(志乃)微妙な会話。
何か起こってほしいようなほしくないような。
映画「ピースオブケイク」。
え〜っと…好き!えっ?多部未華子演じる25歳の主人公志乃と綾野剛演じる京志郎30歳の大人の胸キュンラブストーリーだ。
2人の周りには今を時めく若手俳優たちが顔をそろえる。
あんな口うるさい男別れて正解よ。
すごいバクバクしてるよ。
そらだって緊張するでしょ。
へえ〜。
30歳男子でも。
フフフッするよするでしょ。
この映画のメガホンをとったのは…田口トモロヲといえば…。
「プロジェクトX」のナレーションで一世をふうびしたあの男だ。
「再開したばかり。
だが中に入ると驚いた」。
田口は人呼んでカメレオン俳優。
どんな作品のどんな役も変幻自在にこなす。
そこをあえてあなたにお願いしたいというのが夫人のたっての希望なんです。
ある時は何やら裏のありそうな…またある時は伝説のプロレスラー。
この時は体格までも一変させた。
俺もやんちゃしてたから。
ある時はひょうひょうとした…主役から脇役までこれまでに出演した作品は映画だけで200本に上る。
ゆりあちゃん。
はい。
ゆりあちゃんお願いします。
はい。
さて一方下北沢に姿を現したのは…いや〜せわしない踏切ですね。
実は田口とは25年来のつきあいらしいが…。
何だろ…大丈夫かな?松尾は「あまちゃん」では純喫茶「アイドル」の店主として怪しい存在感を醸し出していた。
昨日のオーディションどうだったの?あのスケバンがヨーヨーで戦うやつ。
歌だって4番より春ちゃんの方がうまいしさ。
まあそこそこかわいいんだけどね。
松尾が主宰する大人計画は荒川良々宮藤官九郎阿部サダヲなど名だたる俳優が所属する人気劇団だ。
松尾もまた映画監督であり作家でありとマルチな顔を持つ。
また遊びに来るから。
正体不明な感じ漂う2人が実は初めて面と向かって語り合う。
松尾がやって来たのは下北沢にあるとあるライブハウス。
田口トモロヲパンクバンドのボーカリストという顔も持っている。
ほう〜。
あるんですね。
ああっ!こんちは。
こんにちは。
暑いっすね。
暑いっすね。
ああそうなんだ。
いやいやもう…よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
そっかそっか。
いやいやいや何かね。
こうやってね改めて話す事ないですもんね。
ないですね〜。
ええ。
ないですからね。
そうですよね。
こんな…脱腸に?ええ。
じゃあズボンの中大変な事になってるんですか?大変な事。
まあ一応押さえてはいるんですけど。
この年になって脱腸になった人は初めて見ましたけどね。
そうですか?はい。
実は2人とも極度の恥ずかしがり屋。
このトーク一体どうなる?
そもそも花というやつは太陽の方を向きがちである
田口トモロヲ主演の異色のドラマ…都会のベランダで植物を育てる事を生きがいにしているバツイチ中年男が主人公だ。
そしてわざわざ回り込んで花の正面を見るという命懸けの行為に出なければならない。
ベストポジションはお日様が独占。
これはあまりにも理不尽ではないか。
(チャイム)茂木だった。
やあごきげんよう。
ちょっといいかな。
松尾スズキも主人公の家をしばしば訪ねてくる盆栽好きの先輩として登場する。
あの花はこの間の…。
ああオダマキです。
いや〜見事な咲きっぷりじゃないか。
ちょっと見てきていいかな!ど…ど…どうぞ。
ああ速い。
もう行ってるよ。
これはですねこうやって…こう見るんです。
こ…こう?はい。
よく見えるでしょ?花が。
う〜ん。
いや〜きれいだ〜。
でも何かこれやましい感じがするな〜。
何か女性のスカートの中をのぞいてみるような何かこう罪悪感というか…って君!あっはいはい。
これさこうやって持ち上げて見ればいいじゃないか。
あっそうでした。
頭いいっすね先輩。
まあね。
…って事でまずは話しやすい「植物男子ベランダー」辺りの話題から。
でもトモロヲさんも何かやっぱり「ベランダー」家で見てる印象で言うと…そこは謝るとこじゃないと思うんですが。
貫禄っていうのはどういう意味で。
ほら若い時から知ってるから…そうですか。
はい。
先輩!おはようございます!実は2人の共演シーンいつもアドリブさく裂なんです。
ちょちょちょちょ返して返して。
ちょっと〜パイセン。
「パイセン」って何だ!温泉に行くんですか?い…行く訳ないじゃないか!これはねこっからもう一度ここに捨てるためにここに捨てといたんだよ!ああ…。
盆栽はいいよ〜。
盆栽はいいよ〜。
盆栽。
出た。
私は思わず盆栽攻撃を繰り出しごまかした
ここから先は全く台本になかったやり取り。
盆栽が呼んでるよ〜?合うな木枠に。
木枠に合うのかよ煎餅ってのは。
僕も食べてみようかな。
あっご一緒に。
ああ。
木枠に合うね。
合いますね合いますよ。
気付かなかったな。
いい木枠だ。
はい。
まあでもねあの…あの窓枠を2人で眺めながら煎餅かじってるシーンとか「窓枠は煎餅に合うね」みたいな…あの状況の中で。
うん。
あとやっぱり花屋で松尾さんが帰る時に迷子のなり方。
あれは爆笑でしたですね。
じゃあ僕は失敬するよ。
後で僕んちに届けてくれたまえ。
頼むよ。
えっ?あのお金は?あっ…うわっ速っえっ?あっちょっ何やってんですか?コソコソと。
いやいやいや別に…。
あっ戻って…!あっいや迷ったんですね。
あの人連れてこないで下さい!はいはい。
迷ってます。
方向感覚が…ないんだね。
また帰ってきた。
つきあってないっすよ。
つきあってないから!いや別につきあってないから!疑ってないよね。
ないないないない。
おかしいでしょ!あの人とつきあうの。
おかしいっすよ!いや〜花屋ってね本当にあの…道に迷いますよね。
いやいやいやそういう問題じゃないでしょ。
広すぎるんですよ。
ああいうのは瞬間的なんですか?う〜んまあそうですね。
まあでも…「いつもじゃないぞ」って。
自分にとって自分が監督の時のね俳優さん…いい俳優さんとかねやっぱ考えますもんね。
感じたりしますよね。
うん。
僕らにとっていい俳優って何なんだろうなと思うと…考えなしじゃないですけどね。
そうですね。
アドリブというか…だから…
(望月)トモロヲさんはパンクやってる時のステージとかとは裏腹に現場に関してはすごくストイックに取り組まれててまあ当たり前っちゃ当たり前なんですけど。
たまにそういう…多分何か…チラッと出てくるような時が芝居とかモノローグの収録とかに見え隠れして…主人公のモノローグは撮影現場でそのまま録音している。
「食生活は乱れ『俺はコンビニの残飯さえあれば生きていけるぜ』。
『俺はコンビニの残飯さえあれば生きていけるぜ』。
『俺はコンビニの残飯さえあれば生きていけるぜ!』。
『俺はコンビニの残飯さえあれば生きていけるぜ〜!』などと粋がる輩が増えている事は想像に難しくない」。
トモロヲさんトモロヲさん。
はいはい。
なんと松尾前半は自分がインタビューされる番だと思っていたらしい。
そうそうすみません。
「あれ?」と思って。
あれ?では気を取り直して頂いて。
あっ映画完成おめでとうございます。
あっありがとうございます。
いえいえ。
見ました。
あっそうですか。
あの単純に驚きがあったのは…。
はい。
トモロヲさんの…トモロヲさんって何か…こう「い〜」っていう…。
「い〜」って言って「い〜」。
ボ〜ン!みたいな。
うわ〜!い〜!ああ〜!何かもう子どもな表現ですね。
「い〜」っつってボ〜ン。
常に「い〜」。
(2人)「いっいっいっいっ」ボ〜ン。
それでヘルニアになっちゃうんですよ。
そんな力入れてるから。
あ〜。
びっくりしました。
田口がメガホンをとった映画…25歳の梅宮志乃が主人公だ。
「言う事聞く女が好きだ」っていつも言ってるじゃん。
聞くから教えてよ。
恋も仕事も流されるまま生きてきた志乃はこの状況から抜け出したいともがいていた。
あの夜は遊びって事?あんたも彼女いるじゃん。
じゃあいいよ。
心機一転しようと引っ越したその夜隣の部屋に住む京志郎と出会い心を奪われる。
うおっ!
(志乃)その時…風が吹いた。
京志郎とバイト先も一緒になり喜んだのもつかの間同棲中の彼女とトラブルに。
店長!きゃっ!初めて見た時から嫌だったの!絶対京志郎とどうにかなると思ってた!だからあかり勘違いだって!何でいるんですか?えっ?ある日彼女が理由も告げずに失踪し2人の距離は一気に縮まる事になる。
寂しかったら私のところに来てほしい。
来てほしいけど…。
うん。
寂しさを紛らわす人に昇格したようで。
昇格?まあいっか。
つきあい始めた2人だが志乃は元カノの影におびえどうしても京志郎を信じ切る事ができない。
行ってきます。
行ってらっしゃい。
京ちゃんの事…。
一生信じる事できない気がする。
一回でも信じてくれた事あったのかよ。
果たして2人の恋の行方は?志乃の人生の向かう先は?映画の原作は60万部突破のリアルな恋愛漫画。
田口は原作の世界観に忠実に大人のラブストーリーを描き出した。
トモロヲさんやっぱ恋愛ものを撮りたいみたいな欲求はあったんですか?いや〜。
トモロヲさんってもっとこう何か男の感じがして…。
女性目線で描く事に興味があるんだと思って。
女がいる。
確実に。
女性目線の映画も撮ろうと思うんですけど。
「ん〜はっ!」って吸収して。
多部ちゃんに乗り移らせて。
「ん〜はっ!」って出しましたかね。
出来上がったものが。
自分も…作品もたくさんあるので。
それは意図的にそういうふうに作ってあるんだと思いますけれども今回はやっぱり原作者と…できればっていうふうに。
そこをすくい上げられるのかっていうところはすごい苦心しましたよね。
一発本番ぐらいの勢いで現場もすごい先頭切って熱い人なんだろうなと思ってたら本当に…私の意見というか「多部ちゃんが感じるのはどういう…。
志乃ちゃんはこの時どういう感情だったの?何でこういうセリフを言ったんだと思う?」とか結構結構いろいろ…勢いだけじゃないというか。
本番というか…おやすみなさい。
田口がこだわった志乃が思わず京志郎に告白するシーン。
田口はリハーサルを30〜40回も繰り返した上で本番の演技は多部に任せた。
え〜っとえ〜っと…好き!えっ?え?えっ?フフッ…好き。
志乃の抑えきれない思いがあふれ出すみずみずしいシーンになった。
私店長と同じ店で働けてラッキーです!同じアパートで同じ隣で!同じ隣って変だよね。
とにかくラッキーガールなんです!う〜んらしくないものを撮ったなっていう。
そんなにらしくないですか?そういうのってトモロヲさんって割と恥ずかしがって撮りたがらないタイプの監督なのかなと思ってたんですけど。
重要だなと思いました。
多部ちゃんがどんな温度でキスをしていくのかっていう段階とかそれが恋愛なのか快楽を求めてなのかみたいな。
流されてとかいろんなタイプのキスを見てそれで物語が作られていってるような気もして。
…と改めて思いましたね。
台本に書かれてる感情でやって下さったんだと思うんですけどもこんなに変化が出るんだなって。
許されてる表現の中でっていう。
ハリウッドの映画とか見てるとキスシーンとかは流れるように見るんですけど…あんまりそういう文化がないですよね。
キスを見せるっていう。
しかもかなり濃厚なね。
男って何でナイーブになるんでしょうね。
全然キス終わったあとすぐ素に戻れるっていう。
ちょっと男は何か余韻に浸ったりとかしててね。
気遣い方も半端じゃないですもんね。
ある種のもうアクションシーンですよね。
最初にR指定にはしたくないっていう枠組みがあったのでその中でできるだけ攻めた表現っていうか刺激的な表現ができればと思って。
演出部が男4人だったんですけれども僕がいろいろ学習してこういうふうにしようっていうのを実際にやってみて。
男4人組んずほぐれつやって。
必ずやりますよね。
はい。
それをムービーに撮ってちょっと知り合いの映倫さんに見て頂いていろいろご指示頂いてっていう。
これはRになりますかなりませんかみたいな。
R指定にならないためにいろいろ苦労もあるようで…。
…っていうんでカット割りをいっぱい入れて手をついたりとかベッドから落ちたりとか…いろいろあるんですよね。
…とかいろいろそのもみ方とかね。
…とかあって「えじゃあこれは可なの不可なの?」みたいなのあって。
もみ方も決まってるんですか?もみ方とかもあったりとかして。
それもだからちょっともう現場入っちゃうと分かんないじゃないですか。
それで男優さんの方も…。
気持ちでやりたいしね。
一応最初は言うけれども力入っちゃうと…。
「いやいやだからそれ駄目だ!」ってこうこっちはカメラの横で「駄目だ!駄目だよそこでもんじゃ」。
動かざるをえない衝動がある訳じゃないですか。
不自然ですもんね。
目の前におっぱいがあるのにもまないっていう選択肢。
「駄目だって言ったのにもう〜」みたいな。
ラブシーンを撮るのって結構大変なんですよね。
トモロヲさんの演出スタイルとは?ハハハハハハ!最初は自分がどういうふうな監督という立ち位置になった時にできるかっていう事で「ちょっと怒った方がいいかな?」と思って一回怒ってみたんですけど…ハハハハハ!「いやそんな事言われても!」。
…ってなった時にちょっともうこっちはあの…ちょっと電信柱の陰で泣きそうになって。
「いやいや」っていって思った時に…ハハハハハ!映画に関わってから何かこんなに人と…関わりたくないのにこの作業は関わらざるをえないっていう。
それねすごい分かります。
あ分かります?僕もどっちかっていうと引きこもり気味な男じゃないですか。
あ〜はい。
こういう事がないと人と関わらないなっていうのはあるんですよね。
あの限られた時間の中で。
そうね。
人に頼れない。
女優さんに気ぃ遣ったりね。
「大丈夫?」とかね。
「何かあったら何でも言ってね」みたいな。
今までつきあった女性になかっただろうっていうね。
田口トモロヲは…中学でいじめに遭った田口は学校から逃げるように名画座に入り浸っていたという。
大学で出会ったのがアングラ演劇と自主映画だった。
一度も進級しないまま大学を中退。
20代はエロ劇画を描いて生計を立てていた。
本名の田口智朗名義で単行本も出している。
何ですか?これ。
「ノーパン・パニック」田口智朗。
ちゃんとねこうやって。
ああ〜…ハハハハ!これは…貴重ですね。
これは映せない。
ハハハハ!そうか。
描き込んでましたよね意外と。
これはどんな時期だったんですか?え〜っと…もちろんそれじゃ生活は成り立たないんで…描けば描くほどギャラになったので。
こういうエロ劇画が一番何かすごい時事ネタとかタブー視されてるものを表現できた時期だったんですね。
僕が描けてた頃は。
それがだんだんロリータとかに移行していって規制が大きくなってきたんで「もう描けないな」と思ってフェードアウトしてったっていう現状なんですけれども。
現状だったんですけれども。
ハハハハハッ…なぜ?ギザエグスですね。
僕は…入ったな?そこの道に入られたって事は…
氷点下20度最大風速100メートルの突風が吹き荒れる富士山頂
田口が42歳の時にスタートした「プロジェクトX」。
世界最大の気象レーダーが…
独特な語り口で一躍脚光を浴びた。
気象庁富士山レーダー。
36年前レーダー建設に懸けた名もなき男たちの壮大なドラマがあった
僕も大好きなんですけど。
僕もその「プロジェクトX」でやり始めた時もうブースに1人で…「プロジェクトX」がナレーションのレギュラー番組の初めてだったんです。
それで読んだ原稿が面白かったんで…分かる人と分からない人っているじゃないですか。
「これ誰の声だ?」っていうの。
トモロヲさんの場合は一発で分かりますもんね。
あ〜。
印象ですよね。
すごく…それはそういう方向でやってっていう。
「我を出す」って…言い方がちょっと。
それはもうそういう指示で…どおり?我を…一生懸命やってるっていう事なんですけどね。
ごめんなさい。
アヤメはぬれていた
松尾は「植物男子ベランダー」でも鮮烈なモノローグを聞かせる。
植物に水をかけるという行為がこんなにも官能的だったとは
後半は松尾スズキが生み出す独特の笑いに迫る!松尾スズキが監督した映画「ジヌよさらば」。
物語の舞台は人口494人過疎化が進むかむろば村だ。
ある日この村に元銀行員のタケが引っ越してくる。
何見てんだよ?えっ?いや見てないっす。
心の目で見てたろが今。
いや見てないっす。
そんな能力ないし…。
おめえなめてんのか?俺の心の目を信じる力をよ。
実はこのタケお金恐怖症に陥っている。
お金を見ただけで失神してしまうほど重症だ。
村には何やら訳ありの濃すぎる村人たちが生息していた。
タケさんが好き。
そこに…松尾スズキ演じる謎の男が現れた事でにわかに不穏な空気が立ちこめる。
なぬ!?ああ〜!うりゃっ!松尾ならではのシュールでブラックな笑いが満載の映画だ。
ここはラジオ番組で使われるスタジオだが…。
うわっ広っ!あっこんにちは。
こんにちは。
失礼します。
はい。
この番組はですね…毎回ゲストの方にどんな事にうっとりするかを伺っているんですけども…いやそうですねこうして…うっとりしてしまいますね。
そうですね。
はい。
まあ茶番はこれぐらいで。
すいません。
いやいや…いやまずこの広さびっくりしましたけどね。
はい。
僕…ふだんはこれ僕「松尾スズキのうっとりラジオショー」っていうのFMでやってて。
松尾スズキのうっとりラジオショー
松尾が自ら脚本演出を手がけるラジオ番組。
歌ありオリジナル劇ありのエンターテインメントショーだ。
虚実入り交じった松尾ワールドがさく裂!番組中に流れるパロディーソングの作詞も松尾の手によるものだ。
さあ今日も元気に…「つもり体操第一」よ〜い!こちらは美輪明宏の「ヨイトマケの唄」風。
スポーツジムでダイエットに成功した俳優を歌う。
歌い方もそっくり!?いやはや松尾さん芸達者ですね。
1時間の台本を書き上げるのに3週間。
ラジオならではの笑いを緻密に計算し徹底的に作り込む。
あっ本当だ。
ビッシリですね。
フリーじゃないですね?全然フリーじゃない。
フリーじゃないですね。
笑い声もちゃんと入れてあるんで。
あっなるほど。
へえ〜。
楽しそうですね。
楽しいです。
8時間ですか?あっそんなにあるんですか?うわ〜すごいですね。
手の込んだ力の入った作品ですね。
いやねえ演劇の方はもちろんなんですけれども…うん。
やっぱり面白いですか?面白いですね。
松尾スズキが主宰する大人計画は常にチケットが入手困難といわれる。
「ウェルカム・ニッポン」は3.11東日本大震災後の日本を毒と笑いで描いた作品。
アメリカ人女性が9.11の同時多発テロで親切にしてくれた男を訪ねて来日する。
何だ?それ。
謝るぐらい分かるだろ!いくら謝るのが嫌いなアメリカ人でも。
土下座して!ところが待っていたのはとんでもない人々ばかり。
うっ…。
それ切腹でしょうが!やがて彼らがひた隠しにする秘密やアメリカ人女性自身の素顔が暴かれていく。
日本に戦争で勝ったアメリカ人がわざわざ放射能だらけの日本にこんなにみっともなくすがりついて。
私のランチパックにむしゃぶりついてる。
演劇界の芥川賞ともいわれる岸田戯曲賞を受賞した「ファンキー!宇宙は見えるところまでしかない」。
身体障害者の性をテーマに据えた。
エリカちゃんそう思わないか?ごめん何言ってんだか分かんないよ。
差別や性などあらゆるタブーを容赦なく笑いに変える松尾スズキ。
その笑いのルーツとは…。
幼稚園の頃に足を複雑骨折して入院してた時期があって入院先にその漫画の本がいっぱいあってそれで字を覚えたと言っても過言でもないというか。
それ読んでる時にちょうど赤さんの「もーれつア太郎」とか小学生になって「バカボン」が始まって「レッツラゴン」っていうすごく革新的なギャグ漫画があってそれで結構笑い転げてたんだけどう〜ん何かクラスの中で「レッツラゴン」をみんなあんまり読んでなくて何かそれがこう寂しくてみたいな事があって。
だからず〜っとまねして描いてました。
赤不二夫の漫画「レッツラゴン」。
子どもを育てる気がない父とその息子がハチャメチャな騒動を繰り広げる。
赤漫画の中でも特にアナーキーな作品だ。
小学校6年生の時に松尾が自分で描いた漫画「じじいと二人」。
3人組が珍道中を繰り広げる。
絵柄やストーリーに赤の影響が見て取れる。
将来はギャグ漫画家になりたいと夢みていた松尾少年。
シュールでブラックな笑いへのこだわりはこのころからあった。
そのルーツはやっぱり赤漫画とかなんですか?赤漫画とかまあ萩本さんが好きで。
それも意外ですよねコント55号。
「欽ドン」の欽ちゃんじゃないんですよ。
ちょっとヒューマンじゃない頃の欽ちゃん。
あの欽ちゃんの狂気というかあれが好きで。
そういう笑いの土壌はやっぱりサディスティックだったりブラックだったり…あれはでもいまだに何かありますね。
特にそれは演劇をやってる時の自分に感じますけど。
地元福岡の大学に入学した松尾は演劇研究会に加わる。
そこで自作の芝居を発表し始めた。
当時からブラックな作風だった。
もちろんアングラ演劇とかそういうものがある事も知らないし。
ああそうですか。
九州の田舎だったから。
「新劇」って雑誌が昔あったじゃないですか。
「新劇」のグラビアページ見てでみんな何かこんなんなったりとかこんなんなったりしたじゃないですか。
あれ見て…野田さんとかねいっつも寄り目で載ってるんですよね。
ああ寄り目とかするんだって思ったり。
早稲小とかのね白石加代子さんとかもそうですしね。
間違った演技を覚えてましたね。
意味が分かんないから目むいたり変な格好をしたりしてなんとかしてるのかなみたいな。
映画とか映像ではできない事をできるっていう何か飛躍できますもんね。
でもその時に何か演技って自由にやっていいんだっていう刷り込みがあって何か今にちょっとずつつながってるのかもしれないなと思いますね。
大学を卒業後上京。
印刷会社に就職したものの仕事も人間関係もうまくいかず1年で辞めてしまう。
教育雑誌の挿絵などを細々と描きながら生計を立てていた。
まあちょっと話それますけど就職してたっていうのはすごいですよね。
ちょっと違うじゃないですか人間としてのステージが。
もっと何か芝居の内容からするとワイルドサイドを歩いてきた方なのかなと思ったら違うんだと思って。
でもそれからはワイルドに生きてますからね。
どうしてですか?それは。
芝居をやろうって時に車も持ってないしこれからもう二度と持つ事もないだろう。
…と思って運転免許を川に捨てたんですよ。
覚悟ですね。
捨てなくてもいいですよね。
捨てなくていい本当に。
大人計画のオーディションの時そういうの言ったりするんですか?本当にそのあと…その時は前向きな気持ちでやったんですけど駄目人間だなって思っちゃったな。
26歳の時松尾は劇団設立を思い立ち雑誌に劇団員募集の広告を打つ。
おいちゃん。
はい。
いつになったらお茶持ってきてくれるの?最初は5人で立ち上げた大人計画。
その年に上演した「手塚治虫の生涯」はあの手治虫とは無関係の同姓同名の男が主人公。
松尾無謀にも手本人に出演交渉をしたが断られている。
ハハハハ…子どもがキムチなんか食べて大人の世界をのぞいちゃいけないよ。
大人計画には宮藤官九郎阿部サダヲなどが次々と入団。
演劇界きっての人気劇団へと育っていった。
1990年の作品「神のようにだまして」。
新興宗教の教祖をやくざたちが暗殺に行く物語だ。
実は田口もこの舞台に客演。
松尾と共に舞台に立った。
あれは…それがどういう内容かすらここで言えないんですよ。
あれやったあと…ああそう…。
相当きつかったっていうのはありますねハードな。
それぐらい何かこう…今はすごい微妙にアウトサイドな事でも微妙なバランスでポップに仕上げるじゃないですか。
そこのバランス感覚がすごいなって思うんですよね。
いわゆるまあ…そういうセンスって品がいいじゃないですか。
う〜んでもね…舞台こそすべったっていうのがあからさまに分かるメディアじゃないですか。
自分で想定して稽古場でやってる時とまた全く違うじゃないですか舞台って。
作ってる人間がおかしいだけっていうね。
現場でおかしいなと思った事が意外とフィルムになっても残ってて試写でも同じところで笑いが来てたんでそれは何かうまくいったなと思いましたね。
お金を見ただけで卒倒してしまう主人公が銀行にお金を下ろしに行くシーン。
松尾は細かく動きをつけた。
いやいやいや!ちょっと大変。
しっかりしてほら。
出来上がったシーンがこちら。
役者さんに動きを結構指定するって聞いたんですけど。
あの体の動きはどこから来てるんですか?松尾さんの独特の…。
生まれたての子鹿じゃないんですけど。
早いですね。
小学3年生で神様ノイローゼっていうのは…。
刷り込みが頭の中に何でか知らないけどできちゃって。
だから「僕が今こうやってコップを取ろうとするって事も決まってるんでしょ?神様」っていう考え方にはまってすごい苦しかったんですよ。
へえ〜。
それで…こう…こう取ってみようとかっていうのをやってたんですよね。
子どもの頃に。
神様に対する反逆ですね。
反逆を。
小学3年生の頃はすごく親が学校に呼び出されてました。
授業中に「ぎゃ〜っ」つったりとか。
こっちは…大変な事が起きてるんですよね人知れず。
それが大学の時に芝居を始めた時に…そうかそうか。
そこでつながる訳…。
寄り目なのは神の采配を逃れようとして目を寄せてんだとかって事と合致した訳ですね。
ほう〜。
俺のGT−Rが!うるせえこの!松尾がこだわる動きの笑い。
6億4,870万円!?松尾の要求に応える俳優は大変らしい。
648万7,000円ですけど。
そうなの?何て言ったらいいんでしょう…何か特殊なんですよね。
一回…ジャンプして写真撮ったんですけど普通人間ってジャンプしたら何となくジャンプした余韻が残るものなんですけど松尾さんは完全に空中で止まってる写真が撮れるんですよ。
なのでやっぱりちょっと人間っていうかちょっと宇宙人に近いっていうか…漫画とか劇画の…多分イメージがおありになるんだと思うんですけど。
とにかく松尾さんの言ってる絵なりイメージにはまれば何かそれなりに自分の気持ちは何だかチンプンカンプンでも何か通っていくみたいな事は何回かやっていくうちに「ああそういうふうになるもんなんだ」というふうになっていったのでもう…そうでもないですか?何か……方なんです。
繊細ですね。
「ですね」と言うのも変ですけど。
だからみんなで何かこう…軽々といろんな事をいろんなジャンルに越境してる人だと思うんですけれども何か松尾さん自身が「この人すごいな」とか「こういう事がすごいな」とかってジェラシーを感じる人とか才能ってあります?それこそトモロヲさんとか…。
いやいやいや…。
そんな答えを望んでなかった。
ハハハハいやいや…。
何かそういう事がパワーになってたっていうかね。
そういう時期もありましたけどね。
それはやっぱり年齢を重ねて余裕が出てきたんですかね。
人間として。
余裕か…むしろちょっとした…そうそうそうそう…。
もう時間がない自分の事に集中。
何か潔くていいなと思うのは…その方法論みたいなの。
もう結構しゃべりましたよね。
しないですね。
こんなに長い時間松尾さんの目見て話したの初めてだったな。
ハハハ…次から見れますかね?いやまた元に戻ると思います。
逆に恥ずかしくなってもっと寡黙になっちゃったりして。
そしたら俺はこの番組恨みますよ。
ハハハハハ。
2015/09/19(土) 22:00〜23:00
NHKEテレ1大阪
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「田口トモロヲ×松尾スズキ」[字]
カメレオン俳優田口トモロヲが、神出鬼没の作家・演出家・俳優の松尾スズキと、ラブシーンの苦労からアドリブ合戦の舞台裏、衝撃の過去まで、独特の空気感漂う爆笑トーク!
詳細情報
番組内容
共演中のドラマ「植物男子ベランダー」では壮絶なアドリブの応酬で爆笑を誘っている2人。実は面と向かって話すのは初めてとあって、妙なテンションでスタートする。俳優・映画監督でもある2人が明かす、“R指定”をかいくぐるための涙ぐましい努力や、男優と女優の違いなど、抱腹絶倒の舞台裏。食えない時代に描いたエロ劇画、運転免許を川に捨てた日、子ども時代の「神様ノイローゼ」まで、多才で正体不明な男たちの「告白」!
出演者
【出演】俳優・映画監督・ナレーター…田口トモロヲ,作家・演出家・俳優…松尾スズキ,女優…多部未華子,俳優…片桐はいり,【語り】吉田羊,六角精児
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:28959(0x711F)