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社説:安保関連法成立 平和主義を捨てたのか
安全保障関連法が参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数により可決、成立した。戦後70年にわたり貫いてきた平和主義が大きく変わることになる。
日本は先の大戦の反省に立ち直接攻撃されたときにのみ武力を行使する「専守防衛」を堅持してきた。海外では「戦争をしない国」として広く認知され、国際的な信用を高めてきた。
安保関連法はその信用を低下させかねない。米国など密接な関係にある他国への攻撃を自国への攻撃と見なして反撃する「集団的自衛権」が行使できるようになるほか、自衛隊活動の範囲や内容も大幅に拡充されるからである。
英BBC放送は「第2次世界大戦以降初めて海外での戦闘行為を認める歴史的な動き」と報じた。安倍晋三首相が主張するように、安保法制の整備による日米同盟の強化は抑止力の向上につながるかもしれないが、今後は国際社会から「戦争のできる国」と受け止められる恐れが強まる。
政府・与党が安全保障上、脅威としている中国の外務省は、安保関連法の成立を受けて警戒を強める談話を発表。韓国の大手マスコミは北東アジアの不安定化につながりかねないとの見方を示した。
安倍政権はことし4月、自衛隊と米軍の役割を定めた「日米防衛協力指針(ガイドライン)」を18年ぶりに改定した。今回成立した安保関連法はそれを法的に裏付けるものだ。
ガイドラインの改定が先で、法の整備が後追いする事態は、主権国家としてあってはならない。ここに対等な日米関係を志向しながら、米国に従属的な傾向を見て取ることができる。
米国の軍事的な協力要請に関して安倍首相は「政府が主体的に(応じるかどうかを)判断するので、米国の戦争に巻き込まれることはない」と述べた。本当にそうだろうか。今後、時々の政権が要請を拒み切れず、自衛隊派遣に応じる可能性は否定できない。
政府・与党の審議や採決の進め方は数の力頼みで、最後まで強引だった。16日、横浜で開かれた最後の地方公聴会で公述人の一人が「この法案を通すのは多数決主義であり、民主主義ではない」と述べた。
異論や少数意見にも耳を傾け、言葉を尽くし、議論を積み上げて結論に至るのが民主主義の基本姿勢だ。安倍首相にはそれが決定的に欠けている。
安倍政権が国の根幹に関わる民主主義や平和主義、さらに憲法をないがしろにしたことによって、国民の間に危機感が生まれ、安保法制に反対する民意が大きなうねりとなった。国民一人一人が主権者として黙っていられなくなったということだろう。安保関連法が成立した後も反発は収まりそうにない。
安倍首相がこのまま独断専行を続ければ、国民の離反を一層招くことになる。
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