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移民 予想上回る規模 EU団結示せるか

産経新聞 9月19日(土)7時55分配信

 ■「われわれは試されている」

 難民や移民の流入問題でEUなどの協調態勢の構築が遅れ、関係諸国の関係が軋(きし)んでいる。ハンガリーのように国境管理を強化して流入を阻んでも、別の隣国に移民らが殺到して負担を強いられる構図が鮮明になったからだ。EUは23日、緊急の首脳会議を開く。待ったなしの状況下で団結が示せるかの正念場となる。(宮下日出男)

 「われわれの収容能力には限界がある」。17日、そう語ったのはクロアチアのミラノビッチ首相だ。

 移民らの主要経由地だったハンガリーは南隣セルビアとの間にフェンスを建設し、国境も封鎖。移民らのうねりは一挙に方向を変え、クロアチアに流れ込んだ。その規模は今後2週間で予想をはるかに超える2万人。16日には移民への協力姿勢を強調していた同氏も悲鳴を上げた。

 クロアチアの隣国スロベニアも警戒を強める。ツェラル首相は17日、無秩序な通過を認めない方針を示した。オーストリアのように、ハンガリー国境で入国審査を再び導入する方針も表明した。

 国境の守りを固めても、移民らの流入を完全に止めるのは難しい。欧州諸国間の自由な移動を認めた「シェンゲン協定」の参加国で今回、最初に入国審査を復活させたドイツでは16日、許可なしで越境してきた移民らの数が約7300人に上り、前日から倍増した。

 移民らは密入国の仲介業者の手引きで検問をかいくぐっているとみられ、警察当局は14〜15日に業者70人以上も逮捕。業者が一段と活発化するのを警戒し、16日夜からはチェコとの国境でも検問を始めた。

 各国が国境管理を強化しても、移民らが代替ルートを見つけて別の国に押しかける以上、最終的な解決策にはつながらない。国際移住機関(IOM)は「悪影響が出る」と、こうした手法には懐疑的だ。

 欧州を目指す移民らの主要な経由国であるトルコでは、ギリシャの離島に渡るだけでなく陸路を使う動きも出てきた。冬の到来を控え、海路より安全な手段を取り始めた可能性があり、トルコの北に位置するブルガリアも新たな流入パターンの拡大に危機感を強めている。

 23日の首脳会議でEUは、改めて難民申請者受け入れを分担する計画などを再協議する。オーストリアのファイマン首相は17日、「われわれは試されている。今度こそ他国に問題を背負わせる欧州ではないことを示さねばならない」と訴えた。

最終更新:9月19日(土)10時22分

産経新聞

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