今まさにシーズンを迎えている鳥取県のおいしそうですよね!その梨が…。
あっ1年間この中に入ってても凍らずに…。
そうですねはい。
保存出来るんですね。
なぜ1年前の梨が食べられるのか?その謎を解き明かしていきましょう。
私たちの生活に欠かす事の出来ない食品。
そこに書かれているのは「氷温」の文字。
米や加工品さらにはコーヒーにまで氷温の文字が。
今や氷温はうまみを引き出す技術としても注目を浴びています。
おいしさが断然違うというのが明らかになったので今でも使い続けています。
冷凍でも冷蔵でもない新たな領域氷温。
『日本のチカラ』今週は鳥取県で生まれた常識を覆す技術氷温に注目します。
中国地方最高峰大山のふもとにある鳥取県米子市。
こちらはお昼になると大勢の人でにぎわう店があります。
お目当ては皆さん同じもの。
どこにでもある一品ですがひと味違うといいます。
こちらが一番人気の鯖ずし。
米子市で生まれた氷温という技術で食材のうまみ甘みを引き出しています。
旅行客だけでなく近所の人やサラリーマンも多いそうです。
ここの駅の近くに来たら必ずここでこれを食べるの。
(ディレクター)この鯖ずしがそんなにいいんですか?好きだから。
フフ…。
噛めば噛むほど味が出てきます。
とってもおいしゅうございます。
お待たせしました。
お先に鯖ずしのほうどうぞ。
(女性)はいありがとうございます。
(店員)お好みでおしょうゆのほうお使いになってください。
はい。
いただきま〜す。
初めて食べる観光客も絶賛の味です。
東京のよりちょっと甘くて食べやすいです。
フフ…。
鯖ずしもおいしいですが鳥取の自慢はこれだけではありません。
全国に誇る特産品があります。
それが…二十世紀梨。
ジューシーで皮ごと食べられるのが特徴。
日本一の生産量です。
夏の終わりから秋にかけて全国へと発送されています。
すぐにでもかぶりつきたくなるおいしそうな梨ですね!この梨を一年中食べられる驚きの技術が米子市で生まれました。
その技術を開発した氷温研究所です。
こちらが1年前の梨です。
実はこれ1年前に収穫されたもの。
鮮度を保ったまま保存する技術。
凍るようで凍らない世界それが氷温なのです。
氷温は今から45年前山根昭美さんが発見しました。
山根さんは国の委託を受け二十世紀梨の長期保存の実験を行っていたのです。
梨が凍らないよう冷蔵庫は1度から4度に設定。
実験の結果夏に収穫された梨はその年の年末まで鮮度を保ったまま保存する事が出来ました。
しかしその正月大変な事が起きてしまいました。
機械の故障で冷蔵庫の温度はマイナス4度に。
梨は凍り実験は大失敗。
しかしその4日後奇跡が起きたのです。
冷気が直接当たっていた梨以外はマイナス4度でもなんと凍らずに鮮度を保っていました。
それどころか梨は甘くてジューシーでおいしかったのです。
この時発見されたのが冷凍でも冷蔵でもない第三の世界氷温でした。
氷温とは冷凍以上冷蔵以下の間で発見された温度域で冷凍するよりもはるかにものを新鮮に保てる温度です。
氷点下の低温で食材のうまみや甘みを引き出す寒干しや寒ざらしといった古くから伝承されている技法と同じ仕組みです。
食材によって異なる氷温。
例えばブドウはマイナス2.2度サクランボはマイナス3.4度とさまざまです。
食材を氷温域で保存加工すると細胞自身が凍らないよう頑張ります。
その結果アミノ酸や糖といったうまみ成分が増し熟成を進める効果があるのです。
氷温の仕組みがよくわかる金魚を使った不思議な実験です。
衝撃を与えると凍るマイナス5度の水。
この金魚をこのフラスコの水の中に入れます。
(福間研究員)そうしますとゆっくりと金魚の体温が奪われていきまして徐々に冬眠状態に入っていきます。
この金魚を水槽に戻し泳ぎ出せば凍らない氷温の世界が証明されるのです。
先ほどまで泳いでいた水槽の中に戻してやります。
普通の水の温度に戻してやる事によって徐々にエラと呼吸が戻ってきまして普通に泳ぐようになっている状態です。
この技術を用いて魚の長距離輸送にも成功しました。
水槽の中にいるのはヒラメです。
このヒラメを氷温域で眠らせて米子からアメリカへと輸送しました。
アメリカで再びヒラメが泳ぎ出し氷温技術は海外でも高く評価されたのです。
こちらは氷温技術を応用した海水で作られたシャーベット状の氷で海産物を運びながら熟成させる事が可能となりました。
塩分濃度を変える事で食材に合った氷温域を作る事が出来ます。
氷温で熟成をさせたいですとか貯蔵したいといったそういったニーズに合わせましてどのような形で技術を導入すればいいのか。
その技術によってどのような効果が得られるのかというのを具体的に数値化してそれで商品の開発に役立ってもらえるように技術を提供しています。
氷温には未知の可能性があります。
研究所では食材に合った氷温域での保存方法や成分変化などを調べるため日々研究を重ねています。
現在は氷温を発見した山根昭美さんの息子昭彦さんを中心にその技術を広めています。
鮮度だとか生き物そのものっていいますか素材のよさをそのまま伝えたりまたは添加物を加えないでその素材のよさを引き上げるっていう事で利用して頂くにふさわしいといいますかすばらしい技術かなというふうには思いますね。
米子市の隣には日本有数の漁港境港があります。
水揚げされたばかりの新鮮な魚にも氷温技術が活躍します。
その新鮮な魚を扱う水産加工会社氷温技術にいち早く注目しおよそ40年前に導入しました。
国内外から届いた魚を氷温技術で加工しています。
氷温研究所の職員がやって来ました。
氷温技術をどう生かすのか連携は欠かせません。
出来るだけ…氷温という事でやってますので温度が上がらないような形をとっております。
例えばゾーニングという事でカラーで分けるとかあの…床とかですね。
そういったものをまたされるという事もまた私どものほうでご提案出来ればと思っております。
氷温技術のノウハウの提供二人三脚で研究を進めていきます。
この日は氷温食品を組み合わせた新商品の開発を相談していました。
弊社としてご提案させて頂きたいなというかお取り組みさせて頂きたいなっていうのはやはりお酒…。
氷温で作ったお酒もえ〜…主役になるしあとお魚のほうも主役になるようなですね商品企画というのを今進めています。
(三島研究員)ああそうですか。
(男性)はい。
食材にさまざまな付加価値を生み出す氷温技術。
ここでは氷温食品第1号のシルバーしょうゆ漬をはじめ数々の人気商品が誕生しています。
こちらの甘塩さば切身は年間1200万食販売するヒット商品です。
中には国際線の機内食としてアメリカ中国北欧など数十路線で食べられているものもあります。
人気の理由は氷温へのこだわりです。
企業秘密のためお見せする事は出来ませんが複数の氷温庫でじっくりと寝かせます。
脂ののったうまみの強い時期の一瞬の時期のですね原料を急速に凍結をしてそれで世界から集まった原料をこちらのほうで解凍や熟成をして行っております。
魚種やですね大きさによって非常に多く温度帯が分けられていて湿度や空気あと…その解凍方法というのをですね非常にこだわって行っております。
旬の時期に水揚げされた魚をまとめて購入し氷温庫でじっくりと管理。
うまみののった真冬の味ともいわれる魚がいつでも食べられるのです。
うまみを引き出す工夫はこれだけではありません。
魚が漬けられている調味液も氷温域で管理するなどほとんどの工程が氷温域となっています。
(本城室長)ずっと持ち続けてます技術と氷温技術との組み合わせ。
それから新しい素材との組み合わせ例えば野菜とかですね。
そういう…時代のニーズに応じた商品を作る事が出来たんじゃないかなというふうに思いますね。
氷温技術を導入している企業などの集まりです。
それぞれが氷温食品を持ち寄り意見交換などが行われました。
中には今年秋の商品化を目指す企業もあります。
あの…氷温の技術っていうのは前から知ってはいたんですけれども今回まあ私ども味噌の…味噌メーカーなんですけれどもこの技術を用いてさらにおいしい味噌を作りたいというふうに思いまして今回取り組まさせて頂きました。
氷温技術は全国に広がり今ではおよそ700品目が氷温食品に認定。
中には氷温技術を使うのが難しいと言われた食材もあります。
食肉加工会社ここが扱うのは豚肉。
難しいと言われていた枝肉の氷温熟成に全国で初めて成功しました。
しかしここまでの道のりは平坦なものではありませんでした。
うまみを引き出し長期保存させるため30年近い研究を重ねました。
氷温域に入る豚肉はですね非常に食べやすく臭みもなく本当に口で溶けやすく非常においしい豚肉になると思いますね。
豚肉の品質管理工場内の衛生環境そして温度。
おいしさを追求する中で氷温域へとたどり着いたのです。
氷温熟成氷室豚の誕生です。
枝肉の氷温熟成には温度管理だけでなく衛生管理も重要です。
ここでは毎日3時間かけて清掃を行うほどです。
(栗原社長)そんなわけであります。
実際に氷温研究所で氷温熟成氷室豚の成分変化を調べてもらいました。
(渡邉)分析結果はいかがでしたか?氷室豚につきましては熟成前に比べて冷凍と冷蔵の間で味の新領域は確かに生まれていました。
氷温熟成氷室豚は東京や大阪など高級百貨店やレストランに出荷されています。
このレストランでは3年前から氷室豚を扱っています。
新たな食材を探す中で氷室豚に出会いその味に一目惚れしたといいます。
最初はとてもびっくりしました。
豚肉というのは本来新鮮なうちに我々は使い切るというのが鉄則だったんですけれども今回この氷室豚に出会って14日熟成もしくはそれ以上の熟成をかけたものを実際に口にしてみましておいしさが断然違うというのが明らかになったので今でも使い続けています。
うまみ甘みの強い氷室豚でしか作る事の出来ない味です。
値段は普通の豚肉の2倍から3倍ですが氷室豚を目当てに店を訪れる人も大勢います。
(女性)脂身がおいしいんだよ。
(女性)うん脂のとこ。
う〜ん…!
(女性)フフフ…。
脂じゃない。
豚の脂じゃない。
なんだろう…?口で溶ける。
今メインの豚肉料理はこの氷室豚だけにするほど。
舌の肥えたお客様にも大人気です。
う〜ん!フフおいしい。
(女性)脂って感じしないでしょ?
(女性)うん。
初めてここに来た時にこの豚出されて涙出ましたもんねおいしくて。
わっ!と思って。
氷温熟成が食材の魅力を最大限に引き出しています。
アルプスに囲まれた味噌の製造販売を手がける味噌業界で初めて氷温食品を完成させました。
熟成の研究を進める中でおととし氷温に出会ったのです。
業界初の氷温熟成味噌。
北海道産の大豆と国産のコシヒカリ。
原料にもこだわり新たなブランドとして大きな期待を寄せています。
ここでは通常の醸造工程を終えたあと最終段階で氷温の熟成庫に保存します。
ここは味噌の熟成庫になります。
あの…さまざまな温度帯があります。
例えばこちらのほうですがこれは25度から26度と味噌の熟成温度は大体そのへん25から30度ぐらい。
これが普通の熟成温度です。
まあこういった部屋もありますしこちらのほうはまあ15度ぐらい。
熟成が終わった味噌を冷蔵保管する部屋です。
ここでは味噌ごとに適した熟成温度が設定されています。
こちらが氷温専用の熟成庫になります。
では開けます。
2年間の試行錯誤の末ようやく味噌の氷温域を発見しました。
氷温研究所で分析したところ氷温熟成していない味噌に比べうまみ甘みの成分がおよそ14パーセント増えていました。
(小市部長)しかしあの…。
おいしさだけでなく品質にも味にもこだわった味噌です。
業界初の氷温熟成味噌。
氷温熟成の効果で塩の味がやわらぎまろやかでうまみたっぷりの味噌に仕上がりました。
ああ…おいしいですねやっぱり。
甘みがありますね。
(林社長)手作りの中で本物感品質感を求めるというような動きが最近のお客様消費者の方々のトレンドといいますか方向性ではないかなというふうに思っております。
実際にはかなりコストがかかった製法でございますのでその価値を十分にご理解頂いてご賞味頂ける味に仕上がったと思っております。
大きな期待が寄せられている氷温。
その驚くべき進化とは…?食材のうまみ甘みを引き出し人々を笑顔にする氷温技術。
今最も期待されているのが医療です。
発見された弥生人の脳なんと氷温技術で保存されています。
氷温の進化が医療にも新たな火をともそうとしています。
多くの臓器移植を待つ方とかですね細胞移植を待つ方それから再生医療への応用というところで大きく夢が広がって患者さんへの恩恵になると思います。
冷凍と冷蔵の間にある氷温。
いつの日か世界中の人たちを救う日が来るかもしれません。
『日本のチカラ』次回は岩手県。
馬とともにマッシュルーム作りに挑む若者に迫ります。
2015/09/20(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
食材の旨味や甘みが増す「氷温」を大特集!氷温とは、冷凍以上冷蔵以下の温度域で、冷凍よりもはるかに物を新鮮に保てる温度。鯖寿司、豚肉など様々な美食をご紹介します!
詳細情報
◇番組内容
「氷温」という技術は鳥取県米子市で生まれました。今から45年前、梨の長期保存実験の中で、偶然発見されました。この技術を使うと、食材の旨味や甘みが増すことが、データでも分析されています。現在、約700品目の氷温食品が誕生、氷温へのこだわりが付加価値のある商品を作り出しています。食品の分野で全国に広がりを見せる氷温ですが、今、医療の分野でも大きな期待が寄せられています。
◇番組内容2
発見された弥生人の脳は、氷温技術で保存されるなど、今後は、臓器移植、細胞移植にも氷温が活躍する日が来るかもしれません。番組では、氷温の仕組みがよく分かる不思議な実験や、氷温熟成された食材を口にする消費者の声、表情を交えながら、常識を覆す技術「氷温」の魅力、今後の可能性について考えていきます。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
定常菜都子(日本海テレビアナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:日本海テレビ
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:38696(0x9728)