安保関連法案:与党 参院本会議に緊急上程

毎日新聞 2015年09月17日 21時53分(最終更新 09月18日 03時40分)

参院本会議で中川雅治議運委院長に対する解任決議案を記名投票する議員=国会内で2015年9月17日午後9時19分、長谷川直亮撮影
参院本会議で中川雅治議運委院長に対する解任決議案を記名投票する議員=国会内で2015年9月17日午後9時19分、長谷川直亮撮影

 自民、公明両党は17日の参院平和安全法制特別委員会で、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の採決を強行し、両党と日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の賛成多数で可決した。採決に反対する野党議員と議事を進めようとした与党議員がもみ合い、衆院特別委に続き怒号が飛び交う中での採決となった。与党は法案を17日夜の参院本会議に緊急上程、18日中の可決・成立を図る構えだ。民主党は職権で本会議を開会した中川雅治議院運営委員長の解任決議案を提出するなどして対抗した。

 採決を強行した鴻池祥肇委員長(自民)は法案可決後、「ああいう形での委員会可決は不本意だった」と述べたうえで、「審議はほぼ尽くされた。参院としての結論を出さないといけない時期だと私が判断した」と理解を求めた。一方、「不備な答弁がどうも目立った。謙虚にもう一度耳を傾けてやってもらいたい」と政府に苦言を呈した。

 採決後、民主党、維新の党など野党5党1会派の国対委員長らは山崎正昭参院議長に「議決は無効」などとして、審議を委員会に差し戻すよう申し入れた。だが、山崎氏は「鴻池委員長から採決に瑕疵(かし)はなかったと報告を受けた」などと述べ、受け入れなかった。

 民主党の榛葉賀津也参院国対委員長は記者団に「議事課に確認しても委員長が何を言って誰が賛成しているかも分からない。可決、成立だとはとても認められない」と強調した。

 法案採決に先立ち、野党側は委員長職権で特別委の質疑に入った鴻池氏に対し、解任を求める不信任動議を提出。17日午後1時から、民主党が不信任動議の趣旨説明を行い、各党が賛成、反対の立場から討論を行った。委員会に先立つ理事会では、それ以外の議事は想定されていなかった。

 しかし、委員会で不信任動議が賛成少数で否決された後、鴻池氏が安保関連法案の採決の手続きに入る構えをみせたところで、民主党の議員らが委員長席に駆け寄りマイクを奪取。一方で、自民党議員が議事を進めるため、鴻池氏をスクラムを組んで取り囲み、野党議員を排除。議員同士がつかみ合いになるなど騒然とする中で、質疑終結と採決をする動議や、安保関連法案、付帯決議が次々と採決された。

 民主、維新、共産、社民、生活の野党5党は同日夜の国対委員長会談で、参院に安倍晋三首相や岸田文雄外相、中谷元(げん)防衛相らへの問責決議案を出し、衆院でも内閣不信任決議案を提出することで一致した。内閣不信任案は18日中の提出を目指す。決議案の採決は、安保関連法案の採決に先立ち処理されるため、関連法案の採決は18日以降になる見通しだ。衆院側も内閣不信任案が提出された場合の対応として、18日午前1時以降に本会議が開催できるよう手続きを取った。

 安保関連法案は、他国軍後方支援の「国際平和支援法案」と既存の10法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」の2本立て。日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される「存立危機事態」で集団的自衛権の行使を可能とする。武力行使に至らないグレーゾーン事態で米軍などの防護が可能となる自衛隊法改正案や任務遂行のための武器使用を認める国連平和維持活動(PKO)協力法改正案など改正内容は多岐にわたる。【中島和哉、佐藤慶】

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