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 公開中の映画「日本のいちばん長い日」は、第2次世界大戦の最終盤に日本の中枢部で繰り広げられた“運命の24時間”を描く作品だ。原作者は作家の半藤一利さん(85)。敗戦間近の東京大空襲では自らも命を失いかけ、戦後に日本国憲法の産声を聞いた。戦後70年の今、半藤さんの目に“この国のかたち”はどう映るのか。

 ――半藤さんのノンフィクション作品「日本のいちばん長い日」は衝撃的でした。たとえば、連合国に降伏するという政府の方針に反対して徹底抗戦を叫んだ軍人の存在です。一時は武力で皇居(宮城)を封鎖していたのですね。

 「ええ、一種のクーデターでした。『ポツダム宣言を受諾して戦争を終結させるという今の政府の決断は間違っている。だから、自分たちの思うような政府に変えて政策をひっくり返さないといけない』。そう考えた一部の軍人たちが、暴力で国家をひっくり返そうとしたのです。軍隊は武装した組織です。どこの国でもクーデターを起こすのは軍人ですよね」

 「いま安全保障を考えるとき、『軍隊による安全』という視点ばかりが正面に出てきます。軍の存在が抑止力になる、といった議論ですね。でも本来は『軍隊からの安全』という視点も必要なはずです。日本人が憲法9条を受け入れてきた背景には、もう殺し合いをしたくないという思いだけではなく、軍隊からの安全を求める思いもあったのだと思います」