密着 市川染五郎 KABUKI in Las Vegas 2015.09.12


アメリカ・ラスベガス。
本番直前の市川染五郎さんです。
この夏前代未聞の歌舞伎に挑みました。
幅300メートルの巨大な噴水。
その噴水に映し出された最新のデジタル映像。
歌舞伎と最先端の技術を融合させたかつてない舞台です。
しかしその道のりは険しいものでした。
要するに…今年42歳となった染五郎さん。
背負っていたのは歌舞伎の名門に生まれた宿命です。
2015年夏。
新たな舞台に挑む市川染五郎さん。
その挑戦に密着しました。
ラスベガス公演2か月前。
(スタッフ)お疲れさまです。
よろしくお願いします。
おはようございます。
(一同)おはようございます。
この日初めて全体会議が開かれました。
今回舞台を統括して頂く五十嵐さんです。
集まったのは照明や音響などその道のスペシャリストたちです。
「チョンチョンチョンチョン」って時に幕がその2人の後ろの幕が開いていくという…。
中でも染五郎さんが一緒に舞台を作りたいと望んだ人たちがいます。
コンピューターグラフィックスを駆使した映像を作るチームラボです。
今回の目玉の一つはCGとの共演。
古典歌舞伎の演出に取り入れられるのは初めてです。
CGは噴水で作るウォータースクリーンに映し出されます。
歌舞伎の舞台となるのはラスベガスにある高級ホテルの巨大な人工の湖。
幅300メートルにわたって並ぶ噴水にCGを映す前代未聞の演出です。
披露する演目は「鯉つかみ」。
主人公が鯉の化け物を退治するというシンプルな物語です。
海外の人にも分かりやすく水を使った演出に最適だと選ばれました。
ちょっとまたそこ出して頂いていいですか?ここまでって事ちょっと言いますので。
途中でもいいです。
CGの出るタイミングや内容を細かく指示する染五郎さん。
かつてないダイナミックな歌舞伎を作るための鍵をCGに託したのです。
おおでか!おお!2001年に設立されたデジタルアートの制作会社チームラボです。
斬新なアイデアを映像化し今世界の注目を集めています。
こちらは海外の有名ホテルの依頼で作られた高さ15メートルの映像作品。
人の動きに反応し映像を変化させる作品を数多く手がけてきました。
今回歌舞伎を担当するのは9人のクリエーター。
まず初めに取り組んだのが舞台の背景となるCG。
日本の四季を表しました。
映像を投影するのは幅300メートルの噴水。
これまでで最大の作品です。
この日悩んでいたのが染五郎さんと鯉の化け物が格闘するシーンです。
鯉の大きさや重さを表現するためにはどうすればいいのか。
細部にまでこだわります。
歌舞伎とCGの一体感をいかに出すか。
染五郎さんとチームラボは話し合いを重ねていました。
染五郎さんが鯉を投げ飛ばすシーン。
よりリアルな動きに変更していました。
これはそうなってないですけど。
ちょっとこれ今軽いんですけど。
それであればひとつ…こういう形…こういう形になってこれをこうやっててこう〜上げた。
ば〜ったり見得した投げるっていう事かなっていう。
鯉との格闘シーンのクライマックス。
歌舞伎の要素を加える事になりました。
本番1か月前。
初めて役者がそろい本格的な稽古が始まりました。
染五郎さんは今回主役を演じるだけでなく演出も手がけます。
この日の稽古は全体を見るために代役を立てて行います。
退治てくれん。
どうすれば観客にCGだけでなく役者にも目を向けてもらえるか。
染五郎さんはステージの広さを最大限に使ったダイナミックな演出が不可欠だと考えていました。
役者たちの存在感を際立たせるためアイデアを絞り出します。
振り付けを担当する日本舞踊の家元尾上菊之丞さん。
今回染五郎さんの相談役も務めます。
染五郎さんとは20年以上のつきあいです。
ずっとこう行って最終的に真ん中行く時に…。
染五郎さんは観客を驚かせるために1人で水の上を走る演出がしたいと考えていました。
しかしその間ほかの役者たちはどう動いたらいいのか決まりません。
菊之丞さんの提案で染五郎さんに客の目線が行くようほかの役者たちはあえて同じ位置にとどまる事になりました。
そこですよね。
おはようございます。
おはようございます。
(スタッフ)ご自身で運転されて来られてるんですか?はい。
年間350回以上も舞台に立つ染五郎さん。
なぜ今ラスベガスに挑むのか。
歌舞伎界の若手のエースと呼ばれてきた染五郎さんは今年42歳。
歌舞伎界を更に発展させたいという思いは日に日に強くなっていました。
代々続く歌舞伎の名門高麗屋に生まれた染五郎さん。
その名を襲名したのは8歳の時でした。
この度七代目市川染五郎を襲名させて頂きました。
父や祖父を目標に演技に磨きをかけてきた日々。
41歳になった去年初めて高麗屋のお家芸である弁慶を演じました。
受け継がれてきた型を体現した染五郎さん。
しかし更に新たな壁が立ちはだかります。
高麗屋は代々誰もした事のない事に挑んできました。
祖父も父もその経験を糧に歌舞伎に新たな可能性を見いだしてきたのです。
新たな事への挑戦。
それが歌舞伎初上陸となるラスベガスでの公演だったのです。
今年10歳になった息子の金太郎君。
初舞台から6年。
一人で仕度もこなせるようになってきました。
染五郎さんは高麗屋を継ぐ者として新しい歌舞伎に挑む自分の姿を息子に見せたいと考えています。
音楽や演劇など世界最高峰のショーが集まる街です。
中心部にあるハリウッド映画の撮影にも使われた高級ホテル。
噴水ショーで有名なこの場所に特設の舞台が設けられました。
今回の制作スタッフは日米合わせて100人以上。
舞台を見下ろすホテルの一角にある噴水のコントロールルームです。
特別に歌舞伎の音楽に合わせたオリジナルのプログラムが作られました。
本番4日前。
染五郎さんがラスベガスにやって来ました。
(スタッフ)少しは休めましたか?はい休めました。
今回初めて息子の金太郎君を海外公演に連れてきました。
夜9時。
現地に到着。
真っ先に向かったのは舞台でした。
早速照明や噴水など演出のチェックを始めます。
幅300メートルのウォータースクリーンにCGが投影されます。
映像を制作したチームラボも色合いなどを確かめます。
演じる自分を想像しながら染五郎さんは舞台を確認していました。
初めて現地で見た演出の感想をすぐにスタッフに伝えます。
色みがなかなか出づらい…。
あ〜。
チームラボが制作した蛍のCGをもっと鮮明にしてほしいと修正を依頼しました。
更に最もこだわったのが水の上を走る演出です。
舞台前方に造られた通路。
染五郎さんが走るために照明で囲まれていました。
周囲の水の深さは4メートル。
万が一に備えダイバーが待機します。
安全確保の観点から反対が相次ぎます。
それでも染五郎さんは照明を外す決断を下しました。
本番まで3日。
CGや噴水だけでなく歌舞伎本来の魅力を伝えるために成功させたい伝統的な技がありました。
鍵を握るのはお姫様役を演じる中村米吉さん。
鯉の化け物の仮の姿という設定です。
米吉さんは今22歳。
女形の若手のホープです。
今回の大きな見せ場の一つお姫様が鯉の化け物に変身するシーン。
瞬間的に衣装を変えるぶっ返りといわれる歌舞伎の技です。
ふだんは黒子が手伝いますが海外では理解されにくいため2人だけで成功させる方法を探っています。
重要なのは2人が息を合わせる事です。
染五郎さんが袖と襟。
米吉さんが胸の部分を同時に引っ張る事で衣装が変わります。
更にすぐに立って見得を決めなければなりません。
しかし一連の動作のタイミングが合いません。
はっ!え〜っとふっバラッ立った決まるっていう。
瞬間的に衣装を変える演出で観客を驚かせたい。
一丸となって見せ場を作り上げていきます。
真夏のラスベガス。
連日気温40度を超える猛暑となりました。
CGを担当するチームラボ。
ホテルの部屋に籠もり修正作業を続けていました。
見えにくいと指摘された夏の蛍の映像。
一番最初はですね最初といいますかこの現地に持ち込んだ時…。
この辺か…。
当初蛍の光は白で表現していましたがウォータースクリーンに映すとぼやけてしまいました。
そこで黄色の色みを足し更に蛍の数を減らす事で一つ一つの光が際立つようにしました。
大体できる限りのという事ではあるんですけど。
日本に残ったクリエーターと連絡を取りながらより鮮明なCGを目指します。
稽古は昼夜を問わず行われました。
どんな演技をすれば観客を引き付けられるのか。
試行錯誤が続きました。
ラスベガス公演まであと2日となったこの日。
初めて本番と同じ仕度をして通し稽古が行われます。
稽古が始まったのは深夜0時。
金太郎君も見に来ていました。
歌舞伎の技を披露するぶっ返り。
だんだんとタイミングが合ってきました。
CGとも動きが合い一体感が増してきました。
そして通し稽古は後半へ。
しかし衣装を着替えて再登場するはずの染五郎さんが現れません。
大幅に遅れて出てきます。
いで妖怪を退治てくれん。
そして照明を外した水の上を走る場面の時でした。
それでも染五郎さんは演技を続けます。
稽古終了後。
染五郎さんは衣装の早変わりの際に足を痛めていました。
翌日。
染五郎さんは真っ先に昨夜のアクシデントの事を謝りました。
ケガの事には一切触れませんでした。
いで妖怪を退治てくれん。
自分のやりたい事を最後まで貫く覚悟を決めていました。
もう一回もう一回いきましょう。
単純にね。
単純にもう一回。
あの…今のば〜ったりから。
はい。
迎えた初日。
会場にはおよそ2万人の観客が集まりました。
観覧は無料。
ほとんどの人が歌舞伎を見るのは初めてです。
「ハローラスベガス。
アイアム歌舞伎アクター市川染五郎。
プリーズエンジョイザショー」。
(拍手と歓声)いよいよ前代未聞の歌舞伎が始まります。
舟で颯爽と登場した染五郎さん。
しかし噴水に映し出されるはずのCGが冒頭から出ません。
連日続いた暑さで会場の電源に不具合が生じていました。
そうした中演技が続けられます。
映像が復旧したのは5分以上たってからでした。
そして観客を驚かせたいと稽古を重ねたぶっ返り。
衣装が引っ掛かり失敗してしまいました。
初日の公演は決して満足のいく内容ではありませんでした。
本番2日目。
おはようございます。
おはようございます。
昨日と同じ失敗はできないと臨んだこの日。
急きょ本番前の楽屋でぶっ返りの稽古を行う事にしました。
僕から見てると…菊之丞さんが指摘したのは2人のタイミングのズレ。
染五郎さんが衣装を離す前に米吉さんが立ち上がると後ろによろけてしまいます。
はっ。
真後ろに引けばいいって事だね。
衣装を離すタイミングと立ち上がるタイミングをいかに合わせるか。
染五郎さんが米吉さんに声をかける事にしました。
はっ。
はい。
ただ大丈夫だと思います今ので。
すぐに今「はい」を聞いてから。
染五郎さんは一人本番直前まで演技の確認を続けていました。
(スタッフ)87654321。
2日目の公演の幕が開きました。
(拍手と歓声)物語は染五郎さんが演じる主人公とお姫様の出会いから始まります。
次第に心引かれ合う2人。
その心情を踊りで表現します。
恋に落ちた主人公。
(拍手と歓声)まばゆい光を放つ蛍の映像は互いの心が通い合った事を印象づけていました。
やがて主人公はお姫様が人間ではない事に気が付きます。
月の光に映りたる影はまさしく異形の姿。
やっ!なんじは何者なるか。
鯉の化け物が正体を現します。
(柝の音)ぶっ返り成功です。
(拍手と歓声)そして鯉の化け物との対決です。
(拍手と歓声)
(拍手と歓声)
(拍手と歓声)いよいよ染五郎さんがこだわった水の上を走る場面。
(拍手と歓声)
(拍手と歓声)
(拍手と歓声)はっ!
(柝の音)
(拍手と歓声)
(拍手と歓声)これがセンター。
顔のセンターに。
ちょっとこうやって持ってて。
こうやって持ってて下さい。
はい。
それぞれの思いを胸にたどりついた前代未聞の舞台。
・ありがとうございました。
・お疲れさまでした。
染五郎さんのラスベガスの挑戦が終わりました。
日本に戻った染五郎さんは次の舞台に向かっていました。
この舞台で金太郎君に自らの経験を伝えます。
歌舞伎俳優市川染五郎42歳。
更なる高みを目指し挑み続けます。
2015/09/12(土) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
密着 市川染五郎 KABUKI in Las Vegas[字]

歌舞伎界の若きエース、7代目市川染五郎。この夏、挑んだ大舞台は、ラスベガスの巨大噴水。デジタル技術で作られたホログラムの巨大鯉と格闘する染五郎の挑戦に密着した。

詳細情報
番組内容
歌舞伎界の若きエース、7代目市川染五郎。この夏、前代未聞の歌舞伎に挑んだ。舞台は、アメリカ・ラスベガスの名所「ベラージオホテルの巨大噴水」。幅300m、最大で高さ200mに吹き上げる噴水に、デジタル技術で作り出された巨大こいが映し出され、それを相手に染五郎が格闘するというものだ。400年の歴史で、常に時代の先駆けとなる挑戦を続けてきた日本の歌舞伎。その文化をけん引し、世界発信に挑む染五郎に密着した
出演者
【出演】市川染五郎,中村米吉,尾上菊之丞

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
劇場/公演 – 歌舞伎・古典
情報/ワイドショー – 芸能・ワイドショー

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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