人間の最高のパートナーイヌ。
私たちはイヌの事をどれだけ理解しているのでしょうか。
イヌから見た世界人間に対する思い。
不思議な能力を持つさまざまなイヌをご紹介します。
(モーリーン)マックスのおかげでがんが見つかりました。
献身的なイヌ。
(アレン)あの子が私の命を救ってくれました。
そしてこんなイヌも。
(ルイーズ)自分で勝手に覚えたんです。
更に生まれたばかりの子犬が盲導犬になるまでを追いその成長を通してイヌに秘められた能力を解き明かします。
近年イヌについての研究が飛躍的に進みました。
その結果は驚くべきもので人間のイヌに対する見方を大きく変えてしまうかもしれません。
世界中のあちこちで日々誕生するイヌ。
ここにも生まれたばかりのメスがいます。
番組ではこのメスの成長を見守ります。
体重500gにも満たない小さな命です。
生まれた時は目が見えず生後2週間は耳も聞こえません。
とても未熟な状態です。
体温をうまく調節できないため母親のぬくもりが欠かせません。
子犬が自力で生きられないほど未熟な状態で生まれてくるのは小さければ小さいほど母親がたくさんの子供を産めるからです。
そして子犬の多くは母親に守られて生き延びる事ができます。
イヌが数を増やし続けてきた理由はそれだけではありません。
イヌは驚くべき能力を秘めているのです。
イヌは地球上で最も成功した哺乳類の一つです。
世界中におよそ5億匹が生息しその種類は400を超すと言われています。
イヌには優れた身体能力があり水を振り落とす動作にも表れています。
1,000分の1のスピードで見ると頭が180度回転している事が分かります。
この動きによって弾みをつけ頭からお尻までねじり水を素早く落とします。
そして体を冷やさないようにするのです。
とても効率的な方法です。
しかしイヌが繁栄した最大の理由は人間との関係にあります。
人間は昔からイヌを訓練し狩猟犬や番犬牧羊犬として活用してきました。
一方イヌも人間と積極的に関係を築こうとしています。
飼い主が必要としている事を理解し助け喜ばせたいと思っているのです。
(ルイーズ)自分で勝手に覚えたんです。
ジェスおいでほら。
座って。
お座りお座り。
ジェスは10歳のスプリンガー・スパニエル。
牧羊犬として農場の手伝いをしています。
ヒツジの出産時期になるとミルクの容器を運び更には母親のいない子羊にミルクを与えます。
本能を超えた行動です。
(ルイーズ)ジェスのおかげで助かっています。
ヒツジと一緒に育ったから家族のように思っているのかもしれません。
ジェスは飼い主と揺るぎない信頼関係を築いています。
(ルイーズ)時には全く言う事を聞かない日もあります。
でもふだんのジェスはイヌというより親友のような存在です。
人間とイヌの信頼関係はイヌが幼い時期に築かれます。
子犬の様子を見てみましょう。
生まれてから2週間がたちようやく周囲を意識し始めた頃です。
閉じたままだった目と耳が開いてきました。
だんだんと視覚や聴覚による刺激を受け取り新しい世界への扉が開かれます。
イヌに見えている世界と人間に見えている世界は異なります。
見えている色が違うのです。
その原因は色を認識するための細胞の種類にあります。
人間は3種類なのに対しイヌは2種類しか持っていません。
そのためイヌにはほとんどが青と黄色に見えます。
オレンジ色のおもちゃは緑色の芝生と区別がつかないので遊ぶなら青いおもちゃがお勧めです。
一方動くものに対しては優れた能力を発揮します。
イヌの目は人間の目よりも物を識別するスピードが速いからです。
フリスビーはイヌにとってはスローモーションのように見えます。
このためいち早く正確な場所で待ち構えて捉える事ができるのです。
イヌは聴覚も優れています。
距離では人間の4倍高さでは2倍の音まで聞き取る事ができます。
人間には聞こえないイヌ笛や電球がともる音デジタル時計の振動音も聞き取る事ができます。
イヌが最も頼りにしている感覚が嗅覚です。
イヌの脳全体の大きさは人間のおよそ10分の1ですが嗅覚に関する部分は40倍もあります。
また匂いを感知する受容体の数は3億個。
人間の60倍もあります。
このためイヌから見えない所に骨を隠しても無駄なんです。
子犬が生まれてから4週間がたちました。
床に鼻をつけるように嗅ぎ回り家の中を探索しています。
イヌの鼻が常に湿っているのは大気中からできるだけたくさんの匂いの分子を捉えるためです。
鋭い嗅覚は過去に遡って嗅ぎ分ける事ができます。
新しい場所に足を踏み入れた時も鼻を使って情報を集めます。
片づけたばかりのものはもちろん数か月前のものも嗅ぎつける事ができます。
こうして少しでも食べ物が残っていないかを確認しているのです。
イヌにとっては生まれながらの本能です。
訓練しこの能力をうまく活用する事で人の命を救う事ができます。
(アレックス)よし行け!1匹で人間10人分くらいの力を発揮してくれます。
マックスは大気中の匂いを嗅ぎ分け行方不明者を探す救助犬です。
(アレックス)人間には匂いがあります。
マックスは風に運ばれてくる匂いを捉え位置を突き止めるんです。
見つけると興奮してアピールします。
マックスはこれまでに多くの成果を上げています。
お前はよくやっているな。
救助犬は時として最後の頼みの綱となります。
(マーガレット)買い物帰りにバスに乗ったの。
近くの停留所で降ろしてもらおうとブザーを鳴らしたんだけどなぜか止まらなくて。
ず〜っと先まで行ってしまったんです。
「森を抜ければ裏口に着くから大丈夫」と思ってバスを降りたんだけれど森の中で迷ってしまって…。
ふだん森には誰も立ち入らず長い間手入れもされていませんでした。
予想以上に木が生い茂っていたのです。
(マーガレット)イバラに足をとられて身動きがとれなくなってしまいました。
だんだんと暗くなり寒くなってきたから大きな木の下に横になる事にしたんです。
警察やボランティア赤外線カメラを搭載したヘリコプターによる懸命の捜索にもかかわらずマーガレットが行方不明になってから3日が過ぎようとしていました。
凍えそうでした。
そこで呼ばれたのがマックスでした。
手遅れになる前にイヌの嗅覚に最後の望みが託されたのです。
(マーガレット)うとうとしていたらあなたが…いいえマックスが私を見つけてくれた。
(アレックス)そうマックスだ。
お利口さんだったねぇ。
マックスの嗅覚が人間には見つけ出す事のできなかったマーガレットの命を救ったのです。
(マーガレット)ベロベロなめられた時は心底ホッとしました。
あなたもうれしそうだった。
いい子。
ええ。
ねえ。
子犬が生まれてから5週間がたちました。
ますます好奇心旺盛になりあらゆるものにかみついています。
そしてじゃれついてもいい相手は誰かを判断しています。
何よりもイヌとして生まれた事の意味を認識しつつあります。
2匹の子犬がじゃれ合う何気ない行動の中にも野生の本能が隠されています。
狩猟本能です。
支配や服従の行動は群れでの暮らしに欠かせません。
こうした行動はイヌの先祖がオオカミだった事と関係しています。
同じ先祖から誕生したのになぜイヌにはこれほどたくさんの種類があるのでしょうか。
原因は人間にあります。
人間がイヌを飼う過程で野生の振る舞いは取り除かれ新たな特徴が生み出されていきました。
更に特徴を際立たせるために交配を続けた結果今のように多種多様な種類が誕生したのです。
イヌ同士であれば種類が違っても交尾する事はできますがセントバーナードとパグの大きさの違いは10倍以上。
現実的には難しいようです。
しかし全てのイヌに共通する特徴が一つあります。
ほえる事です。
(ほえる声)イヌはなぜほえるのでしょうか。
オオカミは遠ぼえをしますがほえません。
(遠ぼえ)科学者の中にはイヌがほえるのは人間に語りかけているからだと言う人もいます。
少なくともイヌは人間の言葉を理解しているようです。
(ルイーズ)掘って。
話せ。
(ほえる声)よ〜し。
ほえる事でイヌは何かを伝えようとしているのでしょうか。
愛犬家たちにイヌの気持ちをくみ取れるかテストをしました。
イヌ同士ならすぐに分かるんでしょうけど…。
OK。
聞こえないわ。
あっ。
不機嫌ね。
イラついています。
かまってほしがっている。
広場かどこかでヒモにつながれているイヌがヒモを解いて誰かの元に行きたがっている感じかしら?
(イヌのほえる声)うれしそうだ。
遊んでいるんじゃないですか。
誰かがボールを投げようとしているのでしょう。
興奮してはしゃいでいるように聞こえます。
イヌはほえる事で少なくとも6種類の感情を人間に伝えている事が分かっています。
お前の考えはお見通しだ。
これで分かったわね。
イヌはほえる事で話しているって。
私たちの子犬は環境に慣れるのに一生懸命でまだ人間とコミュニケーションをとろうとはしていません。
5週間がたち少しずつ母親から離れて独り立ちしようとしています。
もうミルクは卒業して水を飲んでいます。
イヌの舌先には水の味を感じる特別な器官があります。
そのためイヌは水をしっかり味わえるのです。
またイヌの好物の肉には塩分が含まれているためイヌには水が欠かせません。
水を飲むという何気ない動きにも複雑な行程があります。
イヌは水を飲む時水の中で舌を巻き水をすくう面積をできるだけ広げます。
そして水を口の中へ運ぶとこぼれてしまわないように素早く口を閉じます。
複雑で美しい動きです。
起きている時間よりも寝ている時間の方が長いのは子犬も人間の赤ちゃんも同じです。
新たな発見の連続でぐったりと疲れ深い眠りに落ちます。
イヌも夢を見ます。
脳波を測定したところ大人のイヌよりも子犬の方がたくさんの夢を見る事が分かりました。
イヌはその日の出来事を夢に見る事で記憶を整理していると考えられています。
子犬は世界有数のドッグセンターにやって来ました。
盲導犬になる資質があるかどうかのテストを受けるためです。
最初のテストでは聞き慣れない少し怖い音に対してどう反応するかを見ます。
反応はしてもパニックを起こしてはいけません。
いい子だ。
集中して聴いていたね。
最も大切なのは飼い主に対していかなる時も忠実である事です。
子犬ちゃんおいで。
ほら。
そういい子だ。
よし。
合格です。
文句なしだ。
盲導犬になる資質があるかある程度なら簡単な観察で分かります。
イヌの「利き足」を調べるのです。
お前は左利きかな?どうだ?なあ。
どちらの足から歩きだすかによって見分ける事ができます。
右足からだった。
おいで。
左足ね。
左利きか。
(アレン)よし来い。
テストの結果この子は右足から歩きだしている事が分かりました。
調査によると右利きのイヌの方が盲導犬の試験に合格する確率が高いとされています。
もう一つヒントとなる特徴があります。
つむじの巻く方向です。
時計回り。
反時計回り。
右利きでつむじの向きが反時計回りのイヌは機転が利き冷静で自信に満ちたイヌになる可能性が高いと言われています。
盲導犬には欠かせない資質です。
一方左利きのイヌは困った時に思いも寄らないような解決策をもたらしてくれるかもしれません。
私たちの子犬はこれから1年間盲導犬の訓練を受ける事になりました。
このイヌも右利きです。
今は仲間と遊ぶ事に夢中です。
人間ははるか昔からイヌをしつけその優れた身体能力を生活に役立ててきました。
シベリアン・ハスキーはその良い例です。
抜群の運動能力を持ち氷点下でも一日に150km以上走り続ける事ができます。
しかも楽しみながら。
2層になった毛が寒さから体を守ります。
氷点下50℃でも凍傷になる事はありません。
体温を下げたい時は他のイヌと同じように口で荒く息をします。
熱探知カメラで観察すると体内から排出された熱で口と舌が高い熱を帯びている事が分かります。
体じゅうを毛で覆われているイヌは汗をかく事ができません。
イヌが走ったあとに荒い息をするのは息切れをしているからではなく体の熱を逃がすためです。
イヌは昔から人間の仕事を助けてくれる仲間でした。
バセット・ハウンドは獲物を見つけロットワイラーは家を守りアフガン・ハウンドは獲物を追いかけ…。
シベリアン・ハスキーは厳しい環境で持久力を発揮してきました。
一方人間は愛らしいだけのイヌも好んできました。
役に立つかどうかに関係なくイヌは私たちの心をつかんできたのです。
私たちが成長を見守っている子犬も人間と絆を結ぶ段階に来ました。
生後9週目。
新しい家で人間との暮らしを学びながら盲導犬になる準備を始めます。
この時期子犬は人間との関係を築きたがります。
新生活への第一歩を踏み出すには絶好のタイミングです。
人間の脳は愛らしい子犬を見ると人間の赤ちゃんを見ている時と同じ反応をします。
ではイヌは人間を見て何を考えているのでしょうか。
人間の気持ちを感じ取っているのでしょうか。
(アレックス)人間の気分を察知できます。
(ルイーズ)イライラしているなぁなどと私の気分を分かっていますね。
(アレン)傷ついている時も悲しんでいる時も…イヌには何でもお見通しです。
人間は他人の感情を読み取ろうと無意識に相手の顔の左側を見ます。
そこに感情が表れやすいからです。
実験によりイヌも顔の左側を見て人間の感情を読み取っている事が分かりました。
人間を元気づけようとするイヌの愛情表現が人生さえ変えてしまう事があります。
アレン・パートンは湾岸戦争に従軍中に頭に傷を負い歩く事も話す事もできなくなり更には記憶の半分を失ってしまいました。
子供たちが生まれた日の事も初めて歩いた日の事も思い出せません。
記憶がなくなってしまったんです。
アレンは子供たちの顔も覚えていませんでした。
妻が誰だかも分かりません。
アレンは感情をすっかり失ってしまいました。
(アレン)2度自殺しようとしました。
過去も未来も失い精神的にも身体的にも最悪の状態でした。
そんな日々を変えたのがエンダルという名の1歳のラブラドール・レトリーバーとの出会いでした。
(アレン)エンダルは介助犬として落第生でした。
初めて会った時エンダルは落とし物を見つけ私の膝の上に載せました。
ところが私は何も反応しませんでした。
エンダルは頭にきたのでしょう。
せっかく物を拾ったのに褒めてもらえず無視されたわけですから。
そこで今度は缶詰をくわえてきて私の膝に載せました。
でもやはり反応がない。
エンダルは物を載せ続けもう載らないという時に私は思わずほほ笑みました。
本当に久しぶりに笑ったんです。
それが始まりでした。
エンダルは24時間アレンのそばに付き添い必要な事は何でも手伝いました。
そしてアレンと家族の関係まで修復しました。
2002年にアレンは妻と2度目の結婚式を挙げました。
エンダルが特に献身的な愛情を示したのがアレンが交通事故に遭った時でした。
(アレン)私は車椅子から投げ出され意識を失ってしまいました。
エンダルは私が息をできるように横たわらせ車椅子の下から毛布を引っ張り出して体に掛けました。
そして足を引きずりながら近くのホテルまで助けを呼びに行ったんです。
エンダルはこの事で表彰されました。
あの子は私の人生と命を救ってくれました。
エンダルはアレンと家族の人生を変えました。
エンダルとアレンは深い絆で結ばれ幸せな日々を送りますがやがてエンダルにも老いが忍び寄ります。
(アレン)亡くなる前日私はエンダルに心から愛していると伝え私のために尽くしてくれた事に感謝しました。
胸がいっぱいでした。
エンダルが最後に教えてくれたのは悲しみです。
エンダルの死で私はそれまで忘れていた「悲しい」という気持ちに包まれ涙があふれました。
その時ハンカチをくわえたイヌが部屋の隅に立っていました。
1年間エンダルと共に育ったこの子があの日エンダルからのバトンを受け取ってくれたんです。
(アレン)いい子だ。
うちのイヌももっと利口だったらいいのにと言う人がいますが私はイヌはみんな同じように利口だと思っています。
子犬が生まれてから3か月。
盲導犬になるための訓練が本格的に始まりました。
まずはお座りや主人に呼ばれたら戻るといった簡単な指令を学びます。
基本的な動作ばかりですが盲導犬になるためにはどれも重要です。
家族との絆も深まっています。
顔をなめたりキスをしたりする動作は愛情の表れです。
口をなめるのは子犬の時に母親の口の中の食べ物をねだった事から始まっています。
相手を母親のように慕っている証拠です。
子犬は9か月になりました。
体はほとんど大人と同じです。
しかし10代の若者のようにまだどこか幼く危なっかしい様子です。
盲導犬の訓練は次の段階に進みました。
初めての景色や音匂いに触れ何よりも家族との関係を深めています。
人間とイヌの関係をはかる目安にあくびがあります。
あくびがうつるのは共感の表れだからです。
もし飼い犬にあなたのあくびがうつったらよい関係が築けている証拠です。
人間はどうしてイヌといるとリラックスできるのでしょうか。
ここはロンドンにある小児病院。
マギーは普通のイヌですがある特別な役割を担っています。
ほらジョージマギーよ。
ジョージは1年ほど前からこの病院に入院しています。
ジョージの楽しみは週に一度やって来るマギーとの時間。
そこにはただ触れ合う以上の効果があります。
キスしてくれた。
イヌをなでると人間は喜びを感じリラックスする事ができます。
オキシトシンと呼ばれるホルモンが分泌され血圧が下がるからだと考えられています。
オキシトシンは母親が赤ちゃんに授乳する時に分泌されるホルモンです。
つまり人間はイヌをなでる事で母親が赤ちゃんに抱くのと同じような穏やかで温かな結び付きと愛情を感じる事ができるのです。
(キム)うれしいわねマギー。
イヌを飼うと長生きするという統計もあります。
心臓発作の発症率が下がりイヌの助けで発作時に命を取り留める確率も高くなるというのです。
なでられたイヌも同じくオキシトシンが分泌され血圧が下がります。
つまり母と子が感じる結び付きをイヌも感じているのです。
人間とイヌの絆はどれほど深いものなのでしょうか。
イヌが人間の事を人間以上に理解していると考える人もいます。
散歩に行く事を事前に察知するイヌ。
飼い主が気を失う前にそれを予測するイヌ。
まるで超能力第六感を持っているようだと考える人もいます。
子犬は1歳になりました。
訓練所で盲導犬になるための厳しい特訓を受けています。
人間と関係を築く事はできました。
これからはそれをもとに盲導犬として必要な能力を発揮する事が求められます。
目の見えない人を介助する盲導犬は相手が何を必要としているかを予測し足元の障害だけでなく頭上の障害物にも気を配らなくてはなりません。
目が見えない飼い主が頭を打ってしまわないようアーチの下をくぐるのを避けました。
(トレーナー)いい子ね。
驚くべき観察力です。
実はイヌは他の動物と比べ物にならないほど常に周囲に気を配っています。
私たちが支度をする前から散歩に行くって分かっているようです。
イヌは人間が意識するよりも早く人の身振りから状況を読み取ります。
その鋭い観察力が人間にはまるで第六感のように思えるのです。
マックスはボーダーコリーの雑種。
いつもは元気いっぱいですがある時飼い主のモーリーンが異変に気付きました。
(モーリーン)呼んでも来ないし隣に座ろうとも膝の上に乗ろうともしませんでした。
そしておかしな事に私の胸に鼻をつけたと思ったら悲しそうな目をして離れていくんです。
モーリーンの胸には小さなしこりがありましたがマンモグラフィーの結果は陰性でした。
最初は何て事のないただのしこりだと思っていたんです。
でもそのうちマックスのおかしな態度と関係があるのではないかと思い始めて…。
ある時鏡越しにベッドに横たわるマックスと目が合ったんです。
その時この子の目を見て確信しました。
がんなんだとね。
精密検査の結果マンモグラフィーとCTスキャンでは見つからなかったがんが確認されました。
しこりを取り除くとマックスの態度は一変しました。
(モーリーン)退院するとなんとまた元の元気なマックスに戻っていたんです。
私の胸に鼻をつけて手術した箇所をチェックすると尻尾を振ってうれしそうな目をしました。
あの変わりようには驚きました。
マックスにはどんなに感謝してもしきれません。
今でも検査の前にはマックスにチェックしてもらっています。
うれしそうに尻尾を振ってくれれば一安心。
問題のない証拠ですから。
マックスはがん細胞から生じる匂いに反応したと考えられます。
この能力はほとんどのイヌにあります。
訓練を積めば尿サンプルからがん患者を突き止める事もできます。
(トレーナー)いい子ね。
糖尿病患者に血糖値が下がってきた事を知らせるイヌもいます。
本人が気付いたり気を失ったりするずっと前に嗅ぎつけてくれるのです。
他にも重度のアレルギー反応やてんかんの発作睡眠障害に対して早い段階で警告を発してくれるイヌもいます。
特別な訓練を受けたイヌが人々の生活を変えているのです。
私たちが成長を見守ってきたイヌは1歳半になりました。
立派に成長し優秀な盲導犬として目覚ましい成果を上げています。
それだけではありません。
とても優秀なので子供を産む事になったのです。
イヌも人間と同じようにつわりや食欲が旺盛になる事があります。
そして妊娠からおよそ60日で出産を迎えます。
新たな世代の誕生です。
(ルイーズ)これほど掛けがえのない存在になるなんて思いませんでした。
ペット以上の存在です。
(アレックス)一緒に外に出る度に新たな発見があります。
(キム)イヌは人間に多くのものをもたらします。
最高ですよ。
(アレン)イヌは献身的に尽くし人間は愛情を注ぐ。
私たちはチームなんです。
イヌは利口だしすばらしい能力を持っています。
愛しているわ。
今イヌについての研究が進められています。
イヌについて知れば知るほど私たちの愛情は深まりそのすばらしさに魅了されるのです。
試験管で水を温めると…。
2015/09/19(土) 19:00〜19:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「イヌ その秘められた力」[二][字]
人間と最も親密な関係を築いているとも言われるイヌ。最新の研究から、その秘められた能力の数々に迫る!生まれたばかりの子犬が盲導犬に成長するまでにも密着。
詳細情報
番組内容
世界に400を超える種類がいるとされるイヌ。人間の4倍の聴力、60倍の嗅覚があると言われ、牧羊犬や介助犬などとして人間社会で様々な役割を担ってきた。最新の研究では、ガン細胞を匂いでかぎ分ける能力があるとされ、人を癒やす力も科学的に証明されつつある。イヌに助けられた人々の感動ストーリーや子犬が厳しい訓練を経て盲導犬として成長していく様子も紹介。イヌの不思議な力をひも解く。(2010年イギリス)再放送
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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