(リポーター)「私は今中野区岸川駅から線路沿いを5分ほど歩いたところにある歩道橋に来ています」「安藤雅美さん殺害事件から2週間が経ちましたがいまだ謎に包まれたままの連続殺人事件」「警察の懸命な捜査に…」
(甲斐享)3人目の犠牲者…どう思います?この事件。
(杉下右京)まったく不可解な事件ですねぇ。
2週間前練馬区のマンションで女性が遺体で発見された。
現場から第三者のDNAが見つかった事により事件の線でも捜査される事となった。
その1週間後今度は多摩川の河川敷でホームレスの男性が遺体で見つかった。
同じく現場から第三者のDNAが検出。
そして4日前中野区の歩道橋下で新たな遺体が発見され同じく現場で先の2件と一致するDNAが見つかり同一犯による連続殺人事件と見て捜査中。
都内いたるところに神出鬼没。
手口もバラバラ動機は不明。
犯人像がまったく浮かんでこない。
ええ。
手がかりは3つの現場全てに残された犯人とおぼしき男のDNAと同じ銘柄のタバコの吸い殻だけ…。
同一犯にしてはあまりにも一貫性がない。
ですから不可解な事件と言ったわけです。
一体どんな犯人なんでしょう。
(角田六郎)おい聞いたか?この犯人の正体…鑑識の米沢らしいぞ。
え!?はい?
(中園照生)馬鹿者!!
(米沢守)申し訳ありません。
(中園)考えられん!仮にも…警視庁鑑識課に籍を置く者が!
(内村完爾)もういいだろう。
それぐらいにしておけ。
(中園)いやしかし…!
(内村)米沢…。
長い事ご苦労であった。
謹慎中に退職願をしたためておけ。
どういう事ですか?この連続殺人犯が米沢さんって。
鑑識でDNAとるのに使う綿棒あるだろ?ええ。
(角田)その綿棒に米沢の細胞がついちまってたんだってよ。
つまり連続殺人犯だと思われる第三者のDNAが米沢さんのDNAだった…?そういうこった。
なるほど。
道理で関連性が見えないはずです。
こんだけ話題になってる犯人が実は鑑識のミスによって生まれた実在しない人物だったなんてしゃれじゃ済まねえだろ。
しかも3件ですよ。
1件でもやばいのに。
ここだけの話まだもう1件あるらしいぞ。
マジっすか?3件目の時点で米沢のDNAだとわかったんで表沙汰にはしてないらしいけどな。
気の毒だが…間違いなくこれだろうな。
繋がりませんね。
何かあったんじゃ…。
まさか…?すみません米沢さんの同僚の者ですが…。
(チャイム)米沢さん!お願いします。
米沢さん!杉下さん。
息はあるようです。
米沢さん!!ん?ん…?え?えっ?んっんっ?はい。
はい…。
はいはい…。
はい。
ん…?ここは…特命係?いや…米沢さんの家ですよ。
呼んでも出ないから心配になって管理人さんに鍵開けてもらったんです。
全て悪い夢であってほしいと思っていたらいつの間にか眠ってしまっていたようです。
話は聞きました。
自分でも信じられません。
これでも鑑識についてはプロ意識を持ってるつもりでいましたから。
もちろん道具を粗末に扱った事などありません。
道具を入れたケースの鍵でさえこうして自宅の鍵と一緒に肌身離さず…。
自分にとって鑑識の仕事だけが唯一の誇りでしたから…。
それも…今となっては昔話ですけど…。
(チャイム)す…すいません。
すいません。
(チャイム)
(米沢)うちの…長谷川課長と山崎係長です。
このとおり…したためておきました。
(長谷川健宣のため息)一応預かるがあまり思い詰めるなよ。
なんとか残れないか俺からももう一回頼んでみるから。
しかし私を所轄から引き抜いてくださった課長や鑑識のいろはを教えて頂いた係長の顔に泥を塗ってしまい…。
(山崎総一郎)風邪をひいてたらしいな。
(米沢)はあ…。
現場ではちゃんとマスクをしていたんですけども。
手は?臨場の前にはしっかり洗浄してたのか?もちろんです!あ…いや…。
どっちなんだ?正直汚染させてしまった可能性もゼロではなく…。
もはや自分ではわかりません。
情けないなあ。
どんな時も現場の状況は記憶に焼きつけておけって教えただろ?申し訳ございません!当時は…熱で頭もぼうっとしてましてあのでも…現場には…穴を開けるまいと…。
あの…いつ間違いだとわかったんですか?3件目の鑑定結果が出た翌日科捜研から綿棒が汚染されてるんじゃないかって私に連絡があったんです。
血液の浸潤具合が不自然だったらしくて。
内々で再調査してもらったら米沢のDNAだってわかったもんで課長に報告を。
現場に同じ銘柄のタバコの吸い殻が落ちていたと聞いていますが。
現場って言っても別に遺体の横に落ちてたわけじゃなくて近くで見つかったってだけなんだ。
銘柄だってみんなが吸うようなタバコだったしただの偶然だったんだろう。
どのタバコにも指紋や唾液が残っていなかったそうですね。
(長谷川)この季節手袋してれば指紋は残らないし吸い口だってフィルターつけりゃ…なあ?ええ。
こうなってみたら犯人のものかどうかも…。
何考えてるか知らんが余計な事はしないでくれよ。
今刑事部長の感情をあおると米沢にとってもよくないんだから。
ただ…もし何かわかったらすぐ教えてください。
出来る事は協力しますから。
(長谷川)おい!使わない時は鍵をかけていたそうです。
これが今回問題になったDNA採取用の綿棒ですか。
ええ。
おや…。
葉っぱ?どこかの現場で入ったんでしょうか。
(早乙女美穂)米沢さんがあんな初歩的なミスするなんて信じられません。
早乙女さんは確か米沢さんと同じ班でしたね?ええ。
つかぬ事を伺いますがつい最近の現場がカイヅカイブキの下だったという事はありませんでしたか?カイヅカイブキですか?ええ。
いや…なかったと思いますけど…。
最初の遺体はここで見つかったんですね?亡くなったのは一人暮らしの女性安藤雅美さん。
浴室で手首を切って亡くなったそうです。
当初は自殺との見方が強かったんですが遺書がなく自殺の動機もはっきりしないなど不審な点があったため念のため鑑識が入ったそうです。
遺体発見時ここにグラスと空き缶が置いてありました。
空き缶の飲み口からDNA採取を試みてみると安藤さんのものではないDNAが検出されました。
そして事件の可能性が強まった。
それが米沢さんのものだったなんて…。
例のタバコの吸い殻は?ええ。
この下です。
え〜…あそこですね。
犯人がここから投げ捨てたのではないかと考えられたみたいです。
確かに事件と関係があるかどうかは微妙な場所ですねぇ。
ええ。
カイトくん。
はい?あれ…!ケースに入ってた葉っぱとも同じです。
ここのですかね?カイトくん。
はい。
鑑識を呼んでください。
はい。
ええ確かに鑑識車はこの辺りに止めました。
やはりそうでしたか。
ところで鑑識道具を現場に運んだ際ですが何回かに分けて?そうですけど…それが何か?問題の綿棒ですがねここですり替えられたのではないかと思いましてね。
鑑識車からみんながいなくなった隙を狙って…。
綿棒をすり替える事は十分可能です。
この綿棒ですが一本一本熱圧着によって密閉されています。
ですが一度開封して米沢さんの細胞を付着させてからもう一度熱で圧着する事も不可能ではありません。
でも誰がそんな事…?今のところ現場周辺にいた人物としか言えませんがね。
例えば捜査員鑑識員などなど…。
早乙女さんこの辺りのゲソ痕とれますか?わかりました。
やってみます。
お願いします。
(長谷川)退職願書かせてきました。
一両日中に処理しておく。
すぐにでもクビを切りたいところだが今回の件は公表の仕方をよく考えなくてはならん。
本来なら課長であるお前も責任を取らなければならない立場だぞ。
ご高配感謝しております。
うん。
(伊丹憲一)最初は衰弱死じゃないかって言ってたんですが体に打撲の痕と遺体のそばに割れたビンがあったんで念のために鑑識を入れたんです。
そのビンで殴られたんじゃないかって話になって…。
(芹沢慶二)ただ打撲痕についてはあとになってホームレス仲間から空きビン回収をしている時に自分で荷台を崩してぶつけたっていう話が出てきました。
事件じゃなかったって事でしょ。
割れたビンからは何も出ませんでしたし…。
米沢のDNA以外は。
なるほど。
で…どうなんです?今調べています。
でタバコの吸い殻が落ちていたのは?こっちです。
ここです。
今となっちゃ…ただのポイ捨てだったんじゃないですかね。
どうですか?だいぶ踏み荒らされてしまってるので部分的なゲソ痕しかとれないんですがなんとか…。
え〜亡くなったのは西原一郎さん78歳。
遺族の話では最近認知症ぎみで時々夜中に抜け出しては一人歩きをするので心配していたそうです。
発見当初はここから足を滑らせて頭を打ったんじゃないかって。
ただそれにしては倒れていた場所が変なんで念のため鑑識が呼ばれたそうです。
ここで足を滑らせ…ここで頭を打った。
普通はここに倒れてるはずですよね。
ええええこんなふうに。
ええ。
ところがいったんは自力で立ち上がり少し歩いたところで再び倒れ込みそのまま亡くなってしまった…とも考えられますねぇ。
うんですよね。
タバコの吸い殻はどこに?ええ〜…この辺です。
これまでと同じく連続殺人の事がなければ証拠として押さえたかどうか怪しいですね。
どんな感じですか?戻って詳しく見てみない事にはわかりませんけど恐らく先の2件と同じゲソ痕だと思います。
徐々に見えてきましたね。
3つ目の現場で共通のゲソ痕が見つかりました。
2件までなら偶然かもしれませんけど3件続けてとなると…。
お二人にそう言われるとつい期待してしまいます。
また連絡します。
(山崎)新たな手がかりが出てきてるって連絡をもらったもので。
ずっと心配されてましたから。
係長米沢さんの師匠なんですよ。
師匠?そんな大げさなもんじゃ…。
所轄から来た米沢が最初に入ったのがたまたま私の班だったってだけです。
そんな事を言ったらお前の師匠は米沢って事になるぞ。
そう思ってますよ。
ここには私も臨場してました。
何か力になれる事があれば。
よろしくお願いします。
お願いします!
(山崎)亡くなったのはここの経営者の藤田洋二さんでした。
このボイラーから出火したようです。
一見ただの火事なのになんでDNAを採取したんですか?
(山崎)ここに被害者の血がついた鉄パイプが落ちていたんです。
(早乙女)被害者の手や足にも傷があってもちろん事故の際に飛んできたものかもしれないんですが。
調書によると近隣の住民が爆発音を聞いたとか。
(山崎)ええそれで通報を。
臨場の際ですがこの窓は閉まっていたのでしょうか?
(山崎)まあこの季節ですから…。
どうしてです?ひょっとして爆発音の原因は窓を開けた事ではないかと思ったものですからね。
(早乙女)というと?密閉された状態で不完全燃焼の場所に急激に酸素が入った場合に爆発的に燃焼する現象があります。
ああ…なんでしたっけ…?バックドラフト。
ええ。
立ちこめた煙を排出しようとして窓を開ける事で起きる事が多いようですがそうですか…窓は閉まってましたか。
となると原因は他にあるという事になりますねぇ。
だとすると何者かが藤田さんを傷つけたあと事故に見せかけて殺した可能性もありますよね。
(早乙女)でも結局現場からは米沢さんのDNAしか出てませんし…。
(山崎)どこかから漏れたガスに引火したのかもしれません。
鑑識車はここに止まってたんですよね?ええ。
ただ…当時は捜査員だけじゃなく消防員や救急隊員も往来してましたしすり替えなんて難しいと思いますけど…。
(山崎)まあ…とにかく調べてみようじゃないか。
前の3件と一致するゲソ痕はどこにも見つかりません。
(山崎)3つ目までの現場で見つかったゲソ痕本部に送って調べさせたんですが一致する靴は全国で5万足も売れた極めて一般的なものだそうです。
タバコと同じく単なる偶然だったんじゃないでしょうか。
タバコの吸い殻も見つかりませんね。
(ため息)僕らもまたいるはずのない虚像の犯人を作り上げようとしてるんでしょうか。
(携帯電話)そろそろ現場検証も終わった頃ではないかと思いまして…。
あ…それが…。
そうですか…。
色々とありがとうございました。
お二人には…本当にお世話になりました。
「米沢さん?」もしもし?
(操作音)はあ…出ないですね。
(内田圭一)あの…米沢さんだったらさっき大きな荷物を持って出ていきましたよ。
しばらく留守にするのかと思って聞いたんですけど返事もなしに行ってしまって。
(足音)杉下警部…。
こんな事ではないかと思いました。
その中は…自前の鑑識道具ですか?はい。
現場を回って自分で確かめていたんですね。
結果は同じです。
ゲソ痕以外に第三者の痕跡など発見出来ませんでした。
綿棒のすり替えなどなかった。
つまり私のミスであった事が確定したという事です。
だけど少なくとも3件目までは共通点が見つかったわけですから。
また別の共通点が見つかりますよ。
(米沢)もういいです。
期待する分落ち込むだけなんで。
当の本人が諦めてどうするんですか!係長の山崎さんだって応援に駆けつけてくれたんですよ。
係長が?ゲソ痕をとるのに協力して頂きました。
よりによって一番呼んでほしくない相手を…。
これまでも大きな事件を何件も担当されているそうですねぇ。
鑑識のかがみと言われているとか。
一度見た現場は写真のように記憶して忘れず鑑識技術も完璧でこれまで一度のミスも犯した事はありません。
ふ〜ん…そんなすごい人だったんだ。
それだけに厳しい人です。
私も最初の現場でいきなり怒鳴られましたから。
え?米沢さんが?現場の外にあったゲソ痕をついとり損ねたんですけども「規制線の中だけを現場だと思うな!」と…。
それは厳しいですね…。
いや鑑識の心構えとしては至極正しいと思います。
にもかかわらずいつしか慢心し係長の教えを忘れてあのような初歩的なミスを…。
(月本幸子)まあまあそう思い詰めずに…。
これ召し上がってください。
卵酒です。
あったまりますよ。
ありがとうございます。
ああ…。
元はといえばあんな風邪さえひかなければ…。
どこでもらったんでしょうねぇ。
仕事中です。
やたらと冷え込む日に鑑識車の中で着替えねばならず…。
鑑識車の中で着替えですか?自宅から直行する時はいつもそうするんです。
制服でタクシーに乗るわけにはいきませんから。
自宅から直行…。
でももうそんな苦労もしなくていいと思うと…胸にぽっかりと穴が開いたような気分で…。
ああ…!すみません。
僕これで…失礼します。
えっ?あ…。
調べてみたところDNAが見つかった4件の現場全て米沢さんは自宅から現場に直行していたようです。
新たな共通点ですね。
仮に第三者が綿棒をすり替えていたとしてどうやって毎回米沢さんのいる現場にたどり着けたのかが疑問でしたが…。
ええ。
事件はいつどこで起きるかわからないしましてやその現場に必ず米沢さんが行くとは限らない。
しかし自宅からならば…可能ですねぇ。
(インターホンが繋がる音)あっ甲斐です。
あの…杉下さんも一緒に来てます。
会いたくないのならここで話しましょう。
やはり今回米沢さんは誰かにはめられていた可能性があります。
ついては一度部屋を調べさせて頂けませんか。
(米沢)「もう結構です」「今回の事で鑑識としてやっていく自信をなくしてしまいました」「もう放っといてもらえませんか」米沢さん。
(インターホンが切れる音)あの…さっきの2人は?もう帰られましたよ。
お出かけですか?ちょっとコンビニまで。
いや…今ねこの部屋の火災報知器が鳴ったんで慌てて確認しに来たんですよ。
ほう。
だとするとさしずめ出火の原因はこのコンセント型の盗聴器でしょうかねぇ。
あえてインターホンで話したのはあなたに聞かせるためだったんですよ。
米沢さんとはあらかじめ打ち合わせ済みでした。
あんた…あんただったのか!おらあ!痛っ!おとなしくしろ!すり替え?なんの事です?あんだけ逃げておいて何言ってんだ!?だってそれは急に取り囲むから。
マスターキーを持っているあなたならば留守を狙って盗聴器を仕掛ける事が可能です。
管理人室からも監視する事が出来たでしょうねぇ。
あなたはこの盗聴器を使って…。
はいはい。
了解しました。
今自宅ですので…。
(米沢)「現場に直行します」出動のタイミングをつかみ…。
現場へ向かう米沢さんを尾行した。
そこで鑑識ケースの存在を知り綿棒を汚染させたものにすり替えるという今回の計画を立てた。
ケースを開けるには鍵が必要ですが…。
一度預けた事がありましたよね。
うん?どうしました?いや…開かないんですよね。
おかしいですね。
ちょっと見てみるんで預かってもいいですか?
(米沢)お願いします。
こうして合鍵を作ったというわけです。
そして米沢さんのゴミからDNAを入手し…。
汚染させた綿棒を…。
現場まで尾行してはそのつど隙をついてすり替えていたというわけです。
タバコの吸い殻を残したのはあたかも連続殺人犯がいると見せかけるためです。
そうやって世間の注目を集めておけばのちに鑑識のミスだとわかった時に大々的に警察をおとしめる事が出来ますからね。
なんで俺がそんな事しなくちゃならないんです?前歴を調べました。
内田圭一。
罪状は満員電車の中で女性の体に触った事による強制わいせつ罪。
鑑識の鑑定により被害者の衣服と同じ繊維があなたの手から検出された事が決定的証拠となった。
直後勤めていた大手理学研究所を退職しましたよね。
事件を起こした事と無関係ではないでしょう。
あなたは警察そして鑑識に恨みを持っていた。
その恨みを晴らすために今回の計画を実行した。
いかがでしょう?まだ言い逃れ出来るとお思いですか?被害に遭った女性はあなたで間違いないって言ってるんですよ。
だからやってない!繊維鑑定の結果です。
あなたの手のひらに女性の衣服と同じ繊維がついていました。
こんなもの出されてもやってないものはやってない。
みんなそう言うんですよ。
でも証拠は嘘をつきませんから。
(内田の声)あの時の見下した目を一生忘れない。
人の人生めちゃくちゃにしておいて…。
で自分が管理人をしているマンションの住人に警察関係者がいると知って恨みの矛先を向けた。
じゃあ…私はたまたま標的に…。
それにしてもよくこんな事を思いつきましたね。
ネットでよく警察の失態を探してたからね。
なるほど「ハイルブロンの怪人」をヒントにしましたか。
ハイルブロン?ヨーロッパで起きた事件ですが鑑識が使う綿棒にもともと第三者のDNAが付着していたために40件にも及ぶ殺人事件に虚像の連続殺人犯が生まれてしまった事件です。
もっともその時のDNAは綿棒を作る工場で働く女性のものでまったく悪意のないものでしたがね。
研究所じゃ主任をしてたんだぞ。
なんでこんなところで管理人なんかしなきゃならないんだよ!お前らのせいだ。
いいえ。
他でもないあなた自身のせいですよ。
いかようにもやり直せたはずの人生の時間を恨みを晴らす事などに使っていたあなた自身の。
思いっきりぶん殴ってやりたいとこですがあなたのようになりたくないのでやめておきます。
(中園)「一連の連続殺人騒ぎはDNA採取用の綿棒をすり替える事によって警察をおとしめようとした悪意のある人物によるものでした」「なお容疑者はすでに逮捕しており現在取り調べ中です」
(記者)はい。
3人の死亡に事件性はなかったという事ですか?「そういう事です」4件目はやってない?現場には行きましたけど人が多くてとてもすり替えられるような状況じゃありませんでしたから。
嘘をつくな。
4件目の現場でも同じDNAが出てんだぞ。
(伊丹)「散々振り回しやがって」
(内田)「だとしたらそれは本当にあいつがミスしたんじゃないんですか」
(内村)米沢は本日付で退職させる事にした。
4件目の事でしたらまだ内田が嘘をついている可能性が…。
いや待ってられん。
これからはマスコミが今回の顛末を暴こうとしてくるだろう。
そこで米沢のミスが見つかってみろ。
その前にうちとは無関係な一般人にしておく必要があるんだ。
内田の取り調べ難航しているみたいですね。
ええ4件目を否定しているとか。
(米沢)失礼します。
米沢さん。
杉下警部甲斐さん米沢守最後のあいさつに参りました。
どうしました?先ほど刑事部長から退職を言い渡されまして。
えっ?でもまだ4件目が…。
いや実は4件目だけは自分自身少し心当たりがあるんです。
(米沢の声)窓から冷たい風が吹き込んできて…。
(くしゃみ)
(米沢の声)もちろんマスクはしていましたが…。
あの時汚染させてしまったのかもしれません。
今窓から冷たい風が吹き込んできたそうおっしゃいましたね?はい。
ただでさえ風邪をひいていたところ耐えきれず…。
なるほど。
そういう事でしたか。
お待ちしておりました。
米沢の事なら処分が決まったと課長から聞きました。
残念ながらもう私には何も出来る事はありませんが…。
米沢さんが言っていました。
山崎さんはこれまで一度もミスを犯した事がなく一度見た現場は写真のように隅々まで覚えていらっしゃると。
そんなあなたがなぜこの現場だけ記憶違いをしてしまったのでしょう。
は?先日現場の窓が臨場の際に閉まっていたとおっしゃいましたが実際には開いていました。
カイトくん。
臨場の際に撮られた現場写真です。
私にもついうっかりはありますよ。
うっかりですか。
本当に?は?ひょっとするとあなたには現場の事が頭に入らないぐらいひどく動揺する何かが起きていたのではないか?そう思いましてね調べてみました。
そうしたら見つかったんですよ。
どうぞこちらへ。
これです!先日タバコの吸い殻を探しながら歩いた時には枯れていなかったのですがここ何日かの間に…しかもここだけ。
なぜ枯れてしまったのでしょう。
お願いします。
米沢!非常に強い塩素反応が出ています。
塩素系の洗浄剤がまかれた痕跡かと思われます。
数日の間に枯れてしまったのも筋が通ります。
事件現場で塩素系洗浄剤といえばまず疑われるのは?血痕を消し去ったのではないかという事です。
ええつまりこういう事ではないでしょうか。
所轄の要請を受けいち早くこの現場に来たあなたは…。
草むらにあった血痕を現場に来る途中で踏んでしまった事に気づきます。
鑑識のかがみと呼ばれ威信を背負ってきたあなたが証拠物件を踏むなどという初歩的なミスを犯すわけにはいかない。
その時はまだただの事故だと思っていた。
ところが…。
(山崎)どうしてDNAをとってる?これが落ちてたんで。
遺体の手と足に傷が残ってました。
誰かが被害者ともめたあと火事に見せかけたという事もありえますので念のため。
早乙女!ちょっと来てくれ!はい!外にも血痕があった事を知っていたあなたの中でこれが殺人事件ではないかという不安が渦巻いたのは想像に難くありません。
万が一にも事件とみなされ綿密な捜査が行われれば自分のミスが暴かれる可能性がある。
場合によっては殺人事件の証拠隠滅。
鑑識のかがみであるあなたにとって決してあってはならない事です。
そんな折連続殺人のものと思われていたDNAが米沢さんのDNAだった事が判明。
この現場にも米沢さんが来ていた事を思い出したあなたは…。
科捜研へ送る綿棒を米沢さんのDNAをつけた綿棒にすり替えたのです。
この現場からまたしても米沢さんのDNAが見つかったとなれば先の3件同様早々に片づけられるはず。
どうしても事故にしたかったあなたはそう考えた。
つまり米沢さんにミスはなかった。
そうですね?最初はただ鑑識として間違いのない仕事をしようとしてただけでした。
でも…大きな事件をいくつか担当した事で勝手に鑑識のかがみなんて呼ばれ始めていつの間にかどんな小さなミスも許されない立場に追い込まれていたんです。
正直現場に行くたびすり減ってたんです。
だからって自分のミスを押しつけるなんて…。
3件のミスがわかった時点でもう米沢がクビになってしまうものだと思ってましたから。
だから自分のミスも一緒に持っていってもらおうとでも思ったのですか?米沢のミスではないとわかった時恐ろしくなりました。
自分を尊敬してくれている後輩に濡れ衣を着せて退職に追い込むのかと。
それでも今さら言い出すわけにもいかなかった。
自分のミスを隠すために殺人事件の証拠を闇に葬ったなんて。
それこそがあなたの不安が作った虚像だったんですよ。
えっ?窓は開いており近隣住民も爆発音を聞いている。
考えられるのは煙にまかれた被害者が窓を開けた事によって起きたバックドラフト。
つまりこれは事故だったんです。
しかしだったらあの血痕は…?問題はそこです。
米沢さん。
はい。
(米沢)現場近くのゴミ捨て場で見つけました。
遺体の手についていた傷口とおよそ一致しています。
被害者はゴミを捨てる際に誤って手を切ってしまっていたんです。
(藤田洋二)なんでこんなとこにあるんだよ!痛えな…!馬鹿野郎…ったく…。
ああ痛え…。
手当てのために作業場に戻った時に火災に巻き込まれてしまった。
(爆発音)それじゃ…もともと事件なんかじゃ…。
いつものあなたならばそんな事には気づいたのでしょうがねぇ…。
規制線の中だけを現場だと思うな。
最初の現場であなたに教えられた事です。
そうだったな。
すまん!とても許してくれとは言えないが…。
許せるわけがないでしょう!私に押しつけたかどうかが問題なんじゃない。
あなたのやった事はミス以上にどんな事があってもやってはならない事ではないですか!
(米沢)たったひとつの物証が善悪を決め人の人生を変え時に奪ってしまう。
鑑識とはそういう仕事だと…あなた…あなたが私に言ったんじゃ…!
(米沢)もうお会いする事はないと思います。
(警察官)お疲れさまです。
米沢さん無事に復職出来てよかったですね。
今回の件で米沢さんに咎はありませんでしたからねぇ。
係長の事はショックだったでしょうね。
ずっと目標にしてきた人を失ったわけですから。
さあそれはどうでしょうねぇ。
はい?失ったからこそ初めて背負う覚悟を決めたのかもしれませんよ。
かがみであろうとする重みを。
米沢さんがかがみか…。
なってほしいですねぇ。
2015/09/19(土) 16:00〜16:55
ABCテレビ1
相棒season13[再][字]
第11話「米沢守、最後の挨拶」
連続殺人と見られる事件の犯人は米沢だった!
米沢は警察を去ることに!?
特命係が“米沢守、最後の挨拶”を見届ける!
詳細情報
◇番組内容
都内各地で同一犯による連続殺人と見られる事件が発生!手掛かりは3つの現場すべてに残されていた犯人と思しき人物のDNA。この“連続殺人犯”が鑑識・米沢(六角精児)だったことが発覚し大問題に。米沢はクビを宣告されてしまう。右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は憔悴しきった米沢を放っておけず独自の捜査を開始。そんな中、右京たちは3つの現場から“共通の痕跡”を見つけ出すのだが、米沢は特命係に最後の挨拶にやってくる…!?
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹
六角精児、川原和久、山中崇史、山西惇、小野了、片桐竜次
【ゲスト】池田政典、大高洋夫、奥田恵梨華、藤井宏之
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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