熊谷連続殺人で県警また失態 警察犬追跡、55分で終了していた
埼玉県熊谷市で計6人が殺害された連続殺人事件で18日、埼玉県警の新たな失態が明らかになった。最初の犠牲者が発覚する前日となる13日、通報を受けて外国人不審者の追跡を始めた警察犬がわずか約55分間、距離にして700メートルのみで追跡を終了していたことが判明。追跡捜査を徹底すれば、関与が疑われるペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン容疑者(30)=住居侵入容疑で逮捕状=の確保につながっていた可能性もある。
新たな失態は「警察犬」だった。
13日午後5時から5時半ごろにかけ、2軒の住宅から「外国人が自宅敷地内に侵入した」と通報を受けた県警は、同6時40分ごろから現場付近で警察犬による容疑者追跡を開始した。
警察犬は容疑者の足取りを調べたが、約55分後の午後7時35分、総移動距離わずか約700メートルの地点で容疑者のにおいが感知不能となり、追跡を終了。この際、現場付近の聞き取りを行ったのは通報した住宅のみで、周囲への注意喚起・聞き込みなどは行わなかった。
6人連続殺害に関与した可能性のあるナカダ容疑者は当時、警察犬が歩いていた地点の近くに潜伏していたとみられるだけに、追跡を継続していれば確保につながった可能性は否定できない。
警視庁OBで作家の北芝健氏は「川をまたぐ場合など、警察犬が嗅覚を発揮できなくなるケースはよくある。大事なのはその後の対応だ。瞬時に緊急配備を敷いて捜査に当たるべき」と語る。県警は20人の捜査員を配備する対応は取っているが「マニュアル通りの対応は取っているが、結果的に検挙に至っていないということは捜査上の精神力の欠如と言われても仕方がない」と指摘した。
13日は事件を未然に防げるかどうかの分岐点だった。午後3時半ごろには、熊谷署で事情聴取していたナカダ容疑者に対して署外での喫煙を認め、逃走を許している。さらに、夕方に受けた2件の通報を「相談」で処理。甘い見通しが警察犬追跡での早期撤退を呼んだともいえる。
そして翌14日、田崎稔さん夫妻の遺体が発見。16日には白石和代さん(84)、加藤美和子さん(41)、長女の美咲さん(10)、次女の春花さん(7)の遺体も見つかった。白石さん宅と加藤さん宅は警察犬が追跡を終えた地点の目と鼻の先だった。
その後、失態の連鎖は止まらなかった。田崎さん夫婦の殺害が明らかになった後も、容疑者を指名手配しなかった。さらに16日には、加藤さん宅でナカダ容疑者を発見、追いつめたが、2階から転落して意識不明の重体となった。
県警の貴志浩平本部長は18日、事件現場の視察後に「発生経過まで含めて事実関係を徹底的に解明する」と検証に乗り出す考えを明らかにした。