キャリア形成学部から始まって、デザイン、ビジネス、医療工学、医療福祉、映像学部でも取れます。変わったところでは、文芸学部文芸学科、法学部法律学科など、本当にありとあらゆる学部・学科があり、方向性に全くまとまりがありませんが、その一方で、現場で情報を教えていていると、例えば著作権や知的財産権などを教えるとになると法律の知識は必要ですし、経営もデザインも、教科情報の内容に関係があります。情報科の守備範囲は、まさに学問全般と言ってよいほどの広がりがあるのではないか、と感じています。
最近、先輩の先生に「情報科の教員は他教科すべての教科の教員と楽しく話ができるし、それが求められる」という話を聞きました。体育の教員とも話せますよね。「タッチタイピングって運動感覚ですよね」「じゃあ、どうやってあの運動感覚をトレーニングしたらいい?」と意外なところで話が通じます。
一方で、どの学部・学科を出ても、情報の授業ができる(ことになっている)ということは、自分の専門とは関係のない学部・学科出身の人と同じレベルの知識が要求されるということです。これはなかなか辛いものです。法学部出身ではないのに、法律系の知識も当然必要ですし、経済、文化に関することも知らなければならず、その辺りは非常に難しいと思います。
私見ですが、これから情報科の教員になろうという人は、大学院も視野に入れたほうがよいと思います。学部4年間で勉強する知識だけでは、教科内容の知識が追いつかない。もちろん、教員をしながら勉強するということもできますが、情報科の教員は授業や生徒指導、校務分掌の他にコンピュータ教室や職員室内のコンピュータの保守・管理、他の教員へのICT利活用の補助・提案、生徒への情報モラル指導等、教育の情報化全般のヘルプデスクを期待されるため、非常に多忙になり、勉強する時間がない、というのが実態です。大学院を視野に、と言ったのはそのためです。
情報技術の発達を身を以て知らない世代が、情報技術史をどう教えるか
もう一つ、教科を教えるための知識の深さという点で、情報技術史はどのように学べばよいか、という悩みがあります。私は1982年生まれですので、それ以前のことはよくわかりません。「昔のことなので、高校生は知らなくてもいいよ」と言ってしまえばよいのですが、情報科の教員として、情報技術史を知らないのでは困ります。しかし、若い先生で教科「情報」の守備範囲内の情報技術の進化の歴史を、きちんと学べている人は誰もいないのではないかと思います。懇親会などで、「あの頃は△△という機種があって、俺は〇〇をやっていた」という先輩方の『口伝』はよく聞きますが、確かめようとしても個人的な経験だったり他の人からの伝聞だったりで、ソースが明らかではない場合も多いのです。その辺りをどなたかがきちんとまとめていただければ、と思います。
私見ですが、情報技術史はたぶん日本史や世界史で教える知識量に匹敵するくらいあるのではないかと思います。しかも、現在進行形で増え続けており、これからの進化も当然追わなければなりません。現在の情報技術の状況を教えるのも手一杯なところで、それと同時に過去にさかのぼっていくのは、なかなか難しいというのが正直なところです。
例えば僕達の世代は、コンビニに銀行ATMが入る前は、ゴールデンウィークの最中にお金を下ろし忘れるとどこにも遊びに行けなかった、ということを何となく覚えているので、自分の経験として話ができますが、今の高校生はそんな時代のことなどまるで知りません。彼らが情報の教員になる頃、そういう時代があったことを知識として教えなければならないのかどうか。教えるとしたらどのように教えるのか。目の前の生徒に合わせて判断するのが、教員としての技量だと思います。