命に代えても皆様をお守り致します。
どうかあの者たちの声を聞いてやって下さいませ!東京六本木のホテル。
その高級日本料理店は壁からテーブルまである石を用いています。
それが「庵治石」。
香川県高松市で採れる貴重な石です。
人呼んで…庵治石は非常に硬く風化しにくいのに加え独特の美しい斑模様が特徴。
これほどきめ細かい表情を持つ石は世界でもまれなんだそう。
庵治石は今手頃な生活雑貨に変身大人気なんです。
セレクトショップを訪れたのは女優の原田夏希さん。
漬物石ね。
こんなオシャレな漬物石。
漬けようかな。
他にも種類はさまざま。
全て庵治石で作られています。
数千円から買えるんだそうです。
原田さんが気に入ったのは…。
きれいですね。
ツルツルしてる。
何入れてもいいのかな?ふ〜ん。
細かな模様と艶やかな丸み。
石のひんやり感が新鮮なフルーツにぴったり。
そしてサボテンのような奇抜な花瓶。
こうしたデザイン性に富んだ庵治石製の雑貨が石のイメージを覆すと大評判なんです。
こちらのランプでは三日月を連想させる明かりが見る角度を変えるとご覧のように変化。
きょうは庵治石が作り出す新たな石の世界をご紹介します。
庵治石のふるさと香川県高松市。
中でも牟礼町と庵治町にはおよそ300もの石材会社が集まっています。
すごいですねこれは。
結構ツルツルしてる。
どうなってるんだろう?パズルみたいになっているけど。
これが庵治石なのかな?キラキラ光ってるし。
巨大な石の彫刻が至る所にシンボルとして置かれています。
まさに石の町。
町のシンボルはもうひとつ。
そのふもとが庵治石の採石場なんです。
常時50社ほどの石材会社が作業をしています。
あの辺が破壊されるみたいです。
え〜どんななんだろう。
怖いような…。
でもちょっと楽しみ。
フフフ…。
まもなく爆破です。
岩が粉々に飛び散らないようにするのが難しいんだそう。
(爆破音)わ〜!ほら砂ぼこりがたってますね。
火薬の臭いがする。
うん。
原田さん爆破した岩を砕く現場へと向かいました。
こんにちは。
おじゃまします。
はいはい。
ほこり?はい。
え〜!多田さんが見せてくれたのは小割り。
岩を小さく割っていく作業。
ドリルで穴をあけます。
次に1列にあけた穴に「セリヤ」と呼ばれるくさびを差し込みました。
そしてハンマーで順番に打ち込んでいくと。
わ〜!あっという間に割れました。
すごい!へぇ〜。
割り方とかあるんですか基準が?目?はい。
あるんですか石にも目が?あります。
木目みたいに?水をかけると…。
水をかけると分かりやすくなるんです。
画面中央を左右に走る灰色の筋が「石の目」。
この石の目に沿ってくさびを打ち込めば簡単に割ることができると言います。
採石場の職人には石の目を的確に見分ける力が求められるんです。
手前から?原田さんも割ることはできると言われ挑戦。
多田さんが打ってくれたくさびはたった3本ですが。
すごい重たいこれ!行きま〜す。
(くさびをたたく音)あら?あ〜曲がっちゃった!もう割れる?割れるよ〜!きゃ〜アハハハ。
すごい!すぐ割れましたね。
うまいですか?本当ですか?はい。
中から現れたのが庵治石独特の斑模様。
石英や長石黒雲母の結晶が混ざり合って出来たもの。
とりわけ黒雲母が多い「細目」と呼ばれる模様はその緻密な美しさで最高級とされています。
細目の庵治石は高級墓石として有名ですがこちらの墓石はなんと800万円!しかし採掘した庵治石の多くにはさまざまな傷があります。
傷は長い時間がたつと変色や腐食するため墓石には使えません。
墓石や彫刻に使う庵治石は採掘したうちの1割程度。
残りは建物の土台や埋め立て用に用いるのが常でした。
そこで墓石にするほど大きくはなくしかし傷はない石を利用してできたのがこの器。
庵治石ならではの細かな模様が優雅な丸みに浮かぶイッピン。
いったいどのように作られるんでしょう。
こんにちは。
すみません。
作業中おじゃまします。
フルーツボウルを作った工房を訪ねました。
曽祖父の代から続く石工です。
いろんなものがありますね。
石でつくられているんですか。
わ〜すごい。
(落合賢)これはそら豆の石明かりです。
明かり?明かりです。
中に明かりが。
本当だ。
緑の明かりだ。
いろいろ色が変わりますけど。
へぇ〜。
あ!青になった。
夜きれいですね。
はい。
落合さんは「姿もの」と呼ばれる仏像などの彫刻を得意としてきました。
ここから作業に入ります。
姿もので培ったワザを駆使するというフルーツボウルづくりの始まりです。
大体の形を描いた線に沿って削ります。
使うのはグラインダー。
これひとつで繊細なカーブも生み出すんだそうですが。
それすごいですね。
石を切るためのノコというか。
ええ。
これ中にダイヤが入っとるんですよ。
ええ。
実はグラインダーにはダイヤモンドが付けられています。
粒状のものがそれ。
庵治石は硬いので欠かせないんだそうです。
では庵治石はどれほど硬いのか。
家具などに加工される大理石と比べました。
庵治石と大理石。
それぞれに一定の圧力をかけ損傷具合を測定します。
かける圧力は1トン。
結果は大理石の損傷は縦横11ミリほどなのに対し庵治石はほぼ3分の1。
容易に損傷を受けないことが分かりました。
そのため加工は一苦労。
彫り込むのもさっきと一緒なんですけど。
作業は内側の湾曲面づくりに進みましたがまず中心線に沿って削っていきます。
この削り具合で器の深さが決まるのです。
なんと網目状にしました。
こういった網目にして。
そうです。
こういう場合にしてはい。
ちょっと今度はこれで。
(振動する音)次に取り出したのが特殊なノミ。
これ空気ですからね。
動いてるんだ。
高速で振動するノミを使って網目状にした石を取り除いていきます。
ノミは強く押し当てず軽く触れる程度。
そうしないと石の柱が途中で折れてしまうんです。
全てをうまく剥ぎ取ったらまたあのグラインダーの出番。
今度は横に動かします。
この時の力加減が最も難しいんです。
見事な曲面が出来ました。
仕上げは電動研磨機サンダーで。
表面がみるみる滑らかに。
作業開始から3時間。
すごい!これが出来上がり状態。
出来上がり状態。
へぇ〜。
1つとして全く同じ物はできないということですね。
そうですね。
ですよね。
優美な形の器には硬い石をその手で自在にコントロールする職人のワザが秘められていました。
庵治石はすでに平安時代都人の心をとらえていました。
京都石清水八幡宮その石垣に使われたと言います。
古文書には今の香川県にあたる讃岐国五剣山付近から石を運び拝殿などに用いたと記されています。
庵治石が最盛期を迎えたのは大正から昭和にかけて。
採石技術が発達しいっそう多くの墓石や灯籠の制作が可能になったからでした。
庵治石の灯籠づくりは今も行われています。
昔ながらの制作法を守っているのが…道具はノミと金づちだけ。
電動の機械は一切使いません。
灯籠ひとつ仕上げるまで2か月以上。
硬い石とひたすらに向き合うのが庵治石千年の伝統です。
新たな風が吹き込んだのは5年前。
商工会が主導する「AJIPROJECT」。
現代の石工たちが伝統のワザで生活雑貨を作りました。
あのフルーツボウルもこのプロジェクトから生まれたものなんです。
プロジェクトには2人の若手デザイナーが参加。
これまでの墓石や灯籠を中心とするものづくりの世界とは全く異なる考え方を持ち込みました。
ずっと悩みながらやってたんですけど。
「石」って言ったら…そういったのをもう一回整理してそういう特性をしっかり生かしましょうという話は初めにしました。
こちらは石の冷たさを生かしたワインクーラー。
程よく冷えたワインを石が包み込みその温度を保ってくれます。
湿り気を含むときめ細かさがいっそう際立って見える庵治石。
その特徴を生かしたソープディッシュ。
重さを生かしたのは自転車スタンド。
車輪のストッパーは本体の穴に収まるようデザインされています。
石本来の魅力を生かして人々の暮らしの中に今新しい世界が広がっています。
新たな製品の中でもひときわ評判の高いものがあると聞いた原田さん。
すみません。
こんにちは。
おじゃまします。
庵治石でおいしいものを出してくれるお店があると聞いてやってきたんですけれども。
ありがとうございます。
庵治石で出来た石臼なんですけど。
石臼?多分このことかなと。
はい。
これは何をひいてるんですか?これはコーヒー豆用です。
コーヒー豆。
はい。
ミルの代わりという感じで。
なんとコーヒーミル!いくつものデザイン賞を受賞しました。
人気の秘密は美しい艶と心地よい手触りなんだそう。
さらに豆をひくと味がマイルドになるんだとか。
(滝内)オッケーです。
へぇ〜。
お〜お〜お〜お〜。
出てきてる出てきてる。
すごいいい香りがしますね。
じょうずにおいしそうにひけてます。
大丈夫ですか?オッケーです。
速く回せば粗びきに。
ゆっくり回せば細びきに。
もちろんどちらも香り豊かです。
ブラックでひとくち。
いただきます。
味はいかがですか。
おいしいです。
ミルだと熱がかかってしまうんですけど石で熱が加わらないというか自然にまろやかにひいていくので味がまろやかになります。
まろやかになる。
ふ〜ん。
飲まない方でも飲みやすいですか。
うん飲みやすいです。
ミルを作った石工を訪ねました。
こんにちは!石工歴30年のベテランです。
コーヒーミルづくりは石を丸く型抜きすることから始まります。
中山さんはもともと線香立てなどの「丸もの」が専門。
コーヒーミルづくりを思いついたのはある日明治時代には石臼でコーヒーをひいていた事を知ったからでした。
抜けた。
わ〜きれいに抜けてる。
このサイズでミルが2つ作れると言います。
次は磨きの作業。
中山さんは程よい手触りで独特の艶を持つ仕上がりを目指します。
使うのは3種類の目の粗さの異なる研石。
何やら木の棒を持ち出しましたが。
研石をはさんで磨いています。
回転する石を磨くのは結構な力仕事。
これだと楽なんだとか。
体を棒に押しつけててこの原理を使っていたんですね。
そんなに力は入れないんですか?体重かけとるから体重かけるぐらい。
私が60キロやから30キロくらいこの棒にかかってるかな。
かかってる感じ。
うん。
指先で石の表面を触り仕上がりを確かめながら目の細かな研石に変えていきます。
研石に加える力と動きが一定でないときれいに磨けません。
簡単そうですがスムーズに移動できるようになるまで10年近くかかると言います。
最後は紙状のさらに目の細かな研磨剤を使います。
こうして磨き続けること50分。
うわ色が違う。
こんな感じな。
はい。
わ〜ツルツル!全然違いますね。
乾いた状態で比べると磨く前と後では表面の艶がこんなに違います。
続いては上下の石のかみ合わせの調節です。
上の部分の石は中心に向かって深く削ります。
逆に下側の石は外に向かって削り山形にしていきます。
かみ合い具合を調べるのはチョーク。
2つの石を合わせて回転させます。
回したらねここにチョークが付くんや。
はい。
このチョークが均等に付くように。
チョークが均等に外側に付けばうまくかみ合ってるということ。
中心に落ちた豆は徐々に潰れながら外側へ広がります。
そして縁のやや内側で完全に粉粒になるんです。
こんな面倒くさいことがあると知らずに使ってるからふだん。
1週間ほどかかる。
は〜。
これは大丈夫。
大丈夫?このくらいなら。
チョークがムラなく外側に付着しました。
続いて潰れた豆が落ちていく溝を彫ります。
この溝の深さや形が重要なんです。
溝の角を削ると豆が滑り落ちやすいんだとか。
(中山)ここの口を大きく開けてやると粗いコーヒー豆が出てくる。
ふ〜ん。
このままにしとくと細い粉が出てくる。
適度な深さと形を探り当てるまで50個もの試作品を作ったそうです。
溝をあけた後うまくこの外周に付くか付かんか。
クルクルクルと回してピッ!ほら!均等。
すご〜い!付いてます。
なっ。
これでオッケー。
オッケー。
実際にコーヒー豆で試してみました。
わ〜本当だ!これちょうどええぐらいやなわりと。
ええなぁ。
出てきましたはい。
ほら付いとるやろ。
わ〜本当だ!うまく出来てますね。
こうやってここから下りてきて。
前例のない庵治石のコーヒーミル。
職人の尽きることのない探究心が生んだイッピンです。
2年前庵治石のさらに新たな世界が開けました。
なんと鮮やかなマリンブルーのガラスが庵治石から誕生したのです。
瀬戸内海を思わせると今大人気のイッピンです。
わ〜すごい!たくさんある。
作ったのは高松出身の若きガラス作家。
地元から発信する作品を制作したいと考えていた杉山さん。
ある日試しに庵治石を粉末にしガラスに混ぜたところ思いもよらない色が発色したと言います。
最初は本当にちっちゃいテストだったんですけど青色は庵治石に含まれる鉄の成分の作用によるものと言います。
杉山さんは試作を繰り返し微妙な濃淡を生むことに成功しました。
現在は風鈴づくりに取り組んでいます。
追求するのは清涼感をたたえた新しい青色。
地元への強い思いが見つけ出した庵治石のもう一つの可能性です。
パフォーマンス見てるみたい。
行くよ。
はい。
わ〜すごい!千年の伝統に新たなページが加わろうとしています。
さまざまな試みによって私たちの暮らしに溶け込み始めた庵治石。
その魅力はますます広がっていきます。
2015/09/20(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「美しい石を暮らしの中に〜香川 高松の石製品〜」[字]
日本が世界に誇る高級石・庵治(あじ)石。この香川産の「花こう岩のダイヤモンド」が、今、フルーツボウルやコーヒーミルに華麗に変身!知られざる石の世界へいざなう。
詳細情報
番組内容
日本が世界に誇る高級石・庵治(あじ)石。墓石や灯籠で名高い、この香川県高松産の「花こう岩のダイヤモンド」が、今、フルーツボウルやコーヒーミル、ワインクーラーなどに華麗に変身を遂げ、大好評を博している。石の重さや硬さを生かしつつ、独特の繊細な斑文を際立たせた、上品なイッピンだ。平安時代以来の1000年の伝統を誇る石工の驚くべきワザとは?女優・原田夏希が知られざる石の世界を徹底リサーチする。
出演者
【リポーター】原田夏希,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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