(テーマ音楽)漫画家浦沢直樹さん。
「YAWARA!」「20世紀少年」など数多くの作品を生み出してきたヒットメーカーです。
そんな浦沢さんが立ち上げた新たなプロジェクトがこの「漫勉」です。
漫画家は小さなペン先から壮大なドラマを生み出します。
ふだんは立ち入る事ができないその仕事場を密着撮影させてもらおうというのです。
漫画には決まった手法はなく漫画家それぞれが全く違うやり方を独自に生み出します。
浦沢さんは漫画家の視点でそれぞれの創作の秘密を解き明かしたいと考えたのです。
漫画家は人物の表情を描く事に心血を注ぎます。
(浦沢)う〜ん…。
「浦沢直樹の漫勉」。
第1回目は表情豊かな人物を描く漫画家の姿を記録する事ができました。
今年マンガ大賞を受賞した東村アキコさん。
…などヒット作を次々と発表しています。
作品には強烈な個性を持った魅力的な人物が次々登場。
彼らが日常を舞台にコメディタッチで繰り広げるドラマが多くの人に共感を呼んできました。
現在5つの連載を抱える人気漫画家です。
今回は最新作の締め切り日に密着する事ができました。
そこで発見したのは驚異的な執筆スピードと人物を描く事への強いこだわりでした。
1か月後撮影された映像を見ながら浦沢さんと東村さんが対談をします。
訪れたのは…東村さん自らプロデュースしているお店です。
いらっしゃいませ。
これが本当の姿よね?漫画界屈指の執筆枚数を誇る東村アキコさん。
その創作の秘密がいよいよ明らかになります。
そうなんです。
もう5〜6年。
この日は新作の歴史漫画の締切日。
38ページの原稿を仕上げます。
仕事の時はいつもジャージ。
あちこちに仕掛けた定点カメラで執筆をなるべく妨げないように撮影します。
大量の原稿を一気に仕上げるためアシスタントが続々とやって来ました。
今回の見せ場である見開きページ。
まずは鉛筆で人物の下描きをします。
これごと持ってくみたいな。
下描きが終了。
次はインクでペン入れをします。
すごい!浦沢さんも驚く速さなんですね。
今取り組んでいる作品は「雪花の虎」。
東村さんが初めて挑む本格歴史漫画です。
武将上杉謙信が女性だったという説をもとに斬新な切り口で戦国時代を描きます。
ほんとですか?そうだよね。
人物の主要な線を入れ終わったら一旦アシスタントへ原稿を回し背景や効果を指示します。
東村さんは次々と人物を描いていきます。
ドボッてつけるんだろうね。
東村さんは10年間にわたり月およそ100枚のページを描き続けています。
これは驚異的な枚数だそうです。
それだけ多くの物語をどうやって生み出しているのでしょうか?ネームと呼ばれるストーリー作りの現場をのぞいてみると…。
あれ?東村さん横になっちゃいました。
寝ちゃいました?眠くなるんです。
あれ何でですかね?先生もなられます?寝ながらストーリーが出来る!?お二人の作品がそうやって生まれたと思うとびっくりです。
いやあ…これは…考えてる感じがあんまりないです。
登場人物が自由に演じる事でストーリーが紡がれていく東村さんの作品。
その大きな魅力がギャグシーンです。
突然コントが始まり話がどんどん脱線していく事もあります。
更にテンポの速い掛け合いがひとコマに詰め込まれています。
次はそんな東村漫画ならではのギャグシーンです。
あっそうですね。
ちゃんと描くのが駄目?ギャグシーンって奥が深いんですね。
そうですねもろに全部影響受けてる。
これあとでやろう。
東村アキコさんは1975年宮崎県生まれ。
幼い頃から漫画家になる事が夢でした。
小学5年生の時描いた漫画は子供探偵が活躍するドタバタコメディ。
学生時代は面白い先生を観察しては似顔絵を描いて周りを笑わせていたといいます。
30歳の時には自身の父親を主人公にその強烈なキャラクターを描いた作品がヒットします。
身近な人物を鋭い観察眼で捉え描く。
その手法で息子や友達のオタク女子などをモデルにヒット作を連発してきました。
そして今年取り組んでいるのが…歴史上の人物を描くという初めての挑戦です。
東村さんは謙信が住んでいた新潟の春日山城を訪れる事でその人物像を固めていきました。
生活のサイズがね。
観察し共感する事で生み出す漫画の登場人物。
その魅力を絵としてどのように表現するのか?東村さんは強いこだわりを持っています。
「何を描かないか」という引き算の視点も大事なんですね。
あっ!まさにそうかもそうです。
私…マジで?そう?うわ〜やった。
よくお分かりで。
東村さんは人物を表現する上で衣装の描き方も大切にしています。
やっぱりなんか私…何ていうのかな…。
どっさりいるよね。
どっさりですか。
目標にした締め切り時間まで残り少なくなりました。
ここから仕上げ作業です。
あと…。
アシスタントの多くは若いメンバーです。
東村さんは彼らの新鮮なアイデアや感覚を大切にしています。
そうじゃないの?女性の象徴やろ?そうでしょ。
アシスタントの作業が終わったページから人物の仕上げをしていきます。
このホワイトってホワイトインク?ホワイトインクです。
そうですね。
うんうんそうですね。
東村さんが最後にこだわるのは登場人物の目です。
全ページを見直し全ての人物の目をチェック。
細かい表現を加えていきます。
東村アキコさんの絵の基礎が培われたのは学生時代です。
今年マンガ大賞を受賞した「かくかくしかじか」。
漫画家になるまでの道のりをつづりました。
東村さんは高校時代地元の絵画教室で恩師日高先生と出会います。
そして先生の厳しい指導を受けたのです。
プロの漫画家になって16年。
次々と新たな分野に挑み作品を生み出してきました。
東村さんを突き動かす言葉があります。
日高先生が繰り返し口にした言葉。
締め切りまであと1時間。
まだ絵が描かれていないコマがありました。
下描きのないところに筆ペンで描き始めました。
いくね。
いっちゃうね。
うわ〜いいね。
これだって案外…そうですそうです。
ほんとですか!
(笑い声)何とすごい浦沢先生に。
それは私ちょっと自慢しちゃおうかなずうずうしいですけど。
今回の見せ場見開きページの仕上げに取りかかります。
あれ!?主人公・上杉謙信の顔をいきなり消してしまいました。
筆ペンに持ち替え線のタッチを変えます。
このシーンは謙信の姉が13歳の若さで家族と別れお嫁に行く切ない場面。
セリフはなく顔の表情だけで複雑な感情を描きます。
全部?うん。
謙信の姉の顔も描き直しです。
これすごい大事ですよね。
試行錯誤の末納得の表情を描き上げました。
よかったです。
開始から8時間。
驚異的なスピードで38枚を仕上げました。
女・上杉謙信を描いた原稿が完成です。
目や髪型そして着物まで細かい気配りがなされた人物表現。
シリアスから一転しての密度の高いギャグシーン。
デッサン力に裏打ちされた技が光るコマ。
そして試行錯誤を繰り返した繊細な表情。
東村漫画の魅力が詰まっています。
うんやっぱりね…まあご本人はそんなん言われるとあれかもしれないけど…そうですね。
なりたい。
それは手抜きっていうよりも…でもそうですねなんか…
(ペン先の音)2015/09/20(日) 00:00〜00:44
NHKEテレ1大阪
浦沢直樹の漫勉「東村アキコ」[字][再]
白い紙に小さなペン先で壮大なドラマを生む漫画家たち。その創作の秘密に「浦沢直樹」が迫る。1回目はいま最も注目を集める女性漫画家「東村アキコ」を特集する。
詳細情報
番組内容
白い紙に小さなペン先で壮大なドラマを生む漫画家たち。その創作の秘密に「浦沢直樹」が迫る。1回目はいま最も注目を集める女性漫画家「東村アキコ」を特集する。今年、自叙伝的漫画「かくかくじかじか」でマンガ大賞を受賞。今回、初めて挑戦した歴史漫画の現場に密着。漫画界屈指と言われる執筆スピードが、浦沢直樹を驚かせる。また10人以上のアシスタントを的確な指示で使いながら人物の表情にこだわる手法が明らかに!
出演者
【出演】漫画家…浦沢直樹,漫画家…東村アキコ
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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サンプリングレート : 48kHz
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