先ほど聞いて…。
よその人が産んだとはいえ久坂の唯一の忘れ形見。
その子が無事かどうか気になって…。
それに約束が…。
約束?…いえ。
どっちにしろしかたないんです。
私は久坂の子を産めんかったんですから。
久坂にはあの世で会うたら文句言うてやります。
私には何も残してくれんかったと。
久坂の子の事は案ずるな。
俺も捜してみよう。
お願いします。
私も京が落ち着いたらまた捜しに来ます。
丹波路まで送ってやってくれ。
はっ。
撃て〜!慶応4年1月鳥羽・伏見で薩長軍と旧幕府軍が激突。
4日間に及ぶ死闘を繰り広げた。
戦の流れを決めたのは天皇のみしるしである錦の御旗であった。
敵方は総崩れとなり退却を始めました!勝ちじゃ。
勝ちじゃ。
我らの勝ちじゃ〜!
(一同)おお〜!我らの勝ちじゃ!勝ちじゃ!鳥羽・伏見の戦いで旧幕府軍は敗退。
この先元号は明治と改められ新しい時代が幕を開ける事になる。
薩摩長州を中心に新政府が発足。
楫取が新政府の重臣である参与に任命され日本の政治を牽引していく事となった。
失礼致します。
木戸様にご婦人がご面会です。
(幾松)着替えをお持ち致しました。
もう何日もこちらで泊まり込みやから。
(木戸)すまんの。
楫取様も何かお困りの事がありましたらいつでも言うとくりやす。
ありがとうございます。
そうじゃ。
楫取さんがお前に聞きたい事があるらしい。
何ですやろ?それが…久坂の事で。
その子がこの京におると。
その事じゃが黙っとって…。
分かっとる言いにくかったんは。
知りたいんは今辰路さんがその子とどこにおるんかと。
うちも心配しとるのどすが行方が分からんのどす。
そうですか…。
けど何でどす?美和が無事かどうかと気にしておって。
確か美和さんは子がいませんでしたね。
ああ。
戦が終わればまた子を捜しに行きたいと言いだすやもしれませぬ。
もう行かせられぬ。
美和がいないと興丸が寂しがる。
(鞠)大変でございます。
大殿様がお倒れに!おお…元徳様。
(元徳)父上は?今お薬をのまれお休みになられたところじゃ。
さようでございますか。
ではまた後でお伺い致します。
父上には早くよくなって頂かねば。
何より大事なお体でございます。
ここはゆっくり養生された方が。
元徳様。
これからは殿に代わってご政務をお務めなさった方がよいのでは。
そうじゃな。
あまりご無理をさせても申し訳ないしのう。
これまでの奥御殿は万事御前様の御意のままでしたが殿様の回復がなく元徳様へと代替わりがなされますれば事は随分と変わりますな。
もちろんじゃ。
殿とご一緒に母上にも隠居して頂く事になろう。
そうなれば美和。
私のもとでそなたがこの奥御殿を取りしきるのじゃ。
はい。
しかし…。
何じゃ?世は変わりつつあります。
江戸城では天璋院様が大奥を閉じられたとか。
そうなるとこの奥御殿もどうなるか…。
何を言うておる。
徳川は負けたから大奥を閉じた。
だが長州はその徳川に勝ったのだぞ。
そうではございますが…。
たわけた事を申すな。
そのころ京にいる楫取のもとに敬親から至急の手紙が届いていた。
(敬親)「長州が新しい日本をつくる先頭に立たねばならん。
山口へ戻り私と長州を支えてはくれぬか」。
長州に戻る?殿のお体の具合がようないんじゃ。
それで私に戻ってきてほしいと。
楫取さんは殿のご信任厚いお方。
殿がいざという時に一番頼りになさるのは分かります。
じゃが新政府も今は大変な時期を迎えておるんです。
楫取さんや私はその新しい政府のために今は働くべき時ではありませんか。
分かっとる。
今は政を中央から固めねばならぬ大事な時。
私とて迷わぬ訳ではない。
正直ようやくこの中央で国のために存分に働けると思うておった。
いや…今も思うとる。
じゃが私には…殿には言葉にできんほどの恩義がある。
そのご恩に何としてもお応えしたい。
いや応えねばならんのじゃ。
お気持ちは分かります。
じゃが…。
それだけではない。
確かに中央も大事。
じゃがその中央を支える諸藩も大事じゃ。
これからは諸藩にも新たな時代を受け入れるための地固めをする人間が要る。
ではそれを楫取さんが?ああ。
楫取が戻ってまいるのか?
(園山)はい。
ああ…安堵致した。
これでもう心配はいらぬ。
これからは殿のおそばで奥番頭として生涯務める覚悟と。
さすが…忠義の者じゃのう。
(園山)はい。
(日出)楫取様がお城にお戻りになられるそうで。
ようございました。
本当にようございましたね。
これからはお城でのお仕事に専念されると聞きました。
これで美和様もお心強いのでは?ええ。
回想久坂にはあの世で会うたら文句言うてやります。
私には何も残してくれんかったと。
(鞠)どうかしましたか?あっ…いえ。
そして楫取が新政府の職を辞して山口の城に帰ってきた。
お加減いかがでございますか?なに心配するな。
お前が戻ってくれたんじゃ。
これから何が起ころうともう安心じゃ。
そのようなもったいなきお言葉を。
これでこの老いぼれた体でもあとしばらく日本国のため長州のために全身全霊で働けるであろう。
どうした?そうお思い頂けるのであれば殿にはなさるべき事がございます。
それは何じゃ?
(敬親)遠慮のう申せ。
では…。
領地領民を天子様にお返し頂きたいのでございます。
なんと…。
木戸とも計りました版籍奉還の策でございます。
今のままでは諸大名家が力を持ち過ぎ日本が国として一つにまとまりきれませぬ。
新政府を強くするためにはどうしても欠かせぬ策と存じます。
我ら長州が手本とならねばなりませぬ。
そのような…。
殿はいかがされるおつもりでございますか?難題はもう一つの方じゃ。
もう一つ?
(ため息)そして木戸が版籍奉還を正式に進言しにやって来た。
薩摩長州土佐肥前が他藩に先駆け領地と領民を天子様にお返し頂きたく。
我が殿にもそのお許しを請いに伺った次第でございます。
領地と民をお返しする?何を言うておる!?お返し頂けましたなら新たに天子様からこの地を委ねられ殿は知藩事としてこの長州を新たにお治めになられます。
何じゃと?そんな藩を揺るがす一大事をにわかに言われても困る!父上これをお受けするかどうかは重臣たちを集めて協議せねば!それには及ばぬ。
はっ…。
そうせい。
父上?元徳。
そなたが新たな世の知藩事じゃ。
はっ…。
これを機にわしは隠居する。
わしが身を辞す事で家臣たちにも受け入れさせるしかあるまい。
はっ。
なんと…。
もう一つとはこの事であったか。
大殿も早まった事をされたのではございませぬか?そしてこちらでも。
知藩事じゃと?私も初めて伺いました。
藩主様の新たな呼び名だと…。
どうして勝手に変えるのじゃ。
それは…。
楫取や木戸は何を考えておる。
我らの許しも得ず勝手にそのような事を…。
ほかにも何か変わる事があるのか?この奥御殿の暮らしは大丈夫なんじゃろうな!?まさか…御殿を閉じろというのでは?まだそのような事は何も…。
興丸はどうなるのじゃ!?その…知藩事とやらの後を継げるのじゃろうな!?動揺は城の家臣たちにも広がり…。
(松原誠一)我らの父祖伝来の土地はどうなる?こねな事になったのも楫取殿が殿にいらん事を吹き込んだからに違いない。
ご信任厚いをええ事に好き勝手な事を…。
お家を潰すつもりかもしれん。
(村上恒久)だとしたら許せん!今すぐその真意を問いたださねば!ああ!
(小忠太)待て。
じゃが高杉様!楫取殿はこの長州のためにと戻ってこられた。
しばらくは様子を見る事じゃ。
そんな折楫取は高杉の月命日に焼香に訪れた。
(小忠太)先日の一件じゃがわしは大殿のお決めになった事にはどねな事でも従うつもりじゃ。
じゃが家臣の中には不服に思いそなたに不信を抱いておる者たちもおる。
分かっております。
じゃが今新政府のもと改革を推し進めねばこの日本はどうにもなりませぬ。
晋作も同じ事を言っておった。
それが正しいのであろう。
じゃが新たな時代についていけん者もおる。
何か起こるんではと心配でな。
(梅之進)えい!やあ!えい!やあ!
(雅)わざわざのお越しありがとうございました。
本当に晋様は美和さんに大変な頼み事を致しました。
久坂様の忘れ形見のお子だけでなく我が子梅之進やすべての塾生の子の面倒を見て育てろなどと。
えっ?回想それに約束が…。
約束?久坂にはあの世で会うたら文句言うてやります。
私には何も残してくれんかったと。
呼び出してすまん。
いえ。
私もお会いせねばならんと。
どうかしたか?これからどうなっていくんかと姫様がいたくご心配されておって。
まだいろいろと変わる事がございましょうか?すべて変わる。
えっ?これからは身分の隔てもなくなるであろう。
西洋列強に負けん強い日本国にするため異国から学びすべてが変わるであろう。
新しい日本国を一刻も早うつくり上げねばならん。
新しい日本国…高杉さんも同じ事を仰せでした。
そうか。
じゃからその国をつくる者をお前に育ててほしいと言うたんじゃろう。
どねぇした?私には無理です。
無理?やはり無理なんです。
久坂の子を京で見つけられずよかったと思うております。
その子を見つけたとしても私には育てる覚悟が持てんのですから。
それは兄上もようお分かりでございましょう?思わずとはいえあの世の久坂にまで愚痴を言うたりして…。
あねなお恥ずかしいところをお見せしてしもうて…。
まああれは…。
じゃが分かった事がある。
えっ…?お前も一人のおなごじゃとな。
あの時久坂は何も残してくれんかったと言うたが本当にそうなんか?お前が大事に抱えて生きてきたもんがあるじゃろう。
回想
(一同)えいえいお〜!えいえいお〜!えいえいお〜!回想
(玄瑞)誰でも自由に志を立てられる。
お前がばあさんになっても相変わらず握り飯握って人と笑うて暮らせるような…そねな世の中が…そねな国がつくれたら…。
みんなが夢をみられる世をつくりたいと…久坂は私に…。
ではその世こそ新しい日本国ではないんか?せわぁない。
大丈夫じゃ。
新しい日本人を育ててみろ。
お前ならできる。
兄上…。
私だけではない。
寅次郎も久坂も高杉もみんなそう思うとる。
回想
(寅次郎)お前はどう生きる?自分の人生を自分の命を何のために使う?そねな世の中が…そねな国がつくれたら…。
それが天命じゃ。
天命…。
天命?高杉さんがそう私に…。
そうか。
ならばなおさらやらねばならんな。
これからは私がそばにおる。
お前を支えてやれる。
久坂の子は捜させておる。
分かり次第知らせがあるはずじゃ。
はい。
(日出)楫取様ご伝言でございます。
何じゃ?大変でございます。
若い者たちがこたびの事やはり納得できぬ。
若殿にじきじき訴えると。
何?美和様大変でございます。
銀姫様がこたびの事で御前様に詰め寄られておられます。
えっ?まずは目の前の事じゃな。
藩が明治という新たな時代を生き抜いていけるようにせねば。
では奥御殿から。
ん?奥が変われば城も変わる。
女が変われば男も変わります。
女幹事が戻ったな。
はい。
みんなの見たかった明治という新しい時代を私は歩いていきます
攻撃開始じゃ!
(井上)藩庁が包囲されたとは本当ですか?木戸が指揮を執っとる。
木戸様が?命に代えても皆様をお守り致します。
どうかあの者たちの声を聞いてやって下さいませ!
長州藩の京都留守居役などを務めた桂小五郎は藩邸に近い花街の三本木で幾松と出会ったといいます。
幾松は踊りの名手として評判の芸妓で命を狙われ鴨川の橋に隠れた桂にひそかに食事を届けるなど献身的に桂を支えたと伝わります。
維新後幾松を妻に迎えた桂は明治政府の参与として活躍。
木戸孝允と名を改め版籍奉還をいち早く唱え国づくりに力を発揮しました。
しかし師である松陰や志半ばで亡くなった仲間に思いをはせる事も多かったといいます。
木戸の俳句にはそんな仲間たちへの思いが込められています
木戸孝允は時代の激流にもまれながらも近代日本の礎となり邁進するのです
2015/09/19(土) 13:05〜13:50
NHK総合1・神戸
花燃ゆ(37)「夫の忘れがたみ」まさかの出会い!新時代!女の本音と決意[解][字][デ][再]
倒幕をかけた鳥羽伏見の戦いが始まった。美和(井上真央)は戦火の中、京に亡き夫・久坂玄瑞の遺児を探しに来る。そこで芸妓の辰路(鈴木杏)と子の秀次郎に偶然出会い…。
詳細情報
番組内容
倒幕をかけた鳥羽伏見の戦いが始まった。美和(井上真央)は戦火の中、京に亡き夫・久坂玄瑞の遺児を探しにくる。そして互いの素性を知らぬまま、芸妓の辰路(鈴木杏)と夫の忘れ形見・秀次郎に偶然出会う…。ついに幕府は倒れ、新政府が樹立、日本は明治時代を迎える。小田村伊之助から名をあらためた楫取素彦(大沢たかお)は藩の領地を朝廷に返還する「版籍奉還」を進言。奥御殿も変革を迫られる中、美和が決意したこととは…!
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,北大路欣也,劇団ひとり,大野拓朗,音尾琢真,北見敏之,東山紀之,石井正則,鈴木杏,雛形あきこ,黒島結菜,田中麗奈,三浦貴大,石橋杏奈,銀粉蝶,鷲尾真知子,江口のりこほか
原作・脚本
【脚本】小松江里子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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