チンパンジー生態探求、歩み半世紀 京大タンザニア研究
京都大が東アフリカのタンザニア・マハレで野生チンパンジーの研究を本格的に始めてから今年で50年を迎えた。代々の研究者が群れの行動をつぶさに観察し、道具の使用や狩猟といった独特の生態を明らかにしてきた。半世紀の歩みを振り返る書籍が今月刊行されたほか、記念のシンポジウムも予定されている。
■道具、狩猟…著作物1500点、記念本を刊行
京大は1960年代の初めごろからタンザニアの各地で野生チンパンジーの調査を始めた。マハレに研究拠点が落ち着いたのは65年。故西田利貞名誉教授が群れの餌付けに成功し、自然な状態で観察することができるようになった。
マハレでは数々の成果が生まれた。それぞれのチンパンジーに所属する集団があることや道具を使ったオオアリ釣り、互いに対面して行う対角毛づくろいの習慣、小型哺乳類の狩猟や肉食などを見いだした。この50年間に送り出した論文などの著作物は1500点を超える。西田名誉教授は研究活動にとどまらず、マハレ野生動物保護協会を設立するなど、自然保護にも尽力した。
こうした歴史を紹介しようと、京大野生動物研究センターの中村美知夫准教授は「『サル学』の系譜 人とチンパンジーの50年」(中央公論新社)を刊行した。マハレに関わった研究者の顔ぶれやその研究成果、今後の展望などをまとめた。19日には50周年記念の展示会や公開シンポジウムを東京大で開く。
中村准教授は「マハレでの研究はチンパンジーの社会的な側面を明らかにし、人類との共通点も多く発見した。これまでの蓄積を生かし、さらに発展させたい」と話している。
【 2015年09月18日 15時30分 】