矢沢永吉やっちゃえCM 日産の狙いと社会へのメッセージとは

NEWSポストセブン / 2015年9月19日 7時0分

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「やっちゃえ」CMが話題の矢沢永吉

 それは個人の問題ではなく、社会的な背景があるからです。受験や就職で一度失敗したら、簡単には立ち直れないシステム。職場で部下とのコミュニケーションが失敗したら、すぐセクハラやパワハラと言われてしまう風潮。こんな社会ですから、みんながリスクを取りたがらなくなっている」(牛窪さん)

 恋人のいない20代男女の実に4割が「恋人はいらない」と考えているという内閣府の調査結果もある。「自分に魅力がないのではと思う」と恋愛に尻込みしてしまう若者も多いという。矢沢の言葉はそんな社会への強烈なメッセージと言えるのだ。

「やっちゃえ」が社会全体へのメッセージだとしたら、顧客としてはどの層をターゲットにしているのだろうか。

「車好きの多い、いわゆるバブル世代の50代。そして退職金が入ってお金に余裕のある60代。この年齢層が主要ターゲットだと思います。でも若い世代にも、矢沢さんが好きだという人が増えているんです。2010年には東京大学の学園祭でサプライズ・ライブを行い、昨年は『東京ガールズコレクション』に登場して若い女子たちを熱狂させています。

 70年代からのファンの中には自分の子供、そして孫と一緒にコンサートに来ている人もいます。世代を超えてファン層が広がっているということも、日産に限らず企業が起用したがる理由の一つだといえます」(牛窪さん)

 30代以上の人たちは、「やっちゃえ」CMのカメラワークで、同じ日産の古いCMを思い出した人もいたのではないだろうか。井上陽水(67)が「皆さん、お元気ですか」と語りかけるセフィーロのCMだ。CMで使われた「くうねるあそぶ」という言葉は流行語にもなった。

「井上陽水さんのCMは、大人の楽しみを前面に押し出したものでした。矢沢さんのCMは、上の世代にも下の世代にもハマるように作られています。成りあがることの難しい時代を生きている若者たちの目には、『失敗や挫折ばかりしているけど俺は性懲りもなくやっているよ』という矢沢さんの姿が新鮮に映っていることでしょう」(牛窪さん)

 CMは最後、「“やっちゃえ”NISSAN」という言葉で締めくくられるが、そこには今の日本の若者に対する矢沢のメッセージを詰め込んでいるのかもしれない。

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