数がすべてではないが、感情論でいいはずもない
安全保障関連法案をめぐる国会論議が大詰めを迎えている。与党が衆院で60日再議決ルールを使える多数を確保し、参院でも過半数を握っている以上、野党がどう抵抗しても、いずれ法案は成立するだろう。野党や反対派の主張と行動に反省点はなかったのか。
野党や反対派から見れば、賛成派の私に「反省はないのか」などと言われれば「余計なお世話だ!」と反発したくなるかもしれない。いやいや、そう言わずに少しは耳を傾けてもらいたい。私だって「多数さえあれば与党が何をしてもいい」などと思ってはいないのだ。
できれば、野党に建設的な議論をしていただいて、日本により良い安全保障環境を整えるべきだと思う。だが、残念ながら野党も国会を取り巻くデモ隊も、ナイーブな感情論としか思えない主張ばかり声高に唱えてきた。
典型は、社民党の福島瑞穂副党首が2015年4月の参院予算委員会で初めて唱えた「戦争法案」という法案に対するレッテル貼りである。自民党は直ちに撤回を要求したが、この言葉はその後も独り歩きして、デモ隊のシュプレヒコールでも定番になった。
いったい、いまの日本が本当に自ら他国に戦争を仕掛ける、とでも思っているのだろうか。福島氏は政治家だから、政府与党を攻撃するために好都合な言葉は大げさでもデマでもなんでもいい、と思っているかもしれない。
だが、安倍晋三政権が戦争をしたくて法案を準備したかのようなストーリーを信じる国民は、けっして多数ではない。常識ある人々は「戦争法案に反対」というプラカードをテレビで見かけるたびに「何をバカなことを言ってるのか」とシラけた気分になったはずだ。
レッテル貼りはまだある。「徴兵制になる」という話である。これは民主党が言い出した。安倍首相は憲法が禁じた苦役になるから、絶対に徴兵制にはならないと反論した。それもあるが、そもそも徴兵制は集団的自衛権よりも個別的自衛権に執着した場合の論理的、政治的帰結ではないか。
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