安保関連法案成立 暴挙、決して忘れまい(2015/9/19 09:49)
憲法9条の下で禁じられてきた集団的自衛権の行使を初めて可能にする安全保障関連法は、大荒れの与野党攻防の末に、参院本会議で可決、成立した。
元最高裁長官や内閣法制局長官OB、憲法学者ら多くの専門家が「憲法違反」「違憲立法」と繰り返し指摘したが、安倍政権は「限定的な集団的自衛権行使は合憲」として、耳を貸さなかった。
そもそも安倍政権は憲法に明記されている改正手続きを無視し、一内閣の判断で、これまで積み重ねられてきた憲法解釈をねじ曲げた。この事実は極めて重い。
同法の成立で、自衛隊は有事の際の日本防衛だけでなく、海外での武力行使にも道が開かれることになる。しかも地理的制約はない。米軍などへの後方支援活動として、弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油なども可能になり、憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」の恐れは格段に強まる。
この法律は専守防衛と個別的自衛権に基づく安保政策を覆し、平和主義国家としての戦後70年の歩みに汚点をしるす。法制定に踏み切った暴挙を、決して忘れまい。
憲法との関係で重要なのは、集団的自衛権行使の要件となる「存立危機事態」だ。
「日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険」がある場合を指すが、認定基準は「総合的に判断する」(安倍晋三首相)とされ、何らの歯止めなく政府の裁量に委ねられる危険がある。
国会審議で、政府は具体例として朝鮮半島有事での米艦防護、中東ホルムズ海峡の機雷掃海を挙げたが、野党の追及で、そうしたケースの想定自体が現実味に乏しいことが露呈した。
後方支援では、自衛隊の活動範囲が従来の「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場以外」に広がる。ミサイルや戦車、化学兵器などの輸送と砲弾やロケット弾などの提供も可能になる。まさに兵たんを担うわけで、日本は相手国に「敵国視」され、戦争に巻き込まれる可能性が高まろう。
国会審議と並行して多くの人々が国会前で、あるいは全国各地で抗議デモに参加し、その数は次第に膨れ上がった。高校生や大学生、サラリーマンやOL、若い母親も高齢者も、崩れゆく憲法への危機感から、いたたまれなくなって出向いたようだ。
この経験はきっと人々の記憶に刻まれ、いつか政治を動かすバネになるだろう。