時代の正体〈88〉知らんぷりできない
辺野古新基地建設考(4)
- 特報|神奈川新聞|
- 公開:2015/05/03 12:56 更新:2015/08/02 21:11
- 無料公開中
「どれだけの思いでこの場に立っているのか。目の前の景色に重ね合わせているものが私とはまったく違う。助けになりたいなんて思った自分が恥ずかしくなった」
恵泉女学園大人間社会学部3年の長棟はなみさん(21)は、そこから立ち去りたい衝動に駆られた。
沖縄県名護市辺野古、新基地の建設予定地に隣接する米軍キャンプ・シュワブのゲート前。午前6時、その日の抗議活動の始まりを告げる第一声、マイクを手にした山城博治さん(62)は言った。
「ここは沖縄戦の後、収容所だったんだ。おれのおじいとおばあはここで死んだんだ」
沖縄平和運動センターの議長。反基地運動の先頭に立つその存在を知らぬ者はいない。抗議の輪に加わろうと沖縄へ渡った見ず知らずの長棟さんに「よく来てくれた」と最初に声を掛けてくれたのも山城さんで、テントで寝泊まりする日々、運動の歴史など教わったが、身の上話を聞くのは初めてだった。
県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦で砲火を免れながら、しかし失われた命。「沖縄戦はまだ新しい記憶なのだ」。反対派住民が口々に叫ぶ「新しい世代に基地を残したくない」という言葉の意味が少しだけ深く理解できた気がした。
COMMENTS