(ナレーション)
およそ400年前の天正年間豊臣秀吉は洛中の地割を改めいくつもの通りを新設した
その1つが秀吉が御所へ参内する折に通ったとされる御幸町通である
南は五条通北は丸太町通まで京都市街を南北に貫くおよそ2.4キロの道
御幸町通の一角に京都で唯一キセルを専門に商う店がある
創業およそ300年…
(扉が開く音)
タバコは16世紀末に日本に伝来
まず上流階級に広まり元禄期には庶民もたしなむようになった
人々は日本独自の喫煙具キセルで紫煙をくゆらせた
キセルは刻みタバコを詰める雁首口にくわえる吸口それらをつなぐ竹製の羅宇からなる
タバコの葉を日本刀の…日本の技術でですね特別に細かく刻みタバコっていうのを作ったんですけども。
その刻みタバコは日本固有のものなんですがその刻みタバコを吸う専用のパイプとしてキセルが存在するということで…。
キセル作りは分業であり「谷川商店」では代々羅宇のみを製造販売していた
だが明治以降紙巻きタバコの普及に伴いキセル職人が激減
今では全ての工程を手がけている
型に沿って切り取った金属の板をたたいて膨らみを付け心金を挿し込み筒状にする
9代目の谷川清三さん
失われゆく技とキセル文化の火種を絶やすまいとキセル職人に教えを乞い雁首や吸口製作を学んだ
「客あればお茶より先にタバコ盆」
かつてタバコは主と客を仲立ちする接客の小道具であった
人々はタバコを携帯する叺に贅を凝らし腰に下げ粋を競った
そして一服つける所作を楽しんだ
(谷川さん)ただ飲んでるだけじゃなくてキセルのよさとかですね叺のよさとかタバコ盆のよさとかですねそういうなものもこう一緒に味わいながらぱかぱか吸うもんじゃなくってゆっくり腰を落ち着けて五感でですね味わっていただくというのがやっぱり本来のタバコの吸い方じゃないかなというふうに思いますが。
御幸町通にあった…
現在は閉校し京都の近代学校教育の歩みを伝える京都市学校歴史博物館になっている
明治2年日本で初めて学区制の小学校が京都に誕生した
幕末の動乱によって衰退した京都の再興のため町衆が教育の支援に立ち上がり彼らの主導で64の番組小学校が創立
「番組」とは今で言う「学区」に相当する
3年後政府は近代的学校制度を定めた「学制」を公布
番組小学校のカリキュラムや教育理念は新しい制度のモデルの一つになった
音楽の授業には楽器が必要だったが明治大正期西洋楽器は非常に高価であった
町衆は我が町の子供のため1台が家10軒にも相当するピアノやオルガンを惜しげもなく寄贈した
(和崎さん)物資面での寄付ですねこれはかなり大がかりなもので。
例えば学校を創設するときに各番組でですねお金を集めてまわるっていうのを各地でなされてたんですが京都府はですねさすがにそれはやり過ぎであると。
足らなかったらお金を貸すから基本的にはお金持ちだけ出してくださいとそういう法令をわざわざ注意書きで出している。
そういうところからも町の人たちの熱意っていうのは本物だったと言うことができると思います。
京都ならではの授業もあった
(和崎さん)絵画の教育が盛んであったと。
その線を描くということ一つをとってもですね本格的な教科書が作られてでその下で教えられてたっていうのは京都の特徴に数えられます。
日本画教育に力を入れた京都は数多くの芸術家や工芸職人を輩出
市内の学校には卒業生から寄贈された2000点にも及ぶ作品が収蔵されている
戦後間もない昭和22年進駐軍や海外からの支援により学校給食が再開された
脱脂粉乳など児童の栄養の改善が目的であった給食は今日本の食文化を育んだ京都で和食中心の献立に見直されている
「京都の再興は人づくりから」
町衆の情熱を伝える学校歴史博物館である
御幸町通と京の台所錦市場が交わる程近く
京町屋の風情を残す懐石宿「近又」がある
繁華街の中心にありながら喧騒とは無縁の落ち着いた空間が広がる
創業は享和元年西暦1801年
初代近江屋又八が近江から京都を訪れる薬商人の宿として麩屋町通に開業
明治になり御幸町通へ移転した
竹と雀の飾り欄間
100年を超える町屋の随所に施された職人の技
庭の竹垣は「時雨の二段垣」と呼ばれ上段は縦の雨下段は節から伸びる枝を斜めに曲げ横降りの雨を表している
和の設えの中で和食の神髄を味わってもらいたいと自分の代から懐石料理を出すようになった
(鵜飼さん)仕入れに関してはうちの場合はすごく近いところに錦市場っていうのがありますのでいい京野菜もたくさんありますしいいお魚も入ってきます。
食材に感謝して昆布出汁かつお出汁をベースにした和食っていうものをいつまでも守り続けてこれからの若い人たち特に子供たちにこういうところに来てもらって和食もそうですけれども衣食住全てのものを体験してもらう。
これだけ周り見てみるとビルビルビルになってしまいましたしそのビルがあっという間に古いビルに変わってしまうっていうんですかねもうどんどん新しいビルがまた建っていくっていう。
しかしこの家っていうのは時代がどんだけたとうが更に磨きがかけられてみんなの意識も変わっていきますから和に対する憧れとか付加価値とかそういったものもどんどんどんどん芽生えてくるのでこの建物を残してくれたおかげっていうのはほんとにご先祖さんに感謝しながらこれからもまた残していければなと思ってますね。
御幸町通に受け継がれる町衆の伝統と心意気
親から子へ子から孫へ
それは変わりゆく古都の一隅を照らす灯ともいえる
2015/09/20(日) 06:15〜06:30
MBS毎日放送
美の京都遺産[字]
「京の大路小路・御幸町通」
詳細情報
◎この番組は…
古都1200年の歴史の中で守り続けられてきた寺社仏閣・祭り・伝統工芸などの中より「美の再発見」をテーマに、ハイビジョン撮影による高画質映像でお送りする「映像美術館」。
音楽
久石譲
公式HP
【番組HP】
http://www.mbs.jp/kyoto/
おことわり
番組の内容と放送時間は、変更になる場合があります。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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