（テーマ音楽）京都の夏を華やかに彩る祇園祭。
毎年７月およそ１か月にわたり町は祭りの熱気に包まれます。
この祭りを京都の人々はこう呼びます。
魚のハモの名を取って「ハモ祭」。
祇園囃子の音色とともに生き生きとしたハモが都の食卓ににぎわいを加えるのです。
これはハモのフルコース。
湯引きしたハモを冷たい水で締めた「落とし」。
「ぼたんハモ」はをまぶしたハモに芋茎を添えて頂きます。
照り焼きにしたハモをご飯に載せた「ハモ寿司」。
これをつまみながら祇園祭の山鉾を見物する。
都の夏の楽しみです。
京都の人々が愛したさまざまな種類の魚を描いた明治時代の屏風。
水の中で生き生きと身をくねらせているのがハモ。
ハモは生命力が強く水から揚げた後もしばらく生き続けます。
海から離れた京都で夏に食べることができる数少ない魚がこのハモでした。
小骨が多いハモを食べやすくするための知恵が「骨切り」です。
専用の重い包丁を使い定の間隔で骨を刻んでいきます。
皮枚残すのが技の見せどころです。
江戸時代の中頃に書かれた料理本。
骨切りの技術が生まれる以前ハモがどのように調理されたのか描かれています。
杵でハモの身と骨をつきすり身にしています。
ハモのカマボコは京都の庶民の大事な蛋白源でした。
最近では骨切りやすり身とは異なる新たなハモの調理法が注目されています。
ハモの小骨を本本抜いていく方法です。
ハモの小骨は松の葉のように枝分かれしているため無理に抜くと途中で切れてしまいます。
この店では隠し包丁を入れることでおよそ５００本もあるハモの小骨をきれいに抜き取る方法を考案しました。
この調理法により可能になったのがハモの刺身。
京都の夏を彩る新しい食卓の顔です。
京都の食の世界で古くから大切にされてきたのは四季の季節感です。
京菓子は色形そして名前にも四季の風物が取り入れています。
梅雨入り前の花しょうぶを表した「若紫」。
鴨川べりの草むらに宿る蛍を黄色い寒天で表現した「蛍の宿」。
嵐山の緑を写した「夏木立」。
透明感のある仕上げが涼を誘います。
和菓子工場の夏の作業風景です。
この季節に欠かせないのは本葛と粗目。
この２つを水に溶かして熱を加えます。
お湯を注ぐと次第に透き通っていきます。
色つきの餡を葛で包みます。
みずみずしい透明感のある葛は古くから涼しさを感じさせる素材として夏の菓子に使われてきました。
水の中に咲いた花をイメージした「水牡丹」。
京都の夏を代表する菓子のつです。
滝に青い紅葉の葉が浮かぶ様を表した「滝の紅葉」。
器や盛りつけにも心が配られています。
扇形の菓子の名は「涼風」。
目と耳と舌で味わう京都の四季の世界です。
京都南座。
芝居見物の楽しみのつが幕間に頂くお弁当です。
弁当の楽しさは盛りつけ。
仕出し屋は色あでやかな盛りつけを工夫してきました。
これは元禄時代創業の老舗に伝わる弁当箱の数々です。
豪華なまき絵が施された重箱は江戸時代の中頃に作られたものといわれます。
都の人々は重箱いっぱいに季節の食材を詰め花見や紅葉狩りへと出かけました。
四季折々の風物をめでながらの宴。
季節感を重んじる食の都の伝統はこうした雅な風土の中ではぐくまれてきたのです。
都の食を支えてきた錦市場。
加工品から生鮮品まで全国からあらゆる食材が集まっています。
地元京都の食材といえばこの京野菜。
丸い形が特徴の賀茂なすは「なすの女王」と呼ばれています。
ユニークなひょうたん型をしたのは鹿ヶ谷かぼちゃ。
鷹峯とうがらしはさわやかな甘みと香りが特徴です。
京都では今でも町なかで野菜を売り歩く人の姿に出会います。
朝取れたての野菜が１０種類以上。
新鮮な野菜を求めて常連の客が集います。
ちょっと４００円出るけど４００円に負けさせてもらいます。
こうした身近な食材を用いて作る家庭料理を京都では「おばんざい」と呼びます。
夏の京野菜を使った代表的なおばんざいです。
ビタミンが豊富で夏バテ防止に効果があります。
賀茂なすは砂糖を加えたみそを塗って頂きます。
土の香りがする素朴な味です。
方こちらは海外からの賓客も訪れる料亭です。
主人自ら青竹を割り店でふるまう茶懐石に備えます。
作っているのは箸。
青竹の若々しい香りを楽しんでもらおうという趣向です。
茶懐石では料理によって箸の形が異なります。
焼き物に合わせて出されるのが竹の節が中ほどにある「中節」。
お酒の前の小鉢には節が箸の柄の部分にある「止節」が使われます。
取り箸の形は器との調和を考えて決められたといいます。
使いやすさ食べやすさだけでなく見た目の調和を重んじる。
京都ならではの伝統です。
都の四季の移ろいを器の中に表現した京料理。
都人の美意識を盛り合わせた皿の上の小宇宙です。
2015/09/13(日) 03:15〜03:30
ＮＨＫ総合１・神戸
京都 雅のしずく「器に四季を盛って〜京料理・京菓子」[字]
【語り】岸本多万重
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出演者
【語り】岸本多万重
ジャンル :
ドキュメンタリー／教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー／教養 – 歴史・紀行
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