胃がん(6)今度は味覚障害…泣いた
食事をすると、腸がぷるぷる震えていた。未消化の食べ物が流れ込み、腸がびっくりして、冷や汗や吐き気が出る「ダンピング症候群」だ。だんだんと腸も慣れ、昨年10月、退院できた。
翌日、うれしい連絡をもらった。キャスターをしていたBSの報道番組が1月4日、NHK総合で放送されるので、戻ってきてほしいという。「3か月先の復帰目標ができました」
だが、まだ難関が待ち構えていた。がんはステージ3。担当医から「今後5年の間に60~70%の確率で再発する可能性がある」と説明された。高すぎる再発のリスクを減らすため、抗がん剤治療を勧められた。
「副作用で髪が抜けるのが怖かったが、その恐れがないのを確認し、踏み切りました」。ステージ4の患者に投与する点滴を組み合わせた、この病院では初めての治療になった。途中に休薬期間もあり、復帰日がその期間に入っていた。
でも、副作用が強いため、一時、入院しなければならない。服用が始まると、ものすごい睡魔、だるさ、食欲不振が襲ってきた。
昨年12月に入院し、点滴が始まった。新たに、味覚障害に苦しめられた。好きだった食べ物の味がしなくなり、泥の水を飲んでいるようで、ほとんど食べられなかった。
「なんでこんなつらい思いをしないといけないの」。耐えきれず、泣いた。
報道番組キャスター 黒木 奈々(くろき なな)さん 32
(2015年9月10日 読売新聞)
一病息災 最新記事 一覧はこちら
- 胃がん(7)闘病の現実伝えたい(2015年9月17日)
- 胃がん(6)今度は味覚障害…泣いた(2015年9月10日)
- 胃がん(5)公表、手術…痛みとの闘い(2015年9月3日)
- 胃がん(4)復帰の10日後に事態一転(2015年8月27日)
- 胃がん(3)会食中に激痛、救急搬送(2015年8月20日)
- 胃がん(2)苦労重ね「メイン」に抜てき(2015年8月13日)
- 胃がん(1)全摘出手術経て限定復帰(2015年8月6日)
- 難聴(4)周囲のフォローに助けられ(2015年7月30日)
- 難聴(3)名医にも「治らない」と言われ(2015年7月23日)
- 難聴(2)友人に指摘され気づく(2015年7月16日)