NHKスペシャル「緊急報告 列島大水害」 2015.09.12


生字幕放送でお伝えします
鬼怒川の決壊から2日。
茨城県常総市の中心部です。
水没したガソリンスタンド。
深さは1メートル以上あります。
押し寄せた水でタンクは大きく傾き通りには何台もの車が沈んでいました。
日本列島を襲った記録的な豪雨。
関東平野を流れる鬼怒川が決壊。
濁流が住宅街を一気に飲み込み多くの人が取り残されました。
各地で相次いだ河川の氾濫。
宮城県では大崎市を流れる渋井川など2つの川が決壊しました。
突然押し寄せた水が日常の暮らしを奪いました。
行方が分からない人も多く被害の全容は今なお明らかになっていません。
専門家はこうした災害は日本全国どこででも起こりうると警鐘を鳴らします。
命を守るために私たちは何をすべきなのか。
列島を襲った大水害。
緊急報告です。
日本列島に深刻な爪痕を残した、今回の記録的な豪雨。
これまでに全国で4人の方が亡くなり、今なお、15人の方が行方不明になっていて、今も各地で捜索が行われています。
今回の豪雨がもたらした被害の大きな特徴が、河川の氾濫による大水害です。
こちらのように、これまで確認されただけで、関東から東北にかけて、60余りの河川が氾濫。
このうち14の河川で、堤防が決壊し、大規模な洪水が発生しました。
特に大きな被害となっているのがこちら、茨城県常総市です。
鬼怒川の堤防が決壊し、濁流が住宅街を襲い、多くの家が流されました。
広い範囲で起きた浸水によって、多くの方が外に出られなくなりました。
これまでに1500人を超える人が一時、孤立状態となり、救出活動が続いています。
ひとたび堤防が決壊すると、なすすべもないまま、すべての日常が流されていく。
今回、私たちはそうした光景を目の当たりにし、改めて河川災害の恐ろしさを痛感させられました。
台風シーズンは、これからもまだ続きます。
想定を超える大雨、記録的豪雨、毎年のようにそうしたことばを耳にするようになった今、私たちは命を守るために、何をすべきなのか考えていかなければなりません。
まずは、今回の災害で、人々が直面した大水害の実態から見ていきます。
鬼怒川の堤防が決壊した、常総市の現場です。
堤防が幅およそ80メートルにわたって、完全にえぐり取られています。
激しい勢いで流れ込んだ水によって、被害は広い範囲に及びました。
平屋の住宅に、1人で暮らしている大久保正男さんです。
当時、大久保さんは、堤防が決壊した場所から、およそ600メートル離れた自宅にいました。
10日の午後1時ごろ、1階で過ごしていたところ、ごう音とともに水が押し寄せてきました。
次々と家の中に流れ込んできた濁流。
自宅の隣にあるアパートの階段に上り、難を逃れました。
この地区では、多くの人が逃げ遅れ、自宅の2階などに取り残されました。
ベランダから、鬼怒川の様子を確認していた、高校生の岩崎太河さん。
急速に危険が迫ってくるのを目の当たりにしました。
父親の考寿さんは、そのときの様子を撮影していました。
家の周りが泥水で囲まれてしまい、気がついたときには、逃げることができなくなっていたといいます。
住民の予想を超えて、猛烈な勢いで市街地を襲った濁流。
大きな原因の一つが、鬼怒川の真上に、南北に延びた雨雲です。
帯状の雲、いわゆる線状降水帯が、上空に居座り、24時間で500ミリを超える雨をもたらしました。
赤のグラフは、今回の雨による鬼怒川の水位の増加量を示しています。
常総市の上流にある、栃木県日光市の周辺で、9日の夜から川の水位が急激に上がっていました。
10日の午前0時15分、国土交通省と気象庁は、鬼怒川について、氾濫危険情報を発表。
およそ2時間後、常総市は、一部の地域に避難指示を出しました。
最初の異変は、午前6時過ぎ、常総市の若宮戸付近で起きました。
堤防から水があふれ、住宅地に流れ込んだのです。
このとき、命の危険にさらされた人がいます。
水があふれた場所から、1キロほど離れた自宅にいた、晝間きよ子さんです。
耳慣れない音が聞こえたため、外に出ました。
濁流に飲み込まれ、30メートルほど流された晝間さん。
ブロック塀や農家の名谷に、必死でしがみついたといいます。
ヘリコプターで救助されたのは、流されてから6時間後。
体中、傷だらけになっていました。
水があふれた現場から、4キロ余り離れた地区に住む、木本登男さんです。
氾濫したという情報は聞いていましたが、川から離れているので、被害は受けないと考えたといいます。
後に堤防が決壊する三坂町地区でも、警戒はそれほど高まっていませんでした。
芦ヶ谷岩夫さんは、川の水位が気になり、何度も確認していました。
朝の時点では、雨も小降りになり、これ以上、水があふれ、氾濫することはないだろうと考えたといいます。
午前10時ごろ、常総市の上空は、雨雲が少なくなっていて、雨量も減っていました。
しかし、上流の日光市の付近では、依然強い雨が降り続いていました。
温泉施設で建物が壊れたり、道路が寸断されるなどの被害が出ました。
そのころ、常総市の下流でも異変が起きていました。
河川防災が専門の松尾一郎さんです。
松尾さんが注目したのは、鬼怒川と、その本流の利根川との合流地点の水位です。
黄色のグラフは、鬼怒川が流れ込む先、利根川の水位です。
前日の9日から水位が上昇し、高くなっていました。
ところが、その後。
赤で示した鬼怒川の水位が上昇していきます。
10日には鬼怒川の水位が、利根川の水位を上回り、その後も危険な状態が続いていました。
このとき、何が起きていたのか。
大雨の影響で、利根川の水位が上昇したため、そこに流れ込んでいた鬼怒川の水は、行き場を遮られてしまいました。
その結果、水の流れが停滞します。
バックウォーター現象です。
さらに、大雨が続いた上流からも、大量の水が流れ込みます。
常総市の流域の水位は上がり続け、決壊に影響した可能性が考えられるのです。
午後0時50分ごろ、三坂町地区で堤防が決壊します。
猛スピードで流れ込む濁流。
住宅を次々と飲みこんでいきました。
川から4キロ離れているため、大丈夫だと考えていた木本登男さん。
決壊からおよそ30分後、濁流が迫っていることに気付きました。
そのとき撮影した映像です。
川からあふれた水が、津波のように迫ってきました。
孫を抱き、娘と3人で車に乗り込んだ木本さん。
後ろから濁流が迫る中、高台に向かったといいます。
このころ、自宅などに取り残される人たちが続出。
自衛隊や消防などによる、懸命の救出活動が始まりました。
一方で、浸水エリアは拡大を続けます。
堤防が決壊した地点から、7キロほど離れた地区に住む、武井寧々さんです。
水が押し寄せてきたのは、午後7時半過ぎ。
ここまで水が来るとは思ってもみなかったといいます。
避難することができず、自宅の2階に家族ととどまった武井さん。
自衛隊にボートで救出されたのは、夜10時半ごろでした。
浸水したエリアは、25平方キロメートルに及んだと見られています。
翌11日には、宮城県の渋井川で堤防が決壊。
多くの人が取り残され、孤立しました。
各地で相次いだ河川の氾濫や堤防の決壊。
日本列島の広い範囲が、水害の脅威に襲われたのです。
迫り来る水に直面した皆さんが感じた恐怖が、生々しく伝わってきました。
では、今、被災現場はどのような状況なのか、茨城県常総市から中継でお伝えします。
常総市の中心部です。
堤防が決壊した地点からは、下流におよそ10キロ離れていますが、決壊から5時間後には、この場所にも水が流れてきました。
決壊から2日。
ご覧のように、今も水が引かず、住宅の1階部分まで水が入り込んだことが分かります。
流れ込んだ土砂で、壊れた住宅も目立ちます。
この地域では、今も水深が1メートル以上ある所もあり、排水ポンプを使って、水を抜く作業が、24時間続けられています。
市内では、今も連絡が取れず、行方不明になっている人は15人に上っています。
家族を捜して、避難所を訪ね歩く人たちの姿が、きょうも見られました。
連日早朝から、自衛隊や警察、それに消防が、捜索活動を続けています。
常総市では、一時1500人以上が、避難所や自宅などに取り残されました。
きょうも取り残されたお年寄りなどの救助活動が行われました。
市内の病院では、患者をほかの病院に移すため、自衛隊などがヘリコプターや、ゴムボートを使って、救助していました。
この近くにある常総市役所も、周辺の道路が浸水して、孤立状態になり、けさまで近くの住民300人以上が避難していました。
けさになって、ようやく水が引きましたが、周辺は今も断水しているため、給水車に水を取りに来る人たちの姿が見られます。
市内全体では、徐々に浸水している地域は減りつつあります。
しかし、歩いては入れないほど、水が残っている地域が多く、被害の全容は、いまだ分かっていません。
災害はまだ続いています。
ここからは、河川工学が専門の早稲田大学、関根教授。
災害時の避難を研究している群馬大学の片田教授。
そして、災害担当の菅井デスクと共にお伝えしていきます。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
まず関根さん、今回のこの鬼怒川の堤防決壊という事態、実際に現場を見てこられたということですけれども、どのように受け止めていますか?
比較的長い期間にわたって、この川を見てきておりまして、管理にも一部、関わって。
行政指導なども行っておられますね。
アドバイスをしてまいりましたが、このように特別、決壊を起こしてしまうような川ではないと、今も思っておりますので、その分、自然の力が強くてこういうことが起こったのかなと、驚いております。
こちらには、その鬼怒川の上流から、利根川に至るまでの地図を用意しました。
関根さん、この鬼怒川ですが、こちら、栃木県の日光から、ずっと流れ下っていって、利根川に合流するといった、そういう川で、今、今回、何が起きたのか、改めて教えてください。
今、ご紹介のように、この川の場合は、上流が栃木県の日光の辺りから、南は下流端、利根川に合流するという川でございます。
この区域に、流域に降った水を順次、下流に向かって運んでいくというのが、この川が担わされている役目ということになりますが、この川に沿うように、南北に強い雨が降り続いたというのが、一番大きな被害の要因かと思います。
こちらに、雨雲の模型を用意しましたが、今回、そういった雨雲がこの鬼怒川沿い、鬼怒川に沿うようにして、発達したということですね。
居座ったと?
通常であれば、雨雲は移動していくわけで、河川流域を横切るようにして、去っていってくれるわけですが、今回の場合は、雨雲が南から順次、北に向かって、供給、移動しながら、結果としてここに居座るということになりましたので、雨が連続して、しかも強い雨が降り続いたということでありますので、川に関しては、上流から下流に向かって、脅威がどんどんと増していく、そういう状況にあったと思います。
ということは、仮に、この常総市下流域で、雨雲が抜けたとしても、雨はまだ上流では降っていた、あるいは降った雨が、下流へと流れ込んでいたということになりますね。
各河川の地点での水の高さ、洪水の脅威というのは、その地点に降った雨の直接的な影響だけではなくて、上流側から降って集められてきたものの総和になりますので、仮にその地点で雨がやんでも、上流側で雨が降り続く、あるいはその水が、下流に移動し続けているかぎりにおいては、危険は去らないということになります。
ただ、疑問なのは、それがなぜ、堤防の決壊というところまで至ったのかということですね。
これは、通常、われわれが経験してきたぐらいの雨の強さであるならば、堤防の高さを越えて、あふれるというところまではいかなかったはずです。
そういう根拠もございますけれども、今回の雨は、それをはるかに超える規模のものであったということの証しになっているんだろうと思います。
関根さんは、現場で、決壊した現場も、堤防もご覧になったということなんですけれども、例えば構造的な弱さですとか、何かお気付きになった点はありましたでしょうか?
昨日、決壊地点、拝見させていただいて、残された堤防の断面もよく見てまいりました。
特別、砂の層が入り込んでいるということもございませんで、均質な土で出来て、よく締め固められている、堤防としては、ごく普通のといいますか、理想に近いような状態が見られました。
したがいまして、この地点が特別、堤防の弱かった地点というふうには考えられません。
こうした堤防の形状ですとか、それから、地質というのは、各地にあるものと変わらないということですか?
この川の場合には、2011年の震災の際に、液状化を起こすなどして、だいぶ傷みました。
その後、4年たって点検もし、補修も行いということで、4年後のことしを迎えているわけでございまして、危険はほかの地域より、高いんだというのは、到底言えないことなんだろうというふうに受け止めております。
ということは、菅井さん、やはりこういった堤防の決壊に至るような状況というのは、各地で起こりうるということになりますね。
やはり直接の原因、なぜここが決壊したのかということは、もうちょっと詳しく調査をしていく必要がきっとあるんだと思うんですけれども、地形ということでいいますと、やっぱり考えますと、日本で人口が集中している平野部というのは、必ずこちらで言う利根川のような大きな河川があります。
さらに、大河川がありますと、そこに流れ込む中小の河川というのが数多くあるということで言うと、非常に構造が似た所はたくさんある。
むしろ、そういう所にこそ、人口が集中しているということがいえると思うんですね。
今回、南北に延びる雲がかかり続けたということもあるんですけども、これがもし、もしくは何かの条件が変わっていれば、今回もかなり多くの川が決壊しましたけれども、場合によっては、もっと大きな被害が出てもおかしくなかった状況だったということは、われわれ、しっかり受け止めるべきなんじゃないかと思います。
片田さんは避難の専門家として、そういったどこでも起こりうるような状況、つまりはその常総市の皆さんも、全国各地にいらっしゃる方と変わらない状況で、今回、この決壊という状況を迎えたわけですね。
今回のその事態をどのように見てますか?
そうですね、まず決壊ということが、地域にもたらす影響、極めて甚大だということを改めて認識すべきだと思います。
決壊という事態がもたらすと、一挙に大量の水が市街地の中に流れ込んでくる。
そして多くの人が取り残されてしまったという、防災上はこの決壊ということに対して、非常に今後もありうることだということで、対処を迫られているんだろうと思います。
そして、ここ最近、全国各地でこのような雨の降り方、ありますよね。
昨年の広島などもそうでしょうし、こういう雨の降り方というのは、今後、ますます増えてくるということを考えると、このような決壊に対して、どのような地域の防災を行っていくのか。
今回の事態をつぶさに検証し、そして今後の防災に役立てるべきだろうというふうに思います。
そういった意味では、関根さん、日本の河川が置かれている状況というのは、もう今の整備状況では、そういった想定を超えるような雨にはもう耐えられなくなっているということなんですか?
これまでのとおりの整備は、引き続き、整備の水準を上げていくということは、続けるわけですけれども、最近の雨を見ていると、そういうレベルを超えるものが、ぽつぽつとやって来るようになってきている。
そういうものまでハードウエアでしっかり守ろうというのは、現実的ではないということになろうかと思います。
ということは、もうそういったインフラの能力を超えるようなことが、今、起きているということですね?
はい。
ですので、ソフトウエアの対策、避難ということになろうかと思いますけれども、堤防が壊れる、あるいは被災をするということがあるかもしれないということを前提に、お住まいいただいて、いざというときには、命だけはしっかり守れるようにという心構えと、それから適切な対処というのを、住民、私も含めて、住民の皆様と考えていかなければいけない段階に来てるということだと思います。
片田先生からも先ほど、決壊ということのやっぱり非常に被害の大きさというお話があったんですけれども、やはり一度決壊したときに、破壊力というのが、非常に大きいということを、やっぱりわれわれは、改めて知らなきゃいけないんだというふうに思いましたね。
今、じゃあ何が起きているんでしょうか。
今回のこの列島を襲った豪雨被害ですが、これほどの雨、なぜもたらされたのか、最新の研究から、そのメカニズムが明らかになってきました。
台風のメカニズムを、最新のコンピューターシミュレーションで解析する研究者がいます。
名古屋大学の坪木和久さんです。
坪木さんは、台風18号の発生当初に出来た、帯状の雲に注目していました。
今月7日に発生した台風18号。
渦の南側に出来た帯状の雲。
これがアウターバンドです。
アウターバンドを伴う台風には、過去にも大雨となったケースがありました。
4年前の台風12号。
紀伊半島では、1000ミリを超える記録的な豪雨によって、土砂災害や川の氾濫が多発。
死者・行方不明者は98人に上りました。
この台風でも、渦の南側にアウターバンドが発生していました。
アウターバンドがある台風は、なぜ、大雨をもたらすのでしょうか。
これは、坪木さんが再現した、台風18号の様子です。
台風の南側に、アウターバンドが見られます。
その中で、次々と発生する小さな水色の固まり。
激しい雨を降らせる、発達した積乱雲です。
大量の水蒸気がある証拠です。
このときの水蒸気の量を見てみます。
色が白に近いほど、水蒸気が多いことを示します。
台風の南には、大量の水蒸気の流れ。
はるか赤道付近で発生した水蒸気が、台風に向かって流れ込んでいるのが分かります。
台風が上陸したあとも、アウターバンドに大量の水蒸気が流れ込み、積乱雲が次々と発生。
これが南北に延びる線状降水帯となって、関東や東北にかかり続け、長時間にわたる大雨となったのです。
台風が通過したあとも、栃木、茨城の上空に、丸1日にわたって雨を降らせた線状降水帯。
なぜ、長時間、同じ地域にとどまり続けたのでしょうか。
線状降水帯は、関東平野で少しずつ東へ移動していましたが、9日の夕方以降、ほとんど動かなくなりました。
そこには、特殊な気圧配置が影響していました。
日本の南東には台風17号、その北には、高気圧がありました。
台風と高気圧、それぞれの周りを回る風が、強い東風を生み出します。
その風が、線状降水帯の動きを押しとどめていたのです。
その後、台風17号の勢力が衰えると、線状降水帯が、次第に東へ移動します。
関東に続いて、東北でも河川を氾濫させ、大きな被害につながったのです。
坪木さんは今後、今回のような大雨の被害が、全国各地で起きる可能性が高まるのではないかと、危惧しています。
今月7日、台風18号が発生したのは、本州の南1200キロ。
これだけ日本に近い場所で台風が発生するのは珍しいことです。
海面水温が高かったためだと考えられています。
台風18号が発生する直前の海面水温です。
台風が発生した海域は、平年よりも温度が高い状態でした。
さらに、台風が発生しやすいとされる26度以上の海域は、東北沖にまで広がっていました。
このまま地球温暖化が進めば、今世紀後半には、海面水温は今より2度以上上昇すると予測されています。
条件が重なれば、今回のような被害を引き起こす大雨が、日本各地で発生する可能性があるのです。
菅井さん、線状降水帯、今回ですね、非常によく使われたことばでもあったわけですが、この現象そのものは、決して特殊なものではないみたいですね。
特異な現象では確かにあるんですけれども、実は大きな被害が出るような豪雨の時には、必ずといっていいほど、現れる現象だということが言えると思うんですね。
ちょっとこちらに図を用意したんですが、右が今回、関東にかかった線状降水帯といわれている雲のレーダーの画像です。
それからこちらが、去年8月の広島市の土砂災害が起きた際のやはり雲なんですけれども、向きは違いますけれども、やはり線状、あるいは帯状に。
むしろ広島のほうが、一本の線のように見える。
くっきりとしていると思うんですけれども、広島のケースですと、2時間、3時間で300ミリというような、極端な雨を降らせたわけですけれども、こういったものがどうして出来るかというと、今、VTRにもありましたけれども、2つ大きな条件がありまして、水蒸気が、かなり大量に供給されていると。
広島のケースでもやはり、西側から、かなり大量の水蒸気が入っていったと見られています。
もう一つは、風のぶつかり合いですね。
今回も東側から風がぶつかってましたけれども、去年のケースでもやはり、この向きとは違うやや南側からもう一つの風が当たって、そのぶつかった所で雲が次から次へと発達するということなんですね。
一つ一つの雲は、実は、さほど長い時間、雨を降らせるわけではないんですけれども、同じような所で次々と雲が出来ると、おのずと1か所に降り続ける雨量がどんどん多くなってしまうということが、被害につながるということなんですね。
今回の場合は、台風だったということで、非常に広いエリアで風の大きな動きがあって、それがこの雲の発達につながったわけですけれども、裏返して言いますと、やっぱり台風の中心だけではなくって、やっぱり周辺の動きというのを、例えばレーダーなんかを見たときに、アウターバンド、あるいは線状降水帯みたいな雲が出てきたなということが、例えばテレビの気象情報とか、そういったもので強調されているということがあれば、ぜひそこは注目して、自分たちの所にかかるんではないかという目で見て警戒していただきたいなというふうに思います。
そして今回は、その線状降水帯の下に、まさに鬼怒川があったということなんですけれども、どうなんでしょうか、巨大なそういった線状降水帯、今後、生まれやすくなっていくということなんですか?
またこちらもちょっと図を用意したんですけれども、専門家の方のお話伺いますと、やはり今回のような条件は、そろいやすくなるんじゃないかということをおっしゃる方が多いという印象です。
これは実は、先月の海面水温を表しているんですが、この夏は、エルニーニョ現象という状況がありまして、この赤道に近い所、特に真ん中から東側の海面水温、かなり高い状態で、台風がこれでたくさん出来るというようなことにつながったんですけれども、実は日本近海も、年間で一番、海水温高い時期ではあるんですが、場所によってはやや高い状態にあったということで、いずれにしても、広い範囲で大量の水蒸気がやっぱり生まれやすい状況であると。
さらに地球温暖化ということがいわれていますが、ある予測では、この太平洋の中でも、特に海水温が今後高くなるのが、日本の近海であるという、ほかのエリアよりも、より高くなるというような予測もありますので、やはりそういった意味でも、条件はそろいやすくなっていると。
すでにもしかしたら、その影響で、雨の降り方自体が変わってきているんだというふうに考えておく必要があるんじゃないかというふうに思います。
今回、台風18号も、かなり日本に近い所で生まれて、そして、17号との相互作用でということがありましたからね。
関根さんに伺いますけれども、そういったどんどんと、巨大な線状降水帯が今後、生まれるかもしれないという中で、それに耐えられる日本の河川ということでは、どうやらないというお話がありましたけれども、じゃあ、例えば今回も出てくるかもしれませんが、より頑強な堤防を造ればいいじゃないかというような話も出てこようかと思うんですが、そういったことは現実、可能ですか?
今、地球温暖化の話が出ましたけれども、気象が極端化しているということも併せて言われています。
したがって、大きな台風だったり、強い雨が頻発するということではないかもしれませんけれども、今までになかったような強いものが降るということは、十分考えていかなきゃいけないと。
堤防に関しても、強化は進めていく必要がありますけれども、河川の上流側から下流まで、一連のものが出来上がって、初めて流域の安全性は保たれていくことに、向上していくことに。
つまり一部だけではだめだということですか?
はい、強くした所は、確かに破堤を免れるかもしれませんが、その下流側だったり、上流側だったりに、リスクが移っていくだけのことになりかねませんので、また、そういう工事をしていくということは、河川の環境も変えていくことになりますので、そのへんは、よく考えたうえで判断をしてくということになろうかと思います。
片田さん、そういった気象条件が今後、さらに極端化していくかもしれないという中で、そうしますと、やはり私たちも認識ですとか、行動というのが、変わっていかなければいけないということになるんでしょうか?
そうですね。
ものすごい量の水蒸気が舞い上がると、それが送りつけられてきて、各地でこういう災害が、昨年の広島の例もそうなんですけれども、結構多く起こるようになってますよね。
これ考えますとね、例えば今、堤防で防ぐということを考えても、堤防というのはおおむね、国が管理する河川であっても、100年確率といって、100年に1回、降るか降らないかの大雨に対して対処する、これを基本に整備目標を立てるわけなんですが、これもまだまだ全然追いついてないという状況で、堤防の整備はまだまだ必要だということなんだろうと思うんですね。
そしてさらに言うならば、堤防が仮に出来たとしても、全部整備ができたとしても、100年確率ということは、裏を返すならば、それ以上の雨は初めから守ろうとしてないということですね。
ここ最近、基本最大ということばがよく使われます。
これまでに降った記録上のさらに多くの雨が降るということなんですが、これも桁違いで、いとも簡単に超えてしまうという状況になってきてますね。
したがって、堤防がどれだけ出来ようとも、堤防の整備は必要です。
しかし、堤防がどれだけできようとも、それで安全が担保できるというものではないということ。
それが超えるものがあるときに、今回のような堤防の決壊に至る、そうすると、大規模、広域の被害というものがもたらされますね。
こういった災害に対して、大規模災害に対する危機管理というものが、今、まさに求められているということなんだろうと思いますね。
では、その大規模な災害にまさに今、直面している現場から中継でお伝えしようと思います。
今回の水害の被害に遭いました、宮城県大崎市の現場から中継でお伝えします。
堤防が決壊した渋井川から500メートルほど離れた、古川西荒井地区です。
この時間も後片づけをする家の明かりが見えます。
また避難所で夜を明かすため、明かりのつかない家など、さまざまです。
前を走る道路は、一時は腰の高さまで水が上がり、通れなくなりました。
きょう一日で徐々に引いていきましたが、それでも、近くにはいまだに水につかって、通れなくなっている道路もあります。
画面右側にあるお宅。
2階建てです。
1階部分が浸水したため、2階で今夜も夜を明かします。
私が今いますのは、その右隣にあるお宅です。
家の外には、こうした捨てるものを詰めたごみ袋、さらには、水につかった家具などが並べられています。
きょうは一日、こうしたものを片づける姿がこの地区、至る所で見られました。
こちら、被害に遭ったお宅は、築37年の平屋建てです。
水は腰の高さまで上がりました。
これ、カーテンなんですが、ちょうどこの色が変わっている所まで上がったんです。
この家のお宅の主人、しぶやてつおさんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。
本当に大変なときに申し訳ございません。
いえいえ。
ここに住んでいて、このような水害、これまでにあったんでしょうか?
あったことはありましたけど、こんなにひどいのはないです、初めてです。
そうですか。
では今回、特別に中を見せていただきます。
申し訳ございません、お願いします。
中、今、後片づけの真っ最中ということで、土足のほうがよいということで、そのまま失礼いたします。
ごめんください。
今、親戚の皆さんが集まって、後片づけをしていらっしゃいます。
ここは台所でした。
テーブルや食器棚などは、すべて片づけました。
そうしたものは、こちらの部屋に一部集められています。
ここはもともと、畳敷きでした。
畳はすべて水につかったため、外に出しました。
こちらの部屋、壁に、線のような、水が上がったラインが見えているのが分かりますでしょうか。
水はここまで上がりました。
そのため、押入れの下の段、さらにはたんすの下のほうの段、水につかったものは、すべて取り出しました。
きょうは、こういった後片づけに追われました。
しぶやさん、今、最も困っていることといったら、どういったことになるでしょうか?
浸水被害で出たごみ、これの処理を早くしたいです。
どうしたらいいのか分からないと?
今のところ分かりません。
実はしぶやさん、こういった災害について、今まで、以前から備えをしていたということなんです。
こちら、お邪魔いたします。
宮城県は東日本大震災の被災地です。
ここ、大崎市も震度6強の揺れに襲われました。
それ以降、しぶやさんはこの寝室にあるものを用意していました。
今は多くのものが片づけで置かれているんですが、きのうの未明もここで寝ていました。
その枕元にあったのが、懐中電灯とラジオです。
震災以降、この2つは枕元から手放しませんでした。
特にラジオは、毎日つけっぱなしにしたまま、夜を過ごしていたということなんです。
これだけではありません。
さらに用意していたものが、玄関前にあります。
土のうです。
今回の水害の前から、土のうを用意して、こういうときのために備えていたといいます。
しぶやさん、しかし、この土のうを越えて水が上がったときは、どんな思いだったんですか?
これは逃げられないと、それが頭によぎりました。
それだけです。
こうしたものを含めて、備えはしていたんですが、それはどのくらい役立ったというふうに感じていますか?
結構ね、役立ちました。
どういったものが?
特にラジオ、懐中電灯、それから土のうです。
この3点はよかったです。
それでも避難はぎりぎりになったと思うんですが、そのことについては、どんなふうに今、感じていらっしゃいますか?
もう少し、時間的に早くやれたかなと思いました。
やっぱり時間的に早いほうがいいです。
避難の判断について、早いほうがいいと。
今、全国の皆さんに最も伝えたいことはなんですか?
個人でできること、これは懐中電灯とラジオ、それに土のう、このぐらいならできると思います。
これ、ぜひやったほうがいいと思います。
そして、これから災害は、これで終わりではなく、またあす以降の生活もありますね?
そうですね。
これからのほうが人手もかかるし、それから元の生活に戻るのに、大変だなと思っています。
本当に大変なところ、ありがとうございました。
ありがとうございました。
宮城県の大崎市からお伝えしました。
どうもありがとうございました。
さあ、25平方キロメートルにわたって、被害をもたらした、常総市の今回の水害ですが、避難の指示や誘導は実際、どのように行われたんでしょうか。
そのあたりを取材しました。
1500人以上が取り残されてしまう事態になった、今回の水害。
その原因の一つとして指摘されているのが、避難を巡る市の対応です。
鬼怒川に氾濫危険情報が出された、およそ2時間後の10日午前2時20分。
常総市は、北部の若宮戸地区などに、避難指示を出しました。
このエリアで、川があふれる可能性が高まっていたからです。
およそ4時間後の午前6時過ぎ、その若宮戸地区で、川があふれ始め、市の担当者は対応に追われます。
そのころ、若宮戸地区のおよそ5キロ下流の三坂町地区にも、危険が迫っていました。
三坂町地区に住む、稲葉典子さんです。
稲葉さんは、若宮戸地区には避難指示が出ていたものの、自分の地区には何も出ていなかったことから、避難すべきかどうか悩んでいました。
市が、この地区の一部に避難指示を出したのは、10時30分。
上流の若宮戸地区の避難指示から、8時間以上たっていました。
しかし、危険性を示すこの連絡も、稲葉さんには届いていませんでした。
周りのサイレンの音や、雨音の激しさで、防災行政無線の内容を、聞き取ることができなかったといいます。
実際に稲葉さんたちが避難を始めたのは、午後1時。
近くの堤防が決壊したということを、知り合いから聞いたあとでした。
はっきりと伝わらなかった避難指示。
堤防が決壊したあとも、住民たちを困惑させる事態が起きます。
決壊からおよそ20分後。
市は、ホームページや防災行政無線で、鬼怒川の東側にいる人は、川の西側に避難するよう伝えました。
しかし、決壊したのは川の東側。
多くの住民は、決壊した川に向かうことを意味する市の誘導に、戸惑ったといいます。
市の誘導に疑問を持った1人、森田健太さんです。
森田さんは、西に向かうのは危険だと感じ、自分の判断で東側のつくば市に向かいました。
直後、川のほうから、自宅に水が迫ってきたといいます。
今は、つくば市の施設で、避難生活を送っています。
一方、市の誘導に従って、西側に向かった市民もいました。
数少ない橋に車が集中し、混乱が続きました。
なぜ常総市は、住民たちを西側へ誘導したのか。
これは決壊直後、国土交通省から連絡を受け、市の防災担当者が確認した、浸水のシミュレーション図です。
防災担当者は、これを見て、西側への誘導を決めたといいます。
常総市の東側には、つくば市など、浸水していない自治体がありましたが、そこへ誘導することは考えなかったといいます。
住民の方にとっては、川を越えて西側へ逃げてくださいというのは、かなりやはり、抵抗があって、困惑している姿が、はっきりとことばとして出ていましたね。
そうですね。
今回、避難指示が、堤防決壊の2時間前、特にこの決壊地点の近くでは、避難指示が非常に遅かったという状況があったり、今回、上流での雨が激しかったという状況もありですね、また河川の水位の情報なども入っているという状況の中で、少し行政のこの避難勧告の対応というのが、情報が的確に利用できていたのかということを、多少の疑問も残るように思います。
そんな中で、今回、西側への避難ということを求められたわけなんですけれども、この浸水域のさらにこちらのつくば市のほうに逃げれば、高台があったわけですね。
そうですね。
西側は常総市なんですが、東側はつくば市ということですね?
そうですね。
この地域の方々に、川を渡って、同じ市内の高台に向かってくれということは、いわば決壊した地点の水に向かっていくということになりますので、今の住民の皆さんのように、疑問を感じておられるということになるんだろうと思います。
どうしてこういう状況が起こったかといいますと、日本の防災は、基本的に、市町村防災。
つまり市町村の防災対応は、市町村の中で完結するような防災の対応が一般にはなされてきたんですね。
ですけど、今回のような状況を見ますとね、市町村の行政かいというのは、単なる行政かいであって、災害の現象ということとは、全く無関係ですね。
住民の皆さんの命を守るということを考えるならば、住民の皆さん方の命を守るということにおいて最も適切な対応というのが検討されるべきだったんだろうと思うんですね。
そういう面では、あえてこの西側に川を渡って、氾濫地点に向かっていくというよりも、このつくば市のほうの高台のほうに行っていただくということのほうが、自然だったんだろうと思うんです。
これは従来の市町村防災の限界というものを、僕は示しているというふうに。
市町村防災の限界?
はい。
すべて市町村で完結するというのが、まずは一義的な日本の防災の仕組みだったわけですね。
しかし現象というものがこのように市町村関係なく起こるということ、そして住民の皆さんの安全を確保するという段階においては、この行政界関係なく、住民の皆さんの命を守ることに最も適切な対応というものを考えると、より広域的な連携の中で、隣の町との連携を考えるとか、そのように住民の命を守るということにおいて、最も適切な対応を取るべきだったんじゃないかなというふうに思います。
一方で、情報の出し方ということに関しては、常総市としても、防災行政無線、あるいはツイッター等々で、情報は出ていたというふうにも見ることはできますよね?
そうですね。
ただ、今回の情報、特にこの決壊地点の情報というのは、決壊の僅か2時間ぐらい前の避難指示ということで、そのほかの地域には、比較的早く出ていたということもいえると思うんですけれども、大事なところで情報が少し遅れたという状況もあったんだろうと思います。
ただ、ここでどういった情報が、どういった時系列で出たのかちょっと見ていただこうと思いますが、出ますでしょうか。
こちらにその時間を追うにつれて、どういった情報が出ていたのかということを、片田さん、このような情報が出ていました。
そうですね。
すでに上流のほうで、非常に強い雨が降っているということは、もう0時20分の段階で、上流の栃木県の大雨特別警報、こういったもので出されております。
それから河川の情報も、ご覧いただくように、上流での川があふれるだとか、河川の水位の情報というのは、ずいぶん出されておりますね。
こういった上流での雨というのは、いずれ流れ下って、この地域に到達するわけですので、上流の情報を的確に使えば、もう少し早く情報を出すことができたんじゃないかなとも思えるんです。
ただ、この対応を、市町村の対応が悪かったということだけに片づけるには、僕は問題があると思います。
こういった広域的な情報、特に上流の雨の情報や、河川の水位の情報というのは、国や県、これがしっかり把握しているわけですね。
こういった情報を使えば、もう少し下流域での安全確保ということに、有効な情報が出せたんだろうと思います。
市町村の防災だから、市町村が情報を出すということだけではなくて、専門家がいる国や県ですね、こういったところが、どれだけこの市町村をサポートできるのか、的確な情報発信ということに機能できるのかということ、それをもう少し連携を深めていく必要があるというふうに思いますし、国や県のアドバイスというものが重要になってきてるんじゃないかなと思います。
災害は市町村の枠を越えて起きてしまうということですね。
となると、私たち住民のサイドも、やはり行動を取っていかないといけないということになりますね?
そうですね。
こういった地域には、ハザードマップといわれるような、万が一、浸水した場合、どのような形で浸水するかというような地図が一般には配られております。
こういったものを使って、それぞれの地域にお住まいの方々は、自分の住んでいる所で、もしこのような事態が起こったら、どんな事態が起こるのかということを、まずは把握して、その日、そのときの対応を考えておくことが必要だろうと思いますし、今回は、ある意味、ハザードマップでこのような浸水になる、非常に近いものが起こっておりますね。
そういった面において、事態想定はできていたんじゃないかなとも思えます。
こういった事態に対して、事前に、大規模災害の時のこういった広域な対応というもの、これに対して、地域の危機管理というものをしっかりやっていかなきゃいけないということを、今回の災害を見て、非常に感じたところです。
それでは、ここで再び、水害の現場から中継でお伝えします。
常総市内では、きょうからボランティアの受け付けが始まりました。
中心部では、水が引いてきたこともあり、土砂がなだれ込んだ家の掃除など、少しずつ生活の再建に向けた動きも出てきています。
一方で、今も4500人を超える住民が、避難所での生活を余儀なくされています。
避難生活が長引くにつれて、体調を崩すお年寄りも出てきました。
避難している人たち全体に、疲労の色も見えます。
しかし、市の中心部では、停電や断水が続いている状況で、住み慣れた自宅へ戻るメドは立っていないのが現状です。
流れ込んだ大量の水を抜く作業は、このあとも徹夜で続けられます。
また、堤防が決壊した部分の補修工事も、国土交通省が現場近くに対策本部を設置して、本格的に始めています。
この工事も夜通し行われ、重機を使って、決壊した場所に、コンクリート製のブロックを3500個、積み上げる計画です。
補修工事は2週間ほどで終わるとしていますが、流域では、あすも雨が降るおそれがあり、住民からは不安の声も上がっています。
堤防の決壊によって、突如、平穏な日常が失われてから2日。
行方が分からない15人の捜索活動は、現在も続けられています。
宮城県大崎市の、堤防が決壊した、渋井川から500メートルほど離れた、古川西荒井地区です。
浸水被害に遭ったこちらのお宅では、先ほど、ようやくきょうの片づけの作業を終えました。
浸水して寝泊まりができないため、こちらに住むご夫婦は、ここから車で5分ほど離れた、親戚の家で夜を明かすということです。
この地区にはこのように、家に戻れない人が数多くいます。
今回の水害は、夜が明けない真っ暗な中で発生しました。
きょう一日、この地区で取材を続けた中では、気がついたらすでに、外に出るのが危険な状況だったため、家の2階にとどまったという方。
避難勧告が出ない中で、いつ、どう避難すればいいのか分からなかったという方もいました。
また東日本大震災の津波で自宅が流され、この地区に引っ越してきた直後に、再び、ここで水害に遭ったという方もいて、どこで自然災害に遭うのか、本当に分からないという声が聞かれました。
この地区は、周囲を収穫を目前に控えた田んぼに囲まれ、農業が盛んな地域でもあります。
今後、農業への影響も懸念されます。
2日目の夜を迎えた宮城県大崎市からお伝えしました。
関根さん、日本の河川の専門家として、こういった、ここまで見てきた中で、今後、どういったことが必要になると思いますか?
私は一人の研究者として、また周りにいる技術者と一緒になって、いつ、どのタイミングで洪水、あるいは反乱が起こるのか、氾濫をしたときに、どういう水の広がり方をするのか、それをリアルタイムでできるだけ、住民の皆様にお伝えしていく、あるいは行政担当者の方にお伝えして誘導していただく、そういうことができるようにしていきたいというふうに思って、考えております。
一方で住民の皆様には、そういう情報をしっかりと受け止めていただいて、誘導の指示に基づいて、的確な行動を取っていただくということをお願いしたいと考えております。
片田さんはいかがですか。
今、関根先生、おっしゃったように、情報というのをこれからも充実させるという、そういうことを専門家として、そういう姿勢だということなんですが、専門家の仕事として、それは重要なことだと思います。
しかし、ここ最近、非常に河川の情報も雨量の情報も、非常に多くの情報が出されるようになってきました。
しかし、相変わらず、この情報が的確に利用できない、命を守るということにつながってないという現実、これはもう、古くから指摘されていること、そして今に及んでも、同じ問題が繰り返されてますね。
情報がこれだけ精緻に出るようになった、今われわれは、また行政は、また住民は、どのようにこの情報を活用し、命を守るということにつなげていくのか。
情報をちゃんと活用できる社会であること、それが求められてるんだろうと思います。
情報をいかに出したかではなくて、情報がいかに伝わって、そこで住民の方々が、その判断をして、どういう行動を取るかということに結び付けられるかですね。
そうですね。
住民の皆さんがどうそれを使うかも大事なんですが、的確な情報をさらに、そしゃくして、住民の皆さんに今からどういう状況になっているのか、どういう行動を取るべきかというようなレベルで、防災に活用できるような形で、情報を生かしていくということ、これが今、求められているんだろうと思います。
菅井さんは、取材、今後も続けていく中で、どういったことが今後、教訓、あるいは課題として考えていかなければいけませんか?
やはりこういう大規模な災害、特に土砂災害もそうですし、決壊して、川が一気に流れてくるというような状況を考えますと、やっぱりこれはもう、早めにその場から避難しておくということしか、やはり命は守れないということも、改めて感じるわけですけれども、そういう意味で、今回の皆さんの避難の状況などを聞いていますと、改めて何か起きてから、いろんなことを考えるというのは、やっぱり無理だなということを強く感じました。
何か起きたときにどうするかっていうのは、なかなか想像することは難しいんですけれども、例えば、先ほど関根さんのお話にあったように、いろんなシミュレーションをあらかじめしておく、例えばこういうケースだったら、自分はどこに逃げることになっているのかということを、あらかじめ決めておかないと、なかなかこういう事態には対処できない。
ですから、そのとき、なってから考えるというのではなくて、やっぱりふだんからそういうことを、行政もそうですし、われわれも考えておく必要があるということを改めて痛感しています。
今なお、被災現場では、捜索活動や復旧作業が続いています。
豪雨被害、大水害はどこでも起こりえます。
受け身にならず、自分で命を守るためにはどうしたらいいのか、Dialogue:0,1:13:06.24,1:13:10.96,Default,,02015/09/12(土) 19:30〜20:45
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「緊急報告 列島大水害」[字]

記録的な大雨となった東日本。茨城県常総市では鬼怒川が決壊、多くの住民が行方不明となっている。現地の最新取材、専門家による科学的な検証から、被害の実態に迫る。

詳細情報
番組内容
記録的な大雨となった東日本。茨城県常総市では鬼怒川が、宮城県大崎市では渋井川が決壊し、未曽有の大水害となった。常総市の決壊現場では、多くの住民が行方不明になっているとともに、救助活動が今なお続けられている。番組では、現地の最新取材、専門家による科学的な検証から、被害の実態に迫るとともに近年、日本列島で相次ぐ豪雨災害に、改めて警鐘をならす。
出演者
【ゲスト】早稲田大学教授…関根正人,群馬大学教授…片田敏孝,【解説】NHK災害担当デスク…菅井賢治,【キャスター】高瀬耕造,【語り】中條誠子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:722(0x02D2)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: