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今日の社説

2015/09/19 03:29

安保関連法成立へ 良識、言論の府はどこへ

 安全保障関連法案の審議が大詰めを迎えた。民主、維新、共産、社民、生活の野党5党は17日夜から18日夜にかけて、参院に中川雅治議院運営委員長の解任決議案、中谷元・防衛相の問責決議案などを次々と提出し、衆院には安倍晋三首相に対する内閣不信任決議案を出すなどして激しく抵抗した。参院での鴻池祥肇参院特別委員長への問責決議案の共同提出が最後のヤマ場となり、法案成立は確実な情勢となった。

 政府・与党を批判する機会をできるだけ多く得たいという野党5党の気持ちは分からぬでもないが、審議の引き延ばし戦術は目に余る。著しく品位に欠け、国民の支持が得られるとは思えない。特別委員会の法案採決で、与野党議員が激しくもみあう混乱ぶりは見苦しかった。長々と演説して議事をいたずらに引き延ばすフィリバスターでの抵抗などは支持者向けの政治パフォーマンスといわれても仕方あるまい。

 限定的とはいえ、集団的自衛権が使えるようになると、「日本が戦争する国になる」や「米軍の戦争に巻き込まれる」などと懸念する声がある。60年安保改定のときも同様の主張がなされ、国会周辺は今とは比べものにならないほどの規模のデモ隊に包囲された。だが、あのときの決断があればこそ、日本の平和と繁栄は保たれたのではなかったか。

 米国は今、世界の警察官役から手を引こうとしている。日本は「内向き志向」になっている米国を東アジアに引き留め、この地域の安定を保つ必要性に迫られている。中国の軍事予算が日本の3倍を超えるなか、米軍は東アジアの平和を担保する最大最強の抑止力であり、平和維持に欠かせない。

 安全保障法制の整備により、米軍が攻撃を受けたとき、自衛隊が一緒に反撃できるようになる。これにより日米の信頼関係は一層高まるだろう。

 もとより、集団的自衛権の行使は、日本の存立が脅かされるゆゆしき事態に直面したときなどに限定的に許される。あくまで「受け身」の対応であり、「日本が戦争する国になる」などという批判は当たるまい。

金沢おどり もてなしの美芸誇りたい

 新幹線開業元年の秋の城下町を彩る金沢おどりが幕を開ける。12回目となる今回は、開催期間がシルバーウイークと重なり、花街関係者をはじめ、全国各地から新幹線で訪れるファンも多いだろう。これまでにも増して質の高い金沢の伝統芸能を発信する好機になると同時に、客人のみならず地元に住む私たちも、もてなしの心を凝縮した芸妓(げいこ)衆の美芸を楽しみ、受け継がれた豊潤な金沢文化に、誇りを持って接する機会にしたい。

 ことしの金沢おどりは、呼び物だった「一調一管(いっちょういっかん)」が、笛の峯子(みねこ)さんの死去により、小鼓(こつづみ)の乃莉(のり)さんと立方(たちかた)の八重治(やえはる)さんという新たなコンビによる「一調一舞(いちぶ)」に生まれ変わって初めて披露される。全国屈指の名妓(めいぎ)2人による掛け合いは、芸の厳しさと奥深さを体現した風景を描くだろう。

 金沢の三茶屋街では、高齢化などで芸妓の数が伸び悩む中、担い手確保と芸の質の向上が課題となっているが、ことし、ひがし茶屋街に4年ぶりに誕生した新花(しんばな)が、金沢おどりでデビューを飾るという明るい話題もある。

 金沢おどりは、若い女性がこの道を志す動機付けとしても、貴重な位置づけとなっている。そうした意味からも、女性の魅力を具現化するあこがれの舞台であり続ける必要があり、それだけに、演じる芸妓たちにとっても、真剣勝負の場と言えるだろう。

 演出、構成を手掛ける駒井邦夫石川県立音楽堂邦楽監督は、本紙で「新幹線時代を迎え、金沢の匂いが漂う舞台こそ求められている」と語った。

 今回も、お家芸の素囃子(すばやし)やお座敷太鼓、大和楽(やまとがく)でつづる舞踊絵巻、金沢とゆかりが深い琳派(りんぱ)の400年を記念するテーマ性豊かな演目など、個性豊かな舞台がそろい、東京や京都に比してなお際立つ華やぎを発散する。

 その場に身を置かないと体験できない至高の舞台を、胸を張って提供できることがこの地の誇りである。伝統に磨きをかけながら、常に革新的な試みを取り入れて進化する迫真の舞台を、演じる側と見る側が作り上げたい。