(テーマ音楽)山梨県北部の乙女高原。
東京ドーム1個分ほどの草原と森です。
夏高原はにぎわいます。
およそ1か月で花開く80種類の山野草。
その花を求め高原の生き物が集まります。
不思議な光景が広がる森の湿地で育まれる小さな命。
森と草原が織り成すひと夏を訪ねます。
山梨県に続く秩父山地。
標高1,700メートルの山あいに広さおよそ5ヘクタールの小さな高原があります。
乙女高原です。
草原は江戸時代に家畜の草を刈るためにつくられました。
その後スキー場のゲレンデなどに役割を変えながら300年以上にわたり生態系が守られてきました。
7月下旬。
気温が25℃を超えると草原の花が開き始めます。
高原の夏は1か月ほど。
虫たちを魅了しようと競い合うように花をつけます。
ひと夏に開花する花は80種類を超え日本有数の豊かさです。
こちらは各地で絶滅が危惧される…帆を上げた船が名前の由来と言われ細長い花の奥に蜜をためています。
日当たりを好む…全国で草原が減るにつれあまり見られなくなっています。
ピンク色の小さな花が円すい形に並ぶ…全国で数が減っていますがここでは群生しています。
数が多いために変わった花も見る事ができます。
花びらが白いチダケサシです。
チダケサシが密集する乙女高原では交配の機会が増えるため突然変異で生まれる白い花が多く見られるのです。
草原は花盛り。
その蜜を求め姿を現す生き物がいます。
チョウたちです。
花は掛けがえのないエネルギー源になります。
乙女高原のチョウはおよそ60種類。
多くのチョウがまとまって見られる全国屈指の場所です。
森で羽化した…渡り鳥のように長距離を移動します。
栄養を蓄え夏が終わると南へ。
調査ではこの高原のチョウが高知県にいるのが見つかりました。
蜜を吸うチョウの中にユニークな姿を見つけました。
開いた羽を上から見ると目玉のような模様がついています。
空から襲ってくる天敵の鳥を威嚇するためこの姿になったと言われています。
草原の一番低い所にある森。
湿地に不思議な光景が広がります。
ずらりと整列する草のかたまり…スゲの株が積み重なって出来たもの。
枯れたスゲの上に新しい葉が生えています。
冬湿地の水が凍るとスゲの根が少し上に持ち上げられます。
繰り返していくと谷地坊主に。
この高さになるには10年以上かかると考えられています。
冬の厳しさゆえ他の植物がなかなか生えないこの湿地には3,000もの谷地坊主が並んでいます。
複雑な形をした谷地坊主は生き物たちの住みか。
根元に潜んでいるのはヤマアカガエルのオタマジャクシです。
ここで待っているものがあります。
谷地坊主に暮らすアリ。
スゲの葉を歩いているうちに…。
あっ落ちました。
沈んだアリはオタマジャクシの貴重なたんぱく源に。
待っていれば食べ物が上から降ってくる。
恵まれた住みかです。
夏の盛りにぎやかな羽音が響き始めます。
体長1.5センチほどのマルハナバチです。
乙女高原には本州で見られる種類のおよそ半数が生息しています。
この季節に飛び交うハチはほとんどがメス。
花の蜜を栄養にしています。
森の巣穴と草原を多い日には50回近く往復します。
こちらは…体長2センチ近くになる高原で最大のマルハナバチです。
花の上を動き回り集めているのは幼虫に与える花粉。
足の毛で絡めとります。
小さな草原でさまざまな種類のマルハナバチが共存できるのは花とハチの絶妙な組み合わせがあるからです。
蜜を吸うオオマルハナバチ。
ストローのように突き出た舌に注目です。
やって来た花はシシウド。
小ぶりな花で蜜のある所が浅く短い舌で吸い取るのにぴったりです。
一方こちらは舌の長いトラマルハナバチ。
やって来たのは帆掛け船のようなあのツリフネソウです。
蜜が花の奥深くにあり長い舌でないと吸う事ができません。
80種類を超える乙女高原の花の豊かさがマルハナバチの共存を可能にしているのです。
8月下旬。
オタマジャクシのいた谷地坊主の湿地をのぞいてみると…。
いました。
手足が生えあちこちでカエル跳びを始めています。
体長はまだ1センチほど。
湿地の縁を登り陸上に上がります。
これからは広い森で小さな昆虫などを捕まえながら成長していきます。
夏の終わり。
草原を忙しく飛び回るチョウがいます。
羽の朱色が印象的な…成虫で冬を越すためこの時期にたっぷりと栄養を蓄えます。
アザミの花の上に小さなハチを見つけました。
メスに後れて羽化したオスのマルハナバチ。
栄養を蓄えこれから女王バチの争奪戦が始まります。
長距離を移動して暮らすアサギマダラは旅立ちの季節。
ヒョウモンチョウの仲間は最後の求愛行動です。
ペアを見つけたメスは森の周りで産卵します。
山梨県乙女高原。
小さな草原と森で300年以上紡がれてきた命の営みです。
2015/09/20(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「山梨 乙女高原」[字]
標高1700mの乙女高原は、森に囲まれたくぼ地の草原。他では外来種に駆逐されるツリフネソウなどの花々80種類が咲き誇る。そこに夏、姿を現すのがマルハナバチだ。
詳細情報
番組内容
山梨県にある標高1700mの乙女高原。森に囲まれたくぼ地で、そのほとんどは草原。他の地域では外来種に駆逐されるツリフネソウなどの花々80種類が咲き誇る。山地の開発などで少なくなったチダケサシも数多く、通常ピンク色の花が白く変異した個体も見られるほどだ。夏、姿を現すのがマルハナバチ。狭い草原に6種類がすみ分けている。舌の長いトラマルハナバチは蜜源の深い花を、短いオオマルハナバチは浅い花の蜜を吸う。
出演者
【語り】古野晶子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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