県庁の役人?こっちに向かってる?丸亀という男だね。
ああ。
ご忠告ありがとう。
う〜ん…。
(ヒナ子)朝っぱらから何のご忠告ですか?ああ。
県庁の若い役人がわしば殺すためにこっちに向かっているという忠告だ。
「ピストルでわしば撃つ」て言うとるそうだ。
何で社長さんば!昨日商工会議所でした演説の中身が気に食わんらしか。
ま〜た人が怒るような事ばしゃべったとですか!ハハッ。
役人は人間のクズって言うただけだ。
そりゃいけん!どこがいけんか?今の役人は軍人とつるんで日本中の会社に手ば突っ込んでくる。
わしの会社もほかの会社と十把一からげにして国が管理するそうだ。
国が管理してうまくいった会社がどこにある!会社も人も自由競争して大きゅうなる。
その自由を奪って何が挙国一致体制だ!「アホも休み休み抜かせ」と言うたまでだ!
(悲鳴)しかしまあ人間のクズと言うたとはわしの言い過ぎだったかもしれない。
そんな事で暗殺されるのは真っ平ごめんだ。
なあヒナ子。
(ヒナ子の悲鳴)
(丸亀)松永〜!昨日の講演の事なら謝りましょう。
あなた方をクズと言うたとはわしの不明でありました。
万々…お許し頂きたい!何て!?
(中村)
これが当時電力業界の大立者といわれた松永安左ェ門である。
松永はケンカ上手といわれ仕掛けるのも早かったが引くのも早かった
(くしゃみ)わしは戦には反対だ。
それでもどうしてもあなた方がやると言うんなら国家統制なんぞ言わずにもっと自由に民間に電気を作らせるべきじゃないかね。
電力不足じゃ戦車も軍艦も造れない!今のまま戦を始めたら途中で参っちゃいますぞ。
お言葉だが…戦車の不足分は日本的精神が補うという心構えが帝国陸軍にはあるという事をお忘れなく。
陸軍大臣今度の閣議ではその事も話し合うべきだね。
お言葉だが今必要なのは日本的精神ではなく科学的精神だと思うがね。
松永さん。
先日お願いした件ですがお考え頂きましたか?わしは大政翼賛会に興味はない。
しかしあなたに入って頂ければ…。
かつて公はわしに…「電力の国家統制はやらん」と仰せになった。
しかし約束をお破りになった。
もうよろしいでしょう。
戦は…負けますよ。
日本は戦争に突き進むために電気事業の国家統制を強行した。
松永は反発し一切の職を辞し公の場から姿を消した。
国に対しケンカを売ったのである
(玉音放送)
日本は太平洋戦争に突入しアメリカを中心とする連合国に敗れた
敗戦国日本はマッカーサー元帥が率いる連合軍総司令部すなわちGHQの支配を受ける事になった
電気をよこして下さい。
戦後の日本は深刻な電力不足に見舞われた。
発電所の復旧もはかどらず工場も家庭も停電続きであった
・
(佐藤)あ〜!松永さ〜ん!ハハハッ!松永さん!ああ!ああ!あっ!見て下さい。
この測水所の50年間の記録です。
はあ〜。
20年前松永さんはこの只見川にダムを造ると何ワットぐらいの電気を起こせるかとおっしゃいました。
ああ。
この水量から考えて200万キロワットはいけると思います。
200万キロワット!?はい。
いや…今日本の水力発電は全国合わせて460万キロワットだぞ。
はい。
火力を合わせても700ちょっとだ。
何!?200万か?はい。
いやいやここだけじゃないぞ。
え〜信濃川…それから黒部にも水がある。
それを全部合わせれば今の倍の電力になる。
そういう計算が成り立つ。
そうなるとここにも電気を通す事ができますでしょうか?もう50年間このろうそく暮らしです。
通る通る!ハッハッハッハッ!山の中離れ小島日本中どこでも電灯がつく時代が来る!
(笑い声)はい。
この水を使えば必ずそうなる。
日本には資源がないというがほれ!こんなに眠っちょる!
(成彬)日本発送電ね。
マッカーサーは電力会社にもメスを入れたい訳かね。
戦前に軍をつけあがらせた組織は皆解体させろという訳です。
この日発ももともとは民間でやっていた各地の発電事業を軍の意向でひとまとめにした会社ですから。
しかし日発は4万人の巨大組織だ。
解体するとなると大混乱じゃないかな?いや私も内閣を預かってはおりますがこの日発を潰すとなるとおっかなびっくりなんです。
GHQも矢面には立ちたくないのです。
「しかるべき委員会を設けて電力事業の再編成をやらせろ」と言ってきてます。
そうは言っても電力関係の大物といわれる人たちは皆公職を追放されてます。
誰に委員会をお願いするか頭の痛いところです。
我々に代わって大なたを振るえる人物がおるかどうかです。
う〜ん…。
戦争中軍に背を向けて埼玉の奥でお茶を飲んで暮らしていた男がいる。
私と同じ福沢諭吉の門下生なんだが野蛮な男でね。
学生の頃夜中に「腹が減った」と言って福沢先生が大切に飼ってらした鶏を食っちまったそうだ。
ほう。
福沢諭吉の鶏をね。
ああ。
ハハハッ。
そりゃ乱暴だ。
(笑い声)聞いた事がある。
松永安左ェ門さんですね?電力通で大の役人嫌いでいささか手には余るが大なたは…似合う。
昭和24年11月。
電気事業再編成審議会が通産大臣の諮問機関として発足した。
委員長に指名されたのは松永であった。
松永は3等列車に乗って小田原から東京へやって来た
審議会の委員は松永を入れて5人であった。
財界の重鎮であり日本製鉄社長の三鬼隆。
組合運動を熟知した理論家肌の国策パルプ副社長水野成夫。
金融界からは復興金融金庫副理事長工藤昭四郎。
そして法学者で慶應大学法学部長の小池隆一である
(笑い声)あ〜そうそう。
こないだ大臣が話しておられた選挙の不正事件あれね買収を公認にしちゃえばいいんだよ。
あっちの候補者はこれこれこれだけの金を払った。
でお前はいくら出すんだ。
そのうち金額がつり上がって買収が割に合わなくなる。
すなわちプライス・メカニズムです。
(稲垣)なるほど!
(笑い声)
(三鬼)松永君の話は面白いね。
あなたは元文部大臣の平生釟三郎さんとお友達でいらっしゃるとか。
平生さんは日鉄の社長時代に私ら若いもんの面倒をよく見て下すった恩義ある方です。
その方のお友達とご一緒できて実に愉快だ。
味噌も糞も一緒にしてはいかん。
平生はあなたの親分かもしれんが虚栄心の強い男でねえ大臣になって喜んでるような男だった。
私は軽蔑してますよ。
それと友達同士などと言われるとまあ迷惑な話だ。
ああ。
ハッハッハッ。
翌日委員たちは総司令部との会議に向かった。
総司令部の意向を無視しては何事も前に進まなかったからである
(国安)科学局顧問のケネディ氏です。
電力問題のエキスパートです。
あなた本国では電力会社の会長だそうですね?I’veheardthatyouarethechairmanofapowercompanyinyourcountry.Yes,Iam.会長が会社からもらう給料は月々おいくらですかな?彼の給料を聞いている。
そのまま訳しなさい。
Mr.Matsunagaisinterestedinlearningaboutyourmonthlycompensationaschairmanofthecompany.
(国安)重役たちの5割増しはもらっておられたと。
ほほう。
そんなもんですか。
ハッハッハ!いや私はね10倍以上取ってましたよ。
ハッハッ!しかし10年ほど前軍と革新官僚と呼ばれる役人どもが電力会社をひとくくりにして国家管理にしてしまった。
わしはそれと闘ったがまあ見事に負けてしまった。
ハッハッハッハッハッ。
おかげで給料はふいです。
これはそのあだ討ちです。
(タイプライターの音)
総司令部側の要求は電気事業の国家管理を廃止する事および日発を解体し各地に民間会社を設立せよというものであった。
当時は国が税金を補填する事で電気料金を低く抑えており産業界もその恩恵を受けていた。
その仕組みが全面変更を迫られたのである
総司令部は予告どおり日発の全面解体だ。
(高橋)はっ!何だ?これは!いいか!GHQの意向がどうであれ日本の経済界を支えてきたのは我々日発なんだ!
(一同)オ〜!
(高橋)三鬼社長もそう考えてらっしゃいます。
財界は解体に反対です!国会の先生方にも手は打ってある。
問題は審議会の委員長だ。
あのじいさん煮ても焼いても食えない。
私が首相側近の白洲次郎から紹介され松永の秘書をやる事になったのはこのころであった
すみません。
あの茶わんを買うかどうか迷っておられます。
(ため息)おやまあ…。
置いてけ。
(河村)お〜。
ありがとうございます。
駄目駄目。
おじいちゃんこの前買うた粉引とその茶わんとどこが違うの?いや…。
そっくりでしょ。
ハッ!何?そっくり?これはこれでいいんだ。
駄目ですよ。
どう見てん同じもんやわ。
無駄遣いはいけん。
よしなさい。
う〜ん…。
河村ちょっと。
はい。
河村!河村!こないだ買うた水指おじいちゃん小切手出したか?はい。
頂きました。
うん。
よかった。
早う換金せんといけんよ。
あん人はすぐしょんべんするけん。
(河村)はあ…。
(一子)今日はお帰り。
(河村)えいや…いや…。
しょんべんというのは古物商の隠語で心変わりをして返品する行為の事だ。
松永の急所を一子夫人はしっかりと押さえておいででした
11月末に始まった審議会は12月6日にはもう3回目の審議を行うという忙しさであった
(うがい)あ〜先日私は事務当局に対し日発を解体して全国9つのブロックの民間会社に分けた場合どのような収支になるか計算するよう指示を致しました。
お手元の書類がそれであります。
ちょっと待ってもらいたい。
まだ我々の中で日発を全面的に解体するという結論は出ていない…。
私はあくまで勉強するように指示を出しただけです。
物はない。
電気も不足してる。
こういう時期に日発を完全に無くせば必ず混乱が起こる。
GHQの集中排除法に触れるというのなら縮小して残せばいい。
日発の問題は電気料金の問題でもあって簡単ではない。
そのとおりです。
戦後石炭は100倍に値上がりしたが電気は35倍の値上がりで抑えられました。
その差額を国が負担した…。
そういう議論は今日はしない!なぜしない!あなた方は電気の素人だ。
わしが骨子を作ってから説明する。
そういう言い方は横暴でしょう!事実だからしかたがない。
事務局長!
(小室)はい!問題発言だと思わんか!はい!今日はこれにて散会する!まだ話す事がある!
(くしゃみ)
審議会は年を越したが委員長の松永と委員たちの議論はかみ合わないままであった
(白洲)総司令部がいらいらしてる。
要するに日発をどの程度温存するかでもめてるんだろ?三鬼さんは日本一の製鉄会社を抱えている。
電気料金を安いまま据え置きたいんです。
しかし松永さんは一切妥協しない。
お手上げですよ。
(クラクション)この件は国会でも与野党を問わずみんな反対なんだ。
ちょっと相手に歩み寄るよう進言してみてくれよ。
あの人を委員長に推薦したのはあなたでしょ。
ご自分で進言したらどうですか?私だってしんどいんです。
松永は日本独自の民営化の道を模索していた。
総司令部とも激しいやり取りが続いた
京浜工業地帯を抱えるこの関東には電源となる川がない!ダムがない!しかしこの猪苗代には大量の水がある!これを水源とする阿賀野川にダムを造ればやれる!早期の復興にはこのやり方しかないんだ!だからそうはならんのだよ!
松永は次々と自説を展開していった
この9つの電力会社が健全に育っていくためには政府から独立した第三者機関公益事業委員会を設けて電気事業全体を監督していく必要があります。
そうですよね?小池君。
あ…その点はそのとおりだと…。
全国あまねく電気が利用できるよう調整するのがこの委員会です!我々は今日まで各界のヒアリングを行いさまざまな意見を聞いてきた。
おおかたの意見は電気は国民の生活を左右するものであり急激な変化を今は求めないという事だったはずだ。
我々委員全員の意見もまだ出ていませんし。
私ももっと皆さんの意見が聞きたい。
小池先生も法学者としてのご意見がおありでしょう。
もちろん!
(はなをすする音)え〜もっと議論して頂きたいと思います。
委員長議論が足りません!小僧は黙ってろ!こ…小僧!?私にも発言権はあります!役人は引っ込んでろ!私は引っ込みませんし小僧でもありません!今日は終わり!ちょっ…。
松永の東京の宿は築地にあった。
ある日委員の水野成夫が訪ねてきた
(はなをすする音)あ〜。
君も…心配かね?は?世間で妙なうわさがある。
わしがお茶をたてている時茶わんに鼻水を垂らすというんだ。
わしがそんなバカな事すると思うかい?いや…危ないと思って見ていました。
(笑い声)君は審議会の時後ろに並んでいる役人たちをどう思うね?日発には連中の先輩たちが天下りをしている。
荒療治はしてほしくないという訳だが。
私も荒療治は嫌ですよ。
治療は痛みが少なく穏やかであってほしい。
君は戦前思想犯で監獄に入った事があるそうじゃないか。
それが今じゃ財界のホープと呼ばれている。
荒療治なしに今日の君があるとは思えんがねえ。
弱いところをついてきますね。
ケンカの…極意さ。
今度のケンカ勝てると思いますか?君が味方についてくれれば勝てる。
わしと君と小池で3票。
敵は三鬼と工藤の2票だ。
多数決で決める。
小池教授は松永さんに入れますか?入れるさ。
あいつはわしの学校の後輩でわしが委員に推薦した男だ。
甘いですね。
教授はとっくに三鬼さんに寝返ってますよ。
日発温存派です。
中村さん。
白洲さんも吉田総理も本音じゃ総司令部に言いなりでいいなんて思っちゃいないんじゃないですか?日発を無くせば電気料金は跳ね上がる。
それで国民が納得しますか?国民は納得するよ。
この停電がなくなればな。
少々電気代が高くついても皆必要であれば金を出す。
9つの民間会社が知恵を絞って電気を作ればこんな停電などすぐになくなるんだ!わしは九州の壱岐という島で生まれた。
何の後ろ盾もなく福沢諭吉先生を頼って上京してきた。
大した勉強はしなかったが先生はわしを社会に送り出す時こうおっしゃった。
「間違っても役所や財閥なんぞには入るな。
風呂屋の三助をやるなりうどん屋で修業をしてでも小さなところから独立独歩で実業を成せ」と。
ハハッ。
おかげで…随分うろうろしたよ。
商売敵とケンカをし銀行とケンカをし電灯会社を電力会社にした。
フッ。
ず〜っとケンカだよ。
日本は戦争に負けた。
ゼロから出直しだ。
うどん屋で修業だよ。
ハハハッ。
それぞれの会社がそれぞれのやり方で電気を作ればいい。
わしらはそうやって生きてきたんだ。
君だってそうだろ?私は少し違います。
国策パルプという国の力で作られた会社を経営しています。
日発と同じ立場という事かね?そうです。
私も田舎育ちです。
生まれたのは大きな農家でしたが三男坊だったので里子に出されて村で一番貧しい家で育てられました。
夕食は3畳の板の間で1丁の豆腐を親子3人で食べてそれでおしまいです。
一生懸命働いても小さな畑しかない。
もちろん電気もない。
6歳の時に生まれた家に連れ戻されました。
広い田んぼがあって使用人が何人もいて夜は電灯がどの部屋にもともってそりゃあ明るかった。
しかし私は育ててくれた親が忘れられなかった。
今でも忘れない。
世の中にはどんなに貧しくても懸命に生きている人たちがいる。
国はそういう人たちにも目を向けなくてはいけない。
だから水や電気は国が誰でも使えるようにしなくてはいけない。
それが国の仕事だと思うのです。
しかし日発は国の金を使いながらそれをやらなかった。
軍の戦に協力して終わりだ。
赤字を出しても国が負担をしてくれる。
それにぶら下がって保身に明け暮れた。
ですから…。
いいかね!企業を支えているのは一人一人の人間なんだ!その企業の一つ一つが町を支え国を支えている。
今の貧しさから抜け出すためには一人一人が…一つ一つの企業が自力をつけなきゃならん!20年先…いや50年先の日本をつくるのは日発ではない!国でもない!我々自身の力なんだ!勘違いしてはいけないよ。
我々が国を立て直すんだ。
国が我々を立て直す訳ではない!水野もつらかろう。
何千何万の社員を抱えている。
1円2円の電気代が命取りになる。
日本中が悲鳴を上げる…。
その声が聞こえる。
(笑い声)ありがとう。
ちょっと休もう。
はあ〜。
いやどうかね?松永のじいさんは。
昨日会ったんだろ?フフッ。
地獄耳ですね。
耳のいいのは生まれつきでね。
少しはこっちに歩み寄る気配はないのかね?あの人は変わりませんね。
動かざること山の如しです。
気の毒なじいさんだな。
最初から勝負は決まってたんだ。
はあ〜。
委員5人のうち3人が企業を背負っている。
こんな構成をした吉田さんは残酷だ。
そう思わんかね?総司令部も不満たらたらのようです。
え?構うもんか。
終戦直後ならいざ知らずもう4年もたってるんだ。
日本には日本のやり方がある。
はあ〜。
日発は残す。
それで通りますか?ん?我々は敗戦から何も学んでいない。
そういう回答を出す事になる。
我々は学んだよ。
大いに学んだ。
だからこれは仮の答案なんだ。
きちんとした答えは5年先10年先に出せばいい。
あのじいさんの面白いところはあの年で夢を見ているところだ。
しかし我々が見なきゃならんのは足元だ。
総司令部への回答日が迫り審議会は結論を出した
わしは三鬼案は事実上の日発温存案で…反対だ。
日発解体案で一本化したいと思うが皆さんの意見を聞きたい。
私は原則的には松永さんの9ブロック案でよろしいと思うのですが…。
とりあえず皆さんに挙手をしてもらえばいいんだ。
松永案がいいと思われる方は挙手を願いたい。
では私の案では?
(拍手)
(三鬼)松永さんこういう事だ。
これが日本の現実だ。
私はそう思う。
私が賛成したのは条件付きです。
参考意見として松永案があったという事を付記して答申して頂きたいと。
その事を討議して頂きたい。
松永の案は参考資料として付け加えられるだけに終わった。
松永は敗れた
・「一山二山三山越え
(ヨイヨイ)」・「奥に咲いたる八重つつじ」・「なんぼ色よく咲いたとて」河村がね今日も来てあの茶わんを置いてったの。
もういっぺん見てほしいって。
あれは…やっぱり買わん。
よう見たらあん茶わんなあ前に買うたんとは手触りが違うなあ。
買うてもええよ。
フフフ。
河村も喜ぶし。
中村に聞いたか?わしが会議で負けたのを。
(せきこみ)いやしかしまだ負けと決まった訳じゃない。
同情で買えと言うんなら…いらぬ世話だ。
よいしょ。
新聞に「通産大臣が代わる」って書いてあるね?ん?次は池田勇人さんだそうじゃな。
確か池田さんは昭和石油の長崎英造さんがかわいがっちょった方やろ?そうか…長崎が随分買ってた男だ。
ああ!池田が通産大臣か!よくいらっしゃいました。
松永さんの事は同郷の長崎さんからよく伺っていました。
私は国が統制経済を続ける限り日本の発展はないという意見です。
大臣はどのようにお考えでしょうか?同感です。
こちらへ。
なら話は早い!私は商売人ですから大臣のように政治や財政の事は分からない。
ですがどうやったらもうかるかという事はよく知っています。
私に言わせれば国をもうけさせるくらいの事は簡単な事なんです。
国にもうけてもらって国民全部に豊かな生活をしてもらいたい!うん。
そのために必要なのはこれは私が申し上げる電気事業再編成案です。
ではまず全国の電力不足の現状についてご説明申し上げます。
え〜まず…。
新任の通産大臣は大蔵省出身の無類に数字に強い男であった
松永のじか談判は長時間に及んだ
いいですか!この只見川から取れる電気は200万キロワットですよ!10年後20年後日本が復興して大量に電気を使う時代が来る!必ず来る!その備えを今しておかなきゃ駄目なんだ!こことここに大都市向けのダムを造るんです!しかし…しかしですよここから電気を引くとなると相当ロスが出るでしょ!その数字はそこにあります。
あ〜眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡!あ〜。
ああ〜。
ほかに質問は?実は先日総司令部からあの答申案では駄目だという連絡がありました。
三鬼案では駄目だと。
私も…あれでは駄目だと思う。
これでいいじゃありませんか。
これでいきましょうよ!
(笑い声)総司令部は私が直接行って説得します。
万が一それでも駄目なら…。
私が行ってケネディとケンカをします!ケンカには自信があります!
池田は松永案を政府案としその法案は国会に上程された。
しかし電気料金の値上げが含まれるこの改革案に野党は猛然と反対し法案は廃案に追い込まれてしまった。
しかし松永は諦めなかった
限界?そんなものはないんだ。
そんな考え方をしているから何事も成さずに死んでしまう。
山の向こうは…また山だよ。
登っていくだけだ。
私が今日来たのは国会の審議がいかに後ろ向きで日本の未来に背を向けたものであるかというお話と私の9ブロック案を更に補足説明…。
ミスター松永。
私はあなたに負けた。
マッカーサー元帥は吉田首相に書簡を送りあなたの案を執行するよう政府に命じると申しております!つ…つ…つまりポツダム政令を発するという事かね?ThePotsdamOrder,right?彼の言ってる意味が分かるか?ポツダム政令は日本が連合軍に降伏した時彼らに与えた超法規的命令権です。
国会の議決に優先するマッカーサーの大権です。
従ってそれを使えば松永案は生き返る事になります!そのとおりだ!で…では会議をやろうじゃありませんか。
わしの案をもっと深く科学的に説明しておきたい。
Mr.Matsunaga!
その時私は初めて気付いた。
松永はこの事も計算済みで動いていたのではないかと…。
マッカーサーを動かす事それが松永の視野に入ったのはいつかは分からない。
脱帽である
松永さん。
正直申し上げますとこの数か月は気の重い毎日でした。
何度も松永さんが嫌いになりました。
もう秘書を降りたい。
そう思いました。
そう思った事を今はちょっと後悔しています。
日発の人が松永さんの事を何て呼んでるかご存じですか?鬼だそうです。
鬼か…。
はい。
私は最高のあだ名だと思います。
(くしゃみ)あ〜。
あ〜。
昭和26年日発は解散し民間の9つの電力会社がスタートした。
これらの電力会社は戦後の産業界の力強いエンジンとなり奇跡といわれた高度成長を支えたのである。
この時松永は75歳。
その後20年経済界にあり昭和を豊かな時代に育て上げた
2015/09/19(土) 21:00〜22:00
NHK総合1・神戸
放送90年ドラマ 経世済民の男(5)「鬼と呼ばれた男〜松永安左ェ門〜」[解][字]
戦後、電気事業の分割民営化を成し遂げ「電力の鬼」と呼ばれた男、松永安左ェ門。70歳を過ぎて日本のために立ち上がった男の生き様を通じて、人間の晩節の在り方を問う。
詳細情報
番組内容
戦後日本の復興と高度経済成長の礎となる、電気事業の分割民営化を成し遂げ「電力の鬼」と呼ばれた男、松永安左ェ門。福沢諭吉の門下として、“独立自尊”と「官」より「民」を重んじる精神を受け継いだ松永は、焦土と化した日本の未来のため70歳を過ぎた身で立ち上がる。電気事業の分割民営化を実現するために、時の政府や財界、GHQを相手に「一世一代のケンカ」を戦い抜いた男の生き様を通じて、人間の晩節の在り方を問う。
出演者
【出演】吉田鋼太郎,伊藤蘭,萩原聖人,うじきつよし,国広富之,岩松了,藤木孝,高川裕也,山田純大,安藤玉恵,佃典彦,吉見一豊,伊東四朗,利重剛,大竹まこと,宝田明,高嶋政伸,串田和美,國村隼ほか
原作・脚本
【作】池端俊策
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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