9月19日付 安保関連法 この暴挙決して忘れまい
|
Tweet |
安全保障関連法案で混乱した国会が幕を閉じる。
反対を叫ぶ国民の声に背を向け、自民、公明の与党と次世代の党など野党3党が、参院本会議で法案の成立に持ち込んだ。
集団的自衛権の行使容認は、安倍晋三首相の長年の悲願である。昨年7月の閣議決定に続いて法制化にこぎ着けたことは、感慨深いものがあるだろう。
しかし、戦争放棄と交戦権否認を定めた憲法9条の下では、集団的自衛権は「許されない」というのが歴代内閣の憲法解釈である。
これをねじ曲げ、限定的に「許される」としたのが安保法だ。理由は、日本を取り巻く安全保障環境の変化であり、中東・ホルムズ海峡で機雷掃海をする必要があることなどだ。
ところが、行使の具体例は国会審議の中で、どれも説得力を失ってしまった。
圧倒的多数の憲法学者をはじめ、元内閣法制局長官や元裁判官ら、多くの専門家も憲法違反だと批判している。
そんな法案を、国会で多数を握っているからといって成立させていいはずがない。
日本が掲げてきた平和主義を変容させ、立憲主義を破壊する立法に強く抗議する。
◎時の政府の意向次第
問題は、必要性が乏しく、違憲の疑いが強いことだけではない。
政府は、集団的自衛権で武力行使ができる条件として、三つの要件を定めた。
「日本や密接な関係の他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」ことなどだ。
直接攻撃されていないのに、国の存立が脅かされるとは、どんな事態なのか。明白な危険があると認定できるのは、どのような場合か。
行使は極めて限定的だと首相は力説したが、ついに明確にならなかった。これでは、時の政権の意向次第でどうにでもなる。
自衛隊の活動範囲も格段に広がる。従来は「非戦闘地域」に限るとしていたのを、「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)」でなければ可能とした。戦場以外なら、憲法が禁じる「他国の武力行使との一体化」に当たらないとの判断だが、無理があろう。
後方支援では、弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油を解禁する。中谷元・防衛相は「核兵器の運搬も法文上は排除していない」とした。後で「あり得ない」と訂正したが、これも政権の判断で変わる恐れがある。
安倍首相は、丁寧な説明で国民の理解を得たいと繰り返したが、国会答弁を振り返る限り、そうした姿勢はうかがえなかった。
理解を得られなかったことは、全国に広がった反対のデモや集会が証明している。
◎これで終わりでない
「安倍1強」といわれる政治状況ゆえのおごりなのか。首相周辺からは、報道機関の言論を封じ込めようとする動きも起きた。許し難いことである。
特別委員会での採決では、次世代など野党3党を取り込み、「強行」ではないとした。だが、小手先の演出にすぎないということは、多くの国民が見抜いていよう。
議席数で大差があるとはいえ、野党の力不足も目立った。集団的自衛権に対する党内の意見が割れている民主党は、当初、迫力を欠いていた。維新の党も分裂含みの混乱を演じた。
それでも、法律の撤廃を求める野党や国民の動きは、これからも決してやむことはないだろう。
首相は国会閉会後、来年夏の参院選をにらんで、政権運営の重心を経済政策にシフトさせる構えだ。
これまでの国政選挙でも、首相は経済再生を中心に訴え、安保政策の大転換にはほとんど触れなかった。そうしたやり方が、果たして次も通じるだろうか。
世論を顧みない振る舞いに手痛いしっぺ返しがあることは、与野党とも経験しているはずだ。
安倍首相は、そのことを肝に銘じてもらいたい。
- 安保関連法 この暴挙決して忘れまい 9/19
- 安保参院委可決 国民の声に背を向けるのか 9/18
- 安保法案与党強行 憲政史上に汚点を残す 9/17
- 改正派遣法成立 働く人に冷たくないか 9/16
- 辺野古取り消しへ 泥沼化防ぐ方策を探れ 9/15
- 休刊日 9/14
- 欧州に難民流入 人道的支援を急ぎたい 9/13
- 関東・東北豪雨 救助と支援に全力挙げよ 9/12
- 消費税負担軽減策 還付は問題が多過ぎる 9/11
- 辺野古協議決裂 話し合いの努力惜しむな 9/10
- 安倍氏無投票再選 数に頼らず謙虚な姿勢で 9/9
- 女性活躍推進法 働きやすい環境の整備を 9/8
- 多選自粛条例ほご 議会の監視機能強化を 9/7
- 原発浄化水放出 漁協の重い決断を再生に 9/6
- 安保審議大詰め 強引な採決は許されない 9/5
- 年金情報流出 組織の体質改善が急務だ 9/4
- 五輪エンブレム 信用回復へ一から出直せ 9/3
- 概算要求過去最大 地方の目線で絞り込みを 9/2
- 防災の日 心構えを新たにしたい 9/1
- 交通死最少ペース 県民一丸で根絶目指そう 8/31
- 新国立競技場 英知と技術を結集したい 8/30
- 伊方原発避難計画 「合理的」と言えるのか 8/29
- 南北会談合意 和解の流れ確かなものに 8/28
- 北方領土訪問 挑発慎み日ロ関係改善を 8/27
- 世界同時株安 不安の連鎖に歯止めを 8/26
- 中国爆発事故 安全軽視の姿勢を改めよ 8/25
- 上勝町「彩山」構想 葉っぱ事業の飛躍に期待 8/24
- 大阪の中1殺害 社会全体で再発防止を 8/23
- 武藤議員問題 離党で幕引きは許されぬ 8/22
- 安保内部資料 文民統制が危ぶまれる 8/21
- ビットコイン規制 悪用防止へ法整備急げ 8/20
- GDPマイナス 「経済最優先」の正念場だ 8/19
- 人民元切り下げ 大国らしい通貨政策を 8/18
- 犯罪被害者支援 体制強化し周知に全力を 8/17
- 感染レベル4施設 エボラ対策の成果に期待 8/16
- 首相70年談話 「おわび」の心伝わるか 8/15
- あす終戦から70年 平和の原点に立ち返ろう 8/14
- 川内原発再稼働 なぜ今「原発回帰」なのか 8/13
- 戦後70年阿波踊り 平和の尊さ胸に刻んで 8/12
- 日航機墜落30年 安全運航の原点再確認を 8/11
- 外国人観光ルート 認定生かし徳島に誘客を 8/10
- 辺野古工事中断 協議で不信の連鎖断て 8/9
- 採用面接解禁 人材確保のルール守れ 8/8
- 70年談話報告書 「反省」「侵略」明記したが 8/7
- 広島原爆から70年 核の惨禍は繰り返さない 8/6
- 礒崎補佐官続投 これで幕引きは許されぬ 8/5
- 熱中症 注意怠らず正しい対策を 8/4
- 地域商品券 効果持続へ知恵絞ろう 8/3
- TPP合意見送り 日本は急がず国益守れ 8/2
- 東電強制起訴議決 国民の強い怒りの表れだ 8/1
主なサービス
注目コンテンツ
徳島新聞社から