目撃!日本列島「届かなかった声〜新資料が語る“海の特攻”の真実〜」 2015.09.20


太平洋戦争末期日本軍が始めた特攻。
戦局を打開するために行った作戦でした。
勢力圏を次々と突破され追い詰められていく日本軍。
本土を防衛する最後の切り札として本格化させたのが海の特攻です。
人が乗り込み敵艦に体当たりをする人間魚雷回天。
潜水具を身につけた兵士が爆弾もろとも敵に突撃する…しかし数多くの若者が戦果をほとんど上げる事なく命を落としていきました。
戦後70年となる今年隊員や指揮官が残した資料が相次いで見つかり新たな事実が分かってきました。
兵器は開発段階から致命的な欠陥を抱えていたのです。
技術者たちはその欠陥を知りながら生産を止められずにいました。
現場の指揮官たちも作戦をやめようとしなかった事が明らかになりました。
疑問の声が届く事なく失われていった数多くの命。
戦後70年新資料が語る海の特攻の真実です。
大小3,000の島が入り組む瀬戸内海。
70年前ここに海の特攻兵器の開発訓練の拠点が20か所以上ありました。
ここで人間魚雷回天の訓練が行われていました。
頭部に1.5トンの爆薬を積み人間が乗り込んで操縦。
敵艦に体当たりをします。
回天に乗り込んだのは二十歳前後の若者たち。
そのほとんどは志願兵でした。
隊員たちは瀬戸内海から沖縄や硫黄島などに出撃。
104人が亡くなりました。
今年3月回天に関する未公開の資料が見つかりました。
資料を残していたのは9年前に亡くなった…昭和19年9月海軍兵学校の同期7人と共に隊員となりました。
仲間は全員戦死しただ一人生き残りました。
「仲間の死を明らかにしたい」。
戦後小灘さんが調査した100点を超える資料を妻が初めて公開しました。
資料からはこれまで語られてこなかった事実が分かりました。
開発段階で回天に疑問の声が上がっていたのです。
それは終戦の1年前回天を兵器として採用するかどうかを審議した場での事でした。
出席していたのは軍の上層部と兵器開発を担っていた呉海軍工廠の技術者たちでした。
ここで技術者は回天には多くの欠点があり性能が十分に備わっていない事を報告します。
魚雷を改造した回天は一度出撃すると止まったり後戻りしたりする事ができない仕組みになっていました。
更に後から取り付けた舵は小さく方向転換は困難を極めました。
そのため岩に衝突したり海底に突っ込んでしまうおそれがあると技術者は指摘したのです。
しかし軍の上層部は量産するしかないと断言していました。
「欠陥を抱えたまま計画は進み隊員が犠牲になった」。
この事実を小灘さんは戦後になって知りました。
その成果が少なかったというのはね。
(チャイム)欠陥を指摘した技術者の遺族が取材に応じました。
よろしくお願いします。
私の父です。
父の黒川公才さん。
呉海軍工廠で回天の開発や生産を担当していました。
公才さんは所属する部署全体が回天の生産に反対していると話していました。
会議の場で公才さんたち技術者は上層部と激しく応酬しました。
しかし改善に時間を割き戦機を逃す事はできないという上層部に押し切られました。
その1週間後詳しい説明のないまま回天は兵器として正式に採用されました。
欠陥がある事を知りながら公才さんたちは回天を作る事になったのです。
終戦までの間に420基が生産され若者たちが次々と出撃していきました。
戦後亡くなるまで公才さんは自らを責め続けていたといいます。
今回の取材ではもう一つの特攻兵器についても現場指揮官たちが兵器の欠陥を知りながら作戦を止めなかった事が分かってきました。
潜水具を身につけた兵士が敵を撃つ特攻兵器…終戦の3か月前に開発されました。
複数の兵士が海底に潜み竹ざおの先にくくりつけた爆弾で上陸してくる敵艦を撃つ特攻兵器でした。
軍は当時伏龍の潜水具は最新鋭だとうたっていました。
隊員が吐いた息は背負った清浄缶と呼ばれる装置に送られます。
装置には苛性ソーダと呼ばれる二酸化炭素を吸収する物質が入っており長時間の呼吸が可能になります。
軍はこの伏龍を水中特攻の最終兵器として位置づけていました。
(チャイム)今年伏龍に関する新たな資料が見つかりました。
伏龍の現場指揮官だった…事実を伝えたいとひそかに保管してきた音声テープを初めて公開しました。
三宅さんを含む10人の指揮官が集まり行われた会議の記録。
終戦から43年後に開かれていました。
指揮官たちが語っていたのは訓練中に事故死が相次いでいたという事実です。
事故死の原因は潜水具の欠陥にありました。
背中の清浄缶が壊れやすく岩などの障害物にぶつかると破損し海水が入り込みました。
海水は清浄缶の苛性ソーダと反応し高温化したアルカリ性の液体が隊員たちを襲いました。
目に入ると失明口に入ると気管をやけどさせ多くの隊員が呼吸困難で死に至りました。
会議の中で指揮官たちは当初から伏龍の欠陥を知っていた事を明かしました。
指揮官の一人だった三宅さんも欠陥を知りながら軍上層部に話す事はできなかったといいます。
更に特攻隊員たちには気付かれないようにしていたといいます。
このインタビューの2か月後三宅さんは91歳で亡くなりました。
隊員たちは事故死をどう見ていたのか。
岩井さんは大学の在学中に学徒動員で海軍に採用され隊員になりました。
当時郷土を守るためには必要な作戦だと考えていました。
岩井さんは訓練のさなかに仲間の隊員が海岸に打ち上げられ亡くなるのを目撃しました。
事故による死は相次いでいたといいます。
今回見つかった指揮官たちの告白を記録した録音テープを聞いてもらいました。
(テープ)「まことにこれ危険な道具っていうかまあむちゃくちゃ今から考えると本当にむちゃくちゃだと思うんです」。
岩井さんは事故死を目撃しながらも何もできなかったと悔いを語り始めました。
そういう事これ大事な事だったな。
事実を知りながら止めようとしなかった指揮官。
疑問を感じながら声を上げられなかった隊員。
その中で若い命が失われていったのです。
岩井さんは70年ぶりにある場所に向かいました。
終戦まで伏龍の訓練が行われていた…指揮官が危険だと伝える事なく繰り返していた訓練。
その事実を何も知らぬまま亡くなった仲間たちに報告しました。
一人一人の疑問の声が届かない中で失われていった命。
70年の時を経て私たちに突きつけられた重い事実です。
おはようございます。
今日の「サキどり」は2015/09/20(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「届かなかった声〜新資料が語る“海の特攻”の真実〜」[字]

人間魚雷「回天」、人間機雷と呼ばれた「伏龍」。終戦70年の今年、新たに見つかった資料から、瀬戸内海で開発や訓練が行われた“海の特攻”の知られざる真実に迫る。

詳細情報
番組内容
終戦70年の今年、瀬戸内海で開発や訓練が行われた“海の特攻”の実態に迫る貴重な資料が見つかった。改造した魚雷に人が乗り込み敵艦に体当たりする「回天」、潜水具を身にまとった兵士が竹ざおの先にくくりつけた爆弾で敵艦に自爆攻撃を行う「伏龍」。致命的な欠陥があることが分かりながら、作戦が続けられていた事実が明らかになった。疑問の声が届くことなく、失われていった数多くの命。知られざる“海の特攻”の真実に迫る
出演者
【語り】袴田吉彦

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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サンプリングレート : 48kHz

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