再処理の法人設立 責任と役割分担を明確に(9月21日)
来年4月の電力小売り自由化後も使用済み核燃料再処理事業を維持するため、経済産業省は新設する認可法人を通じて事業を監督下に置く方針を決めた。現在の運営主体である日本原燃(六ケ所村)は株式会社のまま存続させ、法人が業務委託する方向で検討を進める。
原燃は原発を運転する電力各社が出資する株式会社。経産省が懸念するのは自由化後に経営悪化した電力会社が再処理から手を引き、最悪の場合は原燃が解散に至る事態だ。
経産省は認可法人を関与させることで、そうした事態を防げるとする。法人は電力各社など民間が発起人となり、国の認可を受けて設立。監督のため国が命令権限を持ち、報告義務も課す方向だ。国が人事や事業計画に関与でき、解散にも法的な歯止めがかかるという。
「詳細設計は今後詰める」としており、現時点では不明確な点が多い。特に分かりにくいのが認可法人と原燃の関係だ。法人を「実施主体」とする一方、実際に六ケ所の再処理工場を運営するのは法人から委託された原燃。両者で役割や責任、権限などをどう分担するのか。国を加えた3者になると関係は一層はっきりしない。
今よりも責任の所在があいまいになるのではないかという懸念を抱かざるを得ない。端的に言えば「県民に向き合うのは誰なのか」という点である。
屋上屋を架し、船頭が増えるだけの体制見直しであれば、かえって意思決定や情報公開、トラブル対応、地域振興などの面でも妨げとなりはしまいか。また、認可法人の運営を担う人材の確保も大きな課題となる。
村議会からは「体制変更によって従来の地域振興策が守られるのか不明だ」との声が聞こえる。東京だけで議論が進むのだから当然の不安だろう。
経産省は来春の電力自由化までに詳細を決めるが、今後の検討に当たってはこうした点に留意しながら、地元の不安解消に努めてほしい。その過程では県や村などの意見に耳を傾ける必要がある。地元側も静観するだけでなく、積極的な発信に努めるべきではないか。
一方、再処理工場は試運転中のトラブルなどによって何度も完成延期を繰り返し、いまだ完成していない。地元に当初約束した通りの計画で今ごろ順調に運転していれば、東京電力福島第1原発事故という大きな環境変化があったにせよ、果たして今回のような議論が浮上しただろうか。関係者は肝に銘じて今後の運営に当たってほしい。